ピラミッド組織とは?【フラット・マトリックス組織との違い】

ピラミッド組織とは、トップを最上位に置き、命令や指示が上層から下層に伝わる組織のこと。ここではピラミッド組織の種類や、メリットとデメリット、フラット組織やマトリックス組織との違いなどを解説します。

1.ピラミッド組織とは?

ピラミッド型組織とは、組織の最上位にもっとも権力が大きい者を置き、意思や指示が段階的に上位から下位に伝わる組織形態のこと。権力の構造を三角形で表し、トップに社長、その下に部長、課長、係長、主任、一般従業員を配置するのが一般的です。

なお「階層型組織」や「ヒエラルキー型組織」と呼ばれる場合もあります。

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2.ピラミッド組織の種類

ピラミッド組織の縦軸は、基本的に権限の階層を示すものの、横軸の要素は組織によって異なります。ここではピラミッド組織に用いられる横軸の種類をご紹介しましょう。

役職別

頂点に社長を置き、その下へ部長や課長、係長や一般従業員などの役職を置く組織形態です。組織内の指揮命令系統は、基本的に上から下へ向かうトップダウン方式となります。日本で多くの企業が採用しているもっともポピュラーな組織形態です。

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機能別

頂点に経営者を置き、その下へ各機能(生産・営業・販売・人事・経理・総務など)を配置し、下層で各機能をさらに細分化していく組織形態です。業務を細分化して専門性を高められるため、生産性を向上しやすくなります。

事業別

頂点に本社を置き、その下へ各サービスや製品などの事業部を配置し、下層で各機能をさらに細分化していく組織形態です。

多角的に事業を展開している企業や、個々の事業が大規模な企業に適しています。各事業を独自に運営できるため、それぞれの課題に対して集中的に取り組めるのもメリットです。

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3.ピラミッド組織とフラット組織、マトリックス組織の違い

企業の組織形態の種類は、ほかにも多数存在します。ここでは、ピラミッド組織と比較されることが多い「フラット組織」と「マトリックス組織」について説明しましょう。

フラット組織との違い

フラット組織とは、社内の管理階層を簡素化した組織形態のこと。役職の構造が平面的(フラット)であり、多くの場合は課長、係長、主任といった中間管理層が存在しません。この点はピラミッド組織と大きく異なります。

またピラミッド組織は権限が上層部に集中するのに対して、フラット組織では上層部の権限が下層部に委譲され、全従業員に裁量権が与えられる点も違いです。そのためフラット組織では各従業員が主体的に意思決定でき、課題などへもスピーディに対応できます。

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マトリックス組織との違い

マトリックス組織とは、役職や機能、事業などの横軸をふたつ組み合わせ、網の目のように構成された組織形態のこと。各従業員はふたつのグループに所属するため、複数の課題に同時に取り組めるのです。

マトリックス組織とピラミッド組織では、指示命令系統の方向が異なります。ピラミッド型組織では指示命令系統が「上から下へ」の1方向ですが、マトリクス組織の指示命令系統は「上から下へ」と「横へ」の2方向となるからです。

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4.ピラミッド組織のメリット

ピラミッド組織には、7つのメリットがあります。それぞれのメリットについて説明しましょう。

  1. 責任所在の可視化
  2. マネジメントがスムーズ
  3. 業務に対する専門性の向上
  4. 組織の結束力が強化
  5. 迅速に企業方針が浸透
  6. 人材育成の効率化
  7. 下位従業員への責任が軽減

①責任所在の可視化

基本的にピラミッド組織では、上層部が方針を決定し、下層部がそれを実行するトップダウンの方式が取られるため、責任の所在を可視化しやすくなります。

組織内の序列や従業員の役割と立場が明確になり、各自が自身の役割と責任を自覚した状態で業務に取り組めるのです。また顧客や投資家などの外部の関係者に対しても、責任の所在を明示できるため、自社の信頼性を高める効果もあります。

②マネジメントがスムーズ

指示命令系統がひとつしかないシンプルな構造のため、従業員のマネジメントを円滑に行えます。

各階層の上司は下層の部下の業務内容や進捗状況を把握しやすくなり、スピーディで適切なフィードバックが可能です。部下に適した仕事の割り振りや、能力に応じた人事異動が行えるようになるため、組織全体の業務効率を向上しやすくなります。

さらに各部署の役割分担や業務プロセスが明確になっているため、問題の早期発見と迅速な対応にもつながるのです。

③業務に対する専門性の向上

機能別や事業別のピラミッド組織では業務を機能的に切りわけて役割を分担するため、各部門の専門性が向上します。そのため従業員のスキルアップや、ノウハウの共有などが促進され、組織全体の業務効率が高まるのです。

また、同じ業務に携わる従業員同士がお互いをフォローする体制を構築しやすいというメリットもあります。

④組織の結束力が強化

機能別や事業別のピラミッド組織では、チームとしての結束力が強化されやすくなります。共通の目標に向かって部署内で上司と部下、同僚がつねにコミュニケーションを取り、業務の方針や進捗状況などの情報共有を活発に行うようになるからです。

生産性や利益の向上はもとより、チームの結束力で自社への帰属意識を高めるなどの効果も期待できます。

⑤迅速に企業方針が浸透

指示命令系統が「上から下へ」という1方向のみのシンプルな構造であるため、トップの考えや意向が組織の末端まで直接伝わりやすくなります。経営陣の意思や企業理念などを一般の従業員に迅速に浸透させるのも可能です。

