評価者研修とは?【必要な理由】目的、具体例、実施ポイント

評価者研修とは、管理職や人事部の担当者など、人事評価の評価者を対象とした研修です。人事評価の仕組みや評価方法、評価に必要な知識・スキルを体系的かつ実践的に学べます。

評価は人材戦略の重要な要素であり、従業員が評価に不公平感や不満感を抱いている場合には、早急に改善しなければなりません。今回は評価者研修について、目的や必要な理由、評価者研修を実施するメリットや研修のコンテンツ具体例などをご紹介します。

1.評価者研修とは?

評価者研修とは、人事評価の評価者を対象とした研修のこと。主な対象者は、評価者となる管理職や人事部の担当者です。人事評価の仕組みや評価方法、評価基準などへの理解を深め、的確な人事評価を行うための知識・スキルを習得することを目的に実施します。

ここでいう評価には、目標設定や育成計画の策定、部下の成長支援から評価までの一連のプロセスも含まれるのです。評価者研修では評価に関連するあらゆる要素を学び、評価の質を向上させられます。

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評価者研修の導入率

産労総合研究所「2016年 評価制度の運用に関する調査」によると、評価者研修を導入している企業は71.4%と約7割の企業が実施しています。

評価者の評価力の担保・向上は評価制度における永久的な課題です。適切かつ公平性のある評価を実施するうえで、基礎知識の習得や評価者間の基準をそろえる研修は欠かせないものと認識されています。

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2.評価者研修の目的

評価者研修の大きな目的は、評価の質を担保・向上すること。評価における知識・スキルがない状態では、主観が入るといった心理的な偏りが働くリスクも高まり、従業員が納得できる正しい評価が行えません。

評価者研修では、評価者が人事評価制度を正しく理解し、正しい手順と基準を持って評価が行える状態を目指します。

公正・公平かつ従業員が納得できる評価を行えば、組織全体のパフォーマンスに直結するでしょう。さらに評価結果は人材育成や人材配置のベースともなる重要なデータです。

また、評価に納得できるかどうかは従業員エンゲージメントの観点でも重要であり、適切に評価される環境では、従業員がモチベーション高く意欲的に働けます。人材戦略やエンゲージメント向上の観点からも人事評価は大きく影響するため、評価者の質が重要です。

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3.評価者研修が必要な企業・ケース

評価者研修はどのような企業・ケースで必要となるのか、具体例からみていきます。自社の状況に当てはまる場合は、評価者研修の導入を検討してみましょう。

人事評価制度が正しく運用されていない

どれだけ素晴らしい人事評価制度が構築できていても、評価者が理解し、正しく評価できていないと意味がありません。人事評価制度自体に問題がなくとも、評価運用に不満の声が上がっている、うまく活用できていないと感じた場合は評価者研修が必要です。

実施可否を判断するにあたって、評価者がどれだけ自社の人事評価制度を理解しているかをチェックしてみるのもひとつの方法です。従業員に対しても評価に対するアンケートを実施し、評価への不満や改善すべき点を調査してみましょう。

評価に対する不満の声が聞かれる

評価に対する不満の声が上がっている場合、評価者研修の導入が必要です。評価の不満はエンゲージメントやモチベーションの低下につながり、従業員のパフォーマンス低下の原因となります。最悪のケースでは、離職に発展する恐れもあります。

この場合不満が人事評価制度自体に対してか、評価者・評価内容に対してかを見極めることが必要です。不満の原因が後者であれば、評価者研修で改善を図りましょう。

従業員の目標達成率が低い

従業員の目標達成率がなかなか上がらないときも、評価者研修によって解決できる可能性が高いでしょう。というのも、目標達成率と評価は関連性が高く、評価は目標達成の結果から行われるものであるからです。

目標達成率の低さは、上司が適切な目標設定をできていないケースも考えられます。評価者研修では適切な目標設定の手法などについても学べるため、評価の質を向上させると同時に、目標達成率の改善にも有効です。

人事評価を育成に活用できていない

人事評価は、単に従業員を評価するためだけのものではなく、人材育成に活用してこそ評価結果が生かされます。

人事評価制度は従業員に期待する姿を伝えるツールともいえ、評価項目に設定した能力が身についているか、育成余地があるか、どのような育成計画を策定すればよいかを判断する基準となるもの。

