行動力とは、必要なタスクや考えを行動に移す力や、積極性の度合いを表す言葉です。ビジネスにおいては、能動的に仕事をこなす能力ともとらえられます。
仕事をうまくこなす、または評価を獲得するには、ときとして思考力より行動力が重要です。本記事では、行動力がある人の特徴や、身につける方法を解説します。
目次
1.行動力とは?
行動力とは、考えを実行に移す力や、その積極性を意味する言葉です。一般に「行動力がある」とは「フットワークが軽い」「物おじしない」とも言い換えられるでしょう。誰かの指示ではなく、自らの考えにおいて行動を起こす場合には「自発的」とも表現されます。
また、ビジネスシーンでの「行動力」の意味は、主に仕事に対する積極性や能動的な動きのこと。「向上心」や「帰属意識」ともいえるでしょう。
ビジネスにおいては、考えなしに動くことや受け身による動きではなく、なにかしらの目標を達成するための自発的な行動力が重要です。
実行力との違い
実行力とは、計画をもとにして完了までやり遂げる力のこと。行動力との違いは、計画の有無にあります。行動力はひらめきや指示があれば発揮できますが、実行力は成果に向けて計画を立案する過程も意味に含まれます。
たとえば、目の前のタスクをこなすことは「行動力」ですが、タスクに対しスケジュールを立て、順序通りにこなす動きは「実行力」です。実行力は物事を完遂する力で、行動力は物事に取り組む力といえるでしょう。
2.なぜビジネスで行動力が求められるのか?
ビジネスシーンにおいては、行動力がない人材より行動力がある人材が重宝されます。ここからは、なぜビジネスで行動力が重要なのか、その理由を解説します。
より多くの結果を生み出せる
行動力は、持ち合わせることでより多くの結果に結びつきます。たとえば、企画の有用性を証明する情報が必要な場合、リサーチした内容を資料にまとめるプロセスが欠かせません。
このとき、すぐリサーチに着手すれば必要な情報が早くそろい、資料のブラッシュアップに注力する余裕が生まれます。一方で行動力がないと、プレゼンの時間直前まで資料作成に追われ、その場しのぎのちぐはぐな資料ができあがるかもしれません。
このようにひとつのアクションに取りかかるスピードがあると、つねにリードした行動を取れます。行動力があるとより多くの結果につながるため、仕事の質と数を上げたいときに効果的です。
ビジネスチャンスを獲得できる
行動力があると、ビジネスチャンスを獲得する機会に恵まれます。ビジネスチャンスが自然と手に入る場合もあるものの、基本は営業活動や広告など能動的な行動によって勝ち取るものです。
たとえば、イベントを開催・参加して新たな顧客を開拓する、新しい技術を学んで業務に取り入れるといった取り組みが挙げられます。
消極的であるより積極的に行動を起こしたほうが、新たなビジネスチャンスを掴めるといえるでしょう。行動力があることで、競争が発生した場合、優位なポジションを形成できます。
3.行動力がある人の特徴
行動力のある人には、以下5点を始めとした共通の特徴が見られます。
- 向上心がある
- 貢献意欲が高い
- 前向き
- 主体性がある
- 目標が明確である
行動力を発揮するうえで、上記の意識や姿勢は重要です。ここからは、行動力がある人の特徴について解説します。
①向上心がある
行動力がある人は、向上心を持って業務に臨んでいます。「現状よりもさらに良い結果を出したい」「自らを成長させたい」といったモチベーションが行動力につながっているのです。
新しいことにも興味を持って知識を吸収するため「好奇心が旺盛」とも言い換えられるでしょう。向上心があると、失敗を恐れるより目標を達成するための好奇心が勝り、仕事を前へ進めようとする行動力が発揮されます。
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②貢献意欲が高い
行動力がある人は、企業やコミュニティに対して貢献意欲や帰属意識を持ち合わせています。貢献意欲とは、保守的・消極的な意識ではなく「だれかのために自分がやる」といった意識が働くこと。貢献意欲が高いと、集団の目的のために自らが主体性を持って行動できます。
