ADDIEモデルとは?【教育への生かし方をわかりやすく】

ADDIEモデルとは、教育を効率的に行うためのフレームワークのひとつです。ADDIEモデルの特徴、メリット・デメリット、ADDIEモデルを教育に生かすポイントなどを解説します。

1.ADDIEモデルとは?

ADDIEモデルとは、教育や訓練の設計と実施を効果的に行うフレームワークのこと。教育の質の統一や質の高い教育が継続できる等のメリットがあります。分析(Analysis)、設計(Design)、開発(Development)、実施(Implementation)、評価(Evaluation)の頭文字を取って、ADDIEモデルと呼びます。

読み方

ADDIEの読み方は「アディー」です。ADDIEモデルは、1970年代に米軍の兵士育成を目的として初めて使用され、のちに企業や教育機関などさまざまな分野で採用されるようになりました。

PDCAサイクルのように改善サイクルを繰り返す手法で、ADDIEの各フェーズでは、学習目標の設定や教材の開発、教育プログラムの実施、評価と改善などが行われます。

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インストラクショナルデザインとの関係

「教育設計」を意味するインストラクショナルデザインを実施する際に、ADDIEモデルを適用して教育プログラムを計画します。ビジネスの現場においては、社員が効率的に学習する方法を構築することを指すのです。

インストラクショナルデザインにおいて、具体的な教育計画や教材、手順などを定めることを「IDプロセス(教育開発プロセス)」と呼びます。

IDプロセスは「インストラクショナルデザインをどのように進めていくか」を明確にしたものであり、IDプロセスの代表的なモデルがADDIEモデルなのです。

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2.ADDIEモデルのプロセス

ADDIEモデルは、下記5つのステップで設計を進めていきます。それぞれのステップの意味合いや具体的な実施内容、また実施の際に注意すべきポイントを説明しましょう。

  1. 分析(Analysis)
  2. 設計(Design)
  3. 開発(Development)
  4. 実施(Implementation)
  5. 評価(Evaluation)

①分析(Analysis)

企業が抱える課題とその解決方法を見つけ出すプロセスです。「担当者がどのようなことに問題を感じているか」「問題が生じている背景は何か」「問題を解決するためには何をすべきか」などのヒアリングをとおして問題の背景や原因を明らかにし、解決策を導き出します。

このプロセスでは、企業が抱える本質的な課題の解決に焦点を当てているため、表面的な問題だけでなく、根本的な課題や背景を把握することが重要です。

②設計(Design)

分析によって課題や目標が明確になったら、次に行うのは設計(Design)です。実施する研修内容やスケジュール、タイムテーブル、ゴール地点などを具体的に計画していきます。

企画設計者と講師が異なる場合は、企画設計者の意図を講師が正しく理解できるように設計資料を用意しましょう。

また設計フェーズでは、評価(Evaluation)のフェーズで使用するアンケートやテストなども作成しておきます。研修の効果や成果を客観的に評価し、改善やフィードバックを行うためです。

③開発(Development)

設計によって決定した内容をもとにして研修の準備を進めるプロセスです。研修で使用する教材(資料やワークシートなど)の作成や会場・講師の手配、機材の準備やeラーニングの導入など、研修のための準備を行います。

開発プロセスでは、事前準備のブラッシュアップを何度も行うことが重要です。教材や資料の内容やレイアウト、会場の設営や機材の動作確認など、細かなチェックを入念に行いましょう。

また事前にリハーサルを実施すると、問題や不備を事前に洗い出せるため、失敗やトラブルのリスクを減らせます。

④実施(Implementation)

事前準備が整ったら、実際に研修を実施します。事前に決定した研修内容や企画を基本とし、必要に応じて受講者のサポートを行いながら研修を進めましょう。サポート内容は、研修のお知らせの通知や受講状況の把握、教材・システムの使い方の指導、トラブル対応などです。

また実施プロセスでは、講師や受講者からさまざまなデータを取得できます。受講者の進捗や理解度の確認、研修の満足度や効果の評価など、運用時に必要なデータを収集しておきましょう。

⑤評価(Evaluation)

事前の決定した評価方法に沿って研修の目的を達成できたかどうかを評価するプロセスです。設計段階で用意したアンケートやテストなどの評価ツールを使用して、受講者の学習成果や研修の効果を評価します。

また受講者のフィードバックなどをもとに、研修のよい点や改善点を把握していくのもよいでしょう。

これらのデータをもとに今後実施する教育内容の見直しを行い、何度もブラッシュアップしていくのがADDIEモデルの基本です。そのため評価フェーズで終了したのちは、分析プロセスへ戻って再度プロセスを繰り返します。

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3.ADDIEモデルのメリット

ADDIEモデルのメリットは、教育内容を統一でき、質の高い教育を継続的に実施できること。それぞれについて解説します。

教育内容や質の統一

教育の内容や質を統一し、教育担当者の経験だけに頼らずに効果的な研修を行えます。教育の内容や手順、使用する教材などが明確に決まっているため、異なる教育担当者やチームが関与する場合でも一貫性のある教育を提供できるのです。

また分析や設計の段階で指導者や学習者の声を取り入れることで、現場の要望やニーズに即した教育を実現できます。現場に適した教育を提供すると、業務効率や成果、社員のモチベーション向上などにもつながるでしょう。

良質な教育の継続

「分析(Analysis)」「設計(Design)」「開発(Development)」「実施(Implementation)」「評価(Evaluation)」の5プロセスを繰り返し行うため、質の高い教育を継続して実施できます。

