フラット組織とは?【ピラミッド組織との違い】メリデメ

フラット組織とは、管理層を減らして役職構造をフラット(平面的)にした組織形態のこと。ここではフラット組織のメリットとデメリット、ピラミッド組織との違いなどについて解説します。

1.フラット組織とは?

フラット組織とは、管理職を少なくした組織形態のこと。管理層の役職構造が平面的(フラット)であるため、この名前がつけられました。

またフラット組織には「組織文化がフラットである」という特徴もあります。役職層が少ないため管理職と従業員の距離が近くなり、上司と部下の間に生じる上下関係が軽減されるからです。

そのため率直な意見交換がしやすく、ボトムアップで組織の意思決定がなされるケースも少なくありません。

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2.フラット組織の種類

フラット組織と呼ばれる組織構造には、「ティール組織」や「ホラクラシー組織」、「アジャイル組織」などの種類があります。ここではそれぞれの組織の概要を説明しましょう。

ティール組織

上司や部下などのヒエラルキー型の階層を持たず、すべての従業員が組織の共通の目標に向かって自主的に行動する組織形態のこと。メンバーは対等(フラット)な関係であるため指示命令系統がなく、全従業員に意思決定権が付与されるのが特徴です。

ティール組織は、フレデリック・ラルーが自身の著書で提唱した、「組織が進化する5段階のフェーズ」において最終形態だと定義しました。

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ホラクラシー組織

役職や階級などの上下関係がなく、全従業員が平等な権限を持つ組織構造のこと。

ホラクラシー組織はティール組織の一部に分類されます。ティール組織との大きな違いは「ホラクラシー憲法」と呼ばれる厳密な社内ルールにもとづいて意思決定がなされる点。

すべての従業員はこのルールにもとづいて意思決定を行うため、組織の方向性が大きく逸れる心配がありません。

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アジャイル組織

意思決定や課題解決を迅速に行うため、権限をトップだけでなく各従業員に分散させた組織のこと。アジャイルには、「俊敏性」や「柔軟性」などの意味があります。

リーダーを中心にフラットなチームを形成し、各メンバーが自律性を発揮して柔軟に行動するのが特徴です。ただしフラット組織のように、従業員へすべての権限を譲渡するわけではありません。

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3.フラット組織とピラミッド組織との違い

ピラミッド組織は、幾層もの役職を重ねる組織構造で、フラット組織の対極にあるといえます。組織の最上位に社長など権力が大きい役職を置き、その下へ部長や課長、係長や一般従業員など、下位の役職層が多数存在するのです。

基本的に意思決定はトップダウンで行われ、上層から下層へ順に伝えられます。組織が拡大するにしたがって階層が増える場合も多く、大規模な企業ほど意思や指示の伝達に時間がかかってしまう傾向にあるのです。

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4.フラット組織のメリット

フラット組織の主なメリットは次の6つです。それぞれのメリットについて詳しく説明します。

  1. 迅速な意思決定の実現
  2. 従業員の責任感が増加
  3. 組織パフォーマンスの向上
  4. 心理的安全性の上昇
  5. コミュニケーションの活性化
  6. 人件費の削減

①迅速な意思決定の実現

中間管理層が存在しないため、現場の意見が直接経営陣に伝わり、経営陣は重要な意思決定をスピーディーに行えます。また経営陣が行なった意思決定も迅速に伝わっていき、従業員は早期にアクションへ取り掛かれるのです。

また顧客ニーズや市場の変化に関する情報なども中間管理職をとおさずに本部の経営陣へ届くため、現在生じているビジネスチャンスやトラブルにもすぐに対応できます。

②従業員の責任感が増加

従業員は大きな権限が委譲されるため、自分の仕事に対する責任感が高まります。従業員は自分の行動を主体的に考えて、最後まで責任を持って仕事に取り組むようになるのです。

また責任を果たそうというモチベーションや、仕事を完遂したときの充実感なども高まるでしょう。このような意識は、満足度やエンゲージメントの向上に寄与します。

③組織パフォーマンスの向上

各従業員が意思決定権を持つため、自主的に業務へあたるようになり、個々の生産性が向上します。このような従業員が増えるほど、組織全体のパフォーマンスが上がっていくのです。

さらにフラット型組織は、意思決定に複数階層の承認を得る必要がないため、業務の効率化も実現。この点でも生産性が高まりやすく、やはり組織のパフォーマンスの向上につながります。

④心理的安全性の上昇

階層が存在しないフラット組織は、メンバー間の力関係もフラットなため、心理的安全性(自分の意見を自由に発言しても批判や攻撃を受けないという安心感のこと)が高いといわれています。

心理的安全性が高いフラット組織では、メンバーが自由に意見やアイデアを提案しやすいため、質の高い意思決定が行われます。

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⑤コミュニケーションの活性化

中間管理層が存在しないため、経営陣と従業員の間で双方の意見を直接伝えやすくなり、組織内のコミュニケーションが活発化します。

経営陣と従業員の間に何層もの中間職が存在する組織では、意見の伝達に時間がかかりやすいうえに、真意が正しく伝わらない、あるいは途中で取り下げられてしまう可能性もあるのです。

