共創とは、企業が複数のステークホルダーとともに新しい価値を作り出していく考え方のことです。ここでは共創がビジネスにもたらす効果や注目されるようになった背景、オープンイノベーションとの違いなどについて解説します。
目次
1.共創(コ・クリエーション)とは?意味や読み方
共創(コ・クリエーション)とは、さまざまな立場の人たちが対話しながら新しい価値を作り出すこと。マーケティング用語のひとつで、英語で表記すると「Co Creation」になり、それぞれ「Co=共同、相互の」「Creation=創造」という意味を持ちます。
2004年、アメリカ・ミシガン大学ビジネススクール教授のC.K.プラハラード氏とベンカト・ラマスワミ氏が共著『ユーザー参画を通じた新たな価値の創造による他社との差別化』で提唱したのがはじまりです。
ここから「顧客とともに付加価値を生み出していかなければ、企業は新時代を生き残ることはできない」というビジネス戦略が一般化しつつあります。
2.共創が注目される背景
これまで企画や開発、事業化活動などの分野は、各企業がそれぞれ自社内で行っていました。
それぞれの企業は独自の新商品、新サービスを提供して市場のシェアを確立してきたものの、多様化する現代のニーズに応えて次々と新商品を開発するのは容易ではありません。
また従来、同業界という枠組みの中で競争が行われてきましたが、予想もしていなかった業界外から新たな競争相手が出現するケースも増えています。業界外企業の新規参入により、これまでの競争優位性が崩壊した業界も後を絶ちません。
そこで注目されるようになったのが共創という考えです。近年、さまざまなステークホルダーと対話、協業して既存商品の改善や新商品、新サービスの提供を進めようという考えが増えています。
3.共創がビジネスにもたらす効果
グローバル化や情報化が進む現代、商品やサービスの消費サイクルも加速しています。この社会変化に単独でついていくのはかんたんではありません。
このような状況のなか、自社以外の相手とともに新たな価値を創造する共創により、下記が可能になりました。
- これまで発見できなかったニーズの発掘
- 自社内では生まれなかった新発想の創出
- 自社にない技術を使った新商品、新サービスの提供
さらにビジネスイノベーションを起こしたり、新たなマーケティング手法や新規販路を獲得したりとさまざまな効果も生まれています。
4.共創の3タイプ
共創には3タイプあり、それぞれステークホルダーとの関係性によって分類されます。
- 双方向の関係
- 共有の関係
- 提携の関係
①双方向の関係
価値提供者である企業とユーザーが対等の関係になって議論を進め、ともに価値を生み出していく関係のこと。
この関係において、企業はユーザーに自社の商品やサービスを売り込むことはしません。ユーザーから発信される事業課題と向き合って解決方法を考え、そこから新たなビジネスモデルを作るのが目的です。
②共有の関係
参加者一人ひとりがそれぞれの役割と責任を持って新たな価値を生み出していく関係のこと。
企業や政府、各種団体など異なるレベルの参加者が共通の目的を持って集まり、コミュニティやコンソーシアムのようにオープンな関係を築きながら新価値を生み出します。
③提携の関係
新価値を生み出したい複数の企業が外部との連携によって課題を解決していく関係のこと。いわゆる発注者と提携業者という関係ではなく、互いに対等なパートナーとして忌憚なき意見を述べあいながら協業するのが「提携」の特徴です。
企業規模やほか業界などによる上下関係はありません。相互に不足しているものを補い合うパートナーシップの意識で新たな価値を創造していきます。
5.共創とオープンイノベーションの違い
共創と混同されやすいのが「オープンイノベーション」という考えです。オープンイノベーションとは、自社以外の組織や機関が持つ知識、技術を有機的に結合させて、自前主義からの脱却をはかること。
- 外部組織で生み出された知識を社内の資源と組み合わせてイノベーションを創出する
- 社内で活用されていない経営資源を社外で活用し、新たなイノベーションを創出する
どちらもオープンイノベーションといえます。よって共創は広義の概念であり、オープンイノベーションは共創を実践するための手段と考えて区別するのが一般的です。
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6.共創実践のポイント
共創を実践する際のポイントは、下記の3つを共有すること。ここではそれぞれの視点から共創に必要なポイントについて説明します。
- 技術の共有
- 価値の共有
- 体験の共有
①技術の共有
共創パートナーから技術の提供を受けたり自社の技術を提供したりして、事業の差別化や優位性の実現を目指すこと。課題解決のために必要とされる圧倒的な技術力は、一朝一夕で築き上げられません。
少ない手間で最大のパフォーマンスを発揮する技術力を1から構築するには、膨大なコストと時間がかかるもの。そこで自社にはない技術力を外部と、あるいは自社が持つ技術力を外部と共有して優位性を築きます。
②価値の共有
共創する目的は一致しているでしょうか。
- ユーザーのどのようなニーズに応えたいのか
- 社会のどのような課題を解決したいのか
など共通の目的や価値がなければ、プロジェクト成功の可能性は下がります。
「価値の共有」は信頼関係を築くためにも欠かせません。「所属組織が違うから方向性も違う」「価値が異なるから課題解決に向けた熱量も異なる」という状況で共創の価値を高めるのは困難です。
③体験の共有
共創を進めるなかでパートナーの事業や技術、強みなどを実際に体験すると、相手に対する理解、信頼感が高まります。
ITの分野でいえばサーバーレスやクラウドサービスなど、それまで不確実とされていたものがここまで注目されるようになったのも、パートナーにノウハウを示して体験的に共有し、爆発的に事業を展開させたからです。
共創パートナーと体験を共有し、その体験を相手の常識に埋め込んでいければ、それは共創を生み出す原動力になります。
7.共創の企業事例
共創はすでにさまざまな分野で活用されているのです。ここでは共創を取り入れて効果をあげた3社の事例について説明します。
- ネスレ日本
- シーズ
- Oisix
①ネスレ日本
コーヒーを主力商品とする食品メーカー「ネスレ日本」では「ネスカフェアンバサダー」という取り組みを実施しています。これは自社のコーヒーマシンを応募企業に無料で貸し出して消費者の声をピックアップする取り組みです。
コーヒーマシンを借りたアンバサダーは定期的にネスレのアンケートに協力したり、座談会に参加したりして意見を発信します。ここからサービスの向上、新サービスの開発につなげられているのです。
②シーズ
バンダイナムコグループの国内生産会社「株式会社バンダイナムコクラフト(旧株式会社シーズ)」は、共創を活用してスムーズな異業種参入を果たしました。
玩具づくりで培った技術力を、医療の分野で事業展開するメディカル・プリンシプル社と共有。飛沫防護マスクをはじめとする医療製品機器を生産するほか、大手食品会社との共創も進めています。
③Oisix
有機野菜や無添加食品などの食品宅配を専門とするスーパー「Oisix」は消費者との共創に取り組んでいます。
「みんなの商品企画部」というプロジェクトのプロデューサーとして、消費者の「あったらいいな」をピックアップ。それを見たほかの消費者が多く支持したアイデアを実際に商品化するという取り組みを実施しています。
さらに活躍した消費者を企画会議に呼び込んで体験や価値を共有するなど、さまざまな特典を用意しているのです。