中小企業とは? 定義、人数、割合、大企業との違いを簡単に

中小企業は、日本にある企業の中でその大半を占めています。就職市場では大企業が好まれる傾向にありますが、必ずしも大企業を選ぶのが正解とは限りません。本記事では、中小企業の定義と働くメリット、大企業との違いについて解説します。

1.中小企業とは?

中小企業とは、経営規模が中小程度の企業のこと。日本企業のおよそ9割以上は中小企業が占めており、中小企業であるかの基準は、「中小企業基本法」にて業種別で規定されています。

なお、中小企業には大企業の関連会社や子会社も含まれます。たとえば、全国チェーンを展開している大企業が、新たにアパレル会社を設立し、その規模が一定以下なら中小企業です。

ただし、同一法人上で複数の事業を営む「カンパニー制」の場合は、法的に会社化されていないため、中小企業としてカウントされません。

中小企業庁による定義

「中小企業基本法」では、資本金と従業員数が一定基準を超える会社または個人に「中小企業者」の名称が使われます。ここでいう中小企業者とは、以下にあてはまる場合です。

中小企業者 資本金または出資金の総額  中小企業者 従業員数 小規模企業者 従業員数
①製造業・建設業・運輸業および②〜④を除くその他の業種 3億円以下 300人以下 20人以下
②卸売業 1億円以下 100人以下 5人以下
③サービス業 5,000万円以下 100人以下 5人以下
④小売業 5,000万円以下 50人以下 5人以下

上記の定義は中小企業の定義ではなく、あくまで中小企業者の範囲を規定したものです。基本的な中小企業の認識としては、上記が原則ととらえて問題ありません。

ただし、法人税や補助金など各制度を適用するにあたっては、対象の範囲に微妙な違いが生じます。例えば、法人税法における中小企業軽減税率の適用範囲は、資本金1億円以下の企業が対象です。

このように、中小企業法上ではあてはまっても、制度や法令によっては範囲対象外なことがあります。実際になんらかの制度を利用する場合は、対象範囲を確認しましょう。

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2.中小企業と大企業、小規模事業者との違い

中小企業・大企業・小規模事業者の違いは、主に従業員数や資本金の規模によるものです。ただし、業種によってそれぞれの境界線は異なります。ここからは、中小企業・大企業・小規模事業者の詳細な違いについて解説します。

中小企業と大企業の違い

中小企業と大企業の主な違いは、会社を経営する資本金または出資金の総額です。以下は、中小企業に該当する資本金の総額を業種別でまとめたものです。

  • 製造業・建設業・運輸業および下記業種を除くその他の業種:3億円以下
  • 卸売業:1億円以下
  • サービス業:5,000万円以下
  • 小売業:5,000万円以下

基本的に上記の金額を下回る企業は、中小企業とみなされます。一方、大企業とは、最終事業年度にかかわる貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上の会社または個人のことです。

法律上、大企業の明確な定義はありませんが、会社法においては上記で挙げた資本金または「最終事業年度にかかわる貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上」の要件を満たす場合に、大会社と規定されています。

大企業は中小企業の定義を超え、社会的に影響力のある事業を展開している企業といえるでしょう。ただし、大企業の子会社や関連会社は、中小企業であり「みなし大企業」ともとらえられることがあります。

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みなし大企業とは

みなし大企業とは、大企業と密接な関係を有する会社のこと。中小企業の中には、一定の要件を満たすことでみなし大企業に分類されます。みなし大企業の主な要件は、以下のとおりです。

  • 発行済株式の総数または出資金額の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業
  • 発行済株式の総数または出資金額の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業
  • 大企業の役員または職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業

みなし大企業は、要約すると「大企業の傘下の子会社」です。たとえ中小企業基本法における中小企業の定義に当てはまったとしても、各支援制度の規定においてはみなし大企業とされることがあります。この場合、中小企業に適用される補助金や助成金は受けられません。

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中小企業と小規模事業者の違い

中小企業と小規模事業者の境界線は、常時使用する従業員の数にあります。以下は、中小企業法における業種別の従業員数を、中小企業者と小規模事業者で比べたものです。

中小企業者 従業員数 小規模企業者 従業員数
①製造業・建設業・運輸業および②〜④を除くその他の業種 300人以下 20人以下
②卸売業 100人以下 5人以下
③サービス業 100人以下 5人以下
④小売業 50人以下 5人以下

中小企業でも従業員数が一定数を下回る場合、小規模事業者とみなされます。小規模事業者は「零細企業」とも呼ばれ、規模がきわめて小さい企業のこと。中小企業よりも地域社会に密着し、経営者と従業員の距離が近い特徴があります。

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3.日本における中小企業の割合

中小企業庁が公表しているデータによると、2021年6月時点の日本における零細企業・中小企業・大企業の割合は以下のとおりです。

  • 中小企業:99.7%(336.5万者)
  • 中小企業内の小規模事業者:84.5%(285.3万者)
  • 大企業:0.3%(1.364万者)

