人材アセスメントとは、人材のスキルや能力を分析・評価すること。人材アセスメントから客観的に人材のスキル・能力を可視化すると、採用や育成、配置などの人材戦略に活用できます。
今回は人材アセスメントについて、必要とされる理由や導入のメリット、導入の進め方などを詳しく解説します。
目次
1.人材アセスメントとは?
人材アセスメントとは、人材のスキル、能力を客観的に分析・評価すること。「アセスメント(assessment)」とは、「評価」「査定」を意味します。アセスメントから人材の能力を可視化して、人材育成や人材配置などの人材戦略に役立てることが目的です。
人材アセスメントの手法は、適性検査や知能検査、性格診断やヒアリング、アンケートやアセスメント診断などさまざま。基本、主観の入らない第三者が評価します。
人材アセスメントは、第二次世界大戦前後に人材評価プログラムとして登場し、日本企業では1975年頃から活用されている手法です。
2.人材アセスメントと人事評価の違い
両者の大きな違いは、評価における客観性です。人事アセスメントは、第三者が審査・評価するため客観性が高いものの、人事評価は上司が従業員のスキルや成果、実績をもとに評価します。
人事評価は現場での仕事ぶりが基準となり、直属の上司が評価することからも主観が介入しやすく、客観性に欠けるリスクもあるのです。
人材アセスメントは人材の能力を評価し、可視化するツール。人材が本来持つ能力を見える化し、人材戦略に活用することを目的としています。
必ずしも人事評価に直結するとは限りません。しかし人事評価に活用すると、公平性・客観性を保った評価が可能となり、従業員の納得感が高まりやすいです。
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3.人材アセスメントが必要とされる理由
人材アセスメントが必要とされる理由は、企業構造や社会の変化によって画一的な評価方法、マネジメントが適用しなくなったからです。その背景から、人材アセスメントが必要とされる理由を詳しくみていきます。
終身雇用制度・年功序列の実質崩壊
これまでの日本企業は、長年にわたって終身雇用を前提とした年功序列型の人事制度が主流でした。しかし、現代は少子高齢化による労働人口の減少、キャリア形成における転職の一般化を背景に人材の流動性が高まっています。
こうした状況では優秀な人材を確保しにくく、かつマネジメント人材の不足が深刻化しているのです。
また、グローバル化の影響で成果主義型やジョブ型雇用が普及し、社会構造の変化によって、これまでのような画一的な評価・管理が困難になりつつあります。
そのようななか人材の能力を定量的に可視化できるシステムが備わっていない企業が多いことからも、人材アセスメントの必要性が高まっているのです。
「個」を重視する必要性の高まり
終身雇用制度や年功序列の実質崩壊に関連し、現代のビジネス環境では「個」が重視されるようになってきています。人材不足、かつ人材確保が困難な状況では、いかに今の人材リソースで最大限パフォーマンスを発揮できるかが重要です。
そのためには、従業員個々の能力を把握し、適材適所な配置によって適性やスキルを最大限活用することが欠かせません。
人材アセスメントは、従業員の本来の能力を可視化するツールであるため、個々の能力を把握した上で人材戦略に活用することが可能です。
従業員も「個」を重視され、自分の能力が最大限発揮できる環境を求めていることからも、人材アセスメントの有用性が高まっています。
働き方の多様化による評価の難化
リモートワークやフレックスタイム制など、多様な働き方を導入する企業も増加。一方で、多様な働き方の課題に適切な評価の難化が挙げられます。
出社すれば部下の仕事ぶりが直にわかる環境ですが、リモートワークは普段の仕事ぶりが把握しにくく、直接コミュニケーションを取る機会が減るため部下の特性や適性も正確に把握できない環境です。
そこで、人材アセスメントなら、第三者の評価によって客観性の高い評価が可能となります。多面的に個人を評価するため、本来の能力や働きぶりが評価されやすくなるだけでなく、適切な評価から従業員のモチベーションやエンゲージメントを高められるのです。
4.人材アセスメントを実施するメリット
人材アセスメント実施のメリットを企業側、従業員側の視点から解説します。
企業側
人材アセスメントによる、企業側のメリットは以下4つです。
- 採用のミスマッチが軽減できる
- 適材適所な人材配置が行える
- 効率的かつ効果的な人材育成ができる
- 定着率が向上する
①採用のミスマッチが軽減できる
人材アセスメントを採用に活用すると、自社に必要な人材を見極めやすくなります。採用では「入社してから思ったような活躍をしていない」「業務内容との適性が合わずに早期離職してしまった」といった課題が発生するケースも珍しくありません。
人材アセスメントを実施すると、人材の行動特性が客観的に把握でき、自社にマッチする人材を選びやすくなります。採用のミスマッチ軽減は、結果的に採用コストの削減にも有効です。
②適材適所な人材配置が行える
人材アセスメントによって適材適所な人材配置が行えれば、従業員のモチベーションや生産性の向上に期待できます。また管理職の選任・配置にも有効です。管理職には実務面の成果だけでなく、管理職としての適性が備わっている必要があります。
適材適所な人材配置ができていれば、それぞれが最大限のパフォーマンスを発揮できるでしょう。結果、組織全体のパフォーマンスが向上し、業績アップにつながります。
③効率的かつ効果的な人材育成ができる
人材の適性や個性はそれぞれ異なるため、同じ育成方法で同じように成長するとは限りません。人材アセスメントを活用すると、一人ひとりに合った効率的な育成が可能です。
素質や潜在能力を把握して強みを伸ばしたり、新たな能力を発見できたりする育成ができれば、パフォーマンスの最大化に期待できます。
さらに、従業員が個に着目した育成がされていると認識できるため、帰属意識ややりがいの創出、育成した優秀人材の流出防止にもつながるのです。
④定着率が向上する
