ドミナント戦略とは?【わかりやすく】メリットデメリット、成功事例

ドミナント戦略とは、特定地域に出店しその地域で優位性を確立する手法のこと。代表例にセブンイレブンがあり、特定地域でシェアと知名度を確立したのち、全国的に展開する事例も多くあります。

ドミナント戦略とは何かをメリット・デメリットやポイント、成功事例とあわせてわかりやすく解説しましょう。

1.ドミナント戦略とは?

ドミナント戦略とは、特定の地域に集中して店舗を出店し、その地域での競争優位性を確保する戦略のこと。ドミナント(Dominant)とは「支配的な」「優位な」の意味を持ちます。特定地域での顧客チェアを確保し、競合が入り込む余地をなくす手法です。

一般的には広いエリアに満遍なく店舗を構えたほうがよいと考えられます。しかしあえて特定地域に集中してシェアを確立し、多くのメリットを得るのがドミナント戦略です。

コンビニチェーンやスーパー、チェーンの飲食店が多く取り入れている手法であり、代表的な例にセブンイレブンが挙げられます。集中して多店舗を展開するエリアは、ドミナントエリアと呼ばれているのです。

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2.ドミナント戦略とランチェスター戦略の違い

ランチェスター戦略とは、「弱者視点」と「強者視点」からマーケティングを分析し、弱者が強者に勝つための市場や戦略を打ち出すこと。ここでいう弱者は中小企業、強者は大企業を指します。

資金もリソースも潤沢な大企業から中小企業がシェアを勝ち取ることは、一般的には困難でしょう。

そのなかでも打ち勝てるポイントを見つけ、シェアを勝ち取る可能性を高められるのがランチェスター戦略であり、特定地域に出店することでその地域でのシェアを勝ち取る手法がドミナント戦略です。

つまり、ランチェスター戦略は特定分野で、ドミナント戦略は特定エリアでシェアを勝ち取る手法であり、両者は戦略の方向性に違いがあります。

一方で、シェアを勝ち取るための手法としてドミナント戦略をとるといった考え方もあり、ランチェスター戦略はドミナント戦略のベースともいえるのです。

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3.ドミナント戦略のメリット

ドミナント戦略で得られるメリットは、以下5つです。各メリットを詳しくみていきます。

  1. 特定地域での認知度向上
  2. エリアマーケティングの最適化
  3. 競合参入の抑止効果
  4. 物流システムの効率化
  5. 経営資源の最適化・有効活用

①特定地域での認知度向上

特定地域に集中して店舗を展開するため、その地域での知名度が向上します。というのも、店舗は日常生活で視界に入りやすく、地域での宣伝活動によってブランド名が記憶に残りやすいからです。

特定地域で知名度をあげ、シェアを確保できたら展開エリアを拡大する流れも多く見られます。この手法は、認知度があることで顧客が信頼感や安心感も得られ、新しいエリアでも話題性や顧客の確保につながる点にメリットがあるのです。

またあえて特定地域にしか出店しないことで、プレミア感を出すのもひとつの手法といえます。他県から顧客を呼び込めるほか、地域ブランドであれば地域の話題性を確保して地域発展にも貢献できるのです。

②エリアマーケティングの最適化

特定地域に集中することで、その地域の顧客の年齢層や趣向、ライフスタイルなどを深く理解できます。反対に、エリアが大きいほど顧客も多様化し、マーケティングも複雑化するもの。

地域が固定されていることでその地域の顧客にあったマーケティングに特化できるため、独自のニーズにあわせた商品開発や価格設定、サービスの展開が可能となるほか、地域の顧客ニーズに合わせた最適なマーケティングが行えます。

さらに、市場調査にかかるコストも削減可能です。

③競合参入の抑止効果

すでにシェアが確立されている地域では、新規が参入して成功する採算が低いため、競合抑止効果に期待できます。というのも、すでにニーズが満たされている地域で新たにシェアを確立するのは容易ではないからです。

競合が参入しなければ価格戦争も起こらず、利益を追求した販売価格が設定できるため、企業・ブランドの成長、拡大につながります。

とはいえ、大企業が勝負に出て参入してくる可能性は0ではありません。そのため競合の差別化要因をあらかじめ真似し、参入余地をさらになくすことも必要です。

そして、シェアを確立し続けるには、顧客との信頼関係を継続しつつ、つねに顧客のニーズを満たすことが求められます。

④物流システムの効率化

店舗同士が近いこともあり、商品や資材の配送効率が向上し、配送にかかるコストも削減可能です。飲食店であれば、鮮度の高い食材を仕入れられるといったメリットも得られます。

