キャリアビジョンとは将来像のことです。ここではキャリアデザインとの違いやキャリアビジョンが重要な理由、描くメリットやその考え方などについて解説します。
目次
1.キャリアビジョンとは?
キャリアビジョンとは、仕事や人生において「将来的にこうなりたい」と思い描く姿のこと。「キャリア」とつくと仕事の将来をイメージしがちです。しかしその範囲は、仕事に限定されません。人生のライフプランや大切にしたい価値観などを含めた未来像を描くのがキャリアビジョンです。
「営業マンとしてグローバルに活躍したい」「仕事と私生活のバランスを取りながら健康的に働きたい」、これらはどちらもキャリアビジョンに含まれる考えです。
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2.キャリアビジョンとキャリアデザインの違い
キャリアビジョンとよく似た言葉に「キャリアデザイン」があります。どちらもキャリアに関する言葉ですが、それぞれ意味合いが異なるため注意が必要です。
キャリアデザインは実現のための設計
「キャリアデザイン」とは、自らキャリアプランを考えて選択、設計していくこと。将来自分はどのような仕事、働き方をしたいのかを自分の意思で明確にし、行動に移します。
キャリアデザインの主体となるのは自分自身です。主体的に将来像を思い描き、実験のために必要なプランを構築していきます。キャリアビジョンを実現するためのキャリアプランを主体的に設計するのが「キャリアデザイン」というわけです。
計画を立てる範囲
キャリアビジョンとキャリアデザインは、計画を立てる範囲も異なります。
- キャリアビジョンの範囲は仕事と人生の両方を含む将来像
- キャリアデザインは、仕事上の目標や計画を指す
キャリアビジョンは仕事だけでなくプライベートも含めた生き方の設定であるため、基本的にひとつの企業に留まることはありません。
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3.キャリアビジョンが重要な理由
キャリアビジョンに関する質問は、入社後だけでなく採用面接時にもよく聞く質問です。企業はなぜ従業員のキャリアビジョンを重要視するのでしょうか。
日本のビジネス環境の変化
価値観の多様化や欧米文化の浸透、技術の進歩などさまざまな要因によって、日本のビジネス環境は大きく変化しています。かつて主流だった終身雇用や年功序列の考えは事実上崩壊しつつあります。
これまではひとつの企業でどのように出世していくか、どのように企業内の階段を上っていくかを考えてきましたが、現代ではこの考えが通用しなくなっています。
働き手自らが自分のキャリアを考え、理想の状態を目指して動くことが必要です。そこで重要なのがキャリアビジョンというわけです。
優秀な人材の流出防止
いまや「定年退職まで同じ会社に所属して働き続ける」というキャリアは過去のもの。現代は働き手が更なるキャリアアップや待遇向上のため、容易に転職に踏み切る時代です。
企業にとっては優秀な人材が流出するピンチです。貴重な人材が外部に流出しないよう働きかけなければなりません。そこでキャリアビジョンの実現を支援し、優秀な人材が長く留まれるよう働きかけます。
マッチングしているかの判断
キャリアビジョンは会社と働き手のマッチングをはかる指標にもなります。キャリアビジョンに対する思いは人間味が出やすい部分です。ここを見て「人柄や性格が自社の社風と合っているのか」「一緒に働く仲間としてふさわしいか」などを判断できます。
さらに働き手も実際に働くイメージが描きやすくなります。自社のキャリア制度を提示して、より具体的なキャリアビジョンを描いてもらうのも効果的です。このイメージに共通点が多いほど、自社にマッチした人材といえるでしょう。
4.キャリアビジョンがないとどうなる?
ではこのキャリアビジョンを持っていないとどうなるのでしょうか。具体的には以下ふたつのデメリットが考えられます。
目標を見失い意欲低下
キャリアビジョンを持たなくても働くこと自体はできます。しかし目標を見失ってしまうと仕事に喜びを感じることができなくなり、漠然とした不安を抱えてしまうでしょう。
しかしキャリアビジョンで将来に対する明確な目標を持てば「それに向けて頑張ろう」という前向きな気持ちで仕事に取り組めるようになるでしょう。
採用時のミスマッチが発生
キャリアビジョンを採用活動に活用すると、企業の求める人材像や採用要件を明確にできます。さらに早期離職の原因となるミスマッチを回避することも可能です。
しかしここにキャリアビジョンがないとミスマッチが生じ、早期離職の要因となる可能性が出てきます。
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5.キャリアビジョンを描くメリット
キャリアビジョンを描くことにはさまざまなメリットがあります。転職活動、また採用活動の一環としてのメリットについて説明します。
目標の明確化
最終目的地を明確にできるのが、キャリアビジョンを描くメリットのひとつです。漠然とした将来像に向かってゴールの見えない道を進み続けるよりも、明確な最終目的地に向かって具体的な行程を組むほうが進みやすくなります。
最終目的地が決まれば、到達に必要な行動やスキルが見えてくるため、より現実的に、より具体的にキャリアを選択できるのです。
仕事のモチベーションアップ
キャリアビジョンで将来に対する明確な目標が定まれば、それに向けて何をすればよいかが具体的に見えてきます。
しかし目標が明確になっていないと何のために働いているのか、目の前の仕事が何のために必要なのかわからなくなり、結果として仕事に対するモチベーションが低下します。
キャリアビジョンの形成によって仕事のモチベーションを上げられれば、企業全体としての生産性向上も期待できます。
将来設計の構築が可能
