ノウハウとは? ビジネスでの意味、使い方を例文で簡単に

ビジネスにおけるノウハウとは、企業活動の中で獲得した業務遂行のコツや効率化のポイントなど、従業員が持つ知識や技術のことです。本記事では、ノウハウの意味と使い方について解説します。

1.ノウハウとは?

ノウハウとは、特定分野に関する能力や知識を指す言葉の総称です。具体的には以下が挙げられます。

  • 専門的な技術
  • 分野に関する深い情報
  • 特定人物または組織が培った経験
  • 物事を効果的に進める手段
  • タスクをうまく成功させるコツ

ノウハウは実務上の用語であり、法的、明確な定義はありません。たとえば、コンサルティングを生業とする会社が、独自の情報や業務に関するデータを収集するのもノウハウの一つです。

このように、ノウハウは組織のビジネスを強化するだけでなく、他社のビジネスと差別化する効果もあります。ノウハウの語源は、英語で「know-how(技術秘訣)」と訳される「know(知る)」と「how(方法)」を組み合わせた言葉です。

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2.ビジネスにおけるノウハウの意味

ビジネスシーンにおいて、ノウハウは主に2つの意味を持ちます。

手続き的知識

「このようなときは〜のように進める」といったマニュアル的な意味合いではなく業務を効率的に進めるポイントやコツを指します。

たとえば、書類のフォーマットを作成する「手順」はノウハウではないものの、記入フォーマットを「スムーズに作成するポイント」はノウハウです。

重要な秘密情報

たとえば「製品や開発の技術的な知識」「特殊な技術や知識」といったもの。会社独自のノウハウは知的財産に分類されるものの、特許として登録しなければ「知的財産権(産業財産権)」による保護を受けられません。

ノウハウを他社に流用されるリスクを防ぐには、会社の知的財産を特許として申請する必要があります。たとえば、製品の製造工程で使われる特殊技術や自社開発した製造機械の設計図も、ノウハウの一つといえるでしょう。

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3.ノウハウの使い方と例文

ビジネスシーンにおいて、ノウハウは「手続き的知識」の意味で使われるのが一般的です。ここからは、専門用語としてのノウハウの使い方を、例文を交えて解説します。

ノウハウを共有する

「ノウハウを共有する」は、職務を通じて獲得したスキルや知見を、同じ組織の人員へ伝えるときに使われます。以下は「ノウハウを共有する」を使った例文です。

  • チームメンバー全員へ工数の多い作業のノウハウを共有し、作業効率の向上を図った
  • プロジェクトを円滑に進めるため、メンバー全員に営業訪問に関するノウハウを共有した

ノウハウの共有は、組織力の向上や属人化(特定人物だけがノウハウやスキルを独占すること)の防止に効果的です。

ノウハウを蓄積する

「ノウハウを蓄積する」は、個人および社内において、ビジネスパワーを強化する情報や技術を積み重ね、自社の知的財産として保持する行為を意味します。以下は「ノウハウを蓄積する」を使った例文です。

  • 新規事業のスタートアップから1年が経過し、拡大戦略のノウハウが蓄積された
  • 昨今のDXの流れに遅れないため、データ分析を用いてノウハウを蓄積する

ノウハウの蓄積は、企業独自の強みを引き出す力があり、長期的な競争力の強化につながります。

ノウハウを生かす

「ノウハウを生かす」とは、手続き的知識、もしくは産業上の技術や知識を企業活動に活用することを意味します。以下は「ノウハウを活かす」を使った例文です。

  • 退職者から引き継いだ営業のノウハウを今後の取引に生かす(手続き的知識)
  • 10年間の製造データを用いて、作業フローのノウハウを生かした体制を再構築する(産業上の技術や知識)

企業活動で蓄積したノウハウをうまく活用すると、業務体制のさらなる進化や組織の最適化につながります。

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4.ノウハウとナレッジの違い

ノウハウと意味が類似した言葉に「ナレッジ」が存在します。両者の主な違いは、実体験を伴うか否かです。

  • ナレッジ:形にしやすい有益な知識や情報全般を意味するもので、「形式知」。情報化するため、共有しやすい
  • ノウハウ:実際の経験から得られる感覚や技術といった非定型的な知識で「暗黙知」。習得には「見て学ぶ」「やってみる」など実際に対象の物事に取り組み体験する必要がある

