予実管理システムとは? 機能やExcelとの違い、選び方を解説

予実管理システムは、予算と実績の比較・分析に必要なデータの収集・一元化や分析の自動化などにより、予実管理の効率と精度を高めます。高精度な予実管理が行えると、予算と実績の目標が効率的に達成できるようになるでしょう。

今回は予実管理システムについて、機能・できることやExcelとの違い、導入のメリット・デメリットやシステムの選び方などを詳しくご紹介します。

1.予実管理システムとは?

予実管理ツールとは、予算と実績を管理し経営を効率化するツールです。売上や原価、目標の予算や実績などの数値を正確に蓄積・管理し、事業別やサービス別、店舗別など細かい単位での予実管理を可能とします。

また、予実管理ツールがあることで、目標への進捗が可視化されます。進捗の良し悪しにかからず、その原因を分析することで効率的に目標の達成に取り組めるでしょう。

予実管理とは?

予実管理とは、企業の予算と実績を管理することです。予算に対してどれくらいの実績を上げているのかを管理・確認し、予算と実績の差異を分析して評価します。適切に予実管理できれば、効率的に目標達成するための軌道修正が行えます。

予算に対する実績の進捗が悪いまま放置していては、期間内に目標達成することは難しく、その原因も解明できません。期間内にしっかりと実績を出すには、予実管理によってその達成度を可視化して原因を分析し、課題に応じた改善策を講じることが必要です。

予実管理とは? 目的ややり方、予算管理との違いをわかりやすく
予実管理とは、予算や実績を管理することです。予実管理を行うことで目標と現状の差異が把握でき、その原因を洗い出すことで適切な改善策が検討でき、効率的に目標達成が目指せるようになります。 今回は予実管理に...

予算管理との違い

予実管理と予算管理は、どちらも企業の予算と目標を管理して効率的な目標達成を目指すための業務です。両者の違いは、管理・分析対象にあります。

予実管理は予算と実績を比較し、その違いを分析・評価するプロセスです。対して、予算管理は一定期間における収支や資産の配分などを考慮して計画を立て、目標達成に向けて予算を管理するプロセスになります。

予算管理は目標達成に向けた予算を管理し、予実管理ではその過程における進捗と達成状況の差異を分析・評価するところまで対応します。予算管理は予実管理のプロセスの一つともいえることから、予算管理と予実管理は同じ意味合いとして使われることもあります。

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2.予実管理システムの機能・できること

予実管理では、予実管理に必要なデータの収集・分析・一元管理をシステム上で一貫して行えます。システムのタイプや搭載されている機能によって、予実管理システムができることはさまざまです。ここでは、予実管理システムの基本的な機能やできることをご紹介します。

データ収集・統合

予実管理に必要なデータは、社内の各所に散在している状態です。予実管理システムでは事業や部門、店舗などの各拠点にあるデータを集約・統合し、分析しやすいよう見える化します。各拠点に散在したデータが一箇所に集まることで、組織全体の状況が明らかになります。

また、分析しやすいよう数値加工したりと、データの加工まで対応しているシステムもあります。集約されたデータはPCやスマホ、タブレットなど各デバイスでリアルタイムに閲覧可能です。

レポーティング・分析

手間がかかり、ヒューマンエラーも発生しやすいデータの集計・分析が自動化されます。各拠点から集約された膨大なデータの分析業務も簡略化でき、予実比較やKPI分析、着地予想や原因分析など、多角的な分析を可能とします。

システムによっては、Excelなどの表計算ソフトに入力しているデータをシステムに反映でき、使い慣れたソフトを利用しつつ、手間のかかる分析はシステムで自動化できます。

また、分析結果もシステムで一元管理され、各拠点と共有可能です。さらに、分析に必要な資料や帳票の自動作成にも対応。手間のかかるグラフ作成も簡単にでき、工数のかかるレポーティング作業を効率化します。

進捗のモニタリング

予実管理を行うにあたって、データ収集のためのファイルの配布や入力、承認などが必要になります。アナログでの管理では、誰が作業しているか、どこまで進んでいるかのステータスがわかりにくく、確認のために作業が滞ってしまうこともあるでしょう。

予実管理システムではリアルタイムで作業ステータスを把握でき、進捗もモニタリング可能です。ステータスの確認に工数を要することなく、担当者がスムーズに必要な対応ができるようになります。

意思決定の迅速化

データが多いほど入力や分析に工数がかかり、実績を確認するまでに時間がかかってしまうでしょう。予実管理システムなら分析までの工程を自動化し、効率的な分析を可能とします。

また、必要なデータを入力すれば、比較結果などの必要なデータやレポートが即時反映され、結果を戦略立案や経営判断に活用できます。データに基づく合理的な意思決定を迅速化させ、効率的な経営目標の達成をサポートします。

外部システム・データとの連携

予実管理に必要なデータが、外部システムに蓄積されている場合もあるでしょう。CRMやExcel、SFAやBIツールなどと連携することで、外部に保管されているデータを予実管理システムに取り込むことが可能です。

