行動評価とは? 項目例、能力評価との違い、メリットを簡単に

行動評価とは、成果を出している従業員の行動を評価基準とした評価手法です。結果や能力だけを基準とした評価システムは、従業員の努力や取り組みが正しく評価されない恐れがあります。明確な評価基準のもと、公平な評価が行えるようになるのが行動評価の主なメリットです。

今回は行動評価について、メリットやデメリット、評価項目の例や導入方法などを詳しく解説していきます。

1.行動評価とは?

行動評価とは、成果を出している従業員の行動を基準とした評価方法のことです。別名「コンピテンシー評価」とも呼ばれます。スキルや能力ではなくパフォーマンスを発揮した結果や行動が評価基準となり、成果ではなく業務プロセスを評価する点が特徴です。

高い成果を出す人材には特定の行動特性が見られるため、ここを基準にし、どれだけ到達しているかを評価して従業員の成長を促します。行動評価はアメリカを中心に導入されていた評価システムであり、近年日本企業でも多く取り入れられているのです。

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コンピテンシーとは?

コンピテンシーとは、高い成果・パフォーマンスを発揮する人材に共通して見られる行動特性のこと。コンピテンシー(Competency)は、「能力」「資格」「適性」の意味を持つ言葉です。ビジネスにおいては、優れた成果を生み出す個人の行動特性を示します。

企業や職種において成果を出す優秀な人材の特徴はさまざまあるため、コンピテンシーの定義は企業や職種によって異なります。

そのため、基本的にコンピテンシーは自社のハイパフォーマーを参考に作成されるのです。なお、厳密には「行動評価=コンピテンシー評価」ではなく、コンピテンシー評価は行動評価の1種となります。

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2.行動評価と業績評価、能力評価との違い

それぞれの違いは「評価対象」にあります。

行動評価 成果に結びついた行動
業績評価 設定した目標(成果・業績)
能力評価 職務遂行能力

業績評価は具体的な数値結果にもとづいて評価するため明確な基準のもと評価できるものの、結果でしか評価できず過程が評価されません。

また、能力評価は個人が持っている能力が高いほど評価も高くなるものの、実績が評価に含まれない場合もあります。つまり、実際の仕事が十分に評価されない恐れもあるのです。

人事評価では、業績評価や能力評価の良い点を盛り込んだ制度が一般的といえます。行動評価は業績評価と組み合わせると、過程も評価できるようになりバランスが良い評価システムを構築できます。

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3.行動評価のメリット

行動評価を導入すると、以下5つのメリットに期待できます。各メリットをみていきましょう。

明確な評価基準のもと公平な評価ができる

透明性の低い不公平感のある人事評価は、従業員から不満や不信感を持たれやすく、最悪のケースでは離職に発展する恐れもあります。

行動評価では、明確な基準のもと評価内容がわかりやすいため、評価基準が曖昧にならず、評価結果に対しても納得感を持ちやすい点がメリットです。

従業員も評価につながる具体的な行動がわかるため、モチベーションを高めて意欲的に仕事に取り組める効果も期待できます。また、公平な人事評価がなされるため、エンゲージメントや定着率の向上にも有効です。

成果と連動しやすい

行動評価では、実際に成果を出している人材の行動特性を基準とします。実績をもとにした明確な指標のもと従業員も行動するため、成果と連動できる点がメリットです。

また、成果を出せば評価されるわかりやすいシステムであるため、評価と成果につながる行動基準のもと、成果を出せる行動が起こせます。個人の成果が上がれば、結果的に企業全体の業績アップも期待できるでしょう。

人材育成に生かせる

行動評価のひとつであるコンピテンシー評価は、効率的かつ効果的な人材育成につながります。優秀な人材の行動特性であるコンピテンシーをもとに人材育成すると、成果を出すために必要な能力を効率的に伸ばせるでしょう。

また、従業員もコンピテンシーによって評価を上げるために自主的な行動を起こしやすくなり、自己を研鑽する意識が高まります。

評価エラーを防げる

とくに能力評価では、目に見えない要素が評価対象であるため、評価エラーが起きやすい傾向にあります。能力と実績は必ずしも連動するとは限らないため、人によっては不公平感のある評価結果になってしまうことも。

