従業員エンゲージメントとは? 高める効果や方法をわかりやすく

従業員エンゲージメントとは、会社に貢献したいという、従業員自身の意欲のことです。従業員エンゲージメントの要素やメリット、取り組んでいる企業などについて詳しく解説します。

目次

1.従業員エンゲージメントとは?

従業員エンゲージメントとは、従業員が自社へ貢献意欲を持ち、企業と従業員の間で信頼関係を構築することです。「Engagement」は、契約や積極的な関与といった意味があり、愛社精神、愛着心などと呼ばれる場合もあります。

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2.従業員エンゲージメントの3つの要素

従業員エンゲージメントに必要とされる、下記3つを解説します。

  1. 理解度
  2. 共感度
  3. 行動意欲

①理解度

従業員が企業のビジョンを理解し、共感または支持していること。共感が生まれると当事者意識が生まれ、組織としての業績向上へとつながりやすくなります。企業は組織の理念や経営方針を明確にし、従業員に説明することが大切です。

②帰属意識

社会や家族、地域など組織や集団の一員であるという自覚のこと。この感覚が強いほど従業員エンゲージメントは高まります。大きな目標を共有する仲間との人間関係が築かれ、承認や尊敬などの要素が組織への愛着心を育むのです。

③行動意欲

従業員が会社のため自主的に行動するようになること。自社への愛着がわくと、自社へ貢献しようという気持ちが高まり、自ら会社のために行動するようになります。企業も従業員のためにできることを積極的に行うのが大切です。

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3.従業員エンゲージメントと似た言葉と意味の違い

従業員エンゲージメントと似た言葉の正しい意味を解説します。

  1. ワークエンゲージメント
  2. モチベーション
  3. 従業員満足度
  4. コミットメント
  5. ロイヤリティ

①ワークエンゲージメント

従業員の仕事に対する活力や熱意、没頭などのこと。従業員が仕事を肯定的にとらえている状態です。一方の従業員エンゲージメントは、自社そのものに対する愛着や貢献意欲を指します。

②モチベーション

アクションのきっかけとなる動機のこと。たとえば新年を迎えたとき「今年は英会話を頑張るぞ」と思うのがモチベーションです。一方の従業員エンゲージメントは、貢献意欲をもって自主的に取り組む姿勢になります。

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③従業員満足度

業務や人間関係、職場環境などへの満足や不満の度合いのこと。あくまで満足度であって、自発的な意欲や姿勢とは異なります。一方の従業員エンゲージメントは、自社への貢献意欲の度合いを指しているのです。

④コミットメント

自社への職務責任を果たすこと。ビジネスシーンでは公約する、承認するといった意味合いで使われます。コミットメントからも自社への愛着心や忠誠心などが生まれるため、従業員エンゲージメントを高める要素となるのです。

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⑤ロイヤリティ

従業員がもつ忠誠心のこと。たとえば、会社の方針へ従う姿勢です。一方の従業員エンゲージメントは、自ら主体的に行動して貢献しようとする姿勢になります。

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4.従業員エンゲージメントが注目される理由

企業の発展に不可欠な優秀な人材を長期に確保するため、従業員エンゲージメントに注目が集まっています。その背景について説明しましょう。

  1. 人的資本経営のへのシフト
  2. 優秀な人材の確保
  3. 従業員の価値観が多様化

①人的資本経営へのシフト

人材を資本と捉える経営手法が注目されています。企業の持続的な成長には、長期にわたって従業員と組織の信頼関係を構築する、従業員エンゲージメントが必要です。

外部環境や市場の変化などに対応しながら、持続的に企業価値を高めていくため、人材の価値や可能性を引き出す人的資本経営の重要性が高まっています。

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②優秀な人材の確保

労働者人口が減少している昨今、優秀な人材を長期に渡って確保するには、従業員エンゲージメントを高めていく必要があります。

さまざまな価値観や状況にいる人材が最大限活躍できるよう、働きやすい環境が必要です。そういったなかで、従業員と企業の間に信頼関係を構築する従業員エンゲージメントが注目されています。

③従業員の価値観が多様化

終身雇用の崩壊や従業員の働く価値観の多様化により、給料や役職などでは従業員のモチベーションを維持・向上できません。

時短勤務やリモートワークなど働き方の変化のほか、「能力を生かしたい」「プライベートを充実させたい」人が増えました。そのような従業員を育成・活用していくには、従業員エンゲージメントを高める必要があります。

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5.従業員エンゲージメントが高い企業の特徴

従業員エンゲージメントが高い企業には、下記のように共通する特徴があります。

  1. ビジョンが明確
  2. 社内のコミュニケーションが活発
  3. 人的資本への投資が充実

①ビジョンが明確

企業理念や将来像、方針など、従業員エンゲージメントが高い会社はビジョンが明確です。全従業員に浸透しているので、会社の方向性を理解して共感した従業員は、従業員エンゲージメントが高まりやすいといえるでしょう。