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5.ノウハウの類義語

ビジネスシーンでは、ノウハウと類似した言葉が使われることも少なくありません。ここからは、ノウハウの類義語を紹介するとともに、ノウハウとの微妙な違いを具体的に解説します。

技術

技術とは、物事の手段や方法全般を指す言葉です。「◯◯検定取得者」や「◯◯特許技術」など、資格や知的財産としても取り扱われるものもあるため、ノウハウと類似の意味を持つ言葉とされています。

一方、ノウハウには、技術の習得に伴う経験や知識の蓄積の工程も意味合いに含まれます。例えば、製造機械を取り扱う行為自体は「技術」と呼ぶものの、機械を他人よりうまく活用するポイントやコツは「ノウハウ」です。

スキル

スキルとは英語の「Skil(能力)」を指す言葉でビジネスにおいては専門的な知識や技術、技能を意味します。

ノウハウは能力そのものではなく、体験や情報の蓄積によって得た知識やコツです。

たとえば、経理の項目を計算する能力は「スキル」ですが、積み重ねた計算能力で経理を素早く終わらせる方法は「ノウハウ」にあたります。ノウハウはスキルを内包した言葉といえるでしょう。

ハウツー

ハウツーは、英語の「how to(どのようにして)」に由来した言葉で、基礎的な手順や方法のこと。マニュアルブックや入社研修で行う業務説明など、基本的な業務の進め方を知らない初心者に向けた解説が該当します。

一方ノウハウは、すでにある程度業務に精通した者が、手順のさらなる効率化や最適化を目指すことです。中級者以上向けの専門性の高い領域といえるでしょう。

たとえば、ベルトコンベアーの操作方法は「ハウツー」で、ベルトコンベアーのクセや特性を理解して高度な運転を行うのは「ノウハウ」です。

要領

要領は、物事の段取り・要点・方針・目的における要のこと。ノウハウより対象範囲が狭く、特定作業のコツやポイントなど、物事を処理する方法や手順に関する知恵を指します。ノウハウに比べ、範囲に制約があるところが主な違いです。

営業秘密

営業秘密とは、企業秘密として扱う技術上の機密情報です。例として、以下の項目が該当します。

  • 顧客名簿
  • 販売マニュアル
  • 設計図
  • 実験データ

上記を含めた営業秘密は「秘密管理性・有用性・非公知性」の要件を満たす場合「不正競争防止法第2条第6項」により法的な保護を受けられます。要件さえ満たせば自動的に保護対象に含まれるため、申請は必要ありません。

一方、ノウハウは技術的な経験や知見の集積です。不定形な情報も含まれるため、内容によっては不正競争防止法の要件を満たさないものがあります。このようなケースで法的保護を受けるには、特許庁への申請が必要です。

どちらも企業上の重要情報である点は共通しているものの、他社による技術の模倣や外部への情報漏洩が発覚した際の、法的な取り扱いが異なります。営業秘密は不正競争防止法、特許申請したノウハウの場合は特許法に基づいた法的措置が講じられます。

tips

tips(チップスまたはティップス)とは、問題解決に役立つアドバイスやヒントのこと。そもそもは「ヒント」の意味を持つ名詞「tip」の複数形です。tipsはノウハウより問題解決に焦点が絞られるため、悩みやトラブルなど、業務に滞りが生じる場面で使われます。

たとえば、マニュアル内にあるQ&Aや業務がうまくいかない後輩へのアドバイスは、tipsといえるでしょう。tipsとノウハウは、問題解決の知識である点は共通しているものの、言葉の用途において、双方は異なります。