また、業績評価では結果のみを重視するため、プロセスが評価されないことで従業員の不満につながる恐れもあります。行動評価を軸に評価を行うと、こうした評価エラーの防止にも役立つのです。

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経営ビジョンの浸透に役立つ

行動評価は、企業のミッションや方針を浸透させる手法のひとつともいえるもの。評価基準に企業が理想とする従業員の行動を入れ込むと、経営ビジョンの浸透に貢献します。

評価と連動していることで実際に行動に落とし込めるようになるため、企業が一体的に同じ方向へと進めるようになるのです。

経営ビジョンを浸透させる行動評価を行うには、ミッション・ビジョンの達成に必要な行動を明確化するとよいでしょう。

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4.行動評価のデメリット

一方で、行動評価には以下のようなデメリットもあります。

評価システムの導入に人的リソースが必要

評価基準となる行動特性の定義、定義した行動特性に沿った評価基準の策定には、人的リソースがかかります。というのも、行動特性は部署や職種、等級によってもさまざまであり、具体的かつ細かい明示が必要になるからです。

しっかりと運用できる行動評価システムが構築できないと、効果も発揮しません。構築までに多くの手順を踏む必要があるため、導入のハードルは高いといえます。

効果が出るまでに時間がかかる

行動評価は、能力評価や業績評価とは異なる軸での評価となります。社風や考え方に影響をおよぼすケースもあり、成果や業績を重視する人からは不満が出る可能性も0ではありません。

そして、行動評価の考え方が浸透するまでには時間がかかり、行動評価のシステムが浸透するまでには時間がかかる点に注意が必要です。

また、評価基準として設定した行動特性が必ずしも適切とは限りません。何度も検証を重ねて、成果につながる行動評価ができているかを分析しつつ、調整が必要となる評価システムです。

定期的な見直しが必要

基準が明確かつ細分化されていることはメリットでもある一方、変化に適応しにくい点はデメリットです。企業は成長過程や市場環境の変化によって、必要とされる行動も変わってきます。

そうなると評価すべき行動基準も異なるため、行動評価も合わせて変えていく必要があるのです。構築に時間がかかるがゆえに、行動特性の再定義や内容の見直しには多くのコスト・リソースがかかってしまいます。

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5.行動評価の項目例

行動評価では、成果を出している従業員の具体的な行動に関する項目を設定します。ここでは、行動評価の項目例と書き方をご紹介しましょう。

目標達成のための行動

目標を達成するための従業員が起こした行動に関する項目です。

  • 支持される前に行動しているか
  • 目標達成のためにどのようなアクションをしたか
  • ミーティングや会議でアイデアを出しているか

自発的かつ具体的な行動を起こせているかが評価ポイントです。公平な評価のためにも、行動については評価の際に事実確認を行う必要があります。

支援・人的サービス

ほかのメンバーや顧客に対して適切なサポートや対応ができているかを評価する項目です。

  • メンバーと協力できているか
  • 課題解決に一緒になって取り組めたか
  • 顧客のニーズに対して先回りして対応できたか

他社に対するサポートや対応は数値的な成果のように表に出にくく、評価しにくい項目です。行動評価だからこそ、こうしたポイントも適切に評価できるようになります。

インパクト・影響力

発言や行動が他の従業員やチームに与えた影響・インパクトに関する項目です。

  • チーム内で評価される提案ができたか
  • 相手を惹きつける魅力的なプレゼンができたか
  • 良好な関係を築くための行動ができているか

周囲と良好な関係性を築くために行動できたか、周囲のモチベーションを高めるような行動ができたかなど、周囲に与えると良い影響やインパクトを盛り込みます。

マネジメントコンピテンシー

チームをマネジメントし、目標達成に貢献できたかを評価する項目です。

  • 課題に対して合理的に対応できたか
  • 自分の感情を適切にコントロールして上司や部下と接せられたか
  • 部下に対して誠実かつ配慮ある行動ができているか

マネジメント能力そのものを評価してしまうと、w行動評価ではなく能力評価になってしまいます。マネジメントスキル自体を評価するのではなく、マネジメントスキルによってどれだけ成果を出せたかに着目することがポイントです。

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6.行動評価基準設定で役立つコンピテンシーモデルとは?

