オーセンティックリーダーシップとは、自分の価値観・倫理観に従って、自分らしいリーダーシップを発揮すること。時代によって求められるリーダー像が変化するなか、現代ではオーセンティックリーダーシップが注目されています。
今回はオーセンティックリーダーシップについて、そのリーダー像や求められる特性、メリット・デメリットや高め方などを詳しく解説します。
目次
1.オーセンティックリーダーシップとは?
オーセンティックリーダーシップとは、自分の持つ価値観や信念に正直に従い、リーダーシップを発揮すること。
オーセンティック(authentic)とは、「本物」「真正の」「正真正銘の」といった意味を持ち、ここでは「自分らしさ」を意味します。つまり、オーセンティックリーダーシップは、誰かを複製したものでない、自分らしさを持ったリーダーシップともいえます。
オーセンティックリーダーシップは、米国メドトロニック社の元CEOであるビル・ジョージ氏が2003年に出版した「Authentic Leadership(日本版:ミッション・リーダーシップ)」により、その解釈や定義がアメリカを中心に普及しました。
どの時代においてもリーダーシップ像はさまざまあります。なかでもオーセンティックリーダーシップは自分の考えや価値観を根底にしたオリジナルのリーダーシップ像です。
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2.オーセンティックリーダーシップが注目される理由
オーセンティックリーダーシップが注目される理由は、予測不可能なVUCA時代に対応するためです。
VUCAとは「Volatility(不安定)」「Uncertainly(不確定)」「Complexity(複雑)」「Ambiguity(あいまい)」を意味する造語です。
現代は、急速な技術の発展や社会問題の深刻化・複雑化、社会構造の変化などにより、将来を予測するのが困難な状況にあります。その中でも先を見据えて変化に対応していく必要があり、そのためにはオーセンティックリーダーシップが重要視されています。
というのも、オーセンティックリーダーシップは柔軟性のあるリーダーシップであるため、変化に応じて柔軟に対応できるからです。
ニーズやライフスタイルなどさまざまな面が多様化するなか、必ずしもリーダーが正しいとはいえないケースが出てくるかもしれません。
従来のトップダウンによるリーダーシップに依存せず、オーセンティックリーダーシップによって「個」を発揮できれば、強みを活かして主体的に行動できる組織が構築され、変化にも柔軟に対応できるようになるのです。
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3.オーセンティックリーダーシップとサーバントリーダーシップの違い
サーバントリーダーシップとは、部下のニーズや利益の優先を重視する支援型のリーダーシップです。サーバント(servant)は、「召使」「使用人」を意味します。
オーセンティックリーダーシップとサーバントリーダーシップの主な違いは、アプローチ方法です。
オーセンティックリーダーシップは自分自身に対して、サーバントリーダーシップは部下など他人に注目してリーダーシップを発揮します。
また、オーセンティックリーダーシップは自分自身への理解を深めて自己成長していき、サーバントリーダーシップはほかの人を支援することをとおして自己成長していきます。
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4.オーセンティックリーダーシップに必要な5つの特性
オーセンティックリーダーシップを発揮するには、下記5つの特性が必要とされています。それぞれについて見ていきます。
- 自分なりの目的を明確に理解して行動する
- 外部に影響されず、自分自身の価値観や倫理観を信じて行動する
- 自分の価値観や倫理観をメンバーに共有し、真心を持って向き合う
- 周囲と継続的に良好な信頼関係を構築し、メンバー自らがついていきたいと思えるリーダーでい続ける
- リーダー自らが自分を律し、強い意志で学び続けたり、モチベーションを維持したりするためのセルフマネジメントができる
①自分自身の目的を明確に理解している
常にモチベーションを維持しながら高みを目指し、リーダーシップを発揮するのは、かんたんなことではありません。
モチベーションを維持し、情熱を持ってリーダーシップを発揮するためには、目指すべき目的が明確であることが必要です。リーダー以外の日々の業務の中でも、自らの目標や目的を十分に理解し、モチベーションを維持して情熱を忘れないことが求められます。
②外部に影響されず、自分自身の価値観や倫理観を信じて行動する
自分の価値観や倫理観がない、あるいは不確実であると他者に流されやすく、リーダーシップを発揮するうえでも迷いが生じ、メンバーもリーダーについていくのが不安になってしまうでしょう。
自分らしさを発揮するには、自分の価値観・倫理観が明確であることにくわえ、自分自身が忠実に従えることが重要です。リーダー自身が自信を持って自分に従えれば、メンバーもリーダーを信頼でき、自然についてくるようになります。
③自分の価値観や倫理観をメンバーに共有し、真心を持って向き合う
自分なりの価値観や倫理観に従ってリーダーシップを発揮するうえで、まずはそれらを部下に理解してもらう必要があります。そのためには、リーダーが主体的にメンバーを向き合い、本音を伝えて信頼関係を構築することが重要です。
真心を持って本音で向き合っていると感じてもらうためにも、ときには弱みを見せなければならないこともあります。
④周囲と継続的に良好な信頼関係を構築し、メンバー自らがついていきたいと思えるリーダーでい続ける
本音で向き合っていても、コミュニケーション量・頻度が少ないと信頼関係はなかなか生まれません。信頼関係はコミュニケーションがあってこそ構築されるものであり、リーダーシップを発揮するうえでの基本です。
積極的にコミュニケーションを取って、チームに活気をもたらしながら双方が主体的にサポートし合える関係性を構築することが求められます。
⑤リーダー自らが自分を律し、強い意志で学び続けたり、モチベーションを維持したりするためのセルフマネジメントができる
