大企業病とは?【わかりやすく】症状、原因、リスク、対策

大企業病とは、企業活動において現状維持を優先し、新しいチャレンジを回避すること。症状や原因、弊害やリスク、予防と対策などを解説します。

1.大企業病とは?

大企業病とは、現状維持を優先し、新しいことにチャレンジしない状態のこと。大規模な組織や企業が抱える問題のひとつで、心身に生じる疾病ではありません。

具体的には、組織の機動性や創造性の低下、意思決定の遅延、煩雑な手続きや階層化による情報伝達の困難などを指します。大企業病に陥ると競争力の低下や市場の変化への対応の遅れが生じる場合もあるのです。

定義は不明瞭

大企業病の定義は公的に定まっているわけではなく、大企業によくある特性の総称として使われます。大企業病の代表的な症状はいくつか存在するため、それらをチェックすると自社が大企業病に陥っているか、あるいは陥るリスクが高いかなどを把握できるのです。

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2.大企業病の症状

大企業病の症状は、組織体制そのものだけでなく、企業に属する社員の意識や行動、文化などにも生じる場合があります。

  1. 社内ルールを最優先
  2. チャレンジ意欲の低下
  3. マニュアルへの固執
  4. セクショナリズム意識の増加
  5. 顧客視点の欠落
  6. 意思決定スピードの低下
  7. 能力に見合わない人の出世
  8. 責任の所在が不明確

①社内ルールを最優先

社内の規則やルールに縛られて、それらを最優先する傾向にあるのです。

組織は主として効率や秩序を維持するためにルールを定めます。しかし大企業病を発症した企業では「ルールを守ること」自体が目的化されるときもあるのです。

たとえば承認ルールに固執すると迅速な意思決定ができず、ビジネスチャンスを逃してしまうかもしれません。

②チャレンジ意欲の低下

大企業では現状維持が最優先される考え方や伝統的なやり方が正しいという信念が強く根づきやすく、それにより新しいアイデアや手法を導入しようとする意欲が低下し、非効率的な手法が定着しやすいのです。

またこの症状では組織内に「出る杭は打たれる」という風潮が蔓延しやすく、重症化の原因となることもあります。

③マニュアルへの固執

業務の明確化や標準化を目的として、部署ごとにマニュアルが作成されます。しかしそのマニュアルに固執してしまう場合もあるのです。

とくにチャレンジ意欲の低下によって社員の創造力が奪われたり効率性の追求が否定されたりすると、発症しやすくなるでしょう。マニュアルへ固執した社員はイレギュラーな出来事への対応力が低下するため、トラブルで損失を出してしまうかもしれません

④セクショナリズム意識の増加

拠点や部署が分割される場合も多いため、自身の組織を優先する「セクショナリズム」が高まる傾向にあります。組織内での自己防衛意識が高まり、ときにはほかの組織や部署のことを必要以上に敵視する場合もあるのです。

また各部署の利益や関心事が優先されて部署同士で協力する機会が減少するため、組織全体の最適化が停滞するといった悪影響も出るでしょう。

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⑤顧客視点の欠落

大企業病を発症した組織では、顧客の存在が後回しにするのも珍しくありません。組織内での個別最適化や内部志向が強まりすぎて、最優先事項から顧客の存在が除外されてしまうのです。

セクショナリズムが高じて社内政治や派閥争いなどが起こると、そちらに注目が集まってしまい、さらに顧客をないがしろにしてしまう恐れがあります。

⑥意思決定スピードの低下

意思決定にかかわる人数やプロセスが複雑化しやすいため、チームや組織全体の意思決定に時間がかかる傾向にあります。市場の変化に対応する時間が失われたり、競争力が低下したりするため、利益の低下やビジネスチャンスの喪失を招きかねません。

とくに近年は市場や社会情勢の変化が早いため、企業が生き残っていくためには効果的な意思決定プロセスを確立する必要があります。

⑦能力に見合わない人の出世

年功序列や終身雇用制度などを導入している場合が多いため、実績に対して適切でない昇進が行われる一方、結果を出している人が適切に評価されない状況も生じやすくなります。

とくに年齢や勤続年数などの形式的な基準で行われる自動的な昇進や昇給は、ほかの社員の不満を高め、退職者の増加やモチベーションの低下などを招いてしまうでしょう。

⑧責任の所在が不明確

事業にかかわる社員数が多いと責任の所在が曖昧になりやすく、社員同士あるいは部署同士で責任を押しつけ合う状態が生じる場合もあります。

責任の所在が不明確になると、問題解決の遅れや責任逃れの横行などの問題が表面化し、組織全体の信頼や効率性が損なわれるでしょう。そのためとくに大企業では、あらゆる業務において責任の所在を明確にする必要があるのです。

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3.大企業病の原因

大企業病の原因はいくつかあり、企業によっては複数の原因が見つかるかもしれません。発症を未然に防ぐために。代表的な原因を知っておきましょう。

  1. 業績の安定化
  2. 組織の拡大と細分化
  3. 挑戦機会や制度の不足
  4. リスクヘッジの風土
  5. 企業理念の浸透不足

①業績の安定化

業績が安定していると危機感が欠如し、新たな挑戦の必要性が薄れてしまう場合もあります。この傾向は「現状を維持する方がよい」という考えを生み出し、社員の間では積極的な変革やイノベーション推進に対する意欲を低下させることがあるのです。