フラット組織では、心理的安全性が確保された環境で経営陣と直接の対話が可能となります。

⑥人件費の削減

中間管理層が存在しないため、人件費を大幅に削減できます。中間管理層は組織のリーダーを担う重要なポジションですが、人数が多いほど人件費も高くなるからです。

中間管理層を置かないメリットは、経済的な面だけではありません。年功序列での昇進ではなく、実質的な能力や役割が評価されるため、従業員のモチベーションや組織全体のパフォーマンスの向上といった効果が期待できます。

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5.フラット組織のデメリット

フラット組織には以下のようなデメリットもあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 連携の難易度が上昇
  2. 情報漏えいのリスク
  3. リーダー人材の欠如
  4. 管理者の負担増加
  5. 従業員のスキルが必要

①連携の難易度が上昇

各従業員が独立して行動できるため、目標に向かって一丸となって動くという意識が薄れてしまい、組織全体の連携が取りにくくなる可能性もあります。

また誰もが平等に発言権と行動の裁量を持つため、中央部や本社の意志が現場にうまく浸透しないことも少なくありません。経営者の意図や戦略に沿わない行動を取ったり、同じ状況でも個人によって行動が異なったりするなどの問題が懸念されます。

②情報漏えいのリスク

意思決定権を持つ全従業員に情報が共有されるため、情報漏えいのリスクが高まります。

機密情報や知的財産の外部への漏えいは、企業に重大な損失をもたらします。とくにインサイダー取引などの情報漏洩は、企業の存続にかかわる致命的なダメージを与えかねません。フラット組織では、組織内の機密情報の管理にとくに注意を払う必要があります。

③リーダー人材の欠如

各従業員は平等に発言権と行動の裁量を持つことから、組織全体を統率するリーダー人材の育成が困難になります。また一定の責任が課されるため、従業員は自分の担当業務にのみ没頭しやすいのも、全体を見わたすリーダー人材の育成が滞る理由のひとつ。

フラット組織を成功させるには、リーダー研修の実施にくわえて、ジョブローテーションなどで組織全体の連携を学ばせる必要があります。

④管理者の負担増加

管理職の人数が少ないため、ひとりの管理者がマネジメントする部下の人数が増えてしまい、管理者の負担が増大しがちです。

フルフラットの組織では、経営者が全従業員をマネジメントします。組織の規模が大きくなるほど管理者の負担は大きくなり、チームの統制を維持するのが難しくなるでしょう。

管理職のマネジメント能力を高める研修の実施や、新しい管理職の増設などの検討も必要です。

⑤従業員のスキルが必要

従業員個々の自主性と自己責任に大きく依存する組織形態であるため、各従業員には高度なプロ意識とスキル、自身の業務を自律的に管理するセルフマネジメント能力が求められます。

たとえば自己設定目標の設定、時間や品質の管理、自身のモチベーション管理、スキルアップに向けた自己学習などを、従業員は自分で行わなければなりません。

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6.フラット組織の課題と解決方法

フラット組織には次のような課題があります。課題の解決策をご紹介しましょう。

  1. 情報共有方法の整備
  2. 従業員の能力開発

①情報共有方法の整備

フラット組織では、全従業員が同時に情報を共有する必要があります。これを実現するためには、全員が社内の情報にアクセスできるIT環境の整備が重要です。具体的には以下のような方法が挙げられます。

  • クラウド上で情報を共有
  • オンラインで会議を公開
  • 業務日報を公開

会議の議事録や文書をクラウド上に保存すれば、時間や場所を問わず全従業員が同時にアクセス可能です。

役員会議をオンラインで公開し、一般従業員の参加も認めると、ビジョンや重要事項を全従業員へ通達できます。業務日報を全社に公開し、誰でも閲覧可能にすると、各従業員の進捗状況や成果が把握しやすくなるのです。

②従業員の能力開発

フラット組織では、従業員一人ひとりの能力向上が重要です。従業員の能力向上を促進するために、定期的に業務研修や能力研修を開催しましょう。新しいスキルの習得や専門知識の向上はもとより、モチベーションの向上や維持にも効果的です。

社内での研修が難しい場合は、eラーニングや外部の研修活用などの方法もあります。

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7.フラット組織以外の組織形態

フラット組織以外にもさまざまな組織形態が存在し、自社の事業分野や業態、規模や管理方法、従業員の状況などによって、最適な組織形態は異なります。ここではフラット組織以外の組織形態を3つご紹介しましょう。

  1. 職能別組織
  2. 事業部組織
  3. マトリクス組織

①職能別組織(機能別組織)

営業や経理、人事のように、機能ごとに構成する組織形態のこと。各部署の専門性が高まるため、より効率的に業務を遂行できます。

一方で各部署が独立して機能するため、ほかの部署とのコミュニケーションや連携が難しくなり、全社的な視野を持ったリーダーの育成が困難になるのが難点です。

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②事業部組織

支店やエリア、扱う商品など、事業ごとに構成する組織形態のこと。各事業部に、営業担当や経理担当、人事担当などを置きます。

各事業部が独立して運営されるため、小回りが効き、柔軟な対応ができるメリットがある一方、本社トップからの指示や戦略が末端まで浸透しにくいというデメリットもあります。

③マトリクス組織

職能組織と事業部組織を組み合わせ、網の目のように構成された組織形態のこと。従業員は同時にふたつの部門に所属するため、ふたつの指示命令系統が存在します。

既存の人的リソースを最大限に活用でき、効率性や生産性が向上しやすい反面、リソースには限界があるため分配が難しいのが難点です。

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