フィードフォワードとは?【フィードバックとの違い】具体例

フィードフォワードとは、未来に着目しながら改善点や目標達成に向けた意見交換を行う取り組みです。フィードバックと対になる手法であり、人材定着や良好な人間関係の構築、イノベーションの創出などさまざまなメリットに期待できます。

今回はフィードフォワードとは何かをふまえて、フィードバックとの違いやフィードフォワードのメリット・デメリット、活用シーンの具体例や導入方法などをご紹介します。

1.フィードフォワードとは?

フィードフォワードとは、メンバーの将来に向けた改善点や目標達成に向けたアイデアを話し合う取り組みのこと。結果に対してアドバイスや指導を行うフィードバックとは反対の取り組みであり、過去や現在ではなく、未来に焦点を置くことが前提となる点が特徴といえます。

将来を良い方向へと変えていくための前向きな意志や意欲を醸成することを狙いとした、人材育成の手法のひとつです。

フィードフォワードの形式は自由で、上司から部下、部下から上司に行うこともあれば、複数のメンバーで意見交換したり、チャットを通じて対話したりとやり方はさまざまといえます。

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2.フィードフォワードとフィードバックの違い

フィードフォワードの対極となる取り組みが、フィードバックです。フィードバックとは、過去の行動を振り返り、改善点や今後の目標を話し合う取り組みのこと。ここでは、下記4つの観点からフィードフォワードとフィードバックの違いを解説します。

  1. 時間軸
  2. 着眼点
  3. 視点
  4. 関係性

①時間軸

フィードバックは過去の行動を振り返る一方、フィードフォワードでは未来に焦点を置き、予測のもと改善点やアイデアを話し合います。

フィードバックは起こったことに対する意改善点を次へのアクションにつなげていきますが、フィードフォワードでは未来を予測してどのような行動を取ればよいかを逆算し、次へのアクションへとつなげていきます。

②着眼点

フィードバックの着眼点はすでに起こった「問題」や「欠点」であるのに対し、フィードフォワードの着眼点は未来に向けた「解決の手段」です。

フィードバックでは起こってしまった問題や欠点に対して改善点をアドバイスし、フィードフォワードでは問題や欠点を起こさないため、より成長するために必要な手段をあらかじめ押さえます。

③視点

前提として、フィードバックもフィードフォワードも客観性を保つ必要があります。しかしフィードバックは個々の問題や欠点に対して意識が向けられるため、コミュニケーションが主観的になりがちです。

一方フィードフォワードは未来に焦点をあてるため主観的になりにくく、客観性のあるアドバイスがしやすいといえます。

④関係性

フィードバックは、主に上司から部下に対して行われる一方、フィードフォワードは上司から部下、部下から上司といった1対1だけでなく、立場に関係なくスクランブル的に行うなど形式は自由です。

上下関係にかかわらず、みんなが同じ立場からアイデアを出し合う点にフィードバックとの違いがあります。

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3.フィードフォワードが注目される理由

フィードフォワードが注目されている背景には、イノベーションを起こせる人材の育成と従業員の定着率向上が求められていることが挙げられます。フィードフォワードが注目される具体的な理由を詳しくみていきましょう。

時代背景の変化

変化が激しく、企業競争が激化する現代で生き残るには、未来に向けて積極的に新しい行動が起こせる人材が求められています。経済のグローバル化に伴い、全体最適が進む中では組織力の向上にチームワークが欠かせません。

一人ひとりの自発性が組織力を生み出すことからも、未来に向けて前向きな行動が起こせるフィードフォワードに注目が集まっています。

人材不足の深刻化

少子高齢化により労働人口が不足する現代では、とくに若手人材の流出を防ぐことが企業にとっても重要な課題です。従業員の定着を図るにはモチベーションを維持して働ける環境づくりが求められ、フィードフォワードはその一環として有効といえます。

というのもフィードフォワードはフィードバックのように問題や欠点に着目したネガティブなものではなく、未来に向けて前向きに行動するための意志や意欲を育むものであるからです。

