SL理論とは?【わかりやすく解説】PM理論との違い

SL理論とは、部下の状況に合わせてリーダーシップを変化させる理論のこと。SL理論の特徴、メリット、PM理論との違い、SL理論の導入のポイントなどを解説します。

1.SL理論とは?

SL理論とは、部下の状態や状況に合わせてリーダーシップのスタイルを変える理論のこと。SLは「Situational Leadership(状況のリーダーシップ)」の頭文字をとったもので、「状況対応型リーダーシップ」とも呼ばれます。

この理論では、上司が部下に対して画一的な指導をするのではなく、部下個々の能力や習熟度に合わせて指導をしたほうが、より部下の成長につながると考えているのです。

SL理論にもとづいた部下のタイプ

SL理論では、部下は次の4タイプにわけられます。

  1. 何をしていいのかわからず、ミスも恐れるタイプ
  2. 何をしていいのかわからないが、積極的に行動したいタイプ
  3. 何をすべきかわかっているが、ミスや失敗が不安なタイプ
  4. 何をすべきかわかっていて、楽しく取り組んでいるタイプ

SL理論では部下の状態を上記のタイプに分類し、対応を変化させていくのです。

SL理論にもとづいたふたつの軸

SL理論では、部下に対するリーダーの接し方として「指示的行動」「援助的行動」ふたつの軸が設けられています。

  • 指示的行動:業務の方法や手順などの具体的な指示
  • 援助的行動:部下との信頼関係の向上を目的として、「賞賛する」「支援する」「しっかり話を聞く(傾聴する)」などでサポートすること

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2.SL理論とPM理論の違い

PM理論とは、社会心理学者の三隅二不二氏が1966年に提唱したリーダーシップ理論のこと。2軸と4タイプにわかれる点がSL理論と似ているものの、こちらはリーダーを分類します。

軸は下記のふたつです。

  1. Performance(目標達成能力)
  2. Maintenance(集団維持能力)

リーダーシップのタイプは下記の4つです。

  1. PM型:目標達成能力と集団維持能力の両方に優れているタイプ
  2. Pm型:目標達成能力のみが優れているタイプ
  3. pM型:集団維持能力のみが優れているタイプ
  4. pm型:目標達成能力と集団維持能力のどちらも劣るタイプ

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違いはリーダーシップ

SL理論とPM理論の大きな違いは、「誰を見てリーダーシップを変化させるか」。具体的な違いは下記のとおりです。

  • SL理論:部下一人ひとりの能力や習熟度に合わせてリーダーシップのスタイルを変える考え方
  • PM理論:自身のリーダーのタイプ(4つのタイプのいずれかであるか)を確認し、それに合わせて自らの目標達成能力と集団維持能力を伸ばしていく

つまりSL理論は相手のタイプを見てリーダーシップを変え、PM理論は自身のタイプを見てリーダーシップを変化あるいは向上させていくのです。

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3.SL理論が役立つ組織の特徴

自社のリーダー人材について次のような課題を抱えている企業は、SL理論を採用したほうがよいでしょう。

  • リーダーなのにリーダーシップが欠けている
  • リーターシップのあり方が型にはまってしまっている
  • リーダーの部下育成能力が乏しい
  • リーダーと部下の信頼関係がない

これらが生じる職場では、部下に対するリーダーの接し方が自分本位かつ画一的になってしまっている可能性もあります。そこで部下の状況に合わせてリーダーシップのスタイルを変化させるSL理論が効果的なのです。

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4.SL理論における4つのリーダーシップの型

SL理論におけるリーダーシップの型は、下記4つにわかれます。それぞれの特徴と、行動の注意点について説明しましょう。

  1. 教示型リーダーシップ
  2. 説得型リーダーシップ
  3. 参加型リーダーシップ
  4. 委任型リーダーシップ

①教示型リーダーシップ

「何をしていいのかわからず、ミスも恐れるタイプ」に対して有効なリーダーシップです。経験やスキルが足りない社員(主に新入社員)など、「何をすべきか分からない」という状態の部下に対して、具体的かつ細かに指示を出していきます。

教示的リーダーシップの特徴は、部下がひとりで仕事をこなせるようになるまで、進捗管理を徹底すること。上司と部下が良好な信頼関係を構築することに重きを置きません。また部下へのサポートも必要最低限にして、本人がやりきることを重視します。

リーダー行動のポイント

ポイントは部下と明確なゴールおよび業務プロセスを共有し、小さな成功体験を積ませて自信をつけさせ、自発的な行動を促していくこと。また部下が業務で失敗した、あるいは業務をうまく進められなかったとしても、叱責や罵倒をするのは避けます。

②説得型リーダーシップ

「何をしていいのかわからないが、積極的に行動したいタイプ」の部下へ有効なリーダーシップです。主な対象は入社2年目から3年目など、能力や経験はまだ十分ではないものの意欲や責任感の強い部下。

入社して数年経った部下は、業務に対して自分なりのアプローチや工夫を取るようになります。業務の目的や方向性についても積極的に意見や疑問を出すようになるため、部下を説得して自社が求める方向へ導いていくリーダーシップが求められるのです。

そのためリーダーは部下に対して指示的行動と援助的行動を取る必要があります。

リーダー行動のポイント

ポイントは部下の疑問や不安に対して丁寧に細かに応え、部下のモチベーションや意欲を削がないようにすること。また部下の責任感を芽生えさせるため、仕事の目的や完了期限などを明確に伝えるのもポイントです。