③前向きである
行動力がある人は、失敗やミスを恐れすぎず、つねに前向きに物事を考えられます。悲観的な思考に陥らないのは、過去に起きた失敗やミスを「学び」や「成長の糧」としてとらえているからです。
そのためこれから起きるかもしれない失敗に対してもメリットを優先するため、積極的な行動を取れます。
④主体性がある
行動力がある人は、主体性も兼ね備えています。主体性とは、自らの意思を持って行動をおこす性質のことです。主体性があると、成果や結果に対しての責任感や、冷静な判断力も生まれます。
そのため目の前の課題に気がつきやすくなり、早期に行動へ移す重要性や動きだすきっかけを認識できるのです。結果として、主体性によって行動力が引きだされます。
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⑤目標が明確である
目標が明確に把握できていることも、行動力がある人の特徴です。たとえば、訪問営業において「新規顧客獲得数◯件」「今月の目標売り上げ達成まであと◯円」といった具体的なゴールを見据えている人は、行動力があるといえます。
目標地点を目指すことは、モチベーションアップやアクションを起こすきっかけです。また、目標を明確化することで、実現に必要な行動を、順序立てて実行できます。闇雲に動くのではなく目標から逆算して計画を実行していく「実行力」も養えるでしょう。
4.行動力がない人の特徴
行動力がない人には、共通した特徴が見られます。主なポイントは以下の3点です。
- 受け身で指示待ちになっている
- 先延ばしにする癖がある
- 慎重すぎる
①受け身で指示待ちになっている
行動力がない人は、ビジネスに対して消極的で、指示がなければ動けない状態に陥っています。これは、もともとの性格が原因とは限らず、職場環境によって引き起こされるケースも珍しくありません。
組織・上司の指導が厳しい環境に慣れてしまうことで「指示を受けてからやる」の考えが根づいているのです。過度に行動を制限される環境下だと、指示されたことをこなす能力はあっても、自分の考えを自主的に実行する力は生まれないでしょう。
このような過度に指示・チェック・報告を求める職場環境を「マイクロマネジメント」と呼びます。マイクロマネジメントは、従業員の自主的な行動力を妨げるため、人材育成の観点では推奨されないといわれています。
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②先延ばしにする癖がある
行動力がない人の特徴として、先延ばし癖が挙げられます。たとえば「今日は忙しいから」と自分にいい訳をする、締切直前まで取りかかれないといった人が代表的です。
計画的な先延ばしはスケジュール管理の一環ととらえられますが、無計画な先延ばしはスケジュールの圧迫を招きます。そのため、行動に移した頃にはすでに手遅れといった事態も起こり得ます。
また、完璧主義も先延ばし癖を引き起こす原因です。完璧主義は1歩目のハードルを上げすぎる傾向にあるため、行動よりも考えることを極端に重視してしまいます。
③慎重すぎる
慎重すぎることも、行動力がない人の特徴です。リスクを心配して物事を慎重に考えすぎると、行動するチャンスがあっても「まだ考える時間が必要だ」と思い、速やかな行動に移せません。
慎重さは長所ともとらえられるものの、ビジネスにおいては「行動力がない」「決断力がない」といった短所として評価されることがあります。
5.行動力を高めるメリット
ビジネスにおいては、行動力を獲得することでさまざまなメリットを得られます。行動力が職場にもたらすよい影響は、以下の3点です。
- 多くの経験を積める
- 業務効率を改善できる
- 職場の人間関係を良好にできる
①多くの経験を積める
行動力を高めると、豊富な体験や経験を積めます。行動力の向上は、シンプルに行動の「数」が増えるため、消極的な状態よりも成功・失敗を経験可能です。自身の体験から得た経験を成長の糧として、次の行動のブラッシュアップへつなげられます。
②業務効率を改善できる