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6.ノウハウの蓄積や共有がビジネスで重要な理由

ノウハウの積極的な蓄積や組織内での共有は、業務効率の向上と属人化の防止に効果的です。ここからは、ノウハウの蓄積と共有の重要性について解説します。

業務効率化による生産性の向上

業務効率を向上させるには数多くの手法があり、なかでもノウハウの蓄積・共有は重要なファクターです。

ノウハウは書籍やWebサイトなど外部から得られる情報と異なり、経験や実績にもとづいて内部で培われるもの。そのため、自社で起こりやすい、または自社でしか起こり得ない問題のトラブルシューティングとして役に立ちます。

たとえば、製造機械のメンテナンス方法はメーカーの説明書でわかります。しかし、製造過程でエラー品が出た場合、過去に同じ問題が起きたときにどう対処したかのノウハウが必要です。

同様の問題がひんぱんに起こっているなら、過去事例のデータも参考に、製造フローの見直しも検討しなければなりません。

このように過去の問題やその解決方法をノウハウとして蓄積すると業務内容が最適化され、正確性と生産性が向上します。また、社内でノウハウが共有されると、従業員が作業方法を簡単に確認でき、同じ質問の繰り返しによる時間のロスも削減できます。

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属人化の防止

業務の属人化は業務の滞りや品質低下につながるリスクがあるため、個人限定のスキルではなく、自社のノウハウとして蓄積・共有する取り組みが必要です。

たとえば、書類作成をほかの人より短時間で終わらせられる従業員がいる場合、当人が不在または離職した際に業務効率が低下します。当人が持つ能力へ依存しているほど、不在の影響は大きいといえるでしょう。

従業員が持つスキルや情報も、企業にとって貴重な財産です。ノウハウの共有は、技術を伝承して属人化を防ぐのに役立ち、担当者の不在や離職が発生しても引き継ぎを容易にできます。

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7.ノウハウを活用するメリット

ノウハウは、企業の成長につながる重要な情報です。蓄積・共有したノウハウは、業務への活用でさまざまなメリットを得られます。ここからは、ノウハウの活用によるメリットを解説します。

従業員の問題処理能力が向上

知識や経験にもとづいたノウハウを活用すると、問題発生時の速やかな対処や、さらなる発見を得られます。社内で新しいノウハウが共有されると、組織全体で問題解決能力の向上が期待できるでしょう。

絶えずノウハウを蓄積・共有する仕組みが確立すると、業務がスムーズに進み、未経験の問題にも柔軟に対応できる能力を獲得できます。

人材教育が効率化

蓄積したノウハウを業務マニュアルや研修プログラムに組み込むと、新人教育や業務引き継ぎなど、人材育成を効率的に実施できます。

共有されたノウハウをデータ化して新人が自己教育で学べる仕組みを作れば、人的・時間的リソースやコストを軽減できるでしょう。基礎的な内容に注力すると、効率的な人材育成が可能です。

既存の手法を改善・改良するヒントにできる

何十年も前から継承されるノウハウは、テクノロジーの進化や時代に合わせて改善と改良が必要です。PDCA(計画・実行・評価・改善)のフレームワークと同じく、ノウハウも絶えず活用し続けることで進化でき、時代にあったノウハウへブラッシュできます。

業務の標準化

蓄積したノウハウをわかりやすく要約し共有すると、個人の能力差に依存しない業務体制を確立できます。業務の標準化によって得られる利点は、以下が挙げられます。

  • 業務上の抜けや漏れなどミスの軽減
  • 従業員のスキル水準の向上
  • 品質の均一化

標準化にあたっては、ノウハウの内容を誰もが理解できる形に要約する仕組みが必要です。

集合知の創出

蓄積したノウハウを活用すると、新しいノウハウを生み出せる可能性があります。

たとえば、商品プロモーションに対する他部署の評価や過去事例を活用すれば、新製品や新サービスの創出へつながります。また、既存のノウハウが見直されるため、より正確で実務的なノウハウにブラッシュアップ可能です。

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8.ノウハウ活用を効率化するナレッジマネジメントとは?