フィードフォワードの活用によって、従業員のモチベーションが醸成され、個々が前向きに業務に取り組めるようになると社内の雰囲気もよくなり、若手人材の定着に期待できる働きやすい組織づくりがなされます。

フィードバックへの苦労

問題や欠点に着目するフィードバックは、誤ったコミュニケーションによって受け手の自信を喪失させてしまう恐れもあります。最悪のケースでは離職につながる可能性もあり、慎重さが求められるがゆえに難しい取り組みでもあるのです。

一方未来に向けて前向きな話し合いが行えるフィードフォワードであれば、フィードバックのようにネガティブな感情になることなく、むしろ従業員のモチベーション向上や自己成長につながる可能性も高いです。

フィードバックのようなリスクがない点でも、フィードフォワードの活用が注目されています。

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4.フィードフォワードの目的

フィードフォワードは人材育成にとどまらず、ハラスメント防止やイノベーションの創出などさまざま効果に期待できます。ここでは、フィードフォワードを取り入れる主な目的をご紹介しましょう。

主体的な人材育成

フィードフォワードに取り組む最大の目的は、人材育成です。未来に向けた前向きな意志や行動を促すため、モチベーションの維持・向上のほか、主体的な思考力が身につきます。

未来に焦点を当てるため、過去を振り返るよりも自分で考えることが多く、前向きな気持ちを育むことが可能です。

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組織の結束力強化

フィードフォワードでは、お互いの意見を受け入れて理解を深められます。

メンバー同士が異なる考えを受け入れ、相互理解が深まることで自然と結束力の強化につながり、共通の目標を持つことで未来に向けて一丸となって前向きな行動が取れるようになるからです。

ハラスメント防止

フィードバックは上司や先輩からの一方的な指導になりやすく、言葉選びや態度を誤ることでハラスメントととらえられてしまう可能性もあります。

結果、意欲や自信を喪失し、パフォーマンスが発揮できなくなるばかりか、最悪のケースでは離職につながってしまうリスクも。前向きな気持ちを醸成するフィードフォワードを取り入れれば、おのずと前向きな指導ができ、ハラスメント防止にも役立ちます。

イノベーションの創出

イノベーションを創出する上で、過去や前例に縛られない柔軟な考え方が重要です。未来に焦点をあてるフィードフォワードなら自然と過去にとらわれない考え方ができ、今までにないアイデアの創出に期待できます。

事業を加速させるにはイノベーションの創出が欠かせず、そうした観点からもフィードフォワードは有効です。

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5.フィードフォワードのメリット

批判的な意見やアドバイスの抑制、前向きなアイデア交換による向上心やモチベーションの維持につながるなど、フィードフォワードにはさまざまなメリットがあります。フィードフォワードのメリットを詳しくみていきましょう。

良好な人間関係の構築

フィードフォワードでは、問題や欠点といったネガティブな指摘がないほか、考えや意見を否定しません。未来に向けて前向きな意志と行動を促すことを目的としていることからも、良好な人間関係を構築しつつ、未来に向けた主体的な行動が取れるようになります。

批判的な意見の抑制

前向きな意見交換、話し合いの場となるため、自然と批判的な意見が出なくなる点もメリットのひとつ。前向きなアドバイスが多く、受け手がポジティブになれるため良好な話し合いができるようになります。

フィードフォワード後はモチベーションや主体性を高め、行動につなげられるでしょう。

スムーズな意見交換

未来を予測した話し合いは、過去に着目するよりも可能性を広げられるため、幅広いアイデアが集まります。上下関係にかかわらず、誰もが対等な立場で前向きな意見交換ができるため、話し合いもスムーズに進められるでしょう。

組織風土の変化

一人ひとりの成長だけでなく、組織のあり方にまでフォーカスして話し合いができれば、より良い方向へと成長するために変化を求める意識づけがなされます。

そのために自分自身が何をすれば良いかも明確化されやすくなり、一人ひとりがモチベーションを高めながら組織全体が成長するための原動力を生み出します。

従業員や組織の成長の加速

フィードフォワードでは、成長のための前向きなアドバイスや意見交換が活発になります。役職に関係なく活発な意見交換がなされる組織では風通しのよさからエンゲージメントも向上し、一人ひとりの成長が加速された結果組織の成長の加速にもつながります。