従業員の育成に人事評価を活用できていないと感じる場合、評価者研修の実施をオススメします。

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4.評価者研修を行うメリット

評価者研修を行うと、以下のようなメリットが期待できます。

評価スキルが標準化できる

評価者のスキルレベルや評価経験が同一とは限らず、新しく評価者の立場になった人と何年も経験している人では評価スキルにも差が生じます。

評価者が同一の研修を受けることで同じ知識・スキルが身につけられ、評価スキルの標準化に有効です。経験の差による評価の質に多少の粗は出るものの、体系化されたノウハウを学ぶことで評価者全体のレベル向上につながります。

評価の質が向上する

評価者の評価レベルが向上し、標準化することで評価の質自体も向上します。結果、組織内で評価による差が生まれず、従業員からも納得感が得られやすくなるでしょう。

評価の質向上は、人材育成や人材配置の質向上にも直結するもの。人材戦略全体の質が向上すれば、結果的に組織パフォーマンス全体の向上に期待できます。

従業員エンゲージメントの向上につながる

公正公平かつ適切な評価がなされていると、従業員も結果に納得しやすくなります。評価へ納得できるということは、自分の能力や努力、取り組みが正しく評価されていると認識できている状態です。

そうした状態では従業員個々の意欲やモチベーションも高まり、結果的に組織全体の生産性向上につながります。

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5.評価者研修が必要な主な理由|評価エラー

評価者研修が必要な主な理由は、評価エラーなく評価を実施するためです。評価エラーとは、評価者の心理が働き、実態とは異なる評価をしてしまうこと。人事評価を行ううえでは、7つの評価エラーが発生するといわれています。

評価者研修で体系化された評価スキルを学ぶと、評価エラーの解消にもつながります。評価者研修が必要な理由として、解消すべき7つの評価エラーをみていきましょう。

  1. ハロー効果
  2. 中心化傾向
  3. 寛大化傾向
  4. 逆算化傾向
  5. 期末誤差
  6. 対比誤差
  7. 論理誤差

①ハロー効果

ハロー効果とは、被評価者の目立つ特徴に影響を受け、ほかの評価項目も同じように影響し正しく評価できなくなってしまうこと。「ハロー(halo)」とは「光」を意味し、光に目が眩んで周りがよく見えなくなることが由来の心理学用語です。

  • 一流企業からの転職者なので実態よりも仕事ができると評価する
  • 大きな1つのミスが全ての評価に影響してしまう

ハロー効果では、相手の良い特徴と悪い特徴の両方が評価に影響してしまいます。実態とは異なる評価を下してしまうため、公正性に欠ける正しくない評価がなされてしまうのです。

②中心化傾向

中心化傾向とは、評価が中間値に集中する傾向のこと。

  • 実態にかかわらず5段階評価のうち3の評価をつけてしまう

無難な評価をつけることで可もなく不可もない結果となるものの、実態と異なるため適切な評価とはなりません。評価者が評価スキルに自信がない、正しい評価をつけることで被評価者からの反応を過剰に気にしてしまう人にありがちな評価エラーです。

③寛大化傾向

寛大化傾向とは、全体的に評価が甘くなる傾向のこと。部下からの反発を避けたい、部下からよく思われたい心理が評価に反映することで起こります。

  • 仲の良い部下に対して良い評価をつける
  • 部下から嫌われたくないがゆえに厳しい評価を下さない

寛大化傾向は、相手との人間関係を有利にしたい、人間関係への自己防衛が働くことで起こるほか、被評価者の業務に対する理解が浅い場合も起こりやすいエラーです。

④逆算化傾向

逆算化傾向とは、先に最終的な評価を決定し、その評価に帳尻を合わせるため後づけで評価を調整することです。

  • 昇格させるため本来であれば1の評価を高めに評価してしまう
  • 賞与に影響がない程度に評価内容を調整する

いわゆる、企業都合や辻褄合わせで生じるエラーです。最終的な決定に帳尻を合わせるため細かい評価も影響し、実態とは違った評価結果となってしまいます。

⑤期末誤差

期末誤差とは、人事評価を実施する時期に起きた出来事や成果が評価に強く影響すること

  • 期末評価前の2月に大きなミスをしたため全体の評価を下げる

期末誤差が従業員に認識されてしまうと、期末付近以外で頑張る意味がないと判断されてしまいかねません。期末誤差は評価期間が長いほど生じやすいエラーであり、評価者と被評価者の日頃からの関わりが薄いことでも起こりやすいエラーです。

