ランニングコストとは?【ビジネスでの意味をわかりやすく】

ランニングコストとは、事業やプロジェクトの継続的な運営に必要となる費用のことです。管理の重要性、算出方法、抑えるポイントなどを解説します。

1.ランニングコストとは?

ランニングコストとは、何かを使い続けるために必要となる継続的な費用のこと。日本語では「維持費用」と呼ばれ、英語では「Running(運営) Cost(費用)」と表します。

たとえば車に乗り続ける場合に生じるランニングコストは、ガソリン代や車検代、保険料など。ビジネスでは、企業活動を行うために必要な人件費、光熱費、家賃、機材や原料などの費用、税金や保険などが挙げられます。

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2.ランニングコストとイニシャルコストの違い

ランニングコストとともに、必ず生じるのがイニシャルコスト(Initial cost:初期費用)です。これらの違いについて解説します。

イニシャルコストとの違い

イニシャルコストとランニングコストの違いは、費用が発生するタイミングです。

ビジネスにおけるイニシャルコストは、会社や事業の立ち上げやシステムなどの導入にかかる初期費用を指すため、これらの運用を開始する前に発生します。一方のランニングコストは、事業の継続にかかる費用であるため、運用開始後に生じるのです。

イニシャルコストとの関係性

イニシャルコストとランニングコストの関係性は、一方を下げると他方が上がる、またはその逆の関係になるトレードオフの関係です。

たとえば自社ビルを建てた場合、建設費として多額のイニシャルコストがかかりますが、ランニングコストである家賃はかかりません。一方でオフィスを借りると建設費は抑えられますが、オフィスを借り続ける間は家賃が生じます。

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3.ランニングコストを管理する重要性

企業の経済的な持続性のためには、ランニングコスト管理が重要です。企業の日常活動に必要なランニングコストは、変動費と固定費に類されます。

  • 変動費は売上に比例して変動する費用で、原材料費や人件費など
  • 固定費は家賃や光熱費といった売上に依存しない費用

つまり企業は、ランニングコストを超える利益を確保しなければならないのです。また売上が同額でも、ランニングコストを削減できればより多くの利益を得られます。適切なランニングコスト管理は、企業活動の継続に不可欠なのです。

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4.ランニングコストの具体例

一般的に必要とされるランニングコストを解説します。

会社経営に必要なランニングコスト

会社経営にはヒトやモノが必要となり、それらを維持するためのランニングコストが必要です。ここでは9つのランニングコストを解説します。

仕入原価

商品やサービスを提供するために必要となる原材料や商品の購入にかかる費用です。商品を仕入れて販売する場合は、仕入先へ支払った商品代が仕入れ原価となります。

仕入原価を抑えるほど売上から得られる利益額が増加するため、場合によっては仕入先を見直すのも必要です。

人件費

ひとりの従業員を雇用し続けるのにかかる費用で、給与や福利厚生費、社会保険料、年金保険料などが含まれます。雇用契約が継続する限り毎月支払うため、ほとんどの企業で発生するランニングコストでしょう。

とくにサービス業のように業務を自動化しにくい業界では、人件費の管理が経営を左右するのも少なくありません。

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水道光熱費

水道、下水道、ガス、電気、灯油代などの費用です。これらは事業に必要な経費として処理できますが、個人的な使用分は除かなければなりません。

自宅で事業を行っている場合、使用時間や使用日数から自宅での使用分と事業での使用分における割合を求め、この割合で金額を按分します。

地代家賃

事業に必要な事務所や倉庫、店舗、駐車場などを借りるときに支払う費用です。経費として計上できるため、売上に対する経費の負担率を下げられます。以下は地代家賃に計上できる費用の例です。

  • 建物や土地の賃料
  • 管理費
  • 修繕費
  • 保険料
  • 税金

広告宣伝費

不特定多数の者に対する宣伝のために必要な費用です。広告や宣伝は販売活動において不可欠であるため、広告宣伝費の適切な管理が求められます。以下は広告宣伝費に含まれる費用の例です。

  • 雑誌やテレビCMなどのメディア広告
  • DMやパンフレットなどのダイレクトマーケティング
  • 求人広告
  • 自社名や商品名を入れた少額物品の制作費(カレンダーやタオルなど)

消耗品費

定期的に必要となる物品にかかる費用です。具体的には、オフィスで使われるプリンターのインク代やコピー用紙、文房具などの購入費用が挙げられます。複合機のリース代といった定額制サービス利用料金も消耗品費です。

税金や保険

税金や保険は、会社の利益や売上に関係なく継続的に発生するランニングコストです。以下のような費用が挙げられます。

  • 税金:法人税、住民税均等割、消費税など
  • 保険:社会保険料、火災保険、自動車保険(社用車)など

なかでも法人住民税の均等割は、会社が赤字であっても最低7万円を納めなければならないため、固定費ともいえます。

社用車に関するランニングコスト

社用車を所有し走行するために発生する費用で、ガソリン代や車検費用、修理代や自動車税、駐車場代や高速道路料金などが含まれます。

車を購入する際、イニシャルコストが発生する一方、燃費性能によってランニングコストが増減するもの。両コストのバランスを考慮したうえで車種を選ぶ必要があります。

情報システムに関するランニングコスト

システム導入後、運用や保守、改修などにかかる費用です。月額利用料、ソフトウエアやハードウエア、場所などの貸借費、通信費、人件費などが挙げられます。なお電気代は含めません。

