語彙力は一般常識であり、ビジネスでも重要な必須スキルです。今回は語彙力とは何か、そしてビジネスにおける語彙力の重要性や語彙力がない人の特徴、語彙力を鍛えるメリットや方法を解説します。
目次
1.語彙力とは?
語彙力とは、知っている言葉の数のこと。それだけでなく、その言葉をどれだけ適切に使えるかまでが語彙力に含まれます。
多くの人が「語彙力のある人=多くの言葉を知っている人」とイメージするでしょう。しかし言葉を「知っている」かつ「適切に使いこなせる」人が本当の意味で語彙力のある人なのです。つまり、語彙力は言葉の「量」と「質」で成り立っています。
そのような語彙力はスキルの一種であり、ビジネスにおいて求められる語彙力にかかわるスキルには次の4つがあるのです。
- 常識力
- 想像力
- 要約力
- 表現力
①常識力
「読み」「書き」「会話」に関するスキル。ビジネスシーンでは目上の人から社外の人など、常識力をベースに多種多様な人たちとコミュニケーションを図る必要があります。
語彙力がなければお互いの話に共通認識が得られず、不信感や違和感を持たれてしまうでしょう。
また、不適切な言葉を使ってしまって相手に不快感を与えたり、わかりにくい言葉を使って相手の時間を無駄に消費したりしてしまうのです。そうなると円滑に業務が進められないだけでなく、一緒に仕事しにくい人とみなされてしまいます。
②想像力
相手が「何を表現したいのか」「何を伝えたいのか」「何をしてほしいのか」を汲み取りながらコミュニケーションを図って、目に見えないものを具現化するスキルのこと。想像力を持つとやり取りがスムーズに進み、円滑に業務も進みます。
適切な意思疎通を図るためにも「相手は自分にどんなことを求めているのか」を想像しながら会話しましょう。想像力ではカバーできない部分を追加で話し合うと、パズルのピーズがマッチするようにお互いの共通認識が得られます。
③要約力
自分の思考や感情を相手にわかりやすく伝えるスキルのこと。実際の会話だけでなく、メールや書類においても重要なスキルです。
要点を掴んでコミュニケーションが図れれば、スムーズに相手の求める回答ができ、意思疎通にかかる時間を短縮できます。会話がスムーズにできる人は、仕事ができる印象を持たれやすいです。
また要約力があれば相手の話している内容だけでなく、自分が話したい内容からも本質を見極めてわかりやすく伝えられます。
④表現力
自分の思考や感情を相手にわかりやすく伝えるスキル。感情や思考を相手にうまく伝えられれば円滑なコミュニケーションを図れます。また誤解から人間関係のトラブルに発展するのも防げるでしょう。
仕事に必要な情報や知識を相手に伝えるために重要なスキルであり、とくにマネジメントには必須といっても過言ではありません。良好な人間関係を築き、円滑なコミュニケーションを図るために重要なスキルです。
2.ビジネスで語彙力が重要な理由
語彙力は、円滑なコミュニケーションや良好な人間関係の構築に必要なスキルです。具体的にみていくと、次のような理由から語彙力がビジネスにおいて重要なスキルだとわかります。
- 業務を円滑に進めるため
- 状況・相手に応じて適切な言葉遣いが必要なため
- 感情をコントロールしやすくするため
①業務を円滑に進めるため
語彙力があれば意思疎通の時間が短くなり、その分業務が円滑に進みます。伝達力や理解が備わっていれば相手にわかりやすく伝えられるだけでなく、相手が伝えたいことの要点を理解して明確な回答が出せるのです。
反対に、意思疎通に時間がかかってしまうと、次のアクションにも遅延が発生します。
②状況・相手に応じて適切な言葉遣いが必要なため
ビジネスシーンでは同僚や上司、社外の人など立場の異なる人とコミュニケーションを取る機会が多くあります。よって状況や相手の立場に応じた相応しい言葉遣いが求められるのです。
当然、上司に同僚と同じ言葉遣いをしたり、休憩時間と同じ言葉遣いをプレゼンテーションの場で行ったりするのは不適切であり、非常識といえます。
言葉遣いのTPOを身につけるのは、ビジネスにおける基本中の基本。新入社員のビジネスマナー研修で、必ずといっていいほど敬語の講義があるのはこのためでもあります。
③感情をコントロールしやすくするため