人材の定着

上司から部下に対する一方的なコミュニケーションが生まれないため、良好な関係を築きやすくなります。

結果、職場の雰囲気や居心地がよくなることにくわえ、お互いが前向きなコミュニケーションができるようになることでエンゲージメントが向上し、人材の定着にも貢献します。

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6.フィードフォワードのデメリット

一方で、フィードフォワードには下記のようなデメリットも存在します。

効果が出るまでに一定の時間が必要

導入しても、効果が出るまでに一定の時間を要する点はデメリットでしょう。というのも、フィードバックのような指導法が定着しているなかで、フィードフォワードのようなフラットな関係性への移行はかんたんではないからです。

効果的なフィードフォワードが行えるようになるには、組織風土と一人ひとりの意識改革も必要になります。

従業員全員の理解が必要

フィードフォワードよりもフィードバックの方がやりやすいと考える人がいたり、そもそもフィードフォワードの導入に反対したりする人がいるかもしれません。

フィードフォワードはフィードバックとは真逆の手法となるため、導入にあたってまずは従業員全員の理解が必要となります。

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7.フィードフォワードの具体例

では、フィードフォワードはどのような場面で活用できるのでしょうか。ここでは、フィードフォワード導入の具体例をご紹介します。

新人社員の教育

とくに新入社員は、業務に慣れていないこともあって上司や先輩からのフィードバックに対してネガティブな感情を抱きがちです。自信を喪失させず、前向きに次のアクションにつなげるためにも、主体性を育めるフィードフォワードが役立ちます。

管理職の育成

管理職になったからと、そこで成長をストップしてはなりません。役職が上がるほど外部からアドバイスを受ける機会が減ってしまうものの上下関係にかかわらず対等な立場から意見交換できるフィードフォワードは管理職の育成にも活用できます。

メンバー間のコミュニケーション

フィードフォワードをとおしてメンバー間の意見交換が活性されると、メンバー同士の交流機会も増えます。メンバー間のコミュニケーションが活性化すればチームの結束力も強まり、円滑なチームビルディングがなされるでしょう。

社内ミーティング

フィードバックが定着している組織でフィードフォワードを導入する場合、まずは社内ミーティングのような小規模な範囲で実施することがオススメです。

社内ミーティングにフィードフォワードの手法を浸透させ、そこから徐々に広げていくことで自然とフィードフォワードの文化が定着していきます。

業務効率化

フィードフォワードは革新的なイノベーションを生み出すだけでなく、身近な業務改善においても新たな視点から考えられます。

未来志向で生産性向上の方法を検討すれば、業務効率化に大きく貢献する革新的なアイデアが生まれる可能性に期待でき、その後も前向きかつ主体的に行動につなげられるはずです。

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8.フィードフォワードのやり方

最後に、フィードフォワードを実践するためのステップを解説します。

  1. 相手の許可を獲得
  2. 現状の把握
  3. アクションの策定

①相手の許可を獲得

フィードフォワードはフィードバックほど知られている手法ではないため、まずは導入することの許可を得る必要があります。同意なしに新しい手法を導入してしまうとなかなか馴染めず、効果が出るまでも時間を要してしまいます。

そうでなくともフィードフォワードは定着に時間がかかることが想定されるため、従業員全員から許可を得た上で、納得して取り組んでもらうことが大切です。

②現状の把握

未来を想定し、有効な解決法を導くには正確に現状把握できることが前提条件です。そのため、話し合いでは主観的な考え方はせず、客観性を重視することを意識しましょう。客観性を持って事実を具体的に伝えることが、的確な解決法を導くための第一歩です。

③アクションの策定

正確な現状把握のもと目標とのギャップが測れれば、効果的なアクションが策定できます。アクションを策定する際は独りよがりな意見を出さず、周囲に質問を投げかけながら徐々に深掘りしていく形で考えを具現化していきましょう。

アクションと想定される結果が明確化することで自分たちがやるべきことを鮮明にイメージでき、アクションを実行する意欲を高められます。