⑥対比誤差

対比誤差とは、評価者自身や第三者との比較によって評価すること

  • 自分の得意分野については厳しく評価する
  • 自分が劣っている分野では甘く評価する

たとえば、被評価者が営業目標を100%達成していても、評価者自身は150%達成となるため、本来A評価のところをB評価にしてしまうといった例が対比誤差です。とくに、自分の得意・専門分野については自分自身を基準とするため、主観が介入しやすくなります。

⑦論理誤差

論理誤差とは、事実確認せずに一般的な論理や憶測から評価を下すこと

  • 高卒者なので能力面で劣っていると判断し評価にも反映する
  • プロジェクトリーダーをやっているためコミュニケーション能力が高いと評価する

論理誤差では類似する事柄を関連づけ、事実とは違った評価を行なってしまいます。論理上関連して良い・悪い評価になることもあるものの、論理誤差では事実確認していない点が問題です。

思い込みで陥りやすいエラーであるため、評価者が正しい評価知識・スキルを身につけることが有効な解決策といえます。

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6.評価者研修のコンテンツ具体例

評価者研修では、評価に必要な知識・スキルを体系的に学びます。どのようなコンテンツが学べるのか、3つのコンテンツから具体例をご紹介しましょう。

具体例①人事評価制度とは何か

  • 人事評価制度とは
  • 人事評価制度の意義と重要性
  • 人事評価制度の役割
  • 人事評価の影響

人事評価制度とはなにかについて学ぶ基本のステップです。人事評価制度について正しく理解していないことには、正しい評価もできません。評価制度の意味や役割、重要性を理解することで評価者としての責任の高さや役割の重要性を理解できます。

具体例②評価者に求められるスキル

  • 評価者に必要なスキルを理解する
  • 目標設定スキルについて
  • 育成スキルについて
  • フィードバックに必要なスキル

評価者研修では、評価に必要なスキルを身につけられます。すでに該当のスキルが備わっている場合でも、評価に活用できるかはわからないため、評価者視点であらためてスキルを習得していきます。

具体例③評価面談・フィードバック面談の方法

評価面談やフィードバック面談も、評価に欠かせない要素です。ヒアリング能力やコミュニケーション能力を養うことで、被評価者と密な面談ができ、正しい評価を行う上での情報が引き出せるようになります。

また、評価後のフィードバック面談は部下の育成や目標設定にもかかわる重要なポイントです。部下に伝わらないフィードバック例や上手なフィードバックのポイントを学び、実際の評価に生かしていきましょう。

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7.評価者研修実施のポイント

評価者研修を実施する際は、以下のポイントを押さえてみてください。

評価者研修実施の目的を明確にする

まず、評価者研修を実施する目的を明確にしましょう。評価者研修を受けてどうなってほしいか、評価・評価者に関する課題を洗い出すと目的を明確にしやすくなります。

目的に応じて、評価者研修で実施すべきコンテンツも変わってくるもの。まずは課題を洗い出し、評価者研修で改善できるものは積極的に評価者研修を活用しましょう。

実践的なコンテンツも入れ込む

体系的に知識・スキルを学ぶことも大切です。しかし実際の評価でそれらが活用できせないと意味がありません。研修では体系的に知識・スキルを学び、アウトプットとして実際に評価を行う実践的なコンテンツも入れ込むことがオススメです。

実際の評価とは異なるものの、評価エラーへの理解が深まったり、すぐにアウトプットしたりすることで知識・スキルが身につきやすくなります。

定期的にフィードバック・振り返りを行う

フィードバックや振り返りから評価者研修の内容が評価に生きているか、評価者研修を実施したことで評価によい変化があったかを分析しましょう。

研修を受けることが目的にならず研修内容を身につけるためにもフィードバックや振り返りが必要です。研修後はレポート提出を行って、丁寧に振り返りとフィードバックを行いましょう。