外部システムに蓄積されたデータをリアルタイムに反映することもでき、常に最新のデータを用いた予実比較を行えます。

また、システムによってはデータの書き込みや修正内容が外部システムの方にも反映されます。そのため、どちらか一方でデータを追加・修正しても改めてデータを入力し直す必要がなく、共有データの誤りやデータの入力ミスも防げます。

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3.予実管理システムとExcelの違い

Excelで予実管理を用いて行なっている企業は多いでしょう。Excelは比較的安価で利用できる、使い慣れているなどのメリットがありますが、効率的かつ高精度な予実管理を行うには予実管理システムがおすすめです。予実管理システムとExcelでは、具体的に以下のような違いあります。

予実管理システム Excel
機能性 データ収集・分析の自動化 手動でのデータ入力・分析
データの集計スピード 自動集計により即時に集計 データ量が多いほど時間がかかる
操作の複雑性 複雑な計算・分析も自動化、変更箇所も自動反映 関数の知識が必要、1つの変更箇所が複数箇所に反映するためデータ修正の手間が発生
メンテナンス・管理のしやすさ 自動メンテナンス可能、クラウド管理でデータが増えても重くならない ファイルやシートが増えると管理が大変、ファイルが重くなると操作に影響する
外部システムとの連携性 対応している外部システムのデータを自動取り込み可能 外部システムのデータは自動で取り込めず、手動での取り込みが必要
コスト 導入・ランニングコストがかかる Excelの導入自体は低コストだが、人的コストがかかる

大きな違いは、予実管理にかかる手間や効率性です。システムは予実管理の作業工程の自動化による業務効率化や必要なデータを出すまでの工数削減に役立ちます。マンパワーを必要とせず、さらにはデータ入力や分析の正確性を高めてくれる点は予実管理システムの大きなメリットです。

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4.予実管理システムのメリット

予実管理システムを導入することで、以下のようなメリットが得られます。

大容量データを処理できる

企業規模が大きく、事業や部門が細かくわかれているほど、予実管理で扱うデータも膨大です。ExcelやGoogleスプレッドシートのような表計算ソフトは、扱うデータが大きくなるほどファイルが重くなって処理に時間がかかってしまいます。

対して、予実管理システムはデータベースを用いた高速処理が可能であり、大容量データも簡単に扱えます。クラウド型のシステムなら、容量の拡張やデータ共有も手軽に行えます。

担当者の負担・ヒューマンエラー軽減される

Excelでのデータ管理は手動で行う作業も多く、扱うデータが多いほど作業の負担が大きく、入力ミスなどのヒューマンエラーも起こりやすいでしょう。

また、そもそものデータが間違っていると誤った分析結果になってしまい、経営判断に影響してしまう恐れがあります。

システムなら作業の自動化により、担当者の負担とヒューマンエラーのリスク軽減に有効です。効率的かつ高精度な予実管理が行え、目標達成のPDCAも早く回せるようになります。

属人化の解消・防止に役立つ

Excelでの予実管理は関数を扱うこともあり、担当者には専門知識が必要です。

また、人によって分析方法が違う場合はデータの統合や引き継ぎ、共有が手軽に行えないことで、担当者間でしか情報や分析方法が把握できず、予実管理が属人化してしまうリスクもあります。

予実管理システムなら関数のような知識は不要、かつ複雑な操作もなく直感的に扱えるため、誰でもかんたんに集計や分析が行えます。

属人化の解消・防止だけでなく、組織全体で予実管理に取り組む意識が醸成され、従業員も目標に対して当事者意識を持ちやすくなるでしょう。

分析・経営判断の精度が高まる

ヒューマンエラーが軽減され、予実管理に必要なデータもリアルタイムに処理できる用になります。また、分析機能により多角的にデータを分析できるため、見落としがちな課題やこれまで発見できなかった問題の発見にも役立つでしょう。

さらに、データはシステムに蓄積されるため、過去のデータや分析結果も参考にしながら、戦略を立案したり、経営判断を下したりできるようになります。目の前のデータを余すことなく活用でき、予実管理の精度を高めてくれます。

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5.予実管理システムのデメリット

一方で、予実管理システムには以下のようなデメリットもあります。

導入・ランニングコストがかかる

予実管理システムを導入するにあたって、初期費用や月額利用料などのコストが発生します。大規模なシステムであるほど、費用も高額になる傾向にあります。

高額なシステムを導入したからと予実管理システムのメリットを発揮できるとは限らず、必要な機能がなかった、使いにくくコストに見合うメリットが得られないといったこともあり得るでしょう。

あらかじめ予算を決め、無理のない範囲で運用できるシステムを選ぶこともポイントです。

社内教育が必要になる

導入初期は、システムの操作に慣れるまで社内教育が必要です。担当者は操作を覚えたり、マニュアルを作成したりと一時的に負担が増えてしまうでしょう。

また、最初のうちはわからないことも多く、業務効率が落ちてしまうかもしれません。そうした状況も想定し、ほかの業務負担を減らすなどして担当者が学習・教育する時間を確保することが必要です。

