コンフリクトとは、意見の対立や相反する要求がある状態のこと。コンフリクトの原因や影響、解消するためのマネジメント方法などについて解説します。
目次
1.コンフリクトとは?
コンフリクト(Conflict)とは、異なる意見や要求などがぶつかりあっている緊張状態のこと。もともと対立や衝突などを表す英単語です。
またそれぞれの意見や要求が異なるだけでなく、グループや組織同士がお互いの利害で対立している状態も含みます。また社内のみならず、社外の人との間にコンフリクトが発生する場合もあるのです。
2.コンフリクトが起こる原因
単純な意見の相違だけでなく、感情的な反発や価値観の違いなどがコンフリフトの発生要因となっている場合も少なくありません。コンフリクトが起こる原因について説明します。
- 条件の違いによる対立
- 価値観や認知の違いによる対立
- 感情の違いによる対立
①条件の違いによる対立
自社と取引先、あるいは本社と現場などの間でコンフリクトの原因になりやすいのが、品質やコスト、納期設定や優先順位などの条件でしょう。それぞれが置かれている立場や着目しているポイント、条件が違うため対立してしまうのです。
たとえば取引先から示された納期が厳しいときや、本社から大幅なコストカットの指示が出たときなどに、コンフリクトが生じやすくなります。
②価値観や認知の違いによる対立
営業と現場、あるいは上司と部下の間で生じやすいのが、価値観や認知の違いによるコンフリクト。同じ目標をもって仕事をしていても、職位や役割により業務のとらえ方が異なるからです。また双方の価値観や思考の違いからもコンフリクトが生じるでしょう。
ただし最終的な目標は一緒であるため、方向性を整理するとコンフリクトを抑えられることがあります。
③感情の違いによる対立
感情の行き違いにより発生するコンフリクトでは、誤解が解けると対立が解消する場合もあります。
しかしこじれてしまっている場合、慎重に対応しなければなりません。長期的なコンフリクトは複雑かつ深刻になりやすく、複数の感情が原因になっていることもあるからです。
このようなケースは、コンフリクトマネジメントによる問題解決が必要です。コンフリクトマネジメントについては後述します。
3.コンフリクトが組織におよぼす悪影響
コンフリクトは、大きく「生産的コンフリクト」と「破壊的コンフリクト」に分類できます。このうち破壊的コンフリクトは組織に悪影響をおよぼすため注意が必要です。
破壊的なコンフリクトは危険
生産的コンフリクトとは、目標達成につながる建設的な意見や価値観の対立のこと。生産的コンフリクトは、思考や視野の拡大、あるいは人間関係の構築や改善などよい効果につながる場合もあります。
一方破壊的コンフリクトは、目標達成の阻害につながる意見や価値観の対立です。破壊的コンフリクトは、組織の分裂や崩壊といったリスクがあるため、速やかに対応しなければなりません。
悪質な衝突をあおる従業員の存在
破壊的コンフリクトが進行する職場には、悪質な衝突や対立をあおる従業員「コンフリクトアントレプレナー」が存在する場合があります。
コンフリクトアントレプレナーは、従業員がお互いにエネルギーを奪い合う「ハイコンフリクト」の状態にしてしまう可能性も少なくありません。
コンフリクトアントレプレナーへの対処は難化しやすいため、専門家のアドバイスを取り入れるのも検討しましょう。
4.コンフリクトマネジメントとは?
コンフリクトマネジメントとは、コンフリクトを放置せずに、速やかに解消する取り組みや姿勢のこと。目的は、ただ目の前のコンフリクトを解消するだけでなく、コンフリクトの原因となる人間関係や職場環境を改善することです。
コンフリクトは抱えている問題が顕在化したものであり、問題解決のチャンスでもあるため、積極的にコンフリクトマネジメントへ取り組みましょう。
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5.コンフリクトマネジメントのメリット
コンフリクトマネジメントを行うと、生産性の向上や離職防止などさまざまなメリットが期待できます。ここでは4つのメリットを解説しましょう。
- 社員のモチベーション向上
- 生産性の向上
- 離職の防止
- 社内の風とおしをよくする
①社員のモチベーション向上
コンフリクトマネジメントでは双方の意見を深く聞いていくため、従業員は「何かあっても自分の意見をしっかり聞いてもらえる」と感じて仕事へのモチベーションが向上しやすくなります。
自分の意見を表明できた従業員は、「仕事をやらされている」という意識が弱まり、主体性が高まる可能性もあるのです。生産性が上がったり、成長が促進されたりする効果も期待できます。
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②生産性の向上
コンフリクトマネジメントで自由に意見を出せる職場が整うと、生産性が向上する可能性もあります。
コンフリクトマネジメントをとおして多様なアイデアを共有すると、新たな発見や創造から業務改善や事業の新設などが実現する場合もあるからです。
また一度コンフリクトを解決すると、次にコンフリクトが発生したときに迅速な対応が行えるようになります。コンフリクトを早期に解決するほど、生産性の維持や向上につながるでしょう。
