忌引きとは、家族や親しい人を亡くした人が外出を控えて喪に服すことです。ここでは主に忌引きで取得できる休暇について解説します。
目次
1.忌引きとは?
忌引きとは、家族や近親者を亡くした人が喪に服すために、社交的な活動を控えること。厳密には喪に服すことを「忌服(きぶく)」といい、忌引きは忌服のために取得する休暇を指します。つまり遺族は忌引きを行って故人を偲んで悲しみを癒やす、つまり忌服するのです。
忌服や忌引きの期間について法的な定義はありません。個々の家庭、地域、宗教、勤務先、学校などの規程によって異なります。仏教における忌服期間では、故人が亡くなってから四十九日間を「忌中」、また亡くなってから一年間を「喪中」とするのが一般的です。
2.忌引き休暇とは?
忌引き休暇とは、家族や親族が亡くなった際に従業員が取得できる休暇のこと。法律上での付与義務はないため、忌引き休暇制度を設けている企業は特別休暇(福利厚生としての休暇)としています。故人が亡くなるタイミングは不確定であるため、忌引き休暇は平日でも休日でも取得が可能です。
忌引き休暇は通夜や葬儀への参列を目的として付与されます。親など身近な親族が亡くなった場合は、参列だけでなく葬儀の手配、親族などへの連絡、役所での手続きなどの対応もしなければなりません。これらの対応をスムーズに進めるためにも忌引き休暇が活用できます。
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忌引き休暇の有無は企業による
日本の労働法では、企業が忌引き休暇を設けることは義務付けられていません。そのため忌引き休暇制度の有無や取得条件などは、企業ごとに異なります。忌引き休暇の申請時に、親族が亡くなったことを証明する書類の提出を求められるケースもあるため、取得前に就業規則などを確認しましょう。
企業によって名称が異なる
「忌引き休暇」は一般名称で、企業によっては「服喪休暇」や「慶弔休暇」としている場合もあります。
慶弔休暇は葬儀や通夜だけでなく、結婚式や出産などのお祝い事に出席する際も利用できる休暇です。一方忌引き休暇の場合は、慶事を含めない場合が多いでしょう。基本的に適用範囲は就業規則などに記載されていますが、不明な場合は上司などへ確認すべきです。
3.忌引き休暇の対象になる親族の範囲
一般的に忌引き休暇の対象となる親族の範囲は、従業員本人の3親等までとされます。3親等までに含まれる親族は次のとおりです。
- 配偶者
- 兄弟姉妹
- 親、子、祖父母、孫
- 曽祖父母、ひ孫
- おじ、おば
- 甥、姪
忌引き休暇は血縁関係が近い親族を対象としているため、4親等以上の親戚や知人が亡くなった場合、企業によっては忌引き休暇の対象外とすることもあります。故人が遠縁の方で忌引き休暇を取得できない場合は、有給休暇を使って葬儀に参加することになるでしょう。
いとこが亡くなった場合はどうなる?
いとこは4親等に当たるため、一般的には忌引き休暇の対象とはなりません。しかし家族間での親交が深く、いとことのつながりが直系の親族と同じくらい密接なケースも見られます。
このような場合は通夜や葬儀に出席したいという希望を企業側に伝え、忌引き休暇として認められるかどうかを相談してみましょう。企業によっては、個別の事情や人間関係を考慮し、忌引き休暇を付与する場合があります。
4.忌引き休暇の取得条件
忌引き休暇を取得する条件は各企業で異なるものの故人と従業員が3親等以内の関係にあることが一般的な条件です。また多くの場合は、メールや書類などで申請書の提出が必要です。具体的な取得条件を把握したい場合は、福利厚生や就業規則を確認しましょう。
また忌引き休暇を取得するにあたって、故人が亡くなったことを証明する書類(葬儀の案内状など)の提出が求められるケースもあります。そのため必要書類についても、事前に確認しておくと安心です。
忌引き休暇の取得は誰に連絡する?