また、近年はドライバーの人手不足も著しい状況にあるでしょう。しかしドミナント戦略なら人員不足の解消にも有効といえます。なぜなら、狭いエリアでの配送となるため多くの人手は必要なくなるからです。

さらに自然災害が起こった際も物流の影響を受けにくく、状況や需要に応じた柔軟な出荷対応ができるといったメリットもあります。

⑤経営資源の最適化・有効活用

物流システムの効率化に類似して、店舗運営のコスト効率化にも有効です。リソース配分可能となるため店舗間の人員不足に対応しやすく、複数店舗が同時にセールやキャンペーンを行えるなどマーケティングコストの最適化などのメリットがあります。

商品を抱えている場合は在庫の移動も柔軟にできるため、余剰在庫を近隣店舗へ移動させてロスを防ぐのも可能です。経営資源を無駄にせず、エリア内で有効活用できるのはドミナント戦略の大きな強みといえます。

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4.ドミナント戦略のデメリット

ドミナント戦略は多くのメリットを得られる一方、以下のようなデメリットもあります。ドミナント戦略を実行するうえでは、デメリットも押さえることが重要です。ここでは、各デメリットを詳しく解説していきます。

カニバリゼーションのリスク

カニバリゼーションとは「共食い」のことで、ドミナント戦略では店舗同士で顧客の取り合いが起こるリスクを意味します。

店舗同士で切磋琢磨し、ノウハウを共有しながらサービス品質を向上させられるメリットがある一方、競争が起こる可能性も。とくに、店舗でのノルマがあるとカニバリゼーションが起こりやすい傾向にあります。

本来のライバルは競合他社である認識を忘れず、同じブランドの店舗同士は協働すべきパートナーであると意識しましょう。過剰な競争性を引き起こさないためにも、店舗間で競わせるような厳しいノルマを与えないことも大切です。

地域の需要変化リスク

エリアのニーズに特化できるメリットがある一方、そのニーズが変化したり、何らかの環境変化が起こったりした場合、売上が落ちやすい点がデメリットです。

ときには、経営戦略の見直しや大規模なコスト投入が必要になるなど、大掛かりな変革をしなくてはならないでしょう。

また、ターゲットの変更やサービスやメニュー、商品の見直しなど、根本からの変更が求められるケースも。そうした状況に備えて、変化に対応できる柔軟性とリソースを持ち合わせていることも大切です。

出店時に将来的な環境変化のリスクや展望なども把握した上で、ドミナント戦略を実行しましょう。

災害リスクの集中

日本は地震や台風などの自然災害が多く、その地域で災害が起こった場合の売り上げ減少や店舗修繕などのコストがかかる点は大きなデメリットです。

その地域でしか売り上げを上げていない場合、営業できない間は利益が確保できない状態になります。そうしたリスクも事前に把握し、相応の対応ができるよう準備しておくことも必要です。

新エリアでノウハウを生かせない可能性

ドミナント戦略に成功したことで、新エリアへの展開を検討するケースも多いでしょう。しかし、ほかエリアで今の戦略やマーケティング、ノウハウが生かせるとは限らない点に要注意です。

新エリアへの展開でノウハウやデータが活かせない場合は1から確立する、またはドミナント戦略は保留してランチェスター戦略に切り替えるなどの柔軟な対応が必要でしょう。

出店地域の拡大はリスクを背負うチャレンジングな行動であると認識し、リスクを把握した上で適切な戦略をとることが重要です。

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5.ドミナント戦略のポイント

ドミナント戦略を実行する際は、以下に注意しましょう。

  1. 出店前の調査を慎重に行う
  2. 競合調査・差別化を徹底する
  3. リスク管理体制を整える
  4. フランチャイズ出店に気をつける

①出店前の調査を慎重に行う

ドミナント戦略を成功させるうえで、商圏調査を徹底することが重要といえます。なぜなら、失敗によって影響を受ける店舗が多いためです。

具体的にはエリアの人口推移、人口の安定性や今後の増加見込み、競合となりうる店舗の立地などを調査します。カニバリゼーションを引き起こさないためにも、店舗を展開する立地や店舗数も慎重に検討することがポイントです。

