職場コミュニケーションは「業務を円滑に進める」「良好な人間関係を構築する」「エンゲージメント向上」「離職率の低下」など、さまざまな観点から重要度の高いもの。
しかし、職場コミュニケーションは課題を抱えやすい部分でもあり、改善のためにどうすればよいかわからないといった企業も少なくありません。
今回は職場コミュニケーションを改善する方法について、職場コミュニケーションが重要な理由やメリット、コミュニケーションがうまくいかない理由、具体的な取り組み事例や改善のポイントなどを解説します。
目次
1.職場コミュニケーションが重要な理由
職場コミュニケーションが重要となる最大の理由は、働きやすさが向上するから。
職場コミュニケーションがうまくいかないと、問題解決が遅れたりうまく連携できなかったりなど、さまざまな障害が予想されます。上司や先輩、ほか部署の社員など、業務上でかかわる人が多いほど、職場コミュニケーションの重要度は高いでしょう。
職場コミュニケーションの現状
2022年にHR総研が実施したアンケート調査によると、職場コミュニケーションに課題があると感じた企業は、全体の7割以上でした。
職場コミュニケーションの不足による業務における具体的な障害として挙げられたのは「迅速な情報共有」「部門間・事業所間の連携」「部署内のチームビルディング」など。
職場コミュニケーションの不足は業務に支障が出るだけでなく、社員のエンゲージメントやモチベーションの低下にもつながってしまいます。そうした環境で社員の離職が活発になってしまっては、企業力の低下も招きかねません。
近年、リモートワークの普及により、これまでよりも職場コミュニケーションの不足が顕在化している企業も多いです。そうした時代の変化もふまえ、企業には従来とは違ったコミュニケーション活性化の施策が求められています。
参考 HR総研:社内コミュニケーションに関するアンケート2022HRプロ2.職場コミュニケーションを活性化するメリット
職場コミュニケーションの活性化は、社内の一体感向上や業務効率化にもつながるなど、さまざまなメリットがあります。ここでは、職場コミュニケーションを活性化する5つのメリットを詳しくみていきましょう。
- 生産性が向上
- 新たなアイディアの創出
- 優秀な人材の確保
- エンゲージメントの増加
- 業務ミスの減少
①生産性が向上
各担当や部署間で活発にコミュニケーションが取れていれば、相互連携がスムーズになり、業務におけるムラやムダも減って、組織全体の生産性向上が期待できます。
またコミュニケーションの活性化により、ほか部署や社員からアイディアが得られ、自分自身の業務改善や課題解決のヒントになる可能性もあります。
②新たなアイディアの創出
日頃からコミュニケーションが活発な職場では、さまざまな意見やアイディアから視野が広がり、新たなアイディア創出の活性化にも効果的です。
職場コミュニケーションが活発なため誰もが発言しやすい環境が構築できます。また、意見やアイディア交換が活発になるため、ひとつの課題に対して幅広い視野を持って取り組めるのです。
くわえて、社員も主体的に行動できるようになり、お互いがよい影響を与えながらよいアイディアや気づきが得られるようになるでしょう。
③優秀な人材の確保
職場コミュニケーションが活性化しているほど、仕事への満足度や企業への愛着が高まり、離職率の低下に有効です。離職率の低い企業は求職者に対してもよいアピールポイントとなり、結果的に優秀な人材を確保できるといったよい流れを生み出します。
求職者にとって離職の高い企業はリスクと判断される恐れもあるため、離職率に課題がある場合は職場コミュニケーションの活性化に注力してみましょう。
④エンゲージメントの増加
職場コミュニケーションの活性化は離職率の低下にくわえて、社員のエンゲージメントも高まります。発言しやすい雰囲気が確立されているため、社員が率先的に発言や提案をするなど主体的に行動できるようになるのです。
社員が目標達成に向けて自発的に貢献できるようになり、業績への大きなプラスの影響にも期待できます。
⑤業務ミスの減少
情報を受け取った側と伝えた側の解釈の異なりによる業務ミスは、職場コミュニケーションの不足が原因のひとつです。こうした状況は業務効率や品質の低下につながるだけでなく、社員同士の関係悪化も招いてしまうでしょう。
職場コミュニケーションが活性化し、気軽に話せる環境が整っていれば、コミュニケーション不足が原因の業務ミスが減少し、業務がスムーズに進みます。
くわえて社員同士の関係も良好になり、万が一ミスが発生しても協力して助け合う風潮が生まれ、スムーズに問題を解決することが可能です。
3.職場コミュニケーションがうまくいかない理由
職場コミュニケーションがうまくいかない理由は、社員全体の雰囲気やコミュニケーションを行うための情報共有環境が整っていないなどさまざまです。
下記でご紹介する職場コミュニケーションがうまくいかない理由から、自社に該当するものがあるかを考えてみましょう。
- 経営方針の浸透不足
- 交流しにくい雰囲気
