CSO(最高戦略責任者)とは、CEO(最高経営責任者)の右腕として経営戦略の立案を担う役職のこと。企業におけるCSOの役割、求められるスキルと経験、年収などを解説します。
目次
1.CSOとは?
CSO(Chief Strategy Officer)とは、企業における「最高戦略責任者」のこと。役割は、CEO(最高経営責任者)の補佐役として主に戦略部門を統括し、戦略の立案および実行の責任を担うことです。
ビジネス環境が目まぐるしく変化する昨今、企業の業務内容が複雑化し、CEOの負担が増加しました。そのため1990年代後半のアメリカで、CEOを補佐する役職としてCSOを設置する企業が出現。日本でも2000年頃からCSOを導入するようになったのです。
なおCSOが「Chief Sustainability Officer(最高サステナサステナビリティ責任者)」を指す場合もあります。
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2.CSOに似たほか役職との違い
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- CEO(Chief Executive Officer)
- COO(Chief Operating Officer)
- CFO(Chief Financial Officer)
- CMO(Chief Marketing Officer)
- CHRO(Chief Human Resource Officer)
- CTO(Chief Technical Officer)
①CEO(Chief Executive Officer)
「最高経営責任者」のこと。企業における最大の権限と責任を持ち、経営方針や事業計画、経営戦略の最終的な意思決定を担います。CSOは経営戦略の策定を担うものの、最終決定権を持ちません。
②COO(Chief Operating Officer)
「最高執行責任者」のこと。実務の中核を担うポジションで、CEOやCOSが策定した経営戦略を現場に落とし込み、実行させる役割を担います。
CSOも現場へ戦略を浸透させる役割を持つため、COOを置いてCSOを置かないケースや、COOとCSOを兼任するケースも少なくありません。
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③CFO(Chief Financial Officer)
「最高財務責任者」のこと。企業の財政面を総括するポジションで資金調達や運用、コストコントロールなどにくわえ、買収といった対外的な業務も担います。
CSOが経営戦略を策定する際には予算やコストなども考えなくてはならないため、CFOとの連携が必須です。
④CMO(Chief Marketing Officer)
「最高マーケティング責任者」のこと。企業におけるマーケティングの最高責任者で、広報や宣伝の施策立案や推進のほか、ビッグデータの統計分析なども担います。
CSOが経営戦略を立案する際には、どのようなマーケティングを行ってどれほどの利益を出せるかを考える必要があるため、やはりCMOとの連携も不可欠です。
⑤CHRO(Chief Human Resource Officer)
「最高人事責任者」のこと。採用、人材育成、人材活用など企業における人的資源に関する経営戦略を策定し、推進する役割を担います。CSOは現在の「ヒト、モノ、カネ、情報」などの経営資源をもとに戦略を立案するため、CHROとの連携が必要です。
⑥CTO(Chief Technical Officer)
「最高技術責任者」のこと。技術開発の方向性の決定のほか、エンジニアリング組織の総括も担うため、IT企業やメーカーにおいてはとくに重要な役職です。経営戦略を成功に導くためにどのような技術が必要かを把握するためには、CTOの意見が欠かせません。
3.CSOが求められる理由
近年ではCSO(最高戦略責任者)の重要性が高まっており、国内でも導入する企業が増えてきました。ここではCSOが多くの企業に求められる理由を説明しましょう。
- 経営戦略の内製化
- CEOの支援
- サステナビリティの維持
①経営戦略の内製化
経営戦略の内製化を指揮するリーダーとしてCSOが求められています。
CEOが企業の経営戦略を決める際、従来は外部の経営コンサルタント会社に委託するのが一般的でした。しかしビジネス環境が急速かつ複雑に変化する昨今、外部をとおさずに社内で自社に合った経営戦略を策定するほうが効率的です。