強みが生かせる適材適所の配置、納得感が高い評価が実施できていると、従業員エンゲージメントが向上します。さらに、採用のミスマッチも軽減されて早期離職が起こりにくくなるなど、定着率の向上に有効です。
労働人口が減少し、人材確保が困難な現代では、いかに定着率を上げるかが重要となります。定着率の高い企業はイメージもよく、求職者からも魅力的な企業として応募が集まりやすくなるでしょう。
従業員側
人材アセスメントによる、従業員側のメリットは以下3つです。
- 評価への納得感が高まる
- キャリアデザインがしやすくなる
- 能力・強みが生かせる
①評価への納得感が高まる
第三者からの客観的な評価により公平性が保たれ、納得しやすい評価となります。上司だけの評価では主観が介入したり、上司には見えない努力や取り組みの評価漏れが起こったりする可能性があるうえ、組織内で評価のばらつきが生じるリスクもあるからです。
評価は、従業員の昇格や昇給にも影響するため、不公平な結果では仕事への意欲やモチベーションが損なわれてしまうでしょう。
②キャリアデザインがしやすくなる
人材アセスメントは業務の適性だけでなく、自分自身の特性についても客観的に評価・可視化されます。潜在的な能力が見つかりやすいため、自分の新たな可能性に気づくチャンスが得られるのです。
人材アセスメントによって新たな自分の能力や適性が見つかることで、新たなキャリアパスを検討するきっかけにもなり、キャリア自律の促進も期待できます。
③能力・強みが生かせる
適材適所な人材配置が行われやすくなるため、自分の強みや能力が発揮できる環境に身を置けるようになります。能力や強みが生かせれば、仕事にやりがいを見つけやすく、モチベーション高く意欲的に取り組めるようになるでしょう。
また、強みや能力を生かせるため成果が出しやすく、結果良い評価にもつながり一石二鳥です。
5.人材アセスメント導入の進め方
人材アセスメント導入の進め方は、以下4ステップです。ステップ別に、人材アセスメント導入の進め方を解説します。
- 導入目的の明確化
- 測定・評価項目の決定
- アセスメント方法の決定・実施
- 結果の分析・活用
①導入目的の明確化
まずは、社内の人材にまつわる課題を洗い出し、人材アセスメントを導入する目的を明確にしましょう。客観的に能力を把握し、それをどのように活用したいかを軸に目的を検討することがポイント。
「採用のミスマッチを減らしたい」「管理職候補の選定に役立てたい」などといった目的が一例です。目的の明確化により、人材アセスメントのやりっぱなしを防ぎましょう。
②測定・評価項目の決定
次に、目的に沿った測定・評価項目を決定します。課題があれば、課題に対する仮説を立てると測定項目が明確になるもの。人材配置や育成に活用したい場合、それらで実現したいことから逆算して必要な要素を洗い出し、測定・評価項目を設定しましょう。
測定・評価項目は、多すぎると情報の判断が難しくなってしまいます。まずは全体を洗い出し、本当に必要な項目だけを選定することがポイントです。
③アセスメント方法の決定・実施
決定した測定・評価内容をふまえて、最適なアセスメント方法・ツールを選択します。ツールを導入する場合は、コストや測定・評価内容など、自社が実現したい人材アセスメントが実施できる条件がそろっているかをチェックしましょう。
複数の方法を組み合わせるのもひとつの方法です。アセスメント方法が決まれば、実際に人材アセスメントを実施します。
④結果の分析・活用
アセスメントして終わりではなく、結果を分析し、課題解決や目的達成のために活用することが大切です。
たとえば、人材育成に活用する場合は、従業員一人ひとりに即した育成計画の作成や適性とのギャップを埋めるための人材配置を実行するといった、具体的なアクションが実行できます。
人材アセスメントでは、結果を取得し、どれだけ行動に反映できるかが重要です。また、アセスメントは一度実施して終わりではなく、定期的に実施してアップデートしてこそ効果的なアクションにつなげられます。
6.人材アセスメントツールの具体例
人材アセスメントツールには、さまざまあります。測定・評価項目、アセスメント実施の目的にあわせて最適なツールを選択しましょう。ここでは、代表的な3つのツールをご紹介します。
適性検査
適性や性格など、個人の特性や素質を評価するアセスメントツールです。適性検査では、マークシート式または記述式の問題に回答する形式でアセスメントを実施します。
面接前に候補者の特性を把握する、書類審査と同時進行して実施するなど、採用に取り入れられることが多いツールです。採用したい人物像とマッチするかを見極めるために役立つツールで、採用で人材アセスメントを活用したい場合にオススメといえます。
適性検査とは? テストの種類と内容一覧、問題と対策を簡単に
適性検査といえば、新卒や中途採用時の判断材料に使うイメージがあるのではないでしょうか。実は、既存社員の配置や評価といったものに活用できる適性検査も多く存在しており、その種類は多種多様なのです。
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360度評価
360度評価は、人材育成や人事評価に有効なアセスメントツールです。別名「多面評価」とも呼ばれ、複数の評価者から評価を行う手法です。
複数の評価者による多面的な評価で客観性が確保でき、かつ自分の強みや弱みに気づきやすくなります。自己評価と他者評価のギャップが明らかになり、本人の意識・行動変革に効果的です。
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コンピテンシー評価
コンピテンシーとはハイパフォーマーの行動特性であり、社内で成果を上げている人や優秀な人材に共通する特性のこと。コンピテンシーを基準に、採用候補者や従業員の行動特性を照らし合わせると、管理者候補の選任や優秀人材の採用に活用できます。
また、人事評価に活用すると明確な評価基準が設定できるため、人材育成で効率的な育成が可能となるのです。
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