- 交流機会の不足
- 職場の縦割り意識
- 情報共有の手段
①経営方針の浸透不足
経営層が職場のコミュニケーションを活性化したいと思っていても、現場にその重要性が認識されていないと変われません。
その原因は経営方針の浸透不足にあります。経営層の考え方や経営方針など、企業と社員が双方的にコミュニケーションが取れるようなベース作りが必要です。
②交流しにくい雰囲気
業務に関係のある会話だけでなく、何気ない会話ができる雰囲気があるかも重要です。雑談がしにくい雰囲気では、業務上のコミュニケーションも気軽に取れなくなってしまう恐れがあります。
何気ない会話ができるといった、交流しやすい雰囲気は心理的安全性を高めるためにも有効です。
③交流機会の不足
そもそも、直接会話する機会が少ないと職場コミュニケーションも活性化しません。「社員同士がかかわる機会が少ない」「経営層からの一方通行な発信しかない」などでは、会話は生まれないでしょう。
また、ほか部署や拠点とかかわる機会が少ないと、企業全体としてもコミュニケーションも不足してしまいます。
④職場の縦割り意識
職場の縦割り意識が強いとほか部署とのコミュニケーション機会が生まれず、必要な時にスムーズに連携が取れない可能性もあります。これでは業務に支障をきたしてしまうでしょう。
企業全体の雰囲気も悪くなってしまうため、部署間・事業所間でのコミュニケーション機会を創出することが大切です。
⑤情報共有の手段
「口頭の指示が多くログが残らないため細かいコミュニケーションが疎かになっている」「使用しているコミュニケーションツールに問題がある」など、情報共有の手段に原因がある可能性も考えられます。
スムーズな職場コミュニケーションを実現するためには、適切なコミュニケーションツールの導入やルールの明確化など、情報共有の手段を整備することが必要です。
4.職場コミュニケーションを改善する取り組みの具体例
職場コミュニケーションを改善する際はまず、現状の課題を特定しましょう。下記で、課題に合わせた職場コミュニケーションの改善策の具体例をご紹介します。
- 1on1ミーティングの実施
- 社内イベントの開催
- 社内報の配布
- シャッフル形式のランチ
- 社内SNSの導入
- フリーアドレスの導入
①1on1ミーティングの実施
1on1とは、上司と部下が1対1で定期的に行う面談のこと。意識的にコミュニケーションを増やすのが難しい場合、定期的に面談できる1on1なら必然的にコミュニケーションの機会が生まれます。
上司が部下の悩みや現状を把握できるため、モチベーション向上や早期ケアに取り組めるのです。部下のエンゲージメント向上やマネジメントの観点からも効果的でしょう。
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②社内イベントの開催
組織内でなかなかコミュニケーションの機会が作れないときは、社内イベントの開催がオススメです。社内イベントでは業務上でかかわらない社員と話す機会ができたり、職場に一体感が生まれたりするため、モチベーション向上にもつながります。
③社内報の配布
経営方針の浸透不足に課題を感じている場合、オススメの取り組みが社内報です。社内の出来事や連絡事項、経営層の考えや方針を広く発信できる社内報は、会社や社員のことを深く知るきっかけとなります。
規模が大きい組織ほど経営層や社員同士のつながりが薄くなりがちです。社内報がコミュニケーションのベースとなってくれるでしょう。
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④シャッフル形式のランチ
シャッフル形式のランチにより、ほかの部門やチームの人たちとの交流機会をつくるのも有効な改善策です。シャッフル形式のランチとは、職場のコミュニケーション向上を目的に、普段かかわりが少ない社員とランチする機会を設ける企画のこと。
業務外のカジュアルな場でかかわることでお互いのことを深く知っていけたり、自分のキャリアについて考えたりするきっかけができるなど、さまざまな効果が期待できます。
⑤社内SNSの導入
社内SNSは社内報のように社内のさまざまな情報を手軽に発信できるほか、グループ間で情報共有できるなど活用方法もさまざまです。
社内や社員について気軽に知っていけるほか、部署の垣根を超えてノウハウや業務内容を共有できるなど学びの場としても役立ちます。
導入の際は目的を明確化したうえで周知し、投稿頻度や内容などルールを設定しましょう。
⑥フリーアドレスの導入
「社内をオープンな雰囲気に変えたい」「コミュニケーションを活発にしたい」場合にオススメなのが、社員の座席を固定しないフリーアドレス制度です。
毎日違う座席で仕事するためさまざまな社員とコミュニケーションを取れるほか、日々新鮮な気持ちで業務に取り組めるなど生産性の面でもメリットが期待できます。
5.職場コミュニケーションの苦手を克服する方法
なかには、コミュニケーションが苦手な人もいるでしょう。コミュニケーションの苦手を克服してもらうには、話し手が相手を意識した双方向的なコミュニケーションを取ることが大切です。