キャリアビジョンを描くことは自己分析にもつながります。自分がどのような仕事をしたいのかイメージして、そこから逆算して必要な資格や技能を選択していきます。
たとえば将来的に技術職や専門職を目指す人は、一般的な企業ではなく専門分野を生かした企業に絞って転職活動を行うほうが効果的です。キャリアビジョンを描くなかで、それまで気づけなかった自分の強みや価値観を発見できるかもしれません。
キャリア選択のチャンスを有効利用
かつて日本で主流だった終身雇用がなくなりつつある現代では、キャリアを選択するチャンスが何度も訪れます。その選択時にキャリアビジョンがあると、より具体的なイメージを持って選択肢を広げられるでしょう。
たとえば結婚するとき、そのまま継続を選ぶか退社するか、はたまた転職するか。キャリアビジョンを描いていれば、その最終目的に向かうための最適な選択肢を選べるようになります。
6.キャリアビジョンの立て方・考え方
キャリアビジョンを立てる際は、目の前の選択だけでなく人生の将来像まで考えることが重要です。ここではキャリアビジョンの立て方、具体的な考え方について説明します。
保有しているスキルの確認
将来は現在の、そして現在は過去の延長線上にあります。今の自分を詳しく知ることが、将来の姿を明確に描く第一歩です。
まずはこれまでの経歴を見直して、現在自分が保有しているスキルを確認しましょう。業務上必要な資格や経歴はもちろん、一見役に立ちそうもないスキルや経験などもリストアップします。これらは回りまわって将来に生きてくるかもしれません。
また上司や同僚、部下に自分の強みや弱みを聞いてみるのも効果的です。自分では気づけなかった魅力が見つかる可能性があります。
年数を区切って将来の姿をイメージ
「キャリアビジョンを立てたものの、なんだか現実味がない」「漠然としていて具体的にいつ何をすればよいのか分からない」、このようなつまずきは短期的なキャリアビジョンを描くことで解決できます。
たとえば10年分のキャリアデザインをまとめて描いてしまうと、漠然とした目標になるだけでなく目標達成までに時間がかかります。1年後、5年後、10年後に区切って、年数ごとに自分の将来像をイメージすると効果的です。
現状との整合性を考慮
現在の状況と理想の将来像を比較することも重要です。現状と大きく乖離した理想を思い描いてしまうと、ゴールに近づいている実感が得にくくなり、モチベーションも低下します。思い描いたキャリアビジョンが以下の例に該当しないか確認してみましょう。
- 現実的には転居が難しいにもかかわらず、移住前提の計画になっている
- 大幅な年収アップがないと実現できない
- 現在の自分とはまったく関連のない分野で計画している
過去の経験にもとづいているか確認
キャリアビジョンの構築には、過去の振り返りも必要です。過去の出来事を振り返って記憶に残っているものを整理してみましょう。事件や出来事、部活や習い事など、記憶に強く残っているものや、必死に努力した経験はないでしょうか。
これらを振り返る際は、なぜ今でも記憶に残っているのか、なぜそれに対して努力し続けられたのかを深掘りすることが重要です。こうした過去の振り返りによって、自分の成し遂げたいことが見えてきます。
未経験の分野に挑戦
キャリアビジョンは必ずしも現在の延長線上で考えなければならないというわけではありません。過去に習得したスキルやキャリアを活用することは大きなアドバンテージになりますので、未経験の分野に挑戦してみるのもよいでしょう。
キャリアビジョンの選択肢に制限はありません。自分が本当に描きたいと思っているキャリアを柔軟に考えてみましょう。
プライベートのビジョンもイメージ
キャリアビジョンはキャリアプランではありません。仕事だけでなく自身や家族の生活を踏まえて考えてみましょう。
- プライベートで〇〇を成し遂げたいから仕事では△△する
- 〇〇歳までにこんな経験をしておきたい
これらのほか、結婚や育児、介護など今後起きうるライフイベントを意識することも重要です。将来いつまでも今までと同じような働き方、生き方が続けられるとは限りません。自分の未来図を思い浮かべながら、現実性の高いキャリアビジョンを描いていきましょう。
7.キャリアビジョンの具体例と書き方
上記で整理した内容を踏まえて、具体的なキャリアビジョンを書いていきます。ここではキャリアビジョンの具体的な書き方とその一例について説明します。
営業職のキャリアビジョン例
営業職の場合、自分の将来を以下どのパターンに当てはめるかでキャリアビジョンが変わってきます。
- スペシャル営業マンコース:付加価値をつけながら商材を提供したい
- 管理者コース:〇年後に管理職となり、組織として成果を出したい
- 企画、人材育成コース:営業で培ったスキルを企画戦略や人材育成につなげたい
- 独立コース:顧客を拡大し、事業主として独立したい
一般職のキャリアビジョン例
一般職のキャリアプランは大きくわけて以下のふたつです。
- 一般職から専門職にキャリアアップする:(例)一般事務の経験を重ねて経理事務や貿易事務などを目指す。事務処理能力やPCスキルなどがアピールポイントになる
- 一般職からほかの職種にキャリアチェンジする:(例)PCスキルをつんでSEやWebデザイナーなどを目指す。コミュニケーション力をアピールして営業職、スケジュール管理能力などを活用して秘書などを目指すことも
キャリアビジョンの書き方
キャリアビジョンを書く際は「結論→理由→まとめ」の順番で説明すると、相手に伝わりやすくなります。
- 「私のキャリアビジョンは〇〇です」:自分が目指すキャリアビジョンを簡潔に伝える
- 「その理由は〇〇です」:キャリアビジョン達成に向けて心がけていることや、実際に行動していることなどを伝える
- 「〇〇することが目標です」:表現を変えて、冒頭で述べたキャリアビジョンを繰り返す
5W1Hを意識して、いつまでに何を達成するのかを具体的に描きましょう。