②社内のコミュニケーションが活発

社員同士のコミュニケーションが充実しています。お互いの理解が深まると、共感や尊重といった感情から、職場への信頼度が増して帰属意識や貢献意識が生まれやすくなるのです。働きやすい職場は従業員エンゲージメントが向上します。

③人的資本への投資が充実

研修や資格取得支援などを積極的に行っている企業はエンゲージメントが高いです。個々の従業員を大切にした、人的資本の価値を高める取り組みは、社員のやりがいやモチベーションを高め、自主的な貢献行動を促す結果につながります。

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6.従業員エンゲージメントを高めるメリット

従業員エンゲージメントを高めると、どのようなメリットを得られるのでしょう。それぞれについて解説します。

  1. 人材の定着率
  2. モチベーションの維持や向上
  3. 課題へ積極的に挑戦
  4. 顧客満足度の向上
  5. チームワークを改善

①人材の定着率

自社への貢献意欲が高まり、転職や退職のリスクが下がります。自社で働くことにやりがいや価値を見出せれば、従業員も転職を考えなくなるでしょう。

優秀な人材ほどキャリアップのために、より待遇の良い企業へ転職してしまいがちです。
しかし従業員が会社に愛着を持てれば、優秀な人材の流出を防げます。

②モチベーションの維持や向上

自社への信頼から業務に対する意欲が向上し、充実感や達成感、やりがいなどが生まれモチベーションも維持しやすくなるでしょう。

企業理念や将来像、方針など自社が目指していることへの共感から、自社への愛着心がわき、会社のために何をすべきかを考えながら業務に取り組むようになります。企業の業績も向上していくでしょう。

③課題へ積極的に挑戦

仕事への意欲が高まり、課題に対して前向きに挑戦するようになります。自社の目指す目標を全従業員に浸透させれば、会社への愛着心や従業員同士の信頼関係が向上し、困難な問題が生じても乗り越えようとするでしょう。

「自分がここで業績を上げれば、会社のためになる」といった意識から、挑戦する気持ちを持ちやすくなります。

④顧客満足度の向上

従業員エンゲージメントの高い社員は、会社への貢献意欲が高いため、仕事の質が高まります。それにより商品やサービス、顧客対応などの質も上がり、顧客満足度も高まるのです。

⑤チームワークを改善

同じ目的や方向を持つ従業員が増えるため、お互いの連携が強化されます。個々の連携から部署、そして全社が協力しあえるようになり、チームワークも強くなるのです。

従業員エンゲージメントの高い組織は、互いを信頼し合っているため、意見交換も活発 になります。また互いを助け合いながら仕事をする働きやすい環境になるのです。

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7.従業員エンゲージメントが低い原因

従業員エンゲージメントを低下させてしまう4つの原因を紹介しましょう。改善の糸口にしていきたいところです。

  1. 人事業務が「管理」中心
  2. 従業員の仕事に対する姿勢が受け身である
  3. コミュニケーションが希薄
  4. 人事評価への不満

①人事業務が「管理」中心

人事部の業務が管理中心では、人材の育成やキャリアアップなども望めません。

従業員が望むスキルアップやキャリアアップに対応できなければ、自社への信頼を損なって仕事へのモチベーションが低下し、転職する人も出てくるでしょう。個々従業員のスキルを把握して、それを引き出すのも人事の重要な役目です。

②従業員の仕事に対する姿勢が受け身である

従来のトップダウン方式や終身雇用などの影響により、上からの指示に従って仕事を進めるスタイルが浸透しているため、指示がないと自ら動かないといった従業員もまだまだ多いです。

指示されたこと以外はやらない状況では、従業員は仕事への達成感ややりがいもなく、会社も業績が伸びません。

③コミュニケーションが希薄

従業員同士のコミュニケーションが希薄になると、お互いの信頼関係を構築するのが難しくなり、会社への帰属意識が低下しやすくなります。

経営陣が高圧的な態度で接していると、良いアイデアがあっても従業員は本心を話せません。円滑なコミュニケーションがとれる風通しの良い環境作りが大切です。

④人事評価への不満

従業員が正当に評価されていないと感じると、自社に対する信頼感や貢献意識が薄れてしまいます。

「成果を出してもほかの人と評価が変わらない」「日ごろの業務に対する向き合い方やチームへの貢献度などが評価されない」と、従業員は会社への信頼をなくしてしまうのです。従業員エンゲージメントが低下してしまうかもしれません。

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8.従業員エンゲージメントを高める方法

従業員エンゲージメントを高める方法には、どのようなものがあるのでしょう。それぞれについて見ていきます。

  1. ビジョンの浸透
  2. 人事制度の見直し
  3. 従業員の成長につながる制度や機会を提供
  4. チームビルディングの実施

①ビジョンの浸透

企業の目指す方向性を、全従業員に理解・共感させる必要があります。そのためにはミーティングの開催・社内報や社内Webページなどを利用して、自社のビジョンを明らかにし、従業員へ伝えて浸透させましょう。