中小企業は日本企業の99.3%を占めており、うち84.5%が小規模事業者は含まれます。中小企業基本法では、全国展開している企業でも基準を満たせば中小企業に分類されるため、条件次第で大企業より規模が上回る場合があります。

出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果を公表します

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4.中小企業の強み

ビジネス取引や就職市場においては、中小企業より大企業が一般的に好まれます。しかし、中小企業は独自の強みを持っているため、一概にすべてにおいて大企業が勝るとは限りません。中小企業ならではの強みは、以下のとおりです。

  • 迅速な意思決定が下せる
  • 社内コミュニケーションが容易
  • 特定分野への専門性がある
  • 経営への柔軟性
  • 補助金や助成金が受けられる
  • 企業規模が中小である分、経営層と現場の距離が近い

中小企業は、迅速な意思決定と柔軟な経営が可能なため、経営環境や市場の変化に迅速に対応できるのが特徴です。大企業ほど部門や業務が細分化されていないため、社内コミュニケーションが取りやすい点も利点といえるでしょう。

また、中小企業は補助金や助成金など支援制度が充実しています。国や地方自治体からの手当が厚い点も、大企業にはない強みです。

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5.中小企業の弱み

中小企業は大企業にない独自の強みがある一方、以下の弱みも存在します。

  • 経営資源が不十分
  • 価格競争で大企業に勝ちにくい
  • 知名度が低い

中小企業が大企業に勝てない部分は、上記のような社内リソースやブランド力です。中小企業は人材や資金など経営資源が不十分であるため、組織としての生産性は大企業に劣ります。そのため、大企業と価格競争になった際は不利に働くでしょう。

また、知名度が低い点で消費者の認知や購買に結びつきにくい、採用面でアピールしにくいといった弱みも存在します。しかし、中小企業の中には大企業へとステップアップする過程の会社もあり、今後の成長次第では大企業になれる可能性を秘めています。

一概に、中小企業すべてが上記の弱みに該当するとは限りません。

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6.中小企業で働くメリット

就職市場において、世間的には中小企業よりも大企業が好まれる傾向があります。しかし、中小企業が大企業に劣るわけではありません。中小企業で働くメリットは、主に以下が挙げられます。

  1. 幅広い仕事を経験できる
  2. 出世しやすい
  3. 経営層との距離が近い
  4. 転勤が少ない

①幅広い仕事を経験できる

中小企業は業務が細分化されすぎていないため、大企業と比較して幅広い仕事を経験できます。若いうちから多くの経験を積めるため、幅広い知識とスキルが身につけられるでしょう。

また、与えられる裁量も大きく、自分の役割や成果を実感しやすく、やりがいや手応えが感じやすいのも特徴といえます。

②出世しやすい

中小企業は従業員数がそれほど多くないため、出世のチャンスが比較的多いでしょう。ポスト数に対する従業員数を見れば、大手企業で役職に就く競争率の高さは一目瞭然です。

しかし、従業員数が中小規模であれば出世競争のライバルが少なく、個人の活躍や実績を上層部に見てもらえます。そのため、個人の功績が評価されやすく、出世にも素直に反映されるでしょう。中小企業では、大企業に勤める同年代よりも早く上位の役職に出世できる可能性があります。

③経営層との距離が近い

中小企業は各部門と経営層との距離が近く、人間関係も密接です。そのため、自身が提案するアイデアや企画が上から承認されやすく、迅速な意思決定のもと動けるメリットがあります。

個人の意見が経営に影響することもあり、経営に必要な考え方やスキルが身につきやすい点も中小企業にしかない魅力といえるでしょう。間近で経営スキルを学びやすいため、将来独立や起業を考えている人には最適な学びの場です。

④転勤が少ない

中小企業は会社の規模が小さいため、支社や工場など本社と独立した事業場があっても、エリアが同地域に集中している傾向にあります。その分転勤が少ない、あるいは全くないため、ひとつの場所に定住したい人へおすすめです。

ある程度本人の意向をくみ取ってもらえるとはいえ、大企業の総合職は全国的な転勤も珍しくありません。転勤は私生活への影響が大きいため、中小企業ならその地に定着しやすいといえるでしょう。

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7.中小企業で働くデメリット

中小企業で働くことには独自のメリットがある一方、以下のようなデメリットも存在します。

  1. 給与や福利厚生面が劣る
  2. 一人あたりの業務量が多くなりがち
  3. 会社の将来性が不安定
  4. 教育体制が整っていない

①給与や福利厚生面が劣る

中小企業は事業規模が小さいため、大企業と比較すると給与や福利厚生など待遇面が劣る傾向があります。

国税庁による「令和4年分民間給与実態統計調査」だと、令和4年の平均給与は458万円といわれており、事業規模別に給与所得が400万円超500万円以下の割合(%)を見ると、その内訳は下記のとおりです。

  • 30〜99人:18.2%
  • 100人以上:58.9%

上記のデータから、一般に中小企業より従業員規模の大きい会社は、平均給与が高い傾向にあるとわかります。中小企業は運用コストがかかる法定外福利厚生を拡充していない場合も多く、社会保険や有休制度など最低限しか用意されてないケースも珍しくありません。