また既存の成功に依存しすぎて、競争力の低下や市場変化への適応性の欠落が生じる可能性もあります。

②組織の拡大と細分化

部署が細分化されるほど、企業全体が追求する方向性と各部署のミッションとのつながりが希薄になる傾向があります。

部署の細分化は効率的な事業運営を実現する一方、セクショナリズムを増進してしまい、企業全体の目的や目指す方向性への意識を弱めてしまうのです。

また各部署が自己完結的になると他部署との連携や情報共有が遅滞するため、全体最適化や統一的な戦略の実行が難しくなる場合もあります。

③挑戦機会や制度の不足

新しいことに挑戦する機会や制度が不足していると、社員はリスクを冒してチャレンジする機会がなくなり、組織全体が大企業病を発症した状態に陥ってしまう場合もあります。

とくに業績が安定している企業は、チャレンジの必要性を感じられず、挑戦する意欲が低下しやすいのです。

④リスクヘッジの風土

組織が成熟して業績が安定すると、多くの社員は現状維持を優先し、全体としてリスクを回避する風土が醸造される場合もあります。

安定志向に走った社員は新たなチャレンジや変革への意欲を放棄し、企業としてはイノベーションや成長の機会を失ってしまうでしょう。一定のリスクヘッジは必要ですが、必要以上に優先している企業は要注意です。

⑤企業理念の浸透不足

企業の理念や将来のビジョンが社内に適切に浸透していないと、単に上司の指示に従って目の前の業務をこなすだけになる恐れがあります。

社員は仕事の目的や意義を見失い、仕事に対して意欲的に取り組もうという意欲や、取り組みや成果に対する満足感、達成感などが薄れるからです。

このような企業では、経営陣や上司はビジョンを徹底的に伝え、社員とのコミュニケーションを通じてビジョンに対する意識を高める必要があります。

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4.大企業病がもたらす弊害・リスク

大企業病は、組織が携わるビジネスにおいて、企業の成長性や利益などを低下させる恐れもあります。ここでは3つの弊害やリスクを解説しましょう。

  1. 生産性の低下
  2. 優秀な人材の離職
  3. イノベーションの低下

①生産性の低下

規則やルールを重視する傾向が強くなると、無駄な手続きが増えてしまい、生産性が低下する場合もあります。このような状況では、効率的な業務遂行や迅速な意思決定が難しくなり、企業の存続にも影響する可能性が高まってしまうでしょう。

②優秀な人材の離職

組織が過去の成功体験に固執している場合、前例主義や現状維持の思考が浸透し、変革や新しいアイデアの受け入れが妨げられる場合もがあります。

気概を持った社員のモチベーションが低下し、最悪の場合、優秀な人材が組織を去ってしまい、意欲の低い社員だけが残る状況になるかもしれません。

顧客に最適なサービスや商品を提供する姿勢が欠如したり、社内政治がはびこったりする環境も人材流出のリスクを高めます。

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③イノベーションの低下

イノベーションの追求より現状維持のほうが高く評価される傾向にある場合、イノベーションの低下が生じやすくなります。

組織内でこの問題が表面化すると新たな事業や取り組みに挑戦する意欲が減退し、イノベーションが起こりにくくなりかねません。また社員が新しい市場の開拓や新商品の開発などに対して消極的になり、企業内の新たな取り組みが鈍化する可能性もあります。

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5.大企業病の予防・対策

大企業病の予防方法や対策方法には、社内の環境や制度の見直しが挙げられます。ここでは具体的な方法を4つ説明しましょう。

  1. 人事制度の見直しと改善
  2. 社内コミュニケーションの活発化
  3. 企業理念の明確化と周知
  4. 多様性のある組織文化の創出

①人事制度の見直しと改善

評価制度を見直して各社員の目標を明確化と適切な評価を実施すると、意欲低下の改善に役立ちます。社員は自分の努力や成果が評価されることでモチベーションが向上するからです。

社員がチャレンジしたことを評価するのはもちろん、よりわかりやすい報酬として昇格や昇給、報奨などと連動させると、社員の意欲を維持しやすくなるでしょう。

②社内コミュニケーションの活発化

役職や部署に関係なく、コミュニケーションが円滑に行われる環境を作る必要があります。立場に関係なく意見がいえる風とおしのよい環境では、情報共有が円滑に行われ、意思決定スピードが促進されるからです。

また社内コミュニケーションが活性化すると、各社員へ企業理念や経営方針が浸透しやすくなるため、大企業病の予防や対策に役立ちます。

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③企業理念の明確化と周知

企業理念や経営方針、ビジョンを明確にし、経営層から社員へ継続的に伝え続けると、大企業病を防ぎやすくなります。企業の目標や方向性を理解した社員は、組織と一体感を持ちながら働けるようになるからです。

具体的な方法としては、経営者のスピーチ、社内SNSや社内報など挙げられます。文字だけでなく動画なども活用すると、社員からの共感を高められるでしょう。

④多様性のある組織文化の創出

大企業病にかかると社員の視野が狭まり、外部の変化や新たな価値観に対応する能力が低下する傾向があります。組織が自身の成功体験に過度に執着し、変化や新しいアイデアを取り入れる柔軟性や適応力が欠如するためです。

この問題を予防するためには、組織内での多様な価値観や意見が尊重される環境を整える必要があります。多様性を許容する風土を醸造すると、古い考えへの固執が弱まり、柔軟性や適応力を高められるでしょう。

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6.中小企業における大企業病とは?

大企業病は大企業に限った問題ではなく、中小企業における発症事例も少なくありません。たとえば社員数が100名程度の規模の中小企業や社員個人レベルでの発症も珍しくないです。よって大企業に限らず予防や対策が必要でしょう。