ジョブクラフティングとは、従業員が主体的に仕事を作ることです。
ここでは、ジョブクラフティングについて解説します。
目次
1.ジョブクラフティングとは?
ジョブクラフティングとは、一人ひとりの従業員が、自らの仕事を主体的に作ることです。指示された仕事をするのではなく、自らの仕事を柔軟に作り上げます。そのなかで興味、関心、知識、経験など自分の強みを活かし働くことで、仕事の質やモチベーションの向上が期待できます。
ジョブクラフティングとジョブデザインの違い
ジョブクラフティングに類似する言葉に、ジョブデザインがあります。
両者には
- ジョブデザインとは、経営者が業務に対して主体的に行動して働きやすい仕事を設計し、従業員は受け身の存在となって割り当てられた仕事をこなすこと
- ジョブクラフティングとは、従業員自ら主体的に行動し、業務を作っていくこと
といった違いがあります。
2.ジョブクラフティングが注目される理由
ジョブクラフティングが注目される理由は3点あります。
ここでは、ジョブクラフティングが注目される理由として
- 仕事の複雑化
- 組織と従業員の関係性の変化
- 仕事の個業化
といった背景を理由として解説します。
仕事の複雑化
ジョブクラフティングが注目されるひとつ目の理由は、仕事の複雑化です。
ビジネスの世界では業務の
- 複雑化
- 細分化
- 専門化
が進んでいます。そのため、組織が従業員のために個々がやりがいと感じ、モチベーションを保てる仕事を設計することが困難になってきました。
この問題を改善するため、専門的な知識や技術をもつ従業員自ら、自身の仕事を設計するようになりました。
組織と従業員の関係性の変化
ジョブクラフティングが注目されるふたつ目の理由は、組織と従業員の関係性の変化です。近年、転職などで労働市場の流動性が高まっています。
ジョブクラフティングの背景には
- 所属する組織が設計した仕事をこなすだけでは、将来のキャリアアップには不十分
- 転職を通してキャリアを磨いていく
といった組織と従業員の新たな関係性があります。
仕事の個業化
ジョブクラフティングが注目される3点目の理由は、仕事の個業化です。
- 複雑化
- 専門化
が進んだことで、
- 自分以外の人がどのような仕事をしているのかが見えにくい
- 職場の人間関係が希薄になる
といった仕事の個業化が問題になっています。
ジョブクラフティングで、職場内の人間関係を構築しながら仕事を作っていく過程が注目されています。
3.ジョブクラフティングにおける3つの視点
ジョブクラフティングにおける3つの視点があります。ここでは、ジョブクラフティングにおける3つの視点として
- 作業クラフティング
- 人間関係クラフティング
- 認知クラフティング
についてそれぞれ解説します。
作業クラフティング
ジョブクラフティングにおけるひとつ目の視点は、作業クラフティングです。作業クラフティングとは
- 仕事を追加したり削除したりして、仕事のやり方を工夫する
- 必要と判断した仕事を盛り込むなどで、仕事の内容を充実させる
- 仕事の手順を自分の判断で理想的なステップに変更する
など、仕事を主体的に構築していくことです。
人間関係クラフティング
ジョブクラフティングにおけるふたつ目の視点は、人間関係クラフティングです。人間関係クラフティングとは
- 仕事を通して多くの人と関わりを持ち、積極的に人間関係を構築していく一緒に仕事をする人
- 状況を把握し、周囲との相互の協力関係を築きながら、自ら仕事の手ごたえや成果を実感していく
ことです。
認知クラフティング
ジョブクラフティングにおける3つ目の視点は、認知クラフティングです。認知クラフティングとは
- 自分の仕事の内容や質、手順を見つめなおす
- 自分の仕事を社会的な側面から価値のあるものと捉えなおす
- 自分の仕事の目的を達成することや仕事から生み出された成果物が、社会に貢献できると再認識する
ことです。
4.ジョブクラフティングの効果
企業がジョブクラフティングを推進する中で得られる効果があります。ここでは
- 効果
- 事例
について解説します。
従業員が能動的に仕事に取り組むようになる
企業がジョブクラフティングを推進する中で得られるひとつ目の効果は、従業員が能動的に仕事に取り組むようになることです。ジョブクラフティングでは、従業員が主体的に自らの仕事を設計していきます。
そのため、
- 社員の仕事に対する主体性が確立する
- 社員の仕事に対する当事者意識が向上する
といった効果が期待できます。
創造的なアイデアが生まれやすくなる
企業がジョブクラフティングを推進する中で得られるふたつ目の効果は、創造的なアイデアが生まれやすくなることです。ジョブクラフティングでは、