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②一人あたりの業務量が多くなりがち

幅広い仕事を経験できることは中小企業ならではのメリットです。裏を返せば一人あたりの業務量が多いともいえます。

そのため、長時間労働が発生しやすく、有給休暇が取りにくい環境に陥っている会社も珍しくありません。スキルアップや出世など、前向きに捉えられれば頑張れる場合もあるものの、ワークライフバランスを重視する人によっては不満につながるでしょう。

③会社の将来性が不安定

事業が安定していない点で、会社の将来性や安定性に不安を感じる人もいます。中小企業は資金力が少ないゆえに、規模が小さいほど業績の悪化や経営上のトラブルで倒産しやすいリスクは否めません。

リソースの配分は経営者の力量が問われる点でもあり、従業員にできることには限りがあります。経営に不安を感じると離職者が発生しやすいため、さらに事業の安定が遠のく負のループに陥るでしょう。

④教育体制が整っていない

大企業は人材や資金などのリソースが豊富であるため、新人研修やスキルアップといった教育体制が整っています。一方、中小企業は一人あたりの業務量が多いため教育にまで人手が十分に回せず、実際の業務をとおして学ばせるケースも珍しくありません。

教育体制が整っていないと新入社員の確保、育成がしにくいため、中小企業の中には即戦力の中途採用の比重を大きくしている場合もあります。

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8.中小企業で働くのに向いている人

以下があてはまる場合、中小企業で働くのに向いた人材といえるでしょう。

  1. 早く成長したい人
  2. 早くから出世したい人
  3. 主体性がある人
  4. 転勤を望まない人

ここからは、中小企業で働くのに向いている人について解説します。これから中小企業へ就職・転職を検討している人は、自分が上記の特徴に当てはまるかをチェックしましょう。

①早く成長したい人

中小企業は一人あたりの担当業務が多いため、大手企業と比べると現場にでるのが早い傾向にあります。そのため、実践的なスキルを幅広く獲得でき、現場経験をとおして成長を感じられるでしょう。

また早い段階から一人での仕事を任されるといった裁量も与えられやすいため、早くから成長したい人には最適な環境です。

②早くから出世したい人

中小企業は、出世に対する競争が緩やかです。年功序列の風潮も少ないため、実力さえ示せるなら出世しやすい環境といえるでしょう。

また個人の成果が会社の業績にも反映しやすいため、適切な評価が下されやすいといったメリットもあります。中小企業は、成長機会が多い環境で実力をつけていき、早くから出世したい人に向いた環境です。

③主体性がある人

大企業は業務が細分化されている分、担当業務が限定的な場合もあります。能動的に実力を積みたい人にとって、仕事に制約が課せられるのはデメリットといえるでしょう。一方、中小企業は一人あたりの業務量が多く裁量も大きい分、責任感を持って主体的に動く姿勢が求められます。

そのため主体的に動ける人ほど成長も早く、スキルアップや出世につながります。向上心や成長意欲が高い人にとって、中小企業はモチベーションを維持しやすい環境といえるでしょう。

④転勤を望まない人

「事情があって地元から離れられない」「結婚したばかりで居住地を変えたくない」など、さまざまな理由から転勤を望まない人も珍しくありません。大企業だと全国の支店へ転勤の辞令が下りたり、単身赴任を命じられたりの可能性があります。

一方、中小企業は地域に根ざした事業を展開する企業が中心で、基本的に転勤はなく、あっても近隣エリアに限定されます。単身赴任する心配もないため、家族との時間を大切にしたい方に向いているでしょう。

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9.中小企業への就職を検討する際に確認すべきこと

これから中小企業へ就職、転職を検討している方は、以下のポイントを確認して応募しましょう。

  1. 給与・福利厚生に納得いくか
  2. カルチャーフィットするか

ここからは、中小企業への就職を検討する際に確認すべき上記の2点について解説します。

①給与・福利厚生に納得いくか

応募企業は、労働体制に対して給与、福利厚生面に納得できるかチェックしましょう。待遇は面は企業規模にかかわらず、就職の重要なポイントです。どんなにやりがいを感じられても、待遇が納得できないと最終的には離職を考えるようになってしまいます。

基本給や見込み残業時間など給与面はもちろん、休暇制度や手当など給与以外の福利厚生が充実しているか確認しましょう。

②カルチャーフィットするか

中小企業は経営層との距離が近く、従業員同士の距離も密接です。職場の雰囲気に馴染めないと、居心地の悪さを感じて離職につながるかもしれません。就職、転職先の組織文化や社風を直に確認できると安心して応募できるでしょう。

カルチャーフィットとは?【意味を簡単に】見極め方、質問例
カルチャーフィットとは企業文化・風土が従業員にマッチしている状態であり、価値観や特性と企業文化のマッチング度合いを重視する採用手法を指します。 早期離職や人材の定着が課題となっている企業も多く、そうし...