組織社会化とは、新たに所属した組織に適応するまでのプロセスのことです。定義やメリット、4つの施策例などを解説します。
目次
1.組織社会化とは?
組織社会化とは、組織に新しく入った人員がその組織に馴染んで適応するまでの過程(プロセス)のこと。新入社員といった新規参入した人は、組織の一員として目標達成に向けた役割を担います。
しかしその前に組織内の価値観や規範、ルールなどを受け入れなければなりません。そのうえで必要な知識やスキルを身につけていくことが求められます。新たな組織に所属する場合、この組織社会化のプロセスは避けられないと考えられているのです。
2.組織社会化の定義
組織社会化の定義は、時代や研究者によって変化が見られるものの、おおよそ次のような過程を指しています。
「組織へ新規参入した者が所属組織の模範や価値感、行動様式や人間関係などを受け入れ、 職務に必要な知識やスキルを習得し、組織に適応していく過程」
社会化とは、社会の秩序を受け入れ、その秩序を乱さない一構成員となる過程です。組織社会化も同様に、その組織特有の規範や価値観などを受け入れることから始まります。
所属組織が変われば、新たな組織のルールや価値観があるため、中途採用であっても組織社会化のプロセスが発生するのです。
3.組織社会化が必要な場面
企業などにおいて組織社会化が必要になる場面は、新規採用や異動、組織変更などです。これらの場面で意識して組織社会化に取り組むと、離職率の低下や、パフォーマンスの向上などにつながります。
新卒や中途採用者、新入社員の入社時
組織社会化が必要となる典型例として、社員の新規採用時が挙げられます。長く働き続けてもらうためには、まず自社の価値観やルールなどに適応してもらわなければなりません。
「わからなくて当然」というスタンスで、新人教育やオリエンテーションのなかで価値観や規範を言語化して伝えると効果的です。
組織社会化が順調に進んでいる新入社員は自社への帰属意識が高まっていき、熱意を持って集中して仕事に取り組むようになります。
異動や組織変更時
人事異動で新しい部署に移った社員に対しても、組織社会化が必要になる場面があります。
複数の部署を設けている企業では、最終的な目標は共通しているものの、部署ごとに求められる役割は異なるもの。部署によって重要視されるポイントが異なったり、独自のルールがあったりするのも珍しくありません。
そのため人事異動で別部署へ配置された社員は、新たな部署の価値観やルールなどに適応するだけでなく、ときには前の部署で身につけた価値観やルールなどを変える、あるいは破却する必要があります。
異動してきた社員と受け入れ側の社員が業務に取り組む際は、双方の価値観やルールを確認し、それらが組織で共通するものであるか、それとも部署独自のものかを明確にしておくべきです。
また組織再編で部署の統合や新設が行われた際は、企業全体のルールを踏まえながら部署独自のルールを策定する必要があります。これも組織社会化の一環です。
4.組織社会化を促進する4つの施策
組織社会化を促す主な要素として、下記の4つが挙げられます。社会化を促進する4つの施策と、効果的に伝えていく方法について説明しましょう。
- 人脈の学習
- 学習棄却(アンラーニング)
- 評価基準・役割の理解
- 知識・スキルの獲得
①人脈の学習
組織社会化を円滑に進めるためには、人脈の学習が欠かせません。具体的にいうと困ったときに相談できる相手を知ることです。
施策としては「メンター制度(先輩社員がフォローを行う制度)」の導入が挙げられます。メンターは仕事のみならずプライベートの相談も受け、アドバイスを行います。
このように相談役が明確になっていると、新規参入した社員の不安が軽減され、組織への適応を促進できるのです。
②学習棄却(アンラーニング)
学生時代や前職などでの組織社会化が強かった人は、新しい組織に馴染めないことがあります。前の組織のやり方が染みついていたり、前の組織と比べたりするためです。
このような傾向が見られた場合は過去の経験をとおして現在の組織を見るのでなく、今いる組織そのものを見るように意識を改革したほうがよいでしょう。
このとき有効な施策が「学習棄却」(アンラーニング)です。具体的には、1on1ミーティングやフィードバックをとおして本人に内省を促して気づきを与え、過去に得た考えや価値観を取捨選択させます。
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③評価基準・役割の理解
新しく所属した組織の評価基準を理解させるのも、組織社会化において重要でしょう。自分が求められている役割と役割を果たした際に受ける評価がわかり、評価基準を満たすためにやるべきことを自分で考えられるようになるからです。
施策では、評価基準の明確化および組織内での役割との紐づけを行うことが挙げられます。また企業内でのキャリアパスを明示すると、自分の将来や次の目標が明確になり、自分に求められる立場や役割への理解がさらに深まるでしょう。
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④知識・スキルの獲得
新しく所属した組織で業務遂行に必要な知識やスキルの習得を促進する必要があります。主な施策は、教育や学習の機会を設けること。新規参入者が多い場合、一斉研修を実施すると、組織全体の価値観や規範などを効率的に浸透させられます。
ただし各部署における価値観や規範などは、一斉研修では対応しにくいもの。このような場合はOJT研修やメンター制度を活用すると、各部署での社会組織化を進めやすくなります。
5.組織社会化の注意点
組織社会化を進める際、新規参入する社員を迎える側が注意すべき点がいくつかあります。たとえば自分たちも気づいていないルールの把握や、テレワークでのコミュニケーション、教育に向けた体制や環境づくりなどです。
- 暗黙のルールを認識
- テレワークによるトラブル
- 必要なスキルが身につく環境作り
①暗黙のルールを認識
長く存在する組織で「暗黙のルール」ができる場合もあります。既存社員も無意識で運用していることも多く、マニュアル化されていないことも少なくありません。このような暗黙のルールを新規参入した社員が把握するのは、困難です。
組織社会化をスムーズに進めるには、暗黙のルールを言語化したうえで、理解してもらう必要があります。まず「自分たちの組織に、暗黙のルールがあるのではないか」と疑う気持ちを持って、暗黙のルールを探す作業から始めましょう。
②テレワークによるトラブル
コミュニケーションが希薄になりやすいテレワークでは、トラブルを見逃す恐れがある点に注意が必要です。
対面のコミュニケーションなら、既存社員が新規参入した社員の「困っているしぐさ」「戸惑っている表情」などを観察でき、早期にミスやトラブルに気づけます。新規参入した社員も、その場にいる周りの人へ気軽に尋ねられるのです。
しかし相手の姿を観察できないテレワークでは、双方が気軽に声をかけにくい状況となります。テレワークを導入している場合は、連絡や相談をしやすい環境を整えるために、チャットツールの活用や定期面談などを活用しましょう。
③必要なスキルが身につく環境作り
新規参入した社員は、業務遂行に必要な能力やスキルを身につける必要があるため、教育環境を整備しておきましょう。これらの習得には、OJT研修とOff-JT研修が効果的です。
- OJT(On The Job Training):仕事をしながら受けるトレーニング
- Off-JT(Off The Job Training):業務から離れて研修や座学で受けるトレーニング
そのためOJT研修は、業務上のルールや顧客との対応など現場で必要となる知識やスキルの習得に適しているのです。一方、Off-JT研修は、組織全体で共通する知識やスキルの習得に向いています。
これら2種類をうまく組み合わせた教育計画を策定しておくと、組織社会化を促進できるでしょう。
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