スパンオブコントロールとは?|マネジメントの限界は何人?

スパンオブコントロールとは、上司が効果的に管理できる部下の数や範囲を指す概念のことです。スパンオブコントロールの特徴や、スパンオブコントロールに影響を及ぼす要素について解説します。

1.スパンオブコントロール(Span of control)とは?

スパンオブコントロール(Span of control)とは、組織においてマネージャーや上司が管理する部下の数を指す概念のこと。「管理限界」とも呼ばれます。

もとは軍隊で使用されていた概念で、管理する部下の人数を適切に保つと組織の運営の円滑化につながるとして近年、ビジネスの世界で使われるようになりました。

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組織を構築する5つの原則

経営戦略論においては、組織の構築で意識すべき原則として、次の5つが挙げられています。

  1. 専門家の原則:機能別にタスクを分担して各人の専門性を活かす
  2. 権限・責任一致の原則:権限と責任は一致させる
  3. 統制範囲の原則:上司が管理する部下の数を適切に制限する。スパンオブコントロールに該当するのはこれ
  4. 命令統一性の原則:組織内の指示に一貫性を持たせる
  5. 例外の原則:通常のルールからの逸脱を許容し、適切な判断を下す

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2.スパンオブコントロールの人数を決める要素とその理由

スパンオブコントロールの人数は、さまざまな要素によって変化します。スパンオブコントロールの人数を決める要素を説明しましょう。

業務内容

業務内容が単純か複雑かによって必要な監督や指導の度合いが変わるため、スパンオブコントロールの人数が変動します。単純かつルーティン化されたものであれば業務内容を平準化でき、上司は多数の部下を管理できるでしょう。

しかし業務内容が複雑で専門性が強い場合、個別にフォローを行う必要が出てくるため、上司が管理する人数も限られてしまうのです。

業務量

上司が抱える業務量に応じて、管理できる部下の数は変化します。管理職の役割は、部下の育成以外に、スケジュール管理、セキュリティ管理、トラブル対応などさまざま。

業務量が多い管理職は多くのタスクや課題に対応しなければならず、部下のサポートに割く時間が減ってしまい、適切に管理できる人数に限りが出てしまうのです。

メンバー間の連携

メンバー間の連携の多さも、スパンオブコントロールの人数を決める要素のひとつ。メンバー同士が頻繁に連携し、密接にコミュニケーションを取れていれば、管理職のサポート量も少なくて済みます。

一方でメンバー間の連携が少ない場合、マネージャーは個別のサポートや指導に集中しなければなりません。連携が少ないほど、管理できる人数は限られるでしょう。

適正人数の目安

スパンオブコントロールの適正人数は、5人から8人、最大でも10人です。この範囲であれば、管理者が部下の進捗状況を適切にフォローアップし、個別のサポートやフィードバックを提供できるとされています。

AmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏も同等の人数を提唱し、チームの人数をこの範囲内で調整しているのです。

ただし上記の人数はあくまでも目安であり、実際の適正人数は、組織の状況や業務の特性、リーダーシップスタイルなどによって変わります。

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3.スパンオブコントロールを超えた場合の悪影響

スパンオブコントロールの適正人数を超えると、情報共有や意思決定の遅延や部下の成長の停滞など、組織へさまざまな悪影響をおよぼす恐れもあります。

部下の人数が多いと、上司はすべての部下と直接コミュニケーションを取ることが難しくなり、情報の伝達や意思決定のプロセスに時間がかかるからです。

また個別のフィードバックや指導が疎かになると、部下一人ひとりのスキルや能力が伸びず、成長が遅れてしまうかもしれません。いずれにしても、組織の成長や発展を阻害する原因となりえます。

スパンオブコントロールを超えやすい状況例

スパンオブコントロールが超えやすい主な状況として、次の3つが挙げられます。

  1. チーム内の業務の複雑的または専門的
  2. メンバー間の連携が不十分
  3. 管理者本人の業務量が過多

①チーム内の業務の複雑的または専門的

管理者は、個々の異なる業務に対する理解や専門知識が必要となり、多くの時間を取ることになります。このような業務が多いほど、適切に管理できる人数が下がるでしょう。

②メンバー間の連携が不十分

管理者は、個々の部下の管理および業務の進行状況や成果の把握が難しくなります。また1対1で対応しなければならないケースも増え、管理上限を超える可能性が高まるのです。

③管理者本人の業務量が過多

自分の業務に追われるため部下の管理に使える時間に制約が生じ、適正人数を超える恐れもあります。

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4.スパンオブコントロールを超えた際の対策

スパンオブコントロールが適正人数を超えると、部下の間でサポートの差が生じる可能性があります。このような状況を解消する方法を説明しましょう。

管理職の増加と部下の減少

まずは管理職の業務負荷を軽減することが重要です。たとえば次のような方法が挙げられます。

  • 業務の優先順位を見直して不要な業務を削減する
  • 部下の人数自体を減らして業務量を減らす
  • 管理職が部下に一部の業務を委任する
  • システムやツールを導入して管理業務を簡略化する

業務管理職側の人数を増やして対応する場合は、責任や指揮権のあり方を明確にし、事前に適切なトレーニングやサポートを行って管理職のスキルや能力を向上させておきましょう。