③離職の防止
コンフリクトマネジメントで意見を言いやすい環境を作ると、人間関係に悩む従業員の離職を防ぐ効果が期待できます。
また従業員に「自分も意思決定にかかわっている」という意識が生まれ、「職場に貢献しよう」という気持ちや帰属意識が高まる可能性もあるのです。このような従業員エンゲージメントの向上も、離職防止にも役立つでしょう。
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④社内の風とおしをよくする
コンフリクトマネジメントの導入で意見を言いやすい雰囲気が醸成され、職場の風とおしがよくなる場合もあります。課題や問題が速やかに報告されるようになりますし、対立する意見であっても建設的に議論できるようになるからです。
有益な意見が集まりやすくなるため、組織目標の達成や、組織課題の解決を促進するでしょう。また風通しの良い職場は従業員の感情的なストレスを軽減するため、効率や生産性の向上も期待できます。
6.コンフリクトマネジメントを成功させるポイント
コンフリクトマネジメントが成功すると、さまざまな成果を得られます。コンフリクトマネジメントを成功へ導くポイントについて説明しましょう。
- マイナスの印象からプラスへ変化
- 反応5パターンを理解
- 管理職や上司が率先して実行
①マイナスの印象からプラスへ変化
コンフリクトマネジメントで、コンフリクトに対してポジティブなイメージを持たせます。
意見が対立している状態ではお互いにストレスを強く感じてしまうため、コンフリクトにはマイナスイメージがつきもの。しかしコンフリクトの解消が組織の成長や業務の改善につながると考えれば、前向きに取り組めるようになります。
とくにコンフリクトの当事者へポジティブなイメージを与えられると、建設的な解決を促進するでしょう。
②反応5パターンを理解
コンフリクトに直面したときに、人が取る反応パターンを知っておくと、コンフリクトマネジメントの方向性やアクションを決定しやすくなります。
反応パターンは、一方の意見だけが通る「強制」や「受容」、対立を避けようとする「妥協」や「回避」、対立から新たな着地点を見出す「協調」の5つです。それぞれの反応パターンについて説明します。
1:強制
力関係の強いほうが権力を利用して、高圧的に問題を解決する反応です。一方の意見のみが押し通されて対立が解消します。一見解消したように見えるものの、力関係の弱い一方の意見は押しつぶされたままであるため、再度コンフリクトが生じるかもしれません。
2:受容
双方が対等な力関係でも、一方が意見を撤回して相手の考えや意見を無条件で受け入れる反応です。こちらも丸く収まったように見えるでしょう。
しかし受容した側が「自分だけが我慢した」という感情を持ちやすいため、新たなコンフリクトをもたらす恐れもあります。
3:妥協
互いに譲り合いながらも、ある程度納得できる着地点を探している反応です。双方が自分の意見を我慢している状態であり、納得はしていません。根本的な解決はなされていないため、コンフリクトが再開する可能性があります。
4:回避
コンフリクト自体に向き合わず、問題解決を先送りにする反応です。既決には至らないものの、対立で感情的になった気持ちを落ち着かせるときには有効な手段です。またまったく別の代替案を用意して、対立を避ける場合も回避反応といえます。
5:協調
対立した当事者同士で新たな着地点を模索する反応で、もっとも理想的とされる対処です。お互いを否定せずに議論するため、発展的な解消方法を見つけられる可能性が高まります。
対立が解消されるだけでなく、信頼関係の構築や強化といった効果も期待できるのです。
③管理職や上司が率先して実行
管理職や上司などが率先してコンフリクトマネジメントへ取り組み、部下が意見を出しやすい雰囲気を作りましょう。管理職や上司がコンフリクトを避けると、部下も同じような反応を取りがちだからです。
コンフリクトが生じた際に、前向きな言葉で表現するのもポイント。部下もポジティブなイメージを持てるようになり、建設的な議論や意見交換につながります。
7.コンフリクトマネジメントのやり方
コンフリクトマネジメントでは、コンフリクトを発見したらすぐに論点整理を行い、必要に応じて第三者に仲介を依頼して解決策を探すための話し合いをします。コンフリクトマネジメントのやり方を解説しましょう。
コンフリクトへの対処が遅れると、対立にともなう負の感情や組織内のストレスが増大する恐れもあります。また長期化すると論点がずれていったり、別のコンフリクトに発展したりするかもしれません。
どちらかが一方的に譲ったり、押し通したりしてしまうと、コンフリクトの根本的な解消が見込めません。コンフリクトマネジメントの担当者は、対立している人達の感情を否定しないように注意が必要です。
第三者の選定には、コンフリクトの原因や、双方の反応パターンなどをよく知る人物を選ぶとよいでしょう。
お互いが今まで気がつかなかったような新たな解決策を見つけられる可能性もあるため、根気強く話し合いましょう。
またコンフリクトの解消で、生産性や利益が向上する可能性も。注意すべき点は、最適な解決方法を考案するために、「何が正しいのか」を見極めることです。