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6.予実管理システムの種類と特徴

予実管理システムには、大きく2種類があります。各特徴を詳しくみていきましょう。

大規模データ対応タイプ

予実管理で扱うデータ量が大きい大企業向けのタイプです。大規模データ対応タイプは、社内にサーバーを構築するオンプレミス型が多くみられます。大手企業は国内・海外に拠点が多く、部門や事業も細かくわかれています。

多拠点・大規模データ対応タイプなら外部システムとの連携性やデータ処理能力が高く、予実管理以外にも幅広い用途で利用できるさまざまな機能を搭載しています。

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クラウド・SaaSタイプ

機能がシンプルで使い勝手が良い、中小企業向けのタイプです。予実管理に必要な基本的な機能は備わっており、比較的安価に導入できる点が特徴です。

クラウド型ならオンラインで他拠点・他部署とも手軽にデータ共有でき、進捗のモニタリングも行えます。カスタマイズ性に優れているシステムも多く、なかには大手企業のデータも十分に扱える高性能なシステムもあります。

スモールスタートに最適であり、機能を追加できるシステムであれば将来的な利用拡大にも対応可能です。

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7.予実管理システムの選び方・比較ポイント

予実管理システムにはさまざまな種類があるものの、その中から自社に合ったシステムを選ぶことが大切です。導入する予実管理システムを選定する際は、以下ポイントをふまえて各システムを比較検討してみましょう。

  1. 対応できる業務範囲
  2. コストパフォーマンス
  3. 既存運用からの移行しやすさ
  4. 外部システムとの連携性
  5. サポート体制
  6. セキュリティ対策

①対応できる業務範囲

システムによって対応できる業務範囲は異なります。たとえば、データ分析まではできても、データを反映した帳票や資料作成には対応していないシステムもあります。

予実管理に必要な機能のみでいいのか、予実管理以外も一元化したいのか、部門やプロジェクトごとの細かい予実管理にも利用したいのかなど、システム導入の目的をふまえて必要な機能を備えているかチェックしましょう。

②コストパフォーマンス

予実管理システムは導入の初期費用やランニングコストがかかってしまいますが、業務効率化や経営改善に効果があれば高いコストパフォーマンスを発揮します。

無駄なコストを発生させないためにも、企業規模に見合っており、必要な機能をしっかりと備えた機能を選定することが重要です。無料トライアルができるシステムなら、自社のニーズにマッチしているかを実際に確認できます。

③既存運用からの移行しやすさ

現在、予実管理をExcelなどで対応している場合、新しくシステムを導入することでかえって業務負担が増えてしまうことがあるでしょう。

しかし、既存の運用に近い操作やインターフェースであれば移行後に慣れるのも早く、担当者の負担も軽減されます。Excelに近似した操作性やインターフェースを備えていたり、Excelからデータをインポートできたりするシステムもあります。

導入後の人的コストも考慮して、既存運用から移行しやすいシステムを選ぶこともポイントです。

④外部システムとの連携性

予実管理に必要なデータがすでに利用しているSFAやBIツールに蓄積されている場合もあるでしょう。システムによってはAPI連携で既存システムとスムーズに連携し、必要なデータを取り込んで予実管理に活用できます。

また、会計システムと連携できれば、管理会計や財務会計などにも生かせます。予実管理に関連するデータを扱っている利用中のシステムがあれば、それらと連携できるかも確認しましょう。

⑤サポート体制

コンサルタントによる導入サポートがあると、導入後スムーズにシステムが利用できます。既存システムからのリプレースや新規導入の際は、要件定義やシステム設定などが必要です。

また、予実管理を行うための管理項目の設定などにも時間や手間がかかってしまうでしょう。導入に時間がかかってしまったり、正しく設定できずに予実管理に影響してしまったりするリスクがあるため、導入時・導入後のサポート体制も確認しておくと安心です。

⑥セキュリティ対策

予実管理で扱うデータは、社外に漏れてはいけない重要なデータも多くあります。システムでデータを扱うということは外部にデータを預けている状態であるため、セキュリティ対策がしっかりと講じられているかも重要なチェックポイントです。

2段階認証やアクセスのIPアドレス制限、閲覧制限などのセキュリティ対策から、情報漏洩や不正アクセスが防止できるシステムを導入しましょう。

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8.予実管理システム導入時の注意点

予実管理システムは導入に費用がかかるだけでなく、システムに慣れるまでは人的コストも発生します。目的を明確にせず導入してしまうと、費用が無駄になるだけで予実管理システムのメリットが得られない恐れもあるでしょう。

導入目的の明確化は、予実管理システムの導入時に一番にやるべきことです。予実管理システムを導入して解決したい課題や予実管理システムで実現したいことを言語化し、自社にマッチしたシステムを選びましょう。