集団凝集性とは、集団に留まらせるための動機付けとなる心理的な力のこと。代表例として、地位や名誉が得られる組織への参加が挙げられます。集団凝集性を高めると、組織力の強化や定着率のアップ、心理的安全性の向上などが得られるのです。
今回は集団凝集性とは何かをふまえて、集団凝集性を高めるメリットやデメリット、要因や方法を詳しく解説します。
目次
1.集団凝集性とは?
集団凝集性(しゅうだんぎょうしゅうせい)とは、集団に留まらせるための動機づけを行う心理的な力のこと。アメリカの心理学者「レオン・フェスティンガー」「スタンレー・シャクター」「クルツ・バック」の3名によって定義された概念です。
まとまりのある組織や帰属意識が高い組織は集団凝集性が高いといえるでしょう。そういった集団凝集性には「対人凝集性」「課題達成凝集性」のふたつがあります。
- 対人凝集性:人同士のつながりから生じる魅力であり、互いが好意を抱いている状態
- 課題達成凝集性:目的やビジョンへの共感から集団がまとまっており、集団に属することへの魅力を感じている状態
どちらか一方が欠けず、対人凝集性と課題達成凝集性の双方がバランスよく備わっていると、まとまりのある組織が構築されます。
スポーツにおける集団凝集性とは?
スポーツにおける集団凝集性とは、チームメンバーの結束力や一体感、目標達成のためにメンバーがどれだけ行動を起こせるか、度合いの総量のこと。単にまとまりがあるだけでなく、人と人とのかかわりが作用してチームに留まる動機づけになる力ともいえます。
一見してチームワークに似ているものの、集団凝集性はチームワークが発揮される前から存在するもの。集団凝集性によりチームに留まりたい、愛着がある状態を前提にチームワークが発揮されます。
2.集団凝集性を高めるメリット
集団凝集性を高めるメリットは、以下3つです。各メリットを詳しくみていきましょう。
- 組織力が強化する
- 心理的安全性が高まる
- 帰属意識が高まる
①組織力が強化する
集団凝集性が高いと、従業員の結束力や団結力が高まっています。そのため、一丸となって目標を達成しやすく、相互理解も深まっているため連携が強化されるのです。
また、お互いによい影響を与え合えるため相乗効果が拡大し、組織力も強化。大きな課題や難しい課題に対しても集中して取り組めるため、組織全体のパフォーマンス向上に有効です。
②心理的安全性が高まる
集団凝集性は、心理的安全性の向上にも効果的といえます。集団凝集性が高いと、結束力の高さから協力関係が構築されやすいのです。そのため、トラブルや困ったことに対して周囲が積極的にサポートしてくれる体制が整います。
こうした環境では心理的安全性が高まり、ストレス軽減からエンゲージメントも向上。Googleの調査では、心理的安全性の高い組織は生産性が高いことも明らかになっており、あらゆる面でメリットをもたらすでしょう。
心理的安全性とは? 作り方、高める方法、ぬるま湯組織との違い
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③帰属意識が高まる
集団凝集性は、帰属意識に近しい状態です。帰属意識が高いと会社への貢献意欲が高まり、結果的に生産性向上から利益向上、ひいては会社の発展につながります。
帰属意識が高いとエンゲージメントも高まりやすく、定着率アップや離職率の低下につながり、安定した組織が構築されるのです。
帰属意識とは?【意味を簡単に】エンゲージメント、高める方法
帰属意識とは、ある集団・組織に属しているだけでなく、その一員である意識や感覚のことです。従業員が同じ方向に向かって行動し、かつ企業に長く勤め続けたいと思ってもらうためには帰属意識が重要となります。
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3.集団凝集性を高めるデメリット
一方で、集団凝集性には以下のようなデメリットも存在します。
- 同調圧力が生じる恐れもある
- 集団浅慮(グループシンク)に陥る恐れがある
- なれ合いとの勘違いが生じる
①同調圧力が生じる恐れもある
同調圧力とは、組織における多数派が少数派に対して多数派に従うよう強要する雰囲気のこと。同調圧力が生じると、多数派の決断や考えにしか従えず、結果的に集団で判断を誤ってしまう恐れもあります。
組織内で「空気を読む」「暗黙の了解」といった風潮がある場合、同調圧力が生まれている可能性も高いでしょう。同調圧力が生じると視野を狭めてしまったり、会議の形骸化を引き起こしたりなど、組織が悪い方向へと向いてしまいます。
同調圧力とは? 日本特有? ハラスメント、職場・会社の圧力
同調圧力とは、集団の中で考えや行動などを強制することです。ここでは、同調圧力について詳しく解説します。
1.同調圧力とは?
同調圧力とは、組織などの集団の中で起きる強制の力です。少数意見を持った人に対...