そこで経営コンサルタントの役割を担うCOSが置かれるようになりました。
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②CEOの支援
CSOはCEOの補佐役として一部の業務を支援し、CEOの負担を軽減する役割を求められます。
企業のトップであるCEOは、事業方針や経営方針の決定、自社業務の統括、ステークホルダーへの説明や情報開示など多くの業務を抱えています。これらをひとりで行うのは効率が悪いため、CSOによるサポートが必要とされるようになったのです。
③サステナビリティの維持
SDGsの採択を機に多くの企業がサステナビリティ経営に力を入れるようになりました。そしてCSO(Chief Sustainability Officer)つまり「最高サステナビリティ責任者」の重要性が増してきたのです。
社会の価値観の変化により、企業はサステナビリティ(持続可能な企業活動)を考慮しなければ成長が見込めません。
そこで自社のサステナビリティ戦略の策定や、外部スネークホルダーへの対応や活動報告などを担う最高サステナビリティ責任者を置くようになったのです。
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4.CSOを設置するメリット
CSO(最高戦略責任者)を導入すると、CEOの負担が軽減するうえに、意思決定の迅速化や次期CEOの育成促進などのメリットも得られます。
- スピーディな意思決定
- 次期経営トップの育成
①スピーディな意思決定
CSOを設置すれば、経営戦略の意思決定および実践をスピーディに進められます。CSOを中心に自社の実態に合った戦略を社内で策定すれば、経営コンサルタント会社へ依頼するよりもはるかに短い時間で意思決定できるからです。
またCSOがいないまま経営戦略を内製化してしまうと、CEOの業務が大きく増加してしまい手が回らなくなる恐れもあります。やはりスピーディな経営戦略の決定と実行が困難になるでしょう。
②次期経営トップの育成
CSOはCEOの右腕として業務を補佐するため、次期トップの育成にもつながります。なぜなら課題への対応を学び、企業トップとしての能力を身につけられるからです。実際にCSOを経て社長へ就任した例も見られています。
5.CSOの役割
CSO(最高戦略責任者)の具体的な役割は以下の3つです。
- 経営戦略の設計
- 組織体制の構築
- CEOや各部長と連携
①経営戦略の設計
CSOが担う役割のなかでも重要なのが、企業の将来を見据えた経営戦略設計です。具体的には、現状の課題を洗い出し、中長期的に自社が成長していくための戦略を立案します。
長期にわたって企業の成長を存続させるためには現在主軸となっている事業の拡大はもちろん、数年後に企業価値を高めるような新規事業の開発も考える必要があるでしょう。
②組織体制の構築
経営戦略を実行するための組織を構築することのもCSOの役割です。各部門の責任者や役職者と連携し、戦略の目的や内容を分かりやすく現場に伝える体制を整えます。
またよりよい経営戦略を立案するため、CSOが自ら現場社員の声を吸い上げ、組織が持つ課題を把握するのも珍しくありません。
③CEOや各部長と連携
CSOには、CEOや各部長との「橋渡し」の役割もあります。企業が一丸となって経営戦略を実行するには、経営陣が密に連携を取り合うのが不可欠だからです。CSOはCEOの補佐役としてつねに近くで業務を行うため、CEOの意向を正確に各部長に伝えられます。
6.CSOに求められるスキル
CSO(最高戦略責任者)に求められるスキルはさまざまあります。ここでは以下の5つを解説します。
- 経営視点での策定力
- 管理能力
- 理解力や判断力
- コミュニケーション能力
- 発想力や柔軟性
①経営視点での策定力
CSOには、物事を経営視点で捉えるスキルが求められます。自社の存続および成長のために、CEOとともに経営戦略を立案する役割を担うからです。
広い視野を持って社会情勢や市場の変化を見極めながら、自社に利益をもたらす戦略を考えなければなりません。さらに昨今では、企業活動を社会貢献へつなげるビジネスセンスも必要です。
②管理能力
CSOには、職場環境を把握して管理する能力も求められます。どれほど有効な戦略を立案しても、実行する環境が整っていなければ現場は最大限のパフォーマンスを発揮できないからです。
そのため職場環境のなかでも、効率や生産性を左右する労働環境の管理へとくに注力する必要があります。