行動力を高めると、個人の業務のスピードが上がるため、業務効率の改善や向上が期待できます。積極的な行動が細かな課題の発見に結びつくため、無駄な業務や効率の悪い業務に気がついたとき、主体性を持って改善に取り組めるのです。
行動は自分の業務だけでなく、チームおよび組織全体の業務改善にも、前向きな効果を発揮できます。
③職場の人間関係が良好になる
行動力の向上は、人間関係の円滑化に効果的です。行動力がある人は、前向きで貢献意欲があるため、周囲とコミュニケーションを積極的に図る意識を持ち合わせます。
行動力によって職場のコミュニケーションが活性化すると、チームの結束力が増し、仕事の生産性向上にも良い影響を与えるでしょう。
6.行動力がないデメリット
行動力がない環境下では、個人・組織の双方にさまざまなデメリットが生じます。主なポイントは以下の2点です。
- 成長の機会を逃す
- 目標を達成しづらくなる
①成長の機会を逃す
行動力がないと、仕事に対して消極的な考えをしてしまい、成長の機会を逃します。例えば、指示待ちや完璧主義だと慎重になりすぎてチャレンジを恐れるため、行動力がある人と比べてアクションが遅れます。
そのため新しい仕事を提案された場合でも、引き受けるまでに時間がかかったり、引き受けても行動できなかったりと弊害が生じるのです。仕事に対する消極性は、自己の成長に必要な成功体験・失敗体験を積む機会を逃すといえるでしょう。
②目標を達成しづらくなる
行動力がないと、目標の達成が遠ざかります。目標を達成するには、行動から生まれた結果をもとにして、改善していくプロセスが必要です。
しかし行動力がないと経験や試行錯誤によるエビデンスの数が減るため、効果のある改善に結びつけられません。やるべきことが目の前にあっても行動に移せない場合が該当します。行動力の低さは、仕事のクオリティの低下や、目標達成を長期化させる要因です。
7.行動力を鍛える方法
行動力は生まれ持った性格によるものではなく、自分で鍛えられます。行動を培う方法は、以下の4点です。
- 目標を明確にする
- 失敗にとらわれない
- 先延ばししない練習をする
- 行動力がある人と過ごしてみる
①目標を明確にする
行動力を鍛えるには、まず明確な目標が必要です。目標を持つことで前向きな思考や向上心が生まれ、行動するモチベーションが向上します。目標は、人から与えられたものではなく、自分で設定するのが理想です。
たとえば「今日中に資料を完成させる」「今日は定時に退社する」など、具体的な期限と内容を決めると、これからなにをすべきかが認識しやすいでしょう。また、最初の目標は、すぐ達成できそうなものがオススメです。
達成感は自己肯定感を高める効果があるため、小さな目標を積み重ねることで行動力を培えます。大きな目標の場合は、達成までのステップを細分化することで、行動に移すハードルを下げられます。
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今回は...
②失敗にとらわれない
行動力を高めるには、失敗を恐れすぎないのも重要です。なにかに挑戦するとき、人は失敗や恥をかくことを避けたいと思うもの。そのため、行動を起こすのが怖くなり、スピード感に欠けてしまうのは自然な現象といえます。
しかし、「成功は失敗のもと」といわれるように、失敗を極端に恐れる必要はありません。失敗に囚われすぎず「失敗をうまく生かすため、これからなにをすべきか」「いい経験を積む機会だ」など、前向きな発想に転換しましょう。
③先延ばししない練習をする
行動力がある人は、先延ばしや言い訳をせず、目の前のタスクを大切にします。これは、すぐに動くことが習慣づいており、重要なことだと理解しているからです。行動力を鍛えるためには、まず心理的なハードルが低いことに取りかかりましょう。
たとえば、読書の習慣を身につけたい場合は「まず本を開く」をタスクにするところから始めます。「1日に1冊ビジネス書を読み切る」だと、ハードルが上がりすぎてしまい、挫折につながりかねません。
小さな目標をクリアしていくことで、すぐ動く習慣が身につきます。
④行動力がある人と過ごしてみる
行動力がある人と過ごすことも、行動力を鍛える方法のひとつ。なぜなら、私たちの考え方や行動は、周囲の環境に大きく影響されるからです。行動力がある人と多くの時間を過ごすことで、自然と自分も同じ考えや行動を取り始めます。
