特定理由離職者とは?【簡単に】給付日数、診断書、失業手当

特定理由離職者とは、「雇い止め」または「やむを得ない理由による自己都合」で退職した人のこと。判断基準や失業保険の受給、特定受給資格者との違い、メリットやデメリットなどを解説します。

1.特定理由離職者とは?

特定理由離職者とは、「雇い止めによる退職」あるいは「やむを得ない正当な理由による自己都合退職」した人のこと。

本人の就業意思があるにもかかわらず、やむを得ない事情で勤務が難しい状況にある人が該当します。たとえば派遣社員など期間に定めのある労働契約が更新されなかった人や、体調不良、介護や出産育児などで勤務が困難な人などです。

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2.特定理由離職者と特定受給資格者の違い

特定受給資格者とは、再就職の準備にあてる時間を十分に確保できないまま雇用先の都合で離職した人のこと。特定理由離職者と特定受給資格者の違いは、離職理由と失業保険の給付日数です。それぞれについて解説します。

退職理由

  • 特定理由離職者の離職理由:雇用先ではなく本人の環境変化や体調など「自己都合」が離職の理由
  • 特定受給資格者の離職理由:本人に問題はなく、「倒産」「解雇」など「会社都合」が離職の理由

特定受給資格者の主な離職理由は次のとおりです。

  • 雇用先の倒産、廃業、遠方への移転
  • 雇用先都合での解雇
  • 賃金の未払い、大幅な賃下げ
  • 労働契約の不履行
  • 労働基準法の違反
  • 従業員の健康や労働継続に必要な配慮や措置の未実施

特定理由離職者の離職理由については後述します。

離職票での退職理由区分

特定理由離職者と特定受給資格者では、「離職票-2」の離職区分も異なります。それぞれの離職区分は次のとおりです。

【特定理由離職者】

  • 2C:期間満了、次の契約更新がないための離職(雇用期間3年未満更新明示なし)
  • 3C:正当な理由のある自己都合退職(後述の3A、3B、3Dに該当するものを除く)
  • 3D:特定の正当な理由のある自己都合退職(2017年3月31日までに離職した被保険者期間6か月以上12か月未満の該当者のみ)

【特定受給資格者】

  • 1A:解雇(1Bと従業員の責任による重大な理由による解雇を除く)
  • 1B:天災そのほかやむを得ない理由により事業継続が不可能な場合の解雇
  • 2A:特定雇い止めによる離職(雇用期間3年以上雇い止め通知あり)
  • 2B:特定雇い止めによる離職(雇用期間3年未満更新明示あり)
  • 3A:雇用先からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職
  • 3B:雇用先移転にともなう正当理由のある自己都合退職

失業保険の所定給付日数

特定理由離職者は、一般的な離職者と同様に90日から150日の給付です。特定受給資格者と一部の特定理由離職者は最長給付日数が増えて90日から330日となります。なお失業手当の所定給付日数は、離職者の雇用保険加入期間と年齢によって異なるのです。

どちらも適用に必要な被保険者期間や待期期間はどちらも7日で、給付制限期間はありません。

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3.特定理由離職者の範囲と判断基準

特定理由離職者の認定基準は、厚生労働省が細かく定めています。どのような場合に特定理由離職者として認められるのか、解説しましょう。

労働契約期間満了かつ契約の未更新

いわゆる雇い止めを理由に離職した人は、特定理由離職者に該当します。次の条件が満たされているにもかかわらず、更新や延長がされずにやむを得ず離職した場合が相当するのです。

  • 「期間の定め」「更新や延長の可能性」が明示された労働契約である
  • 雇用契約期間を満了する
  • 雇用契約期間の満了日以前に従業員本人から更新または延長希望の申し出がある

雇止めを証明する書類としては労働契約書や雇入通知書、就業規則などが有効です。

正当な理由による自己都合退職

正当な理由でやむを得ず自己都合退職した人も、特定理由離職者に該当します。正当な理由と認められる条件は7つです。

  1. 心身的条件により就業が困難
  2. 受給期間延長措置を受けた出産や育児
  3. 家庭の事情が急変
  4. 家族や親族とのやむを得ない同居
  5. 通勤が困難あるいは不可能
  6. そのほか
  7. 新型コロナウイルスによる離職