②集団浅慮(グループシンク)に陥る恐れがある
集団浅慮(グループシンク)とは、集団の意見のほうが個人の意見よりも優れているという考えに陥ること。主な要因は同調圧力で、支配的なリーダーがいたり、外部と隔絶されたりする状況で起こりやすい現象です。
個人の意見や多様性が認められない環境になるため、独創性や柔軟性が損なわれます。結果、革新的なアイデアが生まれず、組織自体が企業発展の足枷となってしまいかねません。
③なれ合いや勘違いが生じる
帰属意識が高く、チームの親密度が高くなるのはよいことである一方、方向性を間違えたり、規範意識が低かったりするとなれ合いの状態になります。
なれ合いは作業効率の低下を招いたり、最悪のケースでは不正や重大なミスを見逃したりなどして、企業の足を引っ張る原因ともなるのです。
4.集団凝集性を高める要因
集団凝集性を高める要因として、下記4つが挙げられます。
- 共有する時間の長さ
- 成功体験の共有
- 集団の規模の小ささ
- 集団参加への難易度
前述したように、集団凝集性を高めるには対人凝集性と課題達成凝集性のふたつが欠かせません。つまり、人とのつながりと集団に属する魅力を高めていくことがポイントです。ここでは、集団凝集性を高める要因を詳しくみていきます。
①共有する時間の長さ
集団凝集性やエンゲージメントは、共有した時間の長さに比例して高まりやすいといわれています。そのため、新入社員研修やグループワークは、集団凝集性を高める手法として有効です。
たとえば新入社員研修では初期段階に集団凝集性やエンゲージメントを高められるため、早期離職防止や仕事への意欲向上に効果的といえます。
また、企業に在籍している期間が長いことも共有した時間の長さといえるでしょう。それぞれの在籍期間が長いため人材の入れ替わりが最小化され、集団凝集性の向上から定着率の向上にもつながります。
②成功体験の共有
同じ目標を達成したり、難しい課題を解決したりする成功体験は、組織やチームに自信をもたらし、チームワークを向上させます。
達成・解決する過程では、同じ目的に向かって進むなかで信頼関係や相互理解が生まれ、対人凝集性と課題達成凝集性の両面にアプローチが可能です。
チームで同じ目標や難しい課題に取り組み、そこで生まれた成功体験をうまく活用すれば、集団凝集性が高められます。
③集団の規模の小ささ
集団の規模が小さいほど、集団凝集性が高まりやすくなります。というのも、規模の小さい集団では、一人ひとりと共有する時間の密度や長さが違うからです。
しかし集団の規模が大きい場合、そうした集団でしか達成できない目標や味わえない達成感があります。課題の達成にうまくアプローチすると集団凝集性を高められるのです。
④集団参加への難易度
その集団に属する難易度も、集団凝集性を高めるために有効です。
たとえば、名の知れた大企業への入社は一定以上の条件が求められるため、そうでない中小企業と比較すると集団参加への難易度が高いといえます。入社できれば、そのブランド力や知名度を手放したくないという心理になるでしょう。
このように参加の難易度が高い集団に属すると、その集団にいるだけで社会的地位が得られるといった優越感やプレミアム感が生まれます。こうした動機づけから集団に属していたいと思う心理は、まさに集団凝集性そのものです。
5.集団凝集性を高める方法
集団凝集性は自然に備わるものではありません。集団凝集性を高めるには、前述した集団凝集性を高める要因を生み出すとよいのです。集団凝集性を高める方法を詳しくみていきます。
- 従業員同士の共有時間を増やす
- 小規模なグループを作る
- 成功体験が積める目標設定をする
- 組織の参加に条件を設ける
①従業員同士の共有時間を増やす
集団凝集性は、従業員同士が過ごした時間の長さに比例するもの。しかし、ただ働くなかで自然と集団凝集性を高めるのは難しいでしょう。ポイントは、グループワークやプロジェクト、入社後の研修やオンボーディングなどを通して共有する時間を増やすことです。
また、業務外でのコミュニケーションも大切な共有時間となります。飲み会手当やランチ手当などの福利厚生からコミュニケーション活性化を図って、施策を立てるのもよいでしょう。
ただし、なれ合いや同調圧力が生じる恐れもあるため、同じ属性の人だけが集まらないよう注意が必要です。
②小規模なグループを作る
集団が小規模であるほど、集団凝集性が高まりやすくなります。そのため研修でグループを作る際は、4〜5人程度のグループを作るとよいでしょう。組織にくわわった初期段階で集団凝集性を高められれば、早期離職の防止にも役立ちます。
③成功体験が積める目標設定をする
適度な努力が必要、かつ達成感が味わえるストレッチ目標を設定するのも集団凝集性を高める有効な方法です。ストレッチ目標を達成するために努力する過程で信頼関係や結束力が生まれ、達成できることで集団凝集性が高まります。
反対に、かんたんすぎる目標や達成が現実的でない目標設定では集団凝集性は高まりません。
④組織の参加に条件を設ける
経験や資格、学歴やスキルなどから参加条件を設け、敷居が高い組織にするのも集団凝集性を高める代表的な方法です。参加の難易度が高いほど、参加できたことを誇りに感じられ、集団凝集性が高まります。
さらに、参加できたことへの誇りや自信から、業務にもモチベーション高く取り組めるでしょう。