- 自ら仕事の幅を広げる
- 仕事の質を向上させる
ことができます。
そのため、従来の取り組みでは考えつかなかった、
- 斬新
- 創造的
- 独創的
なアイデアが生まれやすくなります。
自然発生的にリーダーが生まれる
企業がジョブクラフティングを推進する中で得られる3点目の効果は、自然発生的にリーダーが生まれることです。ジョブクラフティングでは、
- 仕事の段取りを自分で考える
- 周囲の人と関係を構築しながら仕事に取り組む
ということになります。
- 仕事全体を把握する
- 仕事を計画的に進める
ことのできるリーダーの育成に効果が期待できます。
従業員のモチベーションが上がる
企業がジョブクラフティングを推進する中で得られる4点目の効果は、従業員のモチベーションが上がることです。ジョブクラフティングでは、上司からの指示を待っている従業員はいません。
従業員は、
- 自分自身で仕事を再定義する
- 自分にしかできない仕事の内容、やり方を追求する
ため、モチベーションを高く仕事をします。
5.ジョブクラフティングの事例
ジョブクラフティングの事例として有名なのは、東京ディズニーリゾートです。東京ディズニーリゾートのキャストは、来場者の心から楽しむ笑顔のために、自分にしかできないおもてなしで来場者と交流をはかっています。
掃除を担当しているカストーディアルキャストが、ダストパンを筆替わりとし、水でパーク内の地面に絵を描くことなどは、ジョブクラフティングの一例です。
6.ジョブクラフティング導入のやり方
ジョブクラフティングの導入は、4段階のステップに分かれています。
ここでは
- タスクの洗い出し
- 自己分析
- 仕事の捉え方の見直し
- 仕事の方法・人間関係の見直し
のステップについて解説します。
タスクの洗い出し
ジョブクラフティングの導入にむけた最初のステップは、タスクの洗い出しです。従業員一人ひとりが自分の現在の仕事内容をすべて書き出します。
タスクの洗い出しで注意したいのは、仕事をする上で発生する作業をすべて抽出することです。想定外に起こるタスクをできるだけ少なくするよう、丁寧に洗い出します。
自己分析
ジョブクラフティングの導入にむけた2番目のステップは、自己分析です。
多角的な視点で、
- 自分自身の仕事の目的
- 仕事になぜ取り組むかといった動機
- 具体的に起こした自身の行動とその結果
- 自身の能力、特技、興味、技術などの強み
を自己分析します。
弱みと思われることでも、考え方によって強みに変わることもあるので、柔軟な分析を心がけます。
仕事の捉え方の見直し
ジョブクラフティングの導入にむけた3番目のステップは、仕事の捉え方の見直しです。
- 洗い出したタスク
- 自己分析した自身の強み
を組み合わせることで、取り組まなければならないタスクに積極的な取り組みを付帯させます。単なる単純作業も、仕事を捉えなおすことで自分自身にとって重要なタスクに変わることもあります。
仕事の方法・人間関係の見直し
ジョブクラフティングの導入にむけた4番目のステップは
- 仕事の方法
- 人間関係の見直し
です。
洗い出したタスクを自己分析に紐づけてその意味や意義を捉え直したら
- 仕事の内容や方法の具体的な見直し
- 他者への働きかけを身直し、新たな人間関係を構築するための手法
を考えます。
これらが完了すれば、ジョブクラフティングが効果的に働きます。
7.ジョブクラフティング研修プログラム
ジョブクラフティングには、研修プログラムがあります。研修プログラムでは
- 基礎知識や事例
- グループワーク
- 各自のジョブクラフティング計画の立案
などを実施します。
研修プログラムは、そのベースとなるものを理解すれば
- 階層別
- 職種別
- チーム別
といった対象別にアレンジすることも可能です。
準備
ジョブクラフティングの研修プログラムで主宰者側が準備するものは
- パソコン
- プロジェクター
- 配布資料
- 筆記用具
などです。
また、研修プログラムが実施される会場のセッティングの注意点は
- 1グループ4名となるように着席する
- グループ内で管理職と非管理職が混在しないように、職位ごとにグループを作成する
ことです。
手順
ジョブクラフティング研修プログラムの手順は、以下のとおりです。
- 計画カードを作成する
- 研修プログラム実施に向けたマインドを高める
- どの業務にジョブクラフティングを当てはめるか検討する
- 選択した業務の工夫、周囲とのつながりにおける取り組み方を考える
- 取り組みの工夫を考える
- 計画カードを書き進める
- 振り返りをした後、上記の手順を繰り返し行う