①心身的条件により就業が困難

従業員本人の健康状態を理由に、通勤や業務遂行が困難、あるいは継続が不可能になった場合を指します。現在の担当業務だけでなく、健康状態に配慮したうえで業務を新たに割り振っても遂行が難しいときも同様です。

このケースでは、ハローワークへ医師の診断書といった定められた書類の提出が求められます。

②受給期間延長措置を受けた出産や育児

「妊娠」「出産」「育児」など、雇用保険受給期間の延長が適用された場合です。

雇用保険法第20条第1項で定められた理由のうち、離職日翌日から継続して30日以上働けない人、失業手当の受給期間が1年以上になる人は、受給期間延長措置を受けられます。このケースでは、ハローワークへ受給期間延長通知書の提出が必要です。

③家庭の事情が急変

家族事情の大きな変化で勤務継続できなくなり離職した場合です。

父母の死亡や病気、親族の病気などが当てはまり、従業員がつねに看護する必要性を問われます。離職の申し出時点で、およそ30日以上の看護期間の見込みが必要です。また自宅の火災や水害で働けなくなったとき合も認定される可能性もあります。

ハローワークに提出する書類は扶養控除等申告書や健康保険証、医師の診断書などです。

④家族や親族とのやむを得ない同居

家族や親族に事情があり、やむを得ず単身赴任の勤務形態がとれない場合です。家庭生活と経済的状況などの理由で家族や親族との同居が必要であるものの、同居すると通勤や勤務が難しいため離職した人が該当します。

ハローワークに持参すべき資料は「転勤辞令」「住民票の写し」「扶養控除等申告書」「健康保険証」などです。

⑤通勤が困難あるいは不可能

通勤が不可能または困難になったことが理由で離職した場合です。次のような正当な理由を持ち、かつ通勤にかかる往復所要時間が大体4時間以上である場合に適用されます。

  • 結婚による住所変更
  • 子どもの保育先が遠方
  • 勤務先の移転
  • 強制立ち退き、天災の影響など不可抗力による住所変更
  • 公共交通機関の廃止、運行時間変更
  • 転勤辞令にともなう家族との別居回避
  • 配偶者の転勤や再就職にともなう住所変更と別居回避

ハローワークへの提出書類は、ケースによって異なります。

⑥そのほか

組織の再編成といった理由で人員整理が行われ、早期退職優遇制度に自ら応募した人も認定基準を満たす可能性があります。該当についての確認はハローワークへの問い合わせが必要です。なお解雇や退職勧奨を受けて離職した人は基準を満たしません。

⑦新型コロナウイルスによる離職

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、やむなく離職した人が特定理由離職者に認定されるようになりました。2020年2月25日以降は、次の理由で自己都合離職をした人も対象です。

  • 同居家族が感染し、看護や介護が必要になったため
  • 職場での感染者発生、本人や同居家族の基礎疾患、妊娠や高齢など懸念事項があり、感染拡大や重症化を防止するため
  • 通学通園できなくなった子どもの養育をするため(原則は小学生まで、特別支援学校については高校生までを対象)

また2022年5月1日以降には次の要件が追加され、適用範囲が拡大しました。

  • 新型コロナウイルスの影響で雇用先が休業を余儀なくされ、労働時間が減ったため

おおむね1か月以上にわたり労働時間が週20時間以下になった、または確実となった場合に適用されます。

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4.特定理由離職者のメリット

特定理由離職者のメリットは、一般離職者に比べて失業手当の受給条件が緩和されること。また健康保険料や住民税が軽減される場合もあります。

  1. 一般離職者と比べて受給要件が緩和
  2. 給付制限期間の免除
  3. 健康保険料や住民税の軽減

①一般離職者と比べて受給要件が緩和

特定理由離職者は保護の必要性が高いため、一般離職者よりも失業手当の受給要件が緩和されています。特定理由離職者は、1年間で6か月以上の被保険者期間があれば受給可能。一般離職者は離職日以前の2年間で12か月以上が必須です。