一緒の時間を過ごすのが難しい場合、仕事やプライベートで「あの人は行動力があるな」と思う人の真似をすることから始めるのもよいでしょう。
8.従業員の行動力を高めるためにできること
人材育成において、従業員の行動力を向上することは、企業の成長につながる重要な要素です。上司や経営者が従業員の行動力を養うには、以下の取り組みが効果的です。
- 目標やミッションを明確にする
- 失敗に対して寛容な心を持つ
- コミュニケーション環境を整備する
ここからは、上司や企業の立場でできる、従業員の行動力を向上する方法を解説します。
①目標やミッションを明確にする
チームおよび個人の目標やミッションを明確にすると、従業員の主体的な行動を促せられます。現時点で従業員に行動力がないと感じている場合、会社全体で追っている目標や、個人に成し遂げて欲しいミッションが認識されていないかもしれません。
たとえば「プロモーションが評判だったから今期は売上数20%アップを目指そう。達成すれば特別休暇を取っていいそうだ」「君は周りの人をよく見ているからプロジェクトチームの選抜をお願いしたい」といった例が挙げられます。
人は、やる必然性を感じなければ自ら動くことが難しいもの。目標の設定にあたっては、数値的な目標だけでなく「なぜやるのか」が伝わっているか、確認することが重要です。また「なぜあなたなのか」を合わせて伝えられれば、さらに自主性を引きだせるでしょう。
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パブリックなメッセージとしてミッシ...
②失敗に対して寛容な心を持つ
失敗に寛容な環境を作ると、従業員の自発的な行動を促進できます。前述の「4.行動力がない人の特徴」で解説したように、行動力がない人は完璧主義であったり、慎重すぎたりする傾向にあります。
慎重な理由として「失敗したくない」「自分の評価を下げたくない」といった心理が働いているのです。大きなリスクを避けるためのマネジメントは必要でしょう。しかしまずは小さなことから任せ、成功や失敗の経験を積んで従業員の意識を育てましょう。
また、上司の立場であれば、自分は部下や後輩の失敗に対して寛容だとを明言する必要があります。指導が必要な場合は、説教や叱責ではなく「次はこうするといいよ」といったアドバイスを授けるとよいでしょう。
③コミュニケーション環境を整備する
従業員同士でコミュニケーションを取りやすい環境に整備することで、従業員に行動力が芽生えます。コミュニケーション環境とは、上司やほかの社員に気兼ねなく相談できる場や雰囲気のことです。
定期的な1on1ミーティングも重要でしょう。しかし社員同士の交流会・イベント・飲み会などカジュアルな場を設けるのも効果的です。また、メール以外のチャットツールを活用すれば、連絡や相談だけでなく、雑談もできるコミュニケーション体制を整えられます。
話しやすい・相談しやすい環境が、従業員の帰属意識や自発的な行動力を引きだします。
9.行動力を高める際のポイント
行動力を鍛える際に意識するポイントは、主に以下の2点です。
- 初めから完璧を目指さない
- 学ぶ姿勢を持つ
①初めから完璧を目指さない
行動力を高めたいとき、初めから完璧を目指さず「初めてだからある程度できれば十分」といった意識で臨みましょう。「完璧じゃないとダメ」といった心理的なハードルが高い状態では、最初の1歩目が重くなってしまいます。
また、初めは失敗がつきものだと理解することも必要です。成功よりも失敗の経験から得られる学びを重視し、次の行動につなげる意識を持ちましょう。
②学ぶ姿勢を持つ
取り組みの成功や失敗にかかわらず、学ぶ姿勢を持つことで行動力は自然と身につきます。周りの意見や新しい知識を取り入れる前向き姿勢が、行動に直結するのです。
たとえば、新しい仕事に関する知識を蓄えよう思ったとき、人に聞いたり、本を読んだりする行動力が引き出されます。ひとつ行動を起こすことで最初の心理的ハードルを乗り越えられるため、次の行動にでる足取りを軽くできます。