会社の取締役には実は複数の種類があることを知っていますか?会社法で定められた特別取締役には、通常の取締役とは異なる重要な権限があるのです。今回は特別取締役の選任条件・有する権限などについて解説します。
「特別取締役」とは?
特別取締役とは会社法で導入された制度で、会社の重要な財産の処分・譲受および借財に関する決定を行う権限があります。この権限は取締役会の決議と同じ効果をもたらすので強い権限であると言えます。
特別取締役会を選定できるのは、6名以上の取締役(そのうち社外取締役を1名以上)が存在する株式会社です。さらに、特別取締役は3名以上選定する必要があり、2名以下では制度として無効です。この制度が生まれる前に重要財産委員会制度がありましたが、それよりも決定権限が拡大し、意思決定が迅速に行えるようになりました。
特別取締役の選定および変更は、本店所在地にて2週間以内に登記の申請を行う必要があります。
取締役の種類とは?
一口で取締役と言っても、実際はさまざまな種類の取締役が存在しています。中でも最もメジャーなのは代表取締役でしょう。取締役会で決まった事項の執行および通常業務の内容を決定し、対外的に会社を代表する役目を果たします。代表取締役の任命・解職ともに取締役会が権限を持っています。
会社の業務を執行せず、過去も現在もその会社および子会社の支配人や使用人になっていない人を社外取締役として設置することもあります。日本の企業は仲間意識が強く、外からのチェック機能を高める必要があることが社外取締役の設定理由です。コーポレートガバナンスの視点から、社外取締役の重要性は増しているといわれています。しかし、完全な第三者を採用している例は少なく、経営の見える化はまだ不十分と言えます。
また別の取締役として設定されることがあるのが、今回ご紹介する特別取締役です。取締役会から直接委任を受けることなく独自に活動することができる取締役であり、企業の迅速な意思決定のために生み出された制度です。
特別取締役制度が生まれた背景
会社法が制定される以前の商法では、重要な財産の処分などについては取締役の決議を経てなされなくてはならないという規定がありました。しかし緊急性を伴うケースが多いことに加えて、株式会社の取締役は通常スケジュールが埋まっています。
多忙な中、取締役が急に予定を変更して集まるのが困難であり、結局対応ができないという問題が多くみられました。そこで、通常の取締役が集まらなくても、財産処分や借財などに関する決定が迅速に行えるように設定されたのが特別取締役制度です。
また、特別取締役は取締役会を招集できます。通常の取締役会では招集権限のある取締役を定めますが、特別取締役に関しては招集権限を定めることができません。迅速な決議を行うために設けられた特色と言えます。