一般離職者よりも失業保険の長期受給が可能

長期受給の条件に該当すると、最大330日まで受給できます。

通常であれば特定理由離職者の失業保険受給期間は、一般離職者と同じく最長150日です。しかし離職日が2009年3月31日から2022年3月31日に該当し、かつ離職理由が雇い止めの場合、給付期間は特定受給資格者と同じく最大330日まで受給が可能となります。

②給付制限期間の免除

特定理由離職者には、給付制限期間がありません。7日間の待期期間ののち、約5営業日後に失業手当が振り込まれます。一般的な自己都合退職や懲戒解雇の場合、7日間の待期期間のあと、2か月から3か月の給付制限期間が設けられてしまうのです。

③健康保険料や住民税の軽減

雇い止めによる特定理由離職者として認定された場合、国民健康保険料や住民税の減免を受けられます。軽減を受ける際は、離職者自身の申請が必要です。また市区町村によって軽減率や金額が異なるので、詳しくは役所で確認しましょう。

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5.特定理由離職者のデメリット

特定理由離職者の認定は公共職業安定所(ハローワーク)が行うため、希望していても離職者自身では決められません。

また雇用先と離職者間で主張が食い違う場合の事実確認や、不正受給防止などの観点から、労働契約書や賃金台帳などさまざまな証明書類の提出が求められます。一般離職者の失業保険受給に比べて申請に手間がかかる点はデメリットといえるでしょう。

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6.特定理由離職者が失業保険を受給するための条件

特定理由離職者が失業保険を受給するためには、3つの条件を満たす必要があります。

  1. 失業中である
  2. 離職日以前の2年間に、雇用保険加入期間が6か月以上ある
  3. ハローワークで求職を申し込んでいる

前述したように、特定理由離職者は6か月以上の雇用保険加入期間があれば問題ありません。一般離職者は、離職日以前の2年間に12か月以上の加入が必要です。

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7.特定理由離職者の失業保険受給に診断書が必要なケース

やむを得ない正当な理由での退職であると客観的に証明し、特定理由離職者に認定されるための証明書として、医師の診断書が必要になる場合もあります。

  • 心身的条件により就業が困難:離職者自身の障害や疾病、視力や聴力、触覚の減退などの証明に必要
  • 家庭の事情が急変:父母や親族の障害や疾病の程度、必要な看護レベルなどの証明に必要

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8.特定理由離職者の失業保険の給付日数

特定離職者の離職理由によっては、失業手当の給付日数とその決定方法が異なります。雇い止めによる離職では雇用保険加入期間と年齢で給付日数を決定。正当な理由による自己都合退職の場合は、雇用保険加入期間で決まります。

雇止めによる離職

雇止めで退職した特定理由離職者のうち、離職日が2009年3月31日から2025年3月31日までに該当する人は、雇用保険加入期間と年齢によって給付日数が決まります。給付日数は次のとおりです。

  • 30歳未満:90日から180日
  • 30歳以上35歳未満:90日から240日
  • 35歳以上45歳未満:90日から270日
  • 45歳以上60歳未満:90日から330日
  • 60歳以上65歳未満:90日から240日

正当な理由による自己都合退職

特定理由離職者が正当な理由で自己都合退職した場合、失業手当の給付日数と年齢ではなく、雇用保険の加入期間で変動します。雇用保険加入期間による給付日数は次のとおりです。

  • 1年未満:0日
  • 1年以上5年未満:90日
  • 5年以上10年未満:90日
  • 10年以上20年未満:120日
  • 20年以上:150日

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9.特定理由離職者はいつから失業手当(失業保険)を受け取れる?