ビジョンが明確になれば、従業員は自発的に業務にも取り組みやすくなり、業績が上がって仕事へのモチベーションも向上します。

②人事制度の見直し

評価制度の基準や報酬を見直し、従業員が納得できる公平な制度に改定すること。あいまいな評価基準下で正当な評価を得られない従業員には、組織に貢献しようという気持ちは芽生えません。

貢献度に応じた報酬、業務プロセスの評価などを評価基準にくわえ、従業員が納得する人事制度で仕事への意欲を高めていきましょう。

③従業員の成長につながる制度や機会を提供

従業員のスキルやキャリアを高められる、あるいは新たなチャレンジができる制度や仕組みを整備すること。

将来を見据えたキャリアを築けるよう、個々従業員のスキルアップのサポートをすると、従業員自身が会社に対しての信頼と貢献する気持ちが高まります。従業員を育てる環境作りも企業の役割です。

④チームビルディングの実施

チームビルディングとは、チームワークを強化する手法のこと。メンバーが目標を共通認識し、それを達成させるため協力しながら業務を遂行する方法です。

チームビルディングを実施すると、従業員の帰属意識や貢献意識が高まるといわれています。メンバー個人のスキルを最大限に生かすと最大の成果が得られるのです。

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9.従業員エンゲージメント調査(サーベイ)とは?

自社に対する従業員の愛着度を調べる調査のこと。測定する手段は、社内アンケート形式で実施する場合が多く、月1回から半年に1回程度のサイクルで行われます。

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エンゲージメントサーベイの目的

表面化しにくい人事課題を把握し、人事施策や組織運営へ生かすこと。また課題解決による定着率の向上も狙いになります。

従業員が普段から抱えている不安や不満などを会社側が理解していなくては、企業として成長できません。調査によって課題を把握し、優秀な人材が流出しないよう改善していきます。

エンゲージメントサーベイで測定する3つの指標

エンゲージメントサーベイでは指標となる3つの要素があります。

  1. 総合指標…従業員が企業を総合的に見てどのように感じているのか、を理解する指標
  2. レベル指標…仕事に対してどれくらい熱意を持って取り組んでいるのか、を測る指標
  3. ドライバー指標…最終的に従業員エンゲージメントを向上させる要因を測る指標

①総合指標

自社へ対する従業員の総合的な評価がわかります。質問例を紹介しましょう。

  • 仕事を探している知人や親族に自社を勧めたいですか
  • この1年間に仕事上で学び、成長する機会を持てましたか
  • 職場に自分をひとりの人間として気遣ってくれる上司や同僚はいますか
  • 仕事上で自分の成長を励ましてくれる人はいますか

②レベル指標

仕事に対する集中度や熱中度などを測る指標です。質問例を紹介します。

  • 終業時間が近づくと、時間の進みが遅く感じることがありますか
  • 仕事では自分の強みを生かせていると感じますか
  • 同じ部署のメンバーは仕事に専念していると思いますか
  • 仕事を進めるために必要な環境が十分にそろっていますか

③ドライバー指標

その従業員にとってエンゲージメントが高まる要因を調べる指標です。質問例を紹介します。

  • 自分の仕事をほめられたり認められたりする機会はありますか
  • 所属部署や会社全体の目標や戦略を理解していますか
  • 仕事で自分の意見が考慮されていると感じますか
  • 自分の仕事が会社の使命や目標のために重要であると感じていますか

エンゲージメントサーベイの実施ポイント

エンゲージメントの向上で達成したい目的を明確にし、定期的に実施し継続させましょう。目的を明確にすれば、調査後の結果をふまえて改善施策を進めやすくなるのです。

また繁忙期やチームを立ち上げて動き始めた時期などを避けて調査しましょう。それにより正確な回答を得られます。

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10.従業員エンゲージメント向上に取り組む企業事例

従業員エンゲージメント向上に取り組み、そしてその効果でエンゲージメントを高めた企業が増えています。以下でその例を紹介します。

  1. ユーザベース
  2. Google(グーグル)
  3. Starbucks(スターバックス)

①ユーザベース

マネジメントに対する不満解消のため、価値基準(行動指針)を策定しました。また理念やビジョンを組織的に浸透させながら、方向性を合わせる目的で、「カルチャーチーム」を創設したのです。

その結果エンゲージメントスコアは高水準となり、売上高が倍増しました。

②Google(グーグル)

ほか部署とのコミュニケーションを取りやすい斬新なオフィス設計を取り入れ、従業員のエンゲージメントを促進。「従業員がもっとも働きやすい会社」「憧れの就職先」などのランキングで、1位を獲得しています。

③Starbucks(スターバックス)

従業員に経営方針や行動基準を理解させるため、下記を設置しました。

  • スターバックスで働くうえでの「個人の成長目標」の設定
  • 働きぶりを従業員同士で相互評価しあう制度

その結果、従業員に主体性が生まれ、エンゲージメントや業績が向上したのです。