語彙力が高い人ほど自分の感情を言語化して正確に把握できるため、自分の感情をコントロールしやすくなります。また、語彙力がある人は相手に対する怒りの感情を婉曲に表現できるため、相手に配慮しながらその感情を伝えるのも可能です。
そのため、相手の気分を損ねず人間関係も悪くせず、業務を円滑に進められます。
3.語彙力がない人の特徴
語彙力がない人には、次のような特徴が見られます。自分に心当たりがないか、セルフチェクしながら確認してみてください。
- TPOに合わせた言葉の言い換えが苦手
- 曖昧な表現が多い
- 話が長い
- 本や新聞に触れる機会が少ない
①TPOに合わせた言葉の言い換えが苦手
知っている言葉の数が少ないため言葉の選択肢が少なく、状況や相手に合わせて言葉を言い換えるのが苦手です。それゆえに、不適切な言葉を使ってしまい「常識がないのかな?」と思われてしまうリスクもあります。
「正しい敬語の使い方を押さえつつ、相手や場面に合わせて適切な言葉を選ぶ」までが語彙力です。
②曖昧な表現が多い
語彙力がないと「やばい」「ふつうに」「とても」など、具体性のない曖昧な表現を多用してしまいます。
このような抽象的な表現は利便性が高い一方、相手にわかりやすく伝える点では不適切です。とくに「やばい」のようにビジネスの場ではふさわしくない言葉も多々あります。
プレゼンや資料では具体性が求められるため曖昧な表現は使わず、根拠のある明確な表現を意識しましょう。くわえて「これ」「それ」「あれ」といった指示語を使いすぎると意味が伝わりにくくなります。使いすぎは避けましょう。
③話が長い
語彙力のない人は、適切な言葉や表現がなかなか浮かんでこないため要点を掴んで話せず、話が長くなりがちです。話が長くなると円滑に業務が進まないだけでなく、話が長い人だからと敬遠されてしまいます。
④本や新聞に触れる機会が少ない
新しい言葉に触れる機会がないと、語彙力は身につきません。本や新聞など言葉に触れる機会が少ないと新しい言葉を吸収する機会が得られず、同じような言葉・言い回しを多用してしまうからです。
とはいえ、必ずしも本や新聞だけが言葉を吸収する場ではありません。日々の会話のなかでいろいろな人の言葉を意識的に聞いて語彙力を習得するのもひとつの方法です。
4.語彙力が低いデメリット
語彙力が低いと、ビジネスの場でデメリットが生じます。語彙力の重要性を理解するためにも、語彙力が低いデメリットをおさえてみましょう。
- 常識力・社会性がない人とみなされる
- 伝達力・表現力が乏しくなる
- 理解力が低くなる
- 人間関係のトラブルに発展する可能性もある
①常識力・社会性がない人とみなされる
TPOに応じた適切な言葉遣いができないと「常識力がない」「うまくコミュニケーションが取れない」として社会性がないと判断されてしまう恐れがあります。
本来、常識力や社会性がある人でも、語彙力ひとつでその判定がくつがえされてしまうほど語彙力はビジネスに大きく影響するもの。最悪、信用を失う原因にもなるため、言葉の使い方・選び方には細心の注意が必要です。
②伝達力・表現力が乏しくなる
感情や思考を伝える適切な言葉や表現が思い浮かばないため、伝えたいことがうまく表現できずに歯痒い思いをするシーンも多くなるでしょう。
うまくコミュニケーションが取れないため、円滑に業務が進まないだけでなく、プレゼンや商談、転職面接などで失敗してしまうリスクも大きくなります。
③理解力が低くなる
語彙力がないため、相手の話やテキストの内容が正しく理解できなくなります。相手の言っていることの本質を理解できずそもそも要点が掴めない、わからない・知らない言葉でつまずいて理解に時間がかかってしまうことも多々あるのです。
さらには、誤った認識をしてしまうためミスが生じるリスクもあります。
④人間関係のトラブルに発展する可能性もある
自分の感情や気持ちが言語化できれば、原因を分析して対処可能です。反対に、語彙力がなく言語化できないと、ただ感情を表に出す、相手にぶつけることでしか対処できないため、人間関係の悪化やトラブルの発展につながります。
また適切な言葉が選べず相手に誤解や不快感を与えてしまうこともあるほど、言葉は大きな影響力を持つのです。
5.語彙力を鍛えるメリット
語彙力はビジネスの場において、多大なる影響を与えるもの。語彙力を鍛えると下記のようなメリットを得ながら、ビジネスパーソンとしての質を高められます。