③理解力や判断力
CSOには、状況を素早く理解して判断するスキルが求められます。現場などでトラブルが発生した際に、的確かつ迅速な対応をしなければ、企業に多大な不利益が生じる恐れもあるからです。
そのためCSOには目の前の事象だけでなく、物事を深部まで洞察して本質を理解する能力が必要です。
④コミュニケーション能力
CSOはさまざまな部門と横断的に連携を取るため、高いコミュニケーション能力が求められます。
立案した戦略を実行して成果を生み出すには、組織全体の行動意欲を喚起しなければなりません。そのためにはその戦略の目的や意義を、CEOをはじめとする経営陣や、現場の社員にわかりやすく伝える必要があります。
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⑤発想力や柔軟性
CSOには、自社の風土や理念を踏まえながらも、今までにない戦略を立案する発想力や柔軟性が求められます。外的環境の変化によって、従来の常識が覆されるのも珍しくありません。
そこでCSOは、時代に合わせた新しい価値観を戦略に反映させていく必要があるのです。
7.CSOに求められる経験
企業によってCSO人材に求める経験は異なるもの。ここでは歓迎されやすい4つの経験を解説しましょう。
- 部署横断でのマネジメント
- 組織や運営の改革
- 新規プロジェクトの運営
- クライアントや自社における課題解決
①部署横断でのマネジメント
複数部署を横断しながらのマネジメント経験を有していると、CSOの業務に役立ちます。CSOが立案する経営戦略は、複数の部署が連携をとりながら実行するものだからです。
また経営戦略の実施においては、各部署が取り組むプロジェクトの進捗や成果なども管理しなければなりません。ときには部署を超えた人材配置や課題解決などへ取り組むことになるでしょう。
②組織や運営の改革
CSOには、組織作りや運営の改革の経験が求められます。立案した戦略を効果的に実行するために、新しい組織作りや運営体制の改変が必要になる場合があるからです。
CSOになる前に、チームの立ち上げや体制の改革などを経験していると、戦略の実施に適した組織や環境などの整備をスムーズに行えるでしょう。
③新規プロジェクトの運営
経営戦略の立案と実行を担うCSOには、新規プロジェクトの立ち上げ経験が必須です。たとえばコンサルティング業務の経験者やスタートアップ企業の立ち上げに携わった経験など。
なかでも先入観を持たずに白紙の状態から物事を考えられる「ゼロベース思考」を持つ人は歓迎される傾向にあります。
④クライアントや自社における課題解決
CSOは、社内外において課題を解決した経験が求められます。経営戦略の実行において、部署やチーム内に生じるトラブル、あるいはクライアントなどとのトラブルが起こりえるからです。
不測の事態に直面した際、CSOがいかに迅速に適切な対応ができるかが経営戦略の成功、ひいては企業の存続に影響するでしょう。
8.CSOに向いている人の特徴
CSO(最高戦略責任者)に向いているのは、どのような人なのでしょう。ここではCSOに向いている人の特徴を説明します。
- 高い熱量を持った人材
- 幅広い知識を吸収できる人材
①高い熱量を持った人材
CSOに向いているのは、つねに高い熱量を持って仕事ができる人です。
CEOの右腕を担い、経営戦略の立案をするCSOは、企業の将来を左右するポジションです。ときには、社風を一変させるような新しい価値観を取り入れた戦略を策定する場合もあるでしょう。
このような戦略を成功させるには、高い熱量とリーダーシップで企業全体を巻き込める人が適しています。
②幅広い知識を吸収できる人材
CSOは広い視野で経営戦略を立案する必要があるため、知的好奇心が旺盛で偏りのない幅広い知識を持つ人が向いています。
変化の激しい現代を迎え、企業は新しい価値を創造していかなければ、市場から取り残されていくでしょう。そのためCSOは業界や業種、自分の好みなどにこだわらず、つねに多方向へアンテナを張りめぐらせ、新しい知識や情報を取り入れる必要があるのです。
9.CSOの年収
CSOの年収は厚生労働省などでの調査が行われておらず、業種や事業の規模によって大きく異なります。ただ求人情報などでは、1,200万円から2,000万円程度の募集が多い傾向です。上場企業であれば、年収3,000万円を超えるのも可能になります。
なお「CSO候補」として採用される場合、年収700万円程度からのスタートもありえるでしょう。