コンピテンシーとは、高い成果を出しているハイパフォーマーに共通する行動特性のこと。そしてコンピテンシーモデルは、実務ベースでコンピテンシーを具体化した「お手本」となります。

コンピテンシーモデルは、他社や他部署で作成したモデルを使い回しても意味がありません。なぜなら、成果を上げる行動特性は環境や職種によって異なるからです。そのため、コンピテンシーモデルは、企業や業種・職種、部署に応じて独自に作る必要があります。

行動評価の基準を設定する際、コンピテンシーモデルの設計が重要です。コンピテンシーモデルは、主に以下3種類に分類されます。

理想型モデル

企業が理想・模範とする人物を想定して設計するコンピテンシーモデルです。組織内に目標とすべきモデルがいない場合のコンピテンシーモデル設計に役立ちます。

ただし、理想的な要素ばかり盛り込んでしまうと現実味がなくなってしまうため、理想を入れ込みつつ、あくまで現実味のあるモデルを設定することが必要です。

実在型モデル

社内に実在する従業員をモデルに設計するコンピテンシーモデルです。実在するモデルであるため、現実味の高いコンピテンシーモデルが設計できます。

挙げる行動特性のポイントは、その人が先天的に備えているものなのか、後天的に身につけられるものなのかを明確にわけること。先天的に持っている適性や資質は、後天的に備えることが難しい場合もあるからです。

ハイブリッド型モデル

理想とするモデルと実在するモデルを組み合わせて設計するコンピテンシーモデルです。実在する従業員の特徴に企業が求める要素をプラスするため、現実味がありつつも企業の求める行動特性を促せます。

どうコンピテンシーモデルを設計すればよいか迷った場合には、ハイブリッド型モデルがオススメです。

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7.行動評価の導入方法

行動評価は、以下ステップで導入します。

  1. 評価基準の策定
  2. 評価者の選定・育成
  3. 従業員への説明
  4. 評価の実施と定期的な見直し

ステップ別に導入方法を解説します。

①評価基準の策定

まず行うのは、評価を行う基準や項目の決定といった評価基準の策定です。評価基準は全従業員に当てはまる「共通基準」と部署や職種、等級ごとに異なる「個別基準」を設定します。

「理想型」「実在型」「ハイブリッド型」のどの方法でモデルを設定するかを決めたら、理想型以外はモデルとなる人物のデータを集め、共通する行動特性を洗い出しましょう。

行動特性を洗い出す主な手法は、行動観察やインタビューなど。基準に偏りが出ないよう多角的な視点で設定しながら、難易度は現実的か、会社の方針と乖離がないかをチェックしていきます。

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②評価者の選定・育成

明確な評価基準が設定できても、評価者がしっかり評価できないと期待する効果は発揮できません。選定した評価者に対しては、行動評価を実施する目的を理解してもらい、評価方法のマニュアルや研修から育成を行いましょう。

③従業員への説明

評価者の選定・育成と同時進行で行うべきが、従業員への説明です。行動評価の目的や実施によって目指すこと、評価基準について説明しましょう。評価基準が部署によって異なる場合もあるため、説明は全体でやるよりも部署ごとが望ましいです。

突然新しい評価システムを導入して運用することは混乱を招き、従業員の不安や不信感につながる恐れもあります。十分に説明すると同時に、従業員の意見を聞き入れる体制も整えることがポイントです。

④評価の実施と定期的な見直し

評価システムが整ったら、実際に評価を実施します。このとき、ただ評価するだけでなく、内容の整合性や実際の評価に伴う不具合などもチェックしていくことがポイント。

行動評価は一度で完璧な評価が行えるとは限らず、検証を重ねて効果的な基準を作り上げていく必要があります。

また、社内の状況やビジネス環境の変化にも注意しましょう。求める人物像が変わっていないかも定期的にチェックし、評価基準に落とし込んでいくことが必要です。1年に1回、最低でも3年に1回の頻度を目安に見直してみましょう。