- 円滑なコミュニケーションができる
- 相手の話が理解しやすくなる
- 思考力が深まる
- よい人間関係を構築できる
①円滑なコミュニケーションができる
語彙力があれば、要点を掴んだうえで相手に明確かつ簡潔に物事が伝えられます。よって意思疎通の時間が短縮でき、業務効率化にも有効です。またコミュニケーションの齟齬や誤解も防げ、トラブルやクレームが起きにくくなるメリットもあります。
円滑なコミュニケーションは生産性向上に不可欠。語彙力のある人が集まればそれだけ業務の質も向上するでしょう。
②相手の話が理解しやすくなる
相手の話の要点をつかみ、自分に何を求めているのかを想像しながらコミュニケーションが図れます。また、相手が伝えたいことの本質を見極められるため、自然と求められている回答や対応ができるようになるのです。
さらに、理解力が高まるために学習効率も上昇し、自分の成長にもつながります。
③思考力が深まる
物事に対する思考力が深まるため、ひとつの物事から多角的に考えられます。こうした思考力は新しいアイデアや斬新は発想のひらめきにつながり、新しい価値を提供できる人材へと成長できるのです。
④よい人間関係を構築できる
語彙力があればネガティブなことでも婉曲に表現ができ、相手の気分を損ねず伝達可能です。
また、自分の感情を言語化できるために適切に対処もでき、感情的になるのも抑えられます。相手に誤解や不快感を与えずトラブルを回避できるのは、語彙力があるからこそできることです。
6.語彙力の鍛え方
語彙力を鍛える方法として有効なのは「インプット」と「アウトプット」。ここではふたつについて、具体的な語彙力の鍛え方を紹介します。
【インプット】語彙力の鍛え方
まず知っている言葉の量を増やし、その後質を上げることが必要です。使える言葉の数を増やすため、次のような方法でインプットすることから始めましょう。
- 多くの情報に触れる
- さまざまな人と会話する
- 研修や勉強会を設ける
①多くの情報に触れる
本や新聞など、さまざまなメディアに触れて新しい語彙をインプットする方法です。語彙力が増えると同時に、さまざまな表現法も習得できます。
とくに、本には多くの言葉が使われているため、インプットにおすすめです。ただし、特定の分野に絞るとその分野に詳しくなった際、インプットされる言葉が頭打ちになってしまいます。できるだけさまざまな分野の本を読んでみましょう。
読むことが苦手な人は、好きな分野の本からトライしてみてください。
②さまざまな人と会話する
同年代や同業界の人だけでなく、身近でない多種多様な人との会話から新しい語彙をインプットするのも有効な鍛え方です。
世代や業界、職種や価値観、ライフスタイルなど、さまざまな背景によって語彙も十人十色。多くの言葉・表現に触れれば、自分では思いつかない言い回しや言い換え、表現方法に出会えます。
どのような言葉がどのような場面でどう使われているかを意識し、言葉への感度を高めながら会話してみましょう。
③研修や勉強会を設ける
ビジネスにおける語彙力の重要性も意識づけながらインプットしたいときは、研修や勉強会が有効です。ビジネスの研修には、語彙力を高める講座も多くあります。
自社で行うか外部研修を活用するのかについては、研修にかけられる時間や費用、リソースから検討するとよいでしょう。
【アウトプット】語彙力の鍛え方
言葉の数を増やしたら、適切に使いこなす力を鍛えましょう。習得した言葉をうまく使いこなしてこそ、本当の意味で語彙力が高まったといえるもの。下記で、アウトプットによる語彙力の鍛え方を紹介します。
- 文章や日記を書く
- 実際に言葉を使ってみる
- いつもと違う言い換えを意識する
①文章や日記を書く
日記は語彙の質を上げるためのアウトプット、そしてテーマが明確である点でとくにオススメです。自分の行動や感情を言葉で振り返るため、言語化する力や表現力が鍛えられます。
日記に限らず「SNSやブログで発信する」「動画や音声メディアを活用して実際に話してみる」のもオススメのアウトプットです。
②実際に言葉を使ってみる
日常生活やビジネスの場で習得した新しい語彙を積極的に使う鍛え方もあります。会話はもちろん、メールや資料などのテキストでも実践可能です。