実施後の評価プロセスで評価の結果が判明するため、評価結果をもとに教育の改善点や課題を特定でき、改善策を講じられるのです。前回の改善策を次回の教育計画に反映させるサイクルを回し続けると、教育の品質や効果を継続的に向上させることが可能です。

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4.ADDIEモデルのデメリット

ADDIEモデルのデメリットとしては、コストがかかりやすい点、サイクルを崩すことで研修が失敗しやすくなる点などが挙げられます。

余分なコストが発生する可能性

ADDIEモデルの構築では、教材や会場、講師の手配など、一定のリソースや人的コストが必要です。参加者が限られるとさらにコスト効率が低下する可能性もあります。

またADDIEモデルのフレームワークを改善する際、質の向上にこだわりすぎると、さらに時間とコストがかかるでしょう。コストと効率性を最適化しながら、教育の品質向上に取り組むことが重要です。

サイクルを崩すと失敗

各プロセスは互いに関連し合っているため、サイクルを崩すと教育の効果が下がる恐れもあります。研修の実施だけに焦点を当てて、事前の分析や設計を怠ってしまうと、教育の目的やニーズが明確にならず、効果的な研修内容が設計できません。

ADDIEモデルを成功させるためには、プロセスを順番どおりに進めて、サイクルを繰り返すことが重要です。

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5.ADDIEモデルを教育に生かすポイント

ADDIEモデルを実施する際の重要なポイントは、プロセスの順番どおりにサイクルを繰り返すことです。しかしほかにもいくつかのポイントがあります。ADDIEモデルを教育に生かすポイントを説明しましょう。

  1. 教育の必要性を確認
  2. 解決可能な範囲の明確化
  3. 現場の声を含有
  4. スピーディーなサイクル
  5. 継続的な改善

①教育の必要性を確認

ADDIEモデルを構築する際、「本当に教育の必要があるかどうか」を見極めることが大切です。

研修やセミナーといった教育は、課題解決のためのひとつの手段であり、課題の内容によっては教育とは違ったアプローチのほうが有効な場合もあります。また同じ教育でも、ADDIEモデルよりもOJTといったほかの教育方法が効率的であるケースもあるのです。

このように教育を行うべきか否か、教育の仕方が適切かどうかを分析の段階でしっかりと検討するとよいでしょう。

②解決可能な範囲の明確化

研修やセミナーの実施前に、これらの教育でどの程度の問題を解決できるのかを明確にしておきましょう。教育の内容と学習者の期待や理解にズレが生じにくくなるからです。

特定の問題に焦点を当てた研修内容であるにもかかわらず、「この研修ですべての問題が解決できる」と誤った期待を抱かせてしまうと、学習者から不満やクレームが出る可能性もあります。

事前に学習者に対して「研修で解決できる範囲はここまでです」と明確に伝えることが必要です。

③現場の声を含有

現場の専門家や関係者の声を積極的に取り入れることが重要です。管理職や営業担当者など、現場の状況を詳しく把握している人々の意見やニーズを取り入れると、より現実的で実践的な教育内容を構築できます。

教育担当者や人事担当者だけでADDIEモデルを構築すると、現場のニーズや課題が見過ごされたり、実際の教育との乖離が生じたりする可能性もあります。現場の人々へのヒアリングを通じて客観的な情報を収集し、それを教育の設計に反映させましょう。

④スピーディーなサイクル

ADDIEモデルを効果的に進める際は、初めから完璧を求めず、サイクルをスピーディーに回しましょう。

分析や設計、開発などのフェーズでは質を高めるために時間をかけてしまいがちです。しかし早くサイクルを回すほど短期間で改善を行えるため、教育の質と効果を早期に向上できます。

長い期間が経過すると現場の状況やニーズが変化する可能性もあります。状況の変化に迅速に対応するためにも、実施までの時間をできるだけ短くすることが重要です。

⑤継続的な改善

目標の達成と受講者のニーズを満たすため、教育の実施後も継続的に改善を行って効果的な教育を追求していくことがポイントです。

たとえば研修を実施したら、研修の目的や期待される成果と比較して、実際にどの程度目標が達成されたのか、客観的に判断します。さらに受講者からの意見や要望を収集し、教育の満足度や効果についての情報を取得するのです。

これらの評価とフィードバックをもとに、研修内容や教材、手順などを見直します。このような評価と改善を繰り返していくと、教育の効果や満足度を向上できるのです。

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6.ADDIEモデルが学べる本

ADDIEモデルを理解するために、書籍を活用する方法があります。ADDIEモデル構築に役立つ代表的な書籍を紹介しましょう。

インストラクショナルデザインの原理

インストラクショナルデザインの全体像を構造的に学習できる本です。インストラクションの「基本プロセス」「目標の定義」「設計」「学習方法」などが解説されており、ADDIEモデルについては第2章の「教育システムの設計」で詳しく書かれています。

参考 インストラクショナルデザインの原理Amazon

インストラクショナルデザインの道具箱101

インストラクショナルデザインを効果的に構築するためのアイデアが多数掲載されている本です。「学びたさ」「学びやすさ」「ムダのなさ」「いらつきのなさ」などを改善する方法が示されており、ADDIEモデルについては第4章の「わかりやすさ」の項目で詳しく書かれています。

参考 インストラクショナルデザインの道具箱101Amazon