また上層部の決定事項が効果的に伝わるため、市場の変化や競争環境の変動に対しても、組織全体で素早く対応できます。

⑥人材育成の効率化

ピラミッド組織には多くの管理者層が存在するため、中間管理職やリーダーの育成と登用がしやすくなります。

一般従業員に「頑張れば昇進できる」という意識が浸透し、業務に向上心を持って取り組む人材が増えると、組織全体の成長スピードが加速するでしょう。育成した中間管理職やリーダーがまた次世代を育てるというサイクルを作れます。

⑦下位従業員への責任が軽減

一般従業員は業務に対する権限が限られている一方、負うべき責任も小さくなります。そのため新人や若手従業員が業務に取り組む際に感じるプレッシャーを軽減することが可能です。

経験が少ない従業員には責任が少ない業務を振りわけて達成させ、小さな成功体験を積ませましょう。従業員の自主性やモチベーションが高まる可能性もあります。

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5.ピラミッド組織のデメリット

ピラミッド組織には以下のデメリットもあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 意思伝達や決定に時間が必要
  2. 組織の硬直化
  3. 責任や業務量の差
  4. 人件費の増加
  5. セクショナリズムの発生

①意思伝達や決定に時間が必要

組織の規模が大きくなるほど、意思決定や情報伝達に時間を要します。また上層部から下層部への情報伝達は比較的スムーズに行われますが、下層部から上層部への情報伝達は時間がかかるのが一般的です。

そのため現場の意見が経営陣に伝わりにくく、組織課題の発見が遅れることも少なくありません。

また現場に意思決定権がないため、つねに上層部の承認を求める必要があり、意思決定に時間がかかります。競争が激しい現代のビジネスシーンにおいて、大きなデメリットといえるでしょう。

②組織の硬直化

ピラミッド組織には、役割ごとに分担しながら業務に取り組む特徴があります。そのため組織全体の価値観ではなく、それぞれの立場に偏った視点や考え方で業務を進めてしまう恐れがあるのです。

また意思決定権が上層部にある組織構造なので、上司の指示を待つ従業員が増える傾向にあり、組織全体が硬直化する可能性が高まります。指示待ちの従業員は創造性が低下しやすいため、新たなアイデアが生まれにくくなるかもしれません。

③責任や業務量の差

ピラミッド型組織では、階層ごとに負担や役割に差が生じるのは避けられません。とくに上層に位置する人材ほど責任や業務量が増え、下層部との差が生じる傾向にあります。

また中間層の人材は、上層部からのプレッシャーと下層部からの不満に挟まれるのも少なくありません。このような責任や業務量の差は、個人の心身の負担やストレスの要因にもなりえます。

④人件費の増加

組織が大きくなり階層が深くなるほど各階層を管理する人材が必要となり、中間管理職に対する人件費が増加します。

また中間管理職は上層部と下層部の間に位置し、多くの責任やプレッシャーを抱えるポジションです。中間管理職となった従業員のストレスが高まってしまうと、最悪の場合は離職につながる可能性もあります。

⑤セクショナリズムの発生

各部門が自身の利益を重視するあまり、ほかの部門との協力関係が希薄になる「セクショナリズム」が起こりやすい傾向があります。

セクショナリズムは、企業の成長にとって大きなマイナス要因。セクショナリズムの発生を防ぐためには、部署を横断する情報共有の仕組みを構築したり、ジョブローテーションを実施したりして、組織全体で連携する意識を強化する必要があります。

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6.ピラミッド組織の課題と解決方法

多くの企業でピラミッド組織の課題とされるのが、中間管理職の育成と責任所在の明確化です。それぞれの対策について解説します。

リーダー人材の育成

ピラミッド組織を成功させるためには、優れたリーダーの育成が不可欠です。そのため従業員の教育だけでなく、中間管理職(マネージャーやリーダー)のスキルや能力を向上するための教育も行いましょう。

中間管理職に任命したあとは、従業員に対して適切なマネジメントを実践できるよう、一定の権限を委譲する必要があります。

また中間管理職者の部下に対して、その中間管理職者の上司が直接指導することは、中間管理職者の教育にならないため避けるべきです。従業員にフィードバックや指示が必要な場合は、必ずその中間管理職を通じて伝えます。

責任の所在の明確化

ピラミッド組織では、チーム内の業務における「役割分担」「責任の所在」「権限の範囲」の3点を明確にすることが重要です。ミスやトラブルが発生した際に迅速に対応できるだけでなく、責任の所在に関する人間関係の悪化を防ぎやすくなります。

また各従業員が自身の役割や責任を自覚して主体的に業務を行うようになるため、組織全体の作業効率の向上につながります。そのためには上司が個々の役割や責任の所在を明確に示すことが不可欠です。

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7.ピラミッド組織が日本企業で選ばれやすい理由

日本企業がピラミッド組織を選ぶ理由のひとつは、権限や役割分担、責任の所在が明確で誰が見てもわかりやすい点です。従業員は自身の役割や責任の範囲を把握しやすく、目標に向かって業務に集中できます。

また縦割りのシンプルな構造と指揮系統によって、組織全体の管理がスムーズに行えることも、多くの企業にピラミッド組織が選ばれる理由です。

このような利点は企業にとって大きいため、起業時にはフラット組織を構築したが、のちにピラミッド組織へ切り換えたというベンジャミン企業も見られています。