自分自身の価値観や倫理観を失わないためには、自分と他者の考えを区別して整理することが必要です。また、自分に甘く、メンバーに厳しいリーダーは信頼関係を構築することは難しいでしょう。
リーダーとして周りに認めてもらい、かつ信頼してもらうためにはセルフマネジメント能力が欠かせません。
5.オーセンティックリーダーシップのメリット
オーセンティックリーダーシップがもたらすメリットは、下記4つです。各メリットを詳しくみていきましょう。
- コミュニケーションの円滑化・活性化
- 従業員エンゲージメントの向上
- 多様な人材活用の促進
- コンプライアンスの強化
①コミュニケーションの円滑化・活性化
オーセンティックリーダーシップでは、周囲との信頼関係を大事にします。そのために積極的にコミュニケーションを行うため、必然的にコミュニケーションが円滑化・活性化されます。
コミュニケーションが活性化すれば、情報交換や意見・アイデア出しがスムーズかつ活発になり、イノベーションの創出にもつながるでしょう。
またリーダー自らが自分の考えを本音でメンバーに語るため、メンバーがリーダーに対して素直に発信しやすくなるだけでなく、信頼も獲得しやすくなります。
②従業員エンゲージメントの向上
真心と情熱を持って向き合うリーダーがいることで、従業員のエンゲージメント向上につながります。
オーセンティックリーダーシップではメンバーの個性も尊重するため、個性が発揮しやすい環境です。リーダーがメンバーの個性を否定せず、メンバーもリーダーに自分を認めてもらえていると実感できます。
自分を認めてくれる環境ではモチベーションも向上し、ついていきたいと思えるリーダーがいるためエンゲージメントも向上するのです。
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③多様な人材活用の促進
オーセンティックリーダーシップでは、リーダーが自分の弱みを伝えることが可能であり、リーダーの弱みをカバーするために多様な人材の活用が促進されます。
どのような企業でも、トップだけの力でビジネスを成功させるのは難しいもの。価値や利益を創造するのは、リーダーを信じてついてきてくれる従業員と従業員が持つ多様なスキルや個性です。
オーセンティックリーダーシップによって多様なスキルや個性が活用できる環境が構築され、企業は発展へ導かれるでしょう。
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④コンプライアンスの強化
自己を律して情熱を注ぐリーダーがいるため、コンプライアンスも強化されます。組織におけるリーダーのあり方は影響が大きく、リーダー次第で企業がよい方向に行くか、悪い方向に行くかが大きく左右されるもの。
オーセンティックリーダーシップなら、リーダーの明確な価値観や倫理観のもと、透明性のある経営が実現でき、コンプライアンス強化にも有効です。
6.オーセンティックリーダーシップのデメリット
魅力的なメリットが多く、優れたリーダーシップ像であるオーセンティックリーダーシップですが、下記のようなデメリットもあります。
- 成長意欲が弱まる
- 柔軟性に欠ける恐れも
①成長意欲が弱まる
リーダーが現状に満足してしまうと自己成長が頭打ちになり、成長意欲が低下または止まる可能性もあります。リーダーの成長意欲が低下すると、当然ながらメンバーの成長意欲ややる気も低下し、パフォーマンスも下がってしまうでしょう。
オーセンティックリーダーシップの特性はつねに学び続ける姿勢。よってそのスタイルを貫き続けることが重要です。現状に満足せず、つねに目的・目標を設定しながら自己を高める努力を忘れないことが大切でしょう。
②柔軟性に欠ける恐れも
「リーダーが自分の考えを優先したいあまり、メンバーの意見を聞き入れない」のように融通が利かなくなる恐れもあります。自分らしさを出すことがオーセンティックリーダーシップのあり方ではあるものの、その塩梅が重要です。
自分らしさを重視するあまり、メンバーが離れてしまっては本末転倒でしょう。オーセンティックリーダーシップに限らず、リーダーシップはメンバーとの信頼関係があってこそ発揮されるもの。
自分のこだわりが強すぎる・捨てきれないあまりに、柔軟性を失わないよう注意しましょう。
7.オーセンティックリーダーシップの高め方
オーセンティックリーダーシップを高めるには、下記が重要です。
- 自己認識力を高める
- 価値観を体現するために行動する
- セルフマネジメントを身につける
- 弱みを開示する努力をする
①自己認識力を高める
自分の特性や強み・弱み、目的や大事にしたい価値観・倫理観を理解しないことには、オーセンティックリーダーシップは発揮できません。
独りよがりなリーダーシップを取らないためにも自分を客観視し、定期的に自己を振り返ってオーセンティックリーダーシップを高めていくことが大切です。
②価値観を体現するために行動する
自分の価値観を認識できていても、行動に移らないとオーセンティックリーダーシップは発揮されません。そうでなくとも、リーダーは行動力が求められるポジションです。
行動しないことには、メンバーにも自身の価値観や倫理観が伝えられません。まずは自分が行動してみましょう。それによってオーセンティックリーダーシップが高まります。
③セルフマネジメントを身につける
リーダーのモチベーションや成長意欲が低下すると、メンバーにも影響してしまいます。チームの士気を落とさず、自らが学び続ける姿勢を維持するためにも、セルフマネジメントを身につけることが欠かせません。
セルフマネジメントができるようになれば、オーセンティックリーダーシップも高まります。
④弱みを開示する努力をする
リーダーにもなると、弱みを見せることに抵抗が起きやすいです。完璧なリーダーでいようとして、弱みを見せられない人も多いでしょう。
しかしオーセンティックリーダーシップでは弱みを開示することでメンバーとの関係性を構築できたり、多様な人材の活用が進んだりするもの。弱みを見せることはマイナスではなく、むしろプラスに働くと考えましょう。
リーダーだけでなく、メンバーにも弱みを開示できる環境を作ってあげると、相互理解が深まり、お互いの不足を適切に補い合えます。