ナレッジマネジメントとは、ナレッジ(個人が有する業務に有用な知識・情報・ノウハウなど)を組織全体で共有および活用するマネジメント手法です。「知識管理」「知識経営」とも呼ばれます。

ここからは、自社のノウハウを効果的に活用できるナレッジマネジメントについて解説します。

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ナレッジマネジメントの目的

ナレッジマネジメントの目的は、以下の2点です。

  1. 既存のナレッジから価値を生む
  2. 新たなナレッジを生み出す

「既存のナレッジから価値を生む」とは、自社で蓄積したナレッジやノウハウを活用し、新製品や新サービスの創造、生産性の向上につなげることです。たとえば、短時間で仕事を終わらせる能力を持つ従業員がいた場合、その手法を共有すると組織全体の生産性が向上します。

「新たなナレッジを生み出す」とは、ノウハウやナレッジそのもののブラッシュアップを意味します。社外のナレッジと社内のナレッジを組み合わせて、新たなマニュアルを作るといった取り組みが代表的です。

ナレッジマネジメントの手法

ナレッジマネジメントの主なアプローチは、以下の4種類です。

  1. 知的資本集約型
  2. ベストプラクティス型
  3. 専門知識共有型
  4. 顧客知識共有型

ここからは、上記4点の概要について解説します。

知的資本集約型

知的資本集約型とは、無意識に行われる業務や知的財産権で保護される技術など、非定型なノウハウを分析し、ナレッジとして言語化・顕在化する手法です。

他人に伝えづらいコツや技術を分かりやすい形式に変換することで、経営戦略の立案やマニュアル化など付加価値の創出に役立てます。

ベストプラクティス型

ベストプラクティス型とは、企業活動の中で成功につながった施策や優秀な社員の行動パターンをナレッジとして活用し、組織全体のスキルアップを図る手法です。すでに実績のあるナレッジを活用するため、スキルアップや生産性の向上につなげやすいメリットがあります。

専門知識共有型

専門知識共有型とは、従業員が持つ高度な知識を個別に収集し、データベースに集約して共有する手法です。社内ポータルサイトやコミュニティツールにナレッジを蓄積することで、検索や閲覧をかんたんにできる点がメリットです。

顧客知識共有型

顧客知識共有型とは、従業員のナレッジではなく、顧客データからナレッジを収集して対応レベルの向上を目指す手法です。顧客知識共有型では、コールセンターの対応記録や商品サイトのレビューなど、顧客の声を参考にします。

問い合わせ対応は、個人の性格や能力差がでやすい領域です。顧客知識共有型ナレッジマネジメントを活用すると、人による対応差が減る、未経験なケースでも対応できるなど高水準かつ均一に対処できます。

ナレッジマネジメントの導入方法

自社にナレッジマネジメントを導入し最大限活用するには、一定の準備が必要です。ここからは、ナレッジマネジメントの一般的な導入方法を解説します。

目的を明確化

ナレッジマネジメントは選ぶ手法によって得られるメリットや達成できる目標が異なります。自社がナレッジマネジメントを活用するにあたっては、具体的な実施の目的を決めましょう。

またナレッジマネジメントで新しく得られた知見やノウハウは、社内で共有することが大切です。目的があいまいだと、従業員の帰属意識や向上心はもちろん、獲得したナレッジを個人が独占する可能性があります。

ナレッジの選定と蓄積

ナレッジマネジメントの実施にあたっては、収集するノウハウやナレッジの選定と蓄積する場所を決めましょう。たとえば専門知識共有型のナレッジマネジメントでは、収集するナレッジをデータベースに蓄積することでユーザビリティが向上します。

目的を決定したらナレッジの要件を決め、どのように集めるかを決めましょう。可能なら基本業務の遂行と同時に蓄積できる仕組みが望ましいでしょう。

蓄積したナレッジを活用

目的と手段が決まれば、蓄積したナレッジをどのような場面に活用するか、考えましょう。このとき、ナレッジの用途を一つに絞る必要はありません。アイデア次第で活用方法は工夫できるため、当初の目的とは違う副産物が発見できるかもしれません。

またナレッジマネジメントの初期段階では、事前に定義した目的と収集手段がミスマッチする可能性もあります。定期的なPDCAで評価と改善を繰り返す姿勢で臨みましょう。