今、ニートや引きこもりを含め、仕事に就けない若い世代(若年無業者)が増えています。専門家の中には、この問題は若者が原因ではなく、社会の変化によって起こったと考える人もいます。若者が働けない無業社会について取り上げます。
「無業社会」とは? 若年無業者が増える社会
無業社会とは、「無業社会 働くことができない若者達の未来」(朝日新書/工藤啓・西田亮介共著)で提唱されたものです。日本で学校にも通っておらず仕事もしていない無職の若年層(若年無業者)が増えている背景には、単に本人の原因、たとえば甘えているとか怠けているといった理由ではなく、社会が若者の無業を生むような無業社会に変化してしまったからだと考えられています。
若年無業者は、学校を出た後ずっと無職の場合もありますが、一旦は正規雇用や非正規雇用で働き、その後無業状態になってしまった場合も含まれています。
若年無業者の定義と3つのタイプ
ここでの若年無業者の定義は、年齢は15歳以上40歳未満で、高校や大学などの学校や予備校、専門学校などに通っておらず、独身であり、普段収入を得る仕事に就いていません。(厚生労働省の定義では15歳以上35歳未満)
この若年無業者は、
<求職型>就職を希望していて、実際に活動を行っている人
<非求職型>就職を希望してはいるが、活動を行っていない人
<非希望型>就職を希望していない人
の3タイプに分かれており、この全てを合わせて、現在日本には若年無業者が約220万人いるとみられています。
若年無業者=ニートではなく、そもそものニートの定義では、「34歳までで、働くことができる若い人が、家事も就業もせずに暮らしていること」を意味し、若年無業者の全てがニートなわけではありません。このうちの、求職型の人たちは、就職先が決まらないだけであって働く意思はあるので、失業者とも呼べるでしょう。
失業者であれば公的な支援、ハローワークでの職探しなどが可能ですが、残り2タイプは求職行動をしようとしないため、公的支援が届かない状況でした。
「無業社会」で若年無業者が働けない理由とは?
健康そうな若者が無職でいる様子を見たら、「甘えている」「やる気がない」と思ってしまうかもしれません。しかし、内閣府の「平成27年度子供・若者白書」によると、無業者が積極的に求職活動をしていない理由、つまり非求職型が働けない理由は、<けがや病気で求職活動ができない><学校以外で進学や資格取得の勉強をしている>という理由が上位でした。
また、無業者が働くことを希望していない理由、つまり非希望型が働かない理由も、1位2位は同じでしたが、次に目立つのは<その他>です。
働かない・働けないどちらの理由にも、<知識、能力に自信がない><探したが見つからない><希望に合う仕事がなさそう><仕事をする自信がない>という、消極的で一見「甘えている」「やる気がない」に近い理由は少数となっています。若者が仕事をしないと、本人の責任のように冷たく見てしまう偏見が社会にあるのだとしたら、それは変えていかなければなりません。
労働人口が減りつつある日本で、若い働き手は貴重になっていきます。職業体験の実施など、人事としても若年無業者が社会に戻ってくるための第一歩を支援できないか、検討してみましょう。