特定理由離職者の場合、ハローワークでの手続きや失業認定がスムーズに運べば、離職から約1か月程度で失業手当を受け取れます。

すべての離職者に適用される7日間の待期期間後に受給手続きを行い、失業認定後およそ5営業日で給付という流れです。ただし失業認定を受けるためには求職活動実績が必要になり、失業認定には1か月ほどを要するため、離職から実際の給付まで約1か月かかります。

また失業認定は再就職への活動が大前提です。求職活動に対する意欲や努力が見られない場合は「失業」と認定されず、特定理由離職者でも2か月から3か月の給付制限が生じます。

該当するのは「ハローワークのからの職業紹介」「職業訓練や職業指導を正当な理由なく拒む」などです。

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10.特定理由離職者はどれくらい失業手当を受け取れる?

失業手当の受給額は、離職前の給与と離職時の年齢によって異なります。受給額総額は「基本手当日額×所定給付日数」で算出。月の受給額は「基本手当日額×28日」で算出し、所定の日に振り込まれます。

離職前6か月の給与総額を日割り計算して「賃金日額」を出したあと、「給付率」をかけて「基本手当日額」を算出。給付率は賃金日額と離職時の年齢で変動し、賃金日額は離職時の年齢によって上限額が存在します。

基本手当日額の計算方法

基本手当日額は、「賃金日額×給付率」で算出されます。

  • 賃金日額:離職前6か月の給与総額÷180(30日×6か月の日割り計算)
  • 給付率:45%から80%

「賃金日額は離職時の年齢によって上限額が決まっている」「給付率は賃金日額と離職時の年齢によって異なる」点に注意が必要です。

賃金日額と基本手当日額の確認方法

賃金日額と基本手当日額は、「雇用保険受給資格者証(失業手当の受給資格を証明する書類)」に記載されています。ハローワークで失業保険の受給手続き後に参加する受給者説明会で交付されます。

賃金日額の記載場所は表面の14欄、基本手当日額は表面19欄です。そのほか認定日(17欄)や受給期間の満了日(18欄)、給付日数(20欄)なども書かれています。失業認定日に必要となる重要書類なので、受給期間が終了するまでは保管が必要です。

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離職時の年齢が29歳以下の基本手当日額

離職時の年齢が29歳以下の基本手当日額は次のとおりです。

  • 賃金日額が2,657円以上、5,030円未満:2,125円から4,023円
  • 賃金日額が5,030円以上、1万2,380円以下:4,024円から6,190円
  • 賃金日額が1万2,380円超、1万3,670円以下:6,190円から6,835円
  • 賃金日額が1万3,670円超:6,835円

基本日額の上限は1万3,670円、基本手当日額の上限は6,835円となっています。

離職時の年齢が30歳から44歳までの基本手当日額

離職時の年齢が30歳から44歳までの基本手当日額は次のとおりです。

  • 賃金日額が2,657円以上、5,030円未満:2,125円から4,023円
  • 賃金日額が5,030円以上、1万2,380円以下:4,024円から6,190円
  • 賃金日額が1万2,380円超、15,190円以下:6,190円から7,595円
  • 賃金日額が1万5,190円超:7,595円

上限額は基本日額1万5,190円、基本手当日額7,595円です。

離職時の年齢が45歳から59歳までの基本手当日額

離職時の年齢が45歳から59歳までの基本手当日額は次のとおりです。

  • 賃金日額が2,657円以上、5,030円未満:2,125円から4,023円
  • 賃金日額が5,030円以上、1万2,380円以下:4,024円から6,190円
  • 賃金日額が1万2,380円超、1万6,710円以下:6,190円から8,355円
  • 賃金日額が1万6,710円超:8,355円

上限額は全年齢で最も高く、基本日額16,710円、基本手当日額8,355円です。

離職時の年齢が60歳から64歳までの基本手当日額

離職時の年齢が60歳から64歳までの基本手当日額は次のとおりです。

  • 賃金日額が2,657円以上、5,030円未満:2,125円から4,023円
  • 賃金日額が5,030円以上、1万1,120円以下:4,024円から5,004円
  • 賃金日額が1万1,120円超、1万5,950円以下:5,004円から7,177円
  • 賃金日額が1万5,950円超:7,177円

基本日額上限は1万5,950円、基本手当日額の上限は7,177円です。