忌引き休暇の取得に関しては、従業員が直接上司に連絡することが一般的です。業務の停滞が起こらないように、上司にだけでなく同僚や所属するチームにも連絡しておきましょう。休暇取得日にクライアントとの約束が入っていないかも確認し、必要に応じてスケジュール変更などもしておくべきです。
5.忌引き休暇の日数
忌引き休暇の日数は、休暇取得者と故人の関係が何親等かによってある程度決まってきます。一般的な日数は次のとおりです。
- 配偶者(親等なし):10日間
- 親(1親等):7日間
- 子(1親等):5日間
- 祖父母(1親等):3日間
- 兄弟姉妹(2親等):3日間
- 配偶者の親(2親等):3日間
- 配偶者の祖父母(2親等):1日間
- 配偶者の兄弟姉妹(2親等):1日間
- 孫(2親等):1日間
- 叔父・叔母(3親):1日間
ここで示した休暇日数はあくまで一般的な目安であり、企業の規定によって取得できる日数が異なることに留意が必要です。
土日などの公休日を挟む場合
忌引き休暇の取得期間に土日祝日や公休日が含まれる場合、一般的に企業は次の方法で対応します。
- 公休日を除いた日数を休暇として数える
- 土日祝日や公休日も忌引き休暇の期間に含める
ただし後者の場合、就業規則には具体的な期間(連続5日以内など)が記載されることがあります。
いつからが忌引きに該当する?
忌引き休暇の取得開始日の規定は企業ごとに異なるものの、一般的には故人が亡くなった当日または翌日から取得が始まる場合が一般的です。
葬儀までにかかる日数の目安
通常、葬儀が終わるまでの期間は5日間から1週間程度。しかし家族の状況や慣習、葬儀社の込み具合などによっては、この期間が長引くこともあります。故人と血縁が近い人ほど、葬儀の手配や準備に時間を取られるからです。
そのため一部の企業ではこのような事情を考慮し、規定以上の休暇を認めることもあります。忌引き休暇は適切な日数で申請するのが基本ですが、葬儀や手続きが長引きそうな場合は上司などへ相談してみましょう。
6.忌引き休暇時の給料は有給か無給か
企業によって、忌引き休暇を有給とするか無給とするかは異なります。忌引き休暇は法的な規定ではないため、給与に関する決定は企業次第です。考えられるパターンとして次の3つが挙げられます。
- 欠勤扱いで無給とする
- 出勤扱いで無給とする
- 出勤扱いで有給とする
出勤扱いで無給とする場合、有給休暇の取得を勧められる場合もあります。雇用条件によって有給と無給の扱いが変わる場合があるので、企業の規定を確認することが重要です。
7.忌引き休暇取得時の注意点
忌引きで休む際には、上司や同僚などへ迷惑をかけないために、スムーズかつ適切な日数で忌引休暇を取得しましょう。ここでは取得時に注意すべき点を解説します。
移動時間は休暇日数に含まれない
通常、忌引き休暇には移動日は含まれません。しかし葬儀や通夜の会場が遠方の場合や、交通手段が限られる場合は、取得した忌引き休暇期間での参加が困難でしょう。
特別な事情がある場合、企業によっては休暇期間に移動時間を含める、あるいは日数を延長するといった柔軟な対応を取ることもあるため、事前に相談してみることをおすすめします。
早めに申請する
忌引き休暇を取得すると、部署やチームのスケジュール変更などが起こり得るため、申請は極力早めに行うことが大切です。親族の死去がわかった時点で、まずは上司などへ口頭で伝えましょう。のちに別途メールや書面で申請書を提出するのが一般的です。
書類提出の有無を確認しておく
企業によっては、忌引き休暇申請書のほかに証明書の提出を求められることがあります。事前に提出できる証明書は葬儀の案内はがき、葬儀後に提出できるのは葬儀証明書や会葬御礼などです。
求められる書類の種類は企業ごとに異なりますが、書類が用意できていないと忌引き休暇の取得がスムーズに進まない可能性があります。忌引き休暇取得時に提出が必要な書類があるかを事前に把握しておくことが重要です。
8.忌引き休暇取得時のメール例文
訃報を受けた際は、通常の営業時間帯であれば電話や口頭で上司へ連絡するのが一般的です。しかし休日や夜など、日時によっては電話をかけるのが失礼にあたる場合もあります。
そのような場合は、メールで連絡しておきましょう。
メールで伝える際に必要となる内容は、「誰が亡くなったか」「故人の続柄」「忌引き休暇の希望日数」「忌引き休暇中の連絡先」などです。
以下に、忌引き休暇申請時のメールの例文をご紹介します。
例文
本文:田中部長。お世話になっております。山田です。
突然の連絡となりますが、私の祖父(山田太郎)が2月8日(木)に永眠いたしました。
このため、2月10日から2月13日まで忌引き休暇をしたくご連絡差し上げました。
葬儀・告別式の日にちについては決まり次第ご連絡いたします。
休暇中にご連絡は、000-0000-0000(携帯電話)までお願いいたします。
お手数をおかけして申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。