また、すでにドミナント戦略を行っている競合がいないかもチェックしておきましょう。すでにドミナント戦略が行われているエリアに出店できないことはないものの、リスクも大きくなる点に注意が必要です。

②競合調査・差別化を徹底する

ドミナント戦略の導入有無にかかわらず、競合調査は重要です。競合調査によって規模感やシェアを確認するほか、提供商品やサービス、店舗の様子やプロモーション、客層なども把握しましょう。徹底調査によって、競合との差別化ポイントが見えてくるはずです。

一方で、競合がいない場合はその地域で需要がない可能性も考えられます。競合がいないことはメリットである一方、確実にシェアを獲得できる環境とは限らない点に要注意です。

③リスク管理体制を整える

災害や環境変化など、売り上げに影響することがあれば複数店舗が一気に影響を受けるためリスク管理が重要です。リスクを早期にキャッチする体制をつくる、リソース不足を防ぐなどして、リスク管理体制を整えましょう。

また、顧客からの評判にもしっかりと着目することがポイントです。特定エリアに集中するからこそ、そこでよい評判が得られないことにはシェア確立につながらないでしょう。そして、サービス品質を低下させないためのリスク管理も欠かせません。

④フランチャイズ出店に気をつける

フランチャイズによってドミナント戦略を行う場合、とくに出店場所に注意が必要です。

フランチャイズ同士でのカニバリゼーションが起こるリスクや、採算が合わない場合の撤退・移転の判断を企業側ができないリスクなどが挙げられます。フランチャイズではオーナーの判断に委ねられてしまうため、撤退や移転をかんたんに実行できません。

また、他店舗との商圏エリアや顧客層が重複しないよう配慮するのもポイントです。

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6.ドミナント戦略の成功事例

ドミナント戦略は、身近に多く取り入れられている手法です。ここでは、ドミナント戦略の成功事例をご紹介します。

【コンビニ】セブンイレブン

セブンイレブンは、ドミナント戦略によって成功を収めた代表例です。1974年5月に江東区豊洲に第一号店をオープンしたのち、昭和49年度には15店舗、平成15年度に1万店舗を達成し、令和4年度には21,402店舗を展開しています。

当初は江東区から出ないとのルールで新店舗を展開していった姿勢にドミナント戦略が反映されており、オリジナル商品はドミナント戦略を背景に独自の専用工場の設置、販売時間帯に合わせた計画的な配送を実現し、新鮮で品質の高い商品の提供を可能にしてきました。

また、物流システムにもドミナント戦略のメリットが表れており、いち早く「お客様が求める商品を、店舗が必要とする数量で、確実に供給する」という物流体制づくりに取り組んでいます。

【ドラッグストア】ツルハグループ

ドラッグストア業界は成長が著しいこともあり、市場シェア拡大競争も激しい業界です。2016年度には22年間トップに君臨してきたマツキヨが3位に転落し、1位にイオングループのウェルシア、2位はツルハがランクインしました。

ツルハグループは、M&Aとドミナント戦略から市場シェアの獲得に成功した事例です。「薬剤を基盤に、地域に根ざして良い商品、サービスをおとどけする」をモットーに、ツルハドラッグのほか「くすりの福太郎」といった8ブランドを活用してドミナント戦略を実行しています。

同じドラッグストアでも地域性やニーズに応じた細かい店舗運営を可能にしているため、カニバリゼーションの抑止にもつながり、ドミナント戦略のデメリットを解消した革新的な手法が取り入れられています。

【飲食店】さわやか

完全なるドミナント戦略によって、全国的な知名度まで上り詰めた事例です。さわやかは静岡県内にのみ店舗を構え、2023年8月時点では県内に県内34店舗を構えています。県民の間で高い知名度を確立しているのはもちろん、県外からも多くの集客を獲得しているのです。

さわやかは商品の質が高いがゆえの口コミによる集客性の高さが特徴で、静岡県にしかないプレミア感も人気の秘密。

また、提供するハンバーグは牛肉100%ブロック肉のみ。産地から店舗・テーブル上まで、「安全・健康・元気の出るおいしさ」を届けるために、すべて「自社」で徹底した衛生管理のもとハンバーグを製造しており、肉の品質を守るためにも県内だけの提供にとどめています。