実際に使えば使うほど自分の言葉として定着し、自然に使いこなしていけます。まずは失敗を恐れず、頭を整理しながら新しい言葉や言い回し、表現を意識してコミュニケーションを図ってみましょう。
③いつもと違う言い換えを意識する
同じ言葉でも、語彙力が高ければ高いほど、さまざまな言い換えが可能です。まずはいつも使っている言葉を違う言葉や表現に言い換えることを意識して、会話してみましょう。
その際「指示語をなるべく使わない」「曖昧な表現を使わないよう」意識するのも大切です。
7.語彙力を鍛えるのに役立つ本
書籍は語彙力を鍛える際にオススメの手法です。語彙力に関する書籍も多くあるため、まずは語彙力に関する書籍から語彙力への理解を深めつつ、スキルを高めてみてください。
- 大人の語彙力ノート 誰からも「できる! 」と思われる
- 大人の語彙力が使える順できちんと身につく本
- 博報堂スピーチライターが教える5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本
①大人の語彙力ノート 誰からも「できる! 」と思われる
語彙に関する書籍を多く出版している教育学者 齋藤孝氏による『大人の語彙力ノート 誰からも「できる! 」と思われる』は、45万部突破のベストセラーを誇る書籍です。
シチュエーション別かつさまざまな言い換えから語彙力が高まり、実践的な語彙力を習得できます。「いつも同じ言葉が続いてしまう」「抽象的な表現を使いがちで言葉が足りない」と感じている方にオススメです。
参考 大人の語彙力ノート 誰からも「できる! 」と思われるAmazon②大人の語彙力が使える順できちんと身につく本
国語講師の吉田裕子氏による『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』です。
言葉の意味だけでなく、使用シーンや言葉の成り立ちも学びながら語彙の質を高めつつ、語彙力を鍛えられます。「言葉の引き出しを増やしたい」「普段の会話からビジネスシーン、手紙やメールさまざまな場面で使える言葉を増やしたい」方にオススメです。
参考 大人の語彙力が使える順できちんと身につく本Amazon③博報堂スピーチライターが教える5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本
スピーチライター・コラムニスト ひきたよしあき氏による『博報堂スピーチライターが教える5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本 』です。
企画書やプレゼン、交渉などあらゆるビジネスシーンで活用できる語彙が鍛えられます。「自分の思いを言葉で表現するのが苦手」「語彙力を高めて堂々とした自分に変わりたい」という方にオススメです。
参考 博報堂スピーチライターが教える 5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本Amazon8.語彙力を鍛えるアプリ・ゲーム
アプリやゲームなら、スキマ時間で手軽に語彙力を鍛えられます。下記で、語彙力を鍛えるのにオススメのアプリ・ゲームを紹介します。
- 大人の語彙力検定【iPhone】
- 毎日10問!語彙力アップクイズ600問【iPhone】
- 知らないと恥ずかしい大人の語彙力【Android】
- 語彙力クイズ【Android】
①大人の語彙力検定【iPhone】
全80問の演習問題と全10問のテストを繰り返して、語彙力のインプット・アウトプットができるアプリです。演習問題は初級と上級にわかれているため、レベルに合わせて学習できます。
「会話のなかでとっさに言葉が出てこない」「ワンランク上のカタカナ語を習得したい」方にオススメです。
②毎日10問!語彙力アップクイズ600問【iPhone】
ゲーム感覚で、手軽に語彙力を高められるアプリです。10問ずつのクイズ形式によるトレーニングであるため、スキマ時間でコツコツ続けられるでしょう。
知っているけどうまく説明できない言葉や正確に知らない言葉を意味も理解したうえでしっかりインプットできます。
一覧・検索機能や単語帳機能もあるため、言葉の意味をしっかりと理解しながら語彙力を定着させたい方にオススメです。
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