ARPUとは「Average Revenue Per Use」の略で、ユーザーや購入者一人あたりの平均売上を指す指標のこと。ARPUはビジネスの成長性や継続性を測るために重要な指標であり、とくに課金制ビジネスにおいては重要度が高い指標といえます。
今回は、ARPUとは何かをふまえて、LTVなどの他指標との違いや具体的な計算方法、ARPUを向上させる方法などを詳しく解説します。
目次
1.ARPU(Average Revenue Per User)とは?
ARPUとは、「Average Revenue Per Use」の略で、一人あたりの平均売上、つまりユーザー平均単価示す指標のこと。読み方は「アープ」または「エーアールピーユー」です。
ARPUの累積値を算出すれば、収益化・購入額の増減も測定できます。たとえば、特定期間のARPUの累計値算出によって、継続率と売上の相関関係が分析できるのです。
ARPUは主に通信事業のような月額課金モデルのビジネスで用いられてきました。しかし近年、SaaSやスマホゲームなど月額課金制のビジネスモデルも増えてきたため活用が増えています。
ビジネスモデルによってはARPUが細分化されるケースもあり、その代表例が通信事業者です。通信事業者の売上は通話料とデータ通信料にわかれ、通話料は「音声ARPU」、データ通信料は「データARPU」として区別しています。
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2.ARPUとLTV、ARPPU、ARPAとの違い
ARPUと類似する指標に「LTV」「ARPPU」「ARPA」があります。ARPUと各指標の違いをみていきましょう。
ARPUとLTVの違い
LTVは、ユーザーが自社の商品・サービスを購入・契約を開始してから終了するまでの間にどれだけの価値をもたらしたかを示す指標のこと。「Life Time Value」の略で、顧客生涯価値です。
ARPUはLTVに類似するものの、ARPUは設定した期間におけるユーザーの価値であるのに対し、LTVはライフサイクル全体をとおしたユーザーの価値を計測する指標になります。
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ARPUとARPPUとの違い
ARPPUは「Average Revenue Per Paid User」の略で、課金している一人あたりの平均売上を示す指標です。一人あたりの平均売上を示す点ではARPUと同じであるものの、こちらは対象ユーザーを限定しています。
サービスによっては無課金または無料で利用できるものの、そのうち課金しているまたは有料プランを契約しているユーザーのみを対象とした指標としてARPPUを用いるのです。
課金や有料プランで収益を上げるサービスでは、収益性を測るためにARPUが重要な指標になります。
ARPUとARPAの違い
ARPAは「Average Revenue Per Account」の略で、1アカウントあたりの平均売上を示す指標です。ARPUとの違いは、「ユーザーあたり」の売上か「アカウントあたり」の売上かにあります。
複数端末で利用できるクラウドサービスのソフトウェアといった、アカウント数で課金するサービスではARPAを採用するケースが多くみられます。
KDDIでは一人あたりスマホやタブレットなど複数の端末所有が増加したのを背景に、ARPUを見直してARPAを導入し、実態に近い売上高が把握できるようになりました。
3.ARPUが活用されるシーン
ARPUは元々、ドコモやau、ソフトバンクのような通信キャリア業界で活用されていた指標です。
通信業界は市場の飽和により顧客の獲得が難しい状況に陥り、収益を増やすには顧客数ではなく、1人あたりの平均売上に着目することが重要としてARPUを活用しています。
現代では課金制モデルのSaaSビジネスやアプリケーションビジネスが増えたため、ARPUの活用シーンも拡大しているのです。
また、事業の初期段階ではユーザー数や顧客数が重要である一方、ビジネスが成熟するにつれて顧客数は伸び悩んでいくもの。そこで、事業の成長性や継続性を判断する指標としてもARPUが活用されます。
というのも、ユーザーあたりの平均売上が高ければ、顧客数を獲得せずとも既存顧客のなかで収益がアップ・確立でき、ビジネスの成長性・継続性に期待できるからです。
4.ARPUがSaaSビジネスで重要KPIとなる理由
ARPUがビジネスで重要なKPIとなる理由は、主に下記3つです。各理由を詳しく解説します。
- 収益性を評価するため
- 効率的に売上を伸ばすため
- 商品・サービスへの満足度を測るため
①収益性を評価するため
ユーザー1人あたりの平均単価は、ビジネスの収益性を評価するうえで重要といえます。なぜなら、平均単価が高ければ、それだけ収益性が高いと判断できるからです。顧客数が多くても、平均単価が少ないと収益性が高いとはいえないケースもあります。
しかし、ARPUの数値が高ければ、効率的に収益を生み出せていると判断可能です。
②効率的に売上を伸ばすため
効率的に売上を伸ばすには、平均単価を高めるのも重要です。平均単価を上げられれば、新規営業する手間がないほか、既存顧客にも新しい価値が提供できるといったメリットも多くあります。
競合が多いほど、事業が成熟するにつれて顧客を獲得するのは難しくなるもの。顧客数を伸ばすよりも平均単価を伸ばすほうが効率的なのです。
③商品・サービスへの満足度を測るため
ARPUの数値が高いと、それだけユーザーが商品やサービスに満足していると判断できます。なぜなら、満足していない商品やサービスにユーザーはそこまでお金をかけないからです。