③参加型リーダーシップ

「何をすべきかわかっているが、ミスや失敗が不安なタイプ」の部下に有効なリーダーシップです。リーダーは援助的行動を取り、部下の意思決定をサポートします。

このタイプの部下はそれなりに能力があるため、指示的行動はさほど必要ないでしょう。しかしミスを恐れてひとりでは意思決定をするのが難しい状態なのです。

そこでリーダーは部下の意見や疑問を聞き、適切なアドバイスを与えて課題の解決や意思決定の決断を促します。

リーダー行動のポイント

意思決定を行う場面でリーダーは、部下の疑問や不安点を丁寧に聞き、ともに検討したうえで決定を下します。このとき意思決定の責任は部下だけでなくリーダーも負うことを伝えて、部下の不安を軽減することがポイントです。

またチームで意思決定を行う場合は、話し合いの進行役となって「情報の共有」「アイデアの共有」などを行い、意見交換を活性化させるとよいでしょう。

④委任型リーダーシップ

ベテラン社員のように、「何をすべきかわかっていて、愉しく取り組んでいるタイプ」の部下に有効なリーダーシップです。

このタイプの部下は業務遂行能力や適切な意思決定力、問題解決力を持っており、自主性や目的意識、モチベーションなども高くなっています。よって上司から細かな指示を出す必要はありません。

リーダーは業務をすべて委任して進捗状況や成果だけを報告してもらい、部下の自信やモチベーションを上げるためのフォローを行います。

リーダー行動のポイント

業務を委任するものの任せっぱなしにはせず、部下の業務課程(仕事の状況)はしっかりとモニターするとよいでしょう。ベテラン社員とはいえどこかで行き詰まったり、問題が起こったりする場合もあるからです。

業務が上手く進展していないようならアドバイスや助力など部分的なフォローを行い、再度自律的な行動へ促しましょう。

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5.SL理論を活用するメリット

部下の状況に合わせてSL理論を活用すると、部下の能力や自主性が向上するうえに、定着率アップなどのメリットも期待できます。

部下の能力向上

各部下の状態(成長度合い)に合わせた指導を行うため、それぞれの部下は業務遂行に必要となるスキルや能力を早期に習得できます。また適切なサポートが受けられた部下は仕事で行き詰まらず、自信やモチベーションのアップにもつながるでしょう。

定着率の向上

仕事における責任感や充実感が増し、定着率が向上する可能性もあります。リーダーが適切な指示的行動や援助的行動を行うと、部下は業務の目的や自身の役割を理解したうえで業務にあたれるからです。

仕事に対するやりがいや自社に対する貢献意欲などが生まれた部下は、「この会社で長く働きたい」と感じるようになります。

生産性の向上

各部下に適したリーダーシップを使いわけて個々の能力やモチベーションなどが高まると、生産性の向上につながります。多くの部下が成長するほど、チームや部署、ひいては組織全体のパフォーマンスを向上させるからです。

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6.SL理論を活用する際の注意点

SL理論はメリットがある一方、部下に誤解されやすいといったデメリットもあります。SL理論を導入する際の注意点を説明しましょう。

  1. 不公平感の発生
  2. キャパシティーのオーバーリスク
  3. 習熟度の把握が困難

①不公平感の発生

部下ごとに上司の態度が変わるため、部下が不公平感を覚える恐れもあります。

たとえば同じチームの部下たちへ異なるレベルのリーダーシップを取る場合、それぞれの部下に対する指導量やコミュニケーション量に差が生じるでしょう。部下によっては「自分にはあまり指導やサポートをしてくれない」という不満を持つかもしれません。

部下に不公平感を覚えさせないためにも、SL理論の意図や目的を事前にしっかり説明して、部下の納得を得ておきましょう。

②キャパシティーのオーバーリスク

SL理論では個々の部下に対してリーダーシップを使いわけていくため、リーダー経験の浅い人では、キャパオーバーになる可能性もあります。慣れるまでは自身のキャパシティーに合わせながら、無理なく実践していきましょう。

③習熟度の把握が困難

経理や総務など事務的な業務では、部下の能力や習熟度の把握が難しい場合もあります。そのためSL理論の実施前には、評価しやすい環境を整備しましょう。たとえば「各部下にKPI(業績評価指標)を設定させる」「1on1ミーティングを実施する」などです。

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7.SL理論において共通するリーダーの役割

SL理論では、どのリーダーシップタイプにおいても共通する役割があります。リーダーが求められる役割を説明しましょう。

  1. 企業文化の構築を意識
  2. 部下の変化を把握
  3. エンゲージメントと成果に注目

①企業文化の構築を意識

リーダーはつねに「よい企業文化をつくること」を意識しなければなりません。具体的には、部下が自身の価値や存在意義を感じられ、高いモチベーションを持って業務にあたれる企業文化です。

そのためリーダーは、部下へ適切な内容とタイミングで指導やフィードバック、承認などを行う必要があります。

②部下の変化を把握

部下のスキルや経験は日々変化していくため、リーダーは部下の状態を細かに観察し、把握する必要があります。変化を見逃してしまうと、不適切なリーダーシップタイプで対応してしまうかもしれないからです。

部下の状態に対して過度な指導や援助を行ってしまうと、部下のモチベーションを下げかねません。

③エンゲージメントと成果に注目

リーダーは、成果(結果)とプロセスの両方を評価する姿勢を忘れてはなりません。「結果だけの評価」「プロセスだけの評価」では、部下の能力を見逃しがちだからです。両方を評価する姿勢を持ち、部下にポジティブな影響を与えるよう心がけましょう。

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8.SL理論について学べる本

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