相手の気持ちを察しながら寄り添って会話すると、コミュニケーションが苦手な人でも安心して向き合ってくれるでしょう。ここでは、コミュニケーションの苦手を克服してもらう3つの方法をお伝えします。
- 肯定的な発言を意識
- 相手の話題に着目
- 結論から話すことを意識
①肯定的な発言を意識
まず大切なのは、相手の発言に対して肯定的な受け止め方をすること。発言に対して拒絶や否定、非難がみられるとコミュニケーション意欲が低下してしまうばかりか、業務上必要なコミュニケーションも停滞してしまいます。
コミュニケーションを取ってくれる姿勢を崩さないためにも、一旦受け止める発言を癖づけて相手が話しやすい雰囲気を確立しましょう。
②相手の話題に着目
話し手に対して、興味関心の態度を示すことがコミュニケーションの苦手を克服するためにも重要です。相手に興味関心の姿勢が見られないと、話し手も会話する意欲が低下してしまいます。
話しやすい雰囲気を作るためにも、適度に相槌を打ったり、質問したりして相手に関心を持っている姿勢を伝えましょう。
③結論から話すことを意識
結論から話して相手に要点をわかりやすく伝えるのもポイントです。結論を後回しにしてしまうと、結局何を伝えたかったのか疑問が残ってしまう恐れがあります。相手が話を理解しやすいよう、結論から話して会話しやすい流れをつくりましょう。
結論から話す意識づけは営業やプレゼンなどさまざまなビジネスシーンで活用できます。業務効率や成果、コミュニケーションスキルの向上にも効果的です。
6.職場コミュニケーションを改善するポイント
ここでは、職場コミュニケーションの改善を図る際のポイントをお伝えします。
- コミュニケーションの課題を発掘する
- 社員の適性に合わせて実践する
- 立場が上の人から積極的に実行する
①コミュニケーションの課題を発掘する
まずは、職場コミュニケーションのどの点に課題があるのかを明確にしましょう。
たとえば、
- 風とおしが悪いと感じる場合は縦のコミュニケーションに着目してみる
- 業務自体に会話が少ない場合は部署間や同僚の横のコミュニケーションに課題を疑う
さまざまな観点から課題と要因を分析しましょう。課題が見えないことには、適切かつ効果的な改善策も検討できません。
②社員の適性に合わせて実践する
なかには、コミュニケーションが苦手な内向的な人もいるでしょう。職場コミュニケーションの改善を急ぐあまり、そうした社員への配慮を欠いた取り組みを推し進めてはいけません。
そうした取り組みがストレスとなり、最悪のケースでは離職につながる恐れもあります。
人によってコミュニケーションの取り方や他者との距離感は異なるため、社員の個性や価値観、ライフスタイルに配慮して多角的に取り組みましょう。
③立場が上の人から積極的に実行する
職場コミュニケーションに限らず、組織の課題を解決するには上からの積極的な行動が重要です。しかし立場が上の人ほど慌ただしく、社員が話しかけるのにためらいを感じてしまうケースも少なくありません。
実際に慌ただしく、周囲が話しかけにくいと思っているかもと感じたら、自ら積極的に話しかける機会を持ってみるとよいでしょう。
7.職場コミュニケーション活性化の事例
ここでは、実際に行われている職場コミュニケーション活性化の事例を3社からご紹介します。
- サイバーエージェント
- ぐるなび
- ヤフー
①サイバーエージェント
サイバーエージェントでは、コミュニケーション活性化の取り組みとして「月イチ面談」を実施。面談では「先月の成果に対する振り返り」「今月の方針」「中長期のキャリア」の3点を議論します。
上司と部下が定期的に密度のあるコミュニケーションを取ることで成果に対する合意ができ、何に注力すべきかが明確になりました。結果、突然のびっくり退職も低下したそうです。
②ぐるなび
ぐるなびでは「ウォーキングミーティング」といったユニークな取り組みを継続。きっかけは、当時会長兼企画開発本部長だった滝久雄氏(現取締役会長兼社長)が趣味で始めたウォーキングを三日坊主にしないため、話し相手を誘って歩き始めたことです。
業務外かつ屋外のオープンな空間がリラックス効果を生み出し、社員がのびのびと話せるだけでなく運動不足の解消にもつながりました。また、こうした環境でのコミュニケーションからアイディアが生まれるといったさまざまな面で、効果を見せています。
③ヤフー
ヤフーは、今後の企業成長のために社員の能力を最大化する必要性を感じ、「部下の才能と情熱を解き放つ」という人材育成コンセプトを設定。その一環として、1on1を実施しています。
その背景には「上司が部下の考えていることを把握しきれない」「年上の部下に対する接し方がわからない」といった課題がありました。
元は人事部の主導で始まったプロジェクトだったものの、管理職が行う1on1のスキルやフォーマットに磨きをかけたことで徐々に組織文化として浸透。現在では約6,000人の社員が「1on1」を実施しているとのことです。