つまり、高いARPUを維持できているのであれば満足度やロイヤリティが高い状態であり、反対に低い場合は満足度に課題があると考えられます。このようにARPUの増減から顧客満足度や改善点を把握するのも可能です。
5.ARPUの計算方法
下記は、ARPUの基本的な計算方法です。
確定した売上金額÷ユーザー数
ユーザー数とは、ある期間内に商品・サービスを購入・利用したユーザー数のこと。ここでは、基本の計算方法からビジネスモデル別にARPUの計算方法を詳しく解説します。
【課金モデル】ARPUの計算方法
課金している1ユーザーあたりの平均売上高(ARPPU)×課金しているユーザー率(PUR:Paid User Rate)
ARPPUとは、課金している1人あたりの平均売上を示す指標のこと。ARPPUの計算式は「商品単価 × 平均購入点数 × 平均購入頻度」となり、PURは「ある期間内で商品・サービスに課金するユーザーの割合」を指します。
とあるSaaSのクラウド型ソフトウェアを具体例に、計算方法をみていきましょう。
- 月額利用料金:3,000円
- 課金ユーザー率:40%
- 平均購入点数:1点
- 平均購入頻度:月1回(月額制サービスのため)
ARPPUは「3,000×1×1=3,000円」と計算でき、ARPUは「ARPPU×PUR」となるため「3,000×40%=1,200円」で算出できます。
【広告モデル】ARPUの計算方法
アプリケーションビジネスでは、広告表示によって収益を得ているものも。無料アプリの場合、主な収入源は広告表示です。ここでは、広告モデルにおけるARPUの計算方法を紹介します。
表示課金モデル
エンゲージメント×(CPM÷1,000)
エンゲージメントはユーザー1人あたりのアプリ使用時に表示される広告数で、CPMは広告が1000回表示されるごとに発生する費用のこと。広告表示回数は、PVやアプリ滞在時間、利用頻度などによって変動します。
下記具体例から、表示課金モデルの計算方法をみていきましょう。
- CPM:500円
- 1人あたりの広告表示平均回数(エンゲージメント):30回/日
つまり「30回×(500÷1,000)円=15円」で、日別のARPUが算出できます。
クリック型・成果型課金モデル
CPC×CTR
CPCとは、1クリックあたりの売上のこと。CTRはクリック率を指し、「総クリック数÷広告表示回数」で算出できます。アプリインストール型広告も同様の計算式です。
下記具体例から、クリック型・成果型課金モデルの計算方法をみていきます。
- CPC:30円
- CTR=広告表示回数:100,000回/クリック数:3,000回
→3,000回÷100,000回=0.03(3%)
つまり「30円×0.03=0.9円」で、日別のARPUが算出できます。
6.ARPUの向上方法
ARPUの向上はビジネスの収益性、成長性を上げるために欠かせません。ここでは、ARPUを向上させる4つの方法を紹介します。ビジネスモデルによって適切な施策は異なるため、課題に合わせて最適な施策を検討・実行することがポイントです。
顧客ロイヤリティの向上
顧客ロイヤリティとは、会社やその商品・サービスに対してユーザーが抱く愛着や信頼のこと。顧客ロイヤリティの向上によってリピート率や継続契約率が高まるため、ARPUの向上にも貢献します。
顧客ロイヤリティの指標に、「NPS(Net Promoter Score)」(顧客推奨度)があります。NPSは信頼や愛着を数値化したものであり、業績とも深く関係する重要指標です。
NPSは、「このサービスを周囲の人にすすめる可能性」を顧客にアンケートを取ると調査できます。
アンケートは11段階での回答式で、0〜6は「批判者」、7〜8は「中立者」、9〜10は「推奨者」とし、「推奨社の割合−批判者の割合」からNPSを算出するのです。ARPUを向上させるためにも、顧客ロイヤリティを定期的に計測するとよいでしょう。
有料ユーザーと無料ユーザーの差別化
有料ユーザーや課金ユーザーを増やすことでもARPUが向上します。有料・課金ユーザーを増やすには、課金に魅力やメリットを感じさせることが重要です。そのための施策例には、以下のようなものが挙げられます。
サービス | 施策例 |
ソフトウェア | 重要な機能を有料 |
基本利用無料のアプリ | 課金することで広告を非表示にする |
アプリゲーム | 魅力的な課金イベントの実施 |
無料ユーザーが利用できる機能やベネフィットを制限し、課金を促進することがポイントです。ただし、過度な制限はユーザー離れの原因ともなるため、無料ユーザーとの差が大きくなりすぎないように気をつけましょう。
アップセル・クロスセルによる単価アップ
アップセルとは上位商品・サービスの購入・契約で、クロスセルは関連商品の購入・契約のこと。アップセル・クロスセルが起こると単純に平均単価がアップするため、ARPU向上にも有効です。
アップセルやクロスセルを成功させる秘訣は、顧客ロイヤリティの確立。ユーザーが商品やサービスに満足しており、かつサービス提供側が顧客ニーズを把握できていれば、価格が上がっても購入してくれる可能性も高まるでしょう。
購入頻度の向上
購入や課金頻度の向上も単価アップに貢献するため、ARPU向上につながります。この方法は、実店舗ビジネスやEC、アプリゲームなどで活用できる方法です。
購入頻度の向上にはリピーター獲得の施策が重要といえます。そのための施策例として割引クーポンの配布やリピーター限定商品の案内、購入回数に応じたベネフィットの提供などが挙げられるでしょう。