運用や保守、改修などを他社へ依頼すると、さらにランニングコストが増加するでしょう。

住宅に必要なランニングコスト

住宅の維持と管理に必要な費用で、固定資産税、都市計画税、メンテナンス費、保険料、光熱費などが含まれます。

ランニングコストが変動する要因は、住宅の種類や状態、保険会社や契約内容、家族構成やライフスタイルなど。そのため購入前には、住宅ローンだけでなくこれらのコストも合わせたランニングコストを試算する必要があります。

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5.ランニングコストの算出方法

ランニングコストは、事業などを運営するにあたったひと月に生じる費用を算出、それらを合計します。ここでは雇用とシステム利用で発生するランニングコストを計算してみましょう。

雇用で生じるランニングコスト

ひとりの従業員を雇用すると、ひと月に以下のような費用が一般的に発生します。

  • 基本給
  • 賞与
  • 残業代
  • 各種手当
  • 福利厚生費(交通費、食事補助費、健康診断費など)
  • 社会保険料
  • 教育や研修にかかる費用

企業によっては退職金の積み立てなども含まれるかもしれません。また5日の年次有給休暇取得が義務化されているため、有給休暇が付与されている従業員は、最低でも5日分の有給休暇で生じる賃金もランニングコストへ加算すべきでしょう。

算出方法

月収25万円、賞与2か月分を支給する正社員を雇った場合に生じる年間のランニングコストのうち、給与と社会保険の金額を計算してみましょう。

  • 給与:350万円(基本給25万円×12か月+賞与50万円)
  • 社会保険料:44万1,480円(健康保険料1万3,000円+厚生年金保険料2万3,790円)
    ※2023年4月以降の東京都における健康保険・厚生年金保険の保険料額表より算出
  • 労働保険料:4万3,750円(雇用保険料3万3,250円+労災保険料1万,500円)
    ※2023年4月以降の労働保険料「一般の事業」9.5%と、労災保険料「その他各種事業」3%を参照
  • 年間のランニングコスト合計:398万5,230円

システム利用で生じるランニングコスト

システム利用で生じるランニングコストは、提供されているオンラインシステムを運用するクラウド型と、自社でシステムを構築するオンプレミス型で異なります。

  • クラウド型システムのランニングコストは、月額料金としてサービス提供者に支払う費用や、インターネット回線、セキュリティ対策などの費用
  • オンプレミス型システムでは、自社でシステムの運用保守を行う必要があり、ソフトウエアやハードウエアの更新や修理、バックアップや障害対応などを行うための費用が発生

算出方法

ここではクラウド型人事システムを22名の従業員が利用する場合の年間ランニングコストを算出してみます。料金は架空のものです。

  • 月額利用料金:12万円(プラン料金月額1万円、5名まで同額)×12か月
  • ユーザー追加料金:10万2,000円(6人目以降はひと月500円×17人分=8,500円)×12か月
  • 年間のランニングコスト合計:22万2,000円

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6.ランニングコストを抑えるポイント

ランニングコストを抑えるポイントは、必要不可欠なコストと見直し可能なコストを判断し、適切なバランスを取ること。なかでも業務遂行において生じるランニングコストは、インターネットを活用すると大きく削減することも可能です。

業務の改善

業務改善を行って人件費や時間の無理や無駄、ムラなどを削減すると、ランニングコストの削減のみならず、品質や生産性の向上効果も期待できます。

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ペーパーレス化

ペーパーレス化により、コスト削減と利益向上の両方を期待できます。

印刷や保管にかかる直接的なコストを大幅に削減でき、印刷した資料や書類を配布するための郵送費も不要です。さらにペーパーレス化によって情報の検索や共有が容易となるため、リモートワーク時も作業効率が下がる心配がありません。

ペーパーレス化で業務効率が向上すれば、売上や利益も増大する可能性もあります。

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リモートワークの導入

リモートワークの導入によって、交通費や出張費など従業員の移動にかかる費用を削減できます。

ビデオ通話ツールを活用すれば、会議や研修などもオンラインで実施でき、より多くのランニングコストを削減可能です。また移動にかかる時間も不要となり、業務効率も高まるでしょう。

リモートワークによって働き方の多様性や柔軟性が高まると優秀な人材を確保しやすくなるため、組織力の向上効果も期待できます。

リモートワークとは?【どういう意味?】種類、効果
近年、インターネット環境が普及し、自宅やカフェ、コワーキングスペース、レンタルオフィスなど、会社のオフィス以外で仕事できるようになりました。 政府が推進する働き方改革の影響もあり、個人に合わせた多様な...

システムの活用

業務システムの活用でもっとも期待できるのは、人件費の削減。入力や集計、分析などの作業が効率化するため、業務遂行にかかる人員と作業時間を減らせます。ミスの防止にもなり、業務の質も向上するでしょう。

AIによる判断や自動化が利用できるシステムであれば、高度な分析や意思決定なども迅速に行えるようになるため、さらに業務効率が高まります。

固定費の削減

オフィスの固定費で大きな割合を占めるのが、家賃やエネルギーコスト。これらを削減すると、ランニングコストを抑えられます。

LED照明の活用

既存の照明をLED照明へ交換すると、電気料金や物的コストを削減できます。

2012年の経済産業省の「LED照明産業を取り巻く現状」によると、LEDの発光効率は白熱電球の6倍、蛍光ランプの1.3倍。近年はより品質が向上しているため、消費電力は白熱電球の20%ほど、蛍光ランプでは40%ほどで済むとされています。

賃料の削減

オフィスの賃料を削減するには、移転やシェアオフィスの利用が有効です。近年では、リモートワークを導入している企業が小規模あるいは都市部から離れたオフィスへ移転し、賃料を抑えケースも増えています。

一方のシェアオフィスは、必要な分だけ執務スペースを借りられるサービスです。共有の会議室やOA機器を使えることも多いため、設備にかかるランニングコストを抑えられます。