1-3-9のチーム構築

部下の数が適正人数を超えた場合、「1-3-9」のチーム作りで対応するのもひとつの方法です。1-3-9とは、1人の管理職が3人の部下をチームリーダーとして指名し、その一人ひとりのリーダーが3人の部下を管理する手法。

結果的に管理者は、一度の12人の部下をコントロールできます。1-3-9のチーム作りで注意すべき点は、十分なリーダーシップ能力とコミュニケーションスキルを持つ人物をチームリーダーを指名することです。

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5.スパンオブコントロールを決める要因

スパンオブコントロールを左右する要因は、部下の業務内容や管理者の業務量だけではありません。スパンオブコントロールを決める主な要因について説明します。

管理者と部下の能力

管理者の管理能力が高く、組織全体を効果的に指導できる場合は、一度に管理できる人数を増やせます。

一方、部下の能力が低い場合は、管理者の能力が高くても、部下の能力が低いとフォローアップとサポートに時間とリソースを割かなければならないため、適切に管理できる人数は減るでしょう。

能力が低い部下をチームへ入れなければならない場合、先に挙げた1-3-9のチーム作りを活用し、能力の高い部下をメンバーにくわえる方法が効果的です。

権限委譲の程度

権限の委譲度が高いと、部下は自律的に意思決定して業務を遂行するため、管理者は本来の業務に専念できます。逆に権限の委譲度が低い場合、管理者は部下に対してより細かい監督や承認を行う必要があるため、本来の業務に割く時間が減ってしまうでしょう。

ただし部下へ権限を委譲する際、トラブルや不正が生じるリスクもあるため、どの部下へどこまで権限を委譲するかは、慎重に判断する必要があります。

業務内容の安定性

業務内容が安定すると、管理者は個別のフォローアップの必要性が減り、スパンオブコントロールが広がります。業務がルーティン化され、タスクや手順が明確な環境では業務が安定している環境では、例外的なトラブルが起こりにくくなるからです。

マニュアルの整備やシステムの導入などで業務内容の標準化を進めると、スパンオブコントロールを広げられるでしょう。これらは業務効率の向上や人材育成にも寄与するため、組織の強化も促進します。

組織の成長スピード

組織が急速に成長して経験の浅い社員が管理職に昇進すると、スパンオブコントロールが小さくなることがあります。経験値の少ない管理者は、組織の業務やプロセスを十分に理解していないことも多く、部下に対するフォローが不足する恐れもあるからです。

マネジメント能力が低い管理者に対しては、管理者向けのトレーニングやメンタリング制度などを実施して、経験不足を補う対策を講じたほうがよいでしょう。

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6.スパンオブコントロールを拡大するポイント

スパンオブコントロールを左右する要素は複数あり、業務改善といった方法で拡大するのも可能です。ここでは5つの方法を説明します。

  1. 権限委譲の進行
  2. 業務の標準化
  3. 情報共有の効率化
  4. チーム間の連携強化
  5. 職務や役割の再編成

①権限委譲の進行

上司が持つ権限や責任を部下に移譲すると、より多くの部下を効果的に管理できるようになります。上司が意思決定を行う機会やそれにともなう業務が減るため、その分管理に集中できるからです。

ただし権限委譲を進める前に、安心して責任のある立場を任せられる部下を育成し、双方の信頼関係を構築しておく必要があります。

②業務の標準化

業務の標準化を進めると、ひとりの部下に対する上司のフォローが軽減され、結果的に管理可能な人数の増大につながります。業務プロセスや手順を明確化すると、部下はよりスムーズに業務を遂行できるため、それだけ上司も管理しやすくなるからです。

また、業務の標準化は、メンバー間の意思疎通や効率性の向上にもつながります。ただし業務の標準化には、業務マニュアルやトレーニングプログラムの整備なども含まれるため、ある程度の時間がかかるでしょう。

③情報共有の効率化

情報の共有を効率的すると、上司は部以下に対する意思決定や評価を迅速に行えるようになるため、スパンオブコントロールを拡大しやすくなります。

情報共有の効率化を実現する方法の例は、定例会議や報告体制の整備、デジタルツールの活用など。情報共有は双方向のプロセスであるため、上司からの指示だけでなく、部下からのフィードバックや情報提供も促進する必要があります。

④チーム間の連携強化

チーム間の連携を強化すると、管理職のマネジメント業務の負担の割合が減るため、その分だけスパンオブコントロールも広がります。異なる部門やチームのメンバーがフォローしあったり、情報やリソースを共有したりするようになるからです。

たとえばメンター制度を導入すると、先輩が後輩に対して業務だけでなくキャリアやメンタルヘルスなどのフォローを行う環境をつくれます。

⑤職務や役割の再編成

組織内の役割や責任を適切に再編成すると、上司と部下の役割が明確化すれば、各メンバーはスキルと能力を最大限に生かして仕事できます。結果、スパンオブコントロールを拡大しやすくなるのです。具体的な方法として、次のような方法が挙げられるでしょう。

  • 重複する職務や責任の整理
  • タスクの再設計
  • 業務負荷の公平な配分