有給管理ソフトでは、従業員の有給休暇の付与日数や残日数、有給休暇の取得申請や承認などを一貫して行えます。残日数の自動集計や未取得者へのアラート機能、年次有給休暇管理簿の作成など、有給休暇の管理にかかる一連の業務の正確性・効率アップに有効です。
今回は有給管理ソフトについて、機能や導入メリット、ソフトの選び方・比較ポイントや導入時の注意点などをご紹介します。
目次
1.有給管理ソフトとは?
有給管理ソフトとは、有給休暇の付与日数や取得日、残日数などを管理するツールです。従業員も有給の取得から申請の手続きまで一括で行えるなど、有給管理に関連する業務を効率化できます。
企業によって有給付与の基準日が異なるため、従業員ごとの管理が複雑です。従業員数が多いほど管理の手間もかかり、エクセルや紙では管理が煩雑になってしまうでしょう。
システムなら残日数のリアルタイム反映や取得日数の把握など、あらゆる作業の自動化と効率化を可能とします。
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有給休暇の取得義務化とは?
2019年4月より、労働基準法の改正によって年10日以上有給休暇が付与されている従業員は年5日間の取得が義務化されました。年次有給休暇が付与された日(基準日)から1年以内に最低5日間の取得が必須であり、対象の労働者には管理職や有期雇用労働者も適用されます。
取得時期は、できる限り労働者の希望に沿ったうえで時季指定を行う必要があります。違反した場合には、年5日の取得が満たせなかった従業員一人につき30万円以下の罰金が科されます。違反が多いとその分罰金が増えてしまうため、厳重な有給管理が必要です。
年次有給休暇管理簿とは?
年次有給休暇管理簿とは、10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員の有給休暇の取得状況を管理する書類です。有給休暇の取得が義務づけられたことにより、年次有給休暇管理簿の作成および保管も義務化されました。
現時点では3年の保管期間が定められています。年次有給休暇管理簿には、以下項目の記載が必要です。
- 基準日:有給休暇の付与日
- 日数:年次有給休暇の取得総日数
- 時季:年次有給休暇を取得した日付
上記項目が記載されていれば、紙やエクセル、システムなど管理形式は自由です。
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2.有給管理ソフトの機能・できること
有給管理ソフトの基本的な機能・できることをご紹介します。
有給の取得状況の管理
従業員一人ひとりの有給取得状況や取得率が一覧で管理されており、管理者だけでなく、従業員も自分の取得状況や残日数を確認できます。取得日数や残日数、取得率は自動計算されるため、入力ミスなどのヒューマンエラーも防止できます。
有給の申請・付与手続き
従業員の有給申請から企業側の承認まで、手続きを一貫してシステム上で行うことが可能です。ソフトによっては付与予定日を指定することで、算定期間中に8割以上出勤し条件を満たした従業員に自動的に有給が付与される「自動付与」の機能を備えています。
従業員は有給申請の手続きが簡略化され、管理者も従業員の取得状況や取得率を確認しながら承認できるなど、正確かつスムーズに手続きできるようになります。
従業員への通知・アラート
年5日の取得が義務化されたこともあり、有給の取得忘れは必ず防がなければなりません。有給管理ソフトなら、取得率が基準に達していない従業員に対してアラートなどで通知する機能も備えています。
従業員数が多いほど、一人ひとりの取得状況を確実に把握するのが難しいでしょう。ソフトなら取得基準を満たしていない従業員をデータから算出してアラートを出してくれるため、従業員自身も有給取得への意識が高まりやすくなります。
有給休暇管理簿の作成・保管
年次有給休暇管理簿は、作成と保存が義務付けられています。有給管理システムでは、年次有給休暇管理簿に必要な「基準日」「取得日数」「取得日」を入れ込んだ管理簿の自動作成が可能です。
有給管理ソフトのデータが反映されるため、記入ミスや管理者の業務負担の軽減に役立ちます。さらに、書類はクラウドで保存され、必要な時にいつでもデータを引き出せます。
独自休暇の管理
独自休暇の種類が多いほど、従業員ごとの管理も大変です。有給管理ソフトでは、リフレッシュ休暇やアニバーサリー休暇など、法定の有給休暇以外に企業で独自に設けている休暇も管理できます。
ソフトによって機能の有無が異なるため、有給以外も一緒に管理したい場合には、対応しているソフトを選定しましょう。
3.有給管理ソフトのメリット
有給管理ソフトを導入により、企業は以下のようなメリットが得られます。
有給管理が効率化できる
有給休暇の付与日や付与日数、取得日数や残日数は人によってさまざまです。一人ひとりの有給管理が必要であるため、アナログでの管理は従業員数が多いほど労力がかかってしまうでしょう。
有給管理ソフトなら従業員それぞれの付与日数や取得日数、残日数が自動計算・可視化されるため、効率的かつ正確に管理できます。
さらに、有給休暇に関する情報がシステムで一元管理されているため、必要なデータをいつでも引き出せます。従業員側はシステム上で取得申請も行え、有給取得の手続きもスムーズに行えます。
法令遵守が徹底できる
有給休暇の年5日の取得が義務化されたことで、一層の有給管理が求められています。有給管理ソフトでは各従業員の取得状況が一覧で把握でき、最低限の取得日数を満たしていない従業員にはアラート通知が届く機能が搭載されているソフトもあります。
付与日数や取得日数の入力内容が誤っていたことで、基準内の有給を取得できずに罰則を受けてしまうといったミスが起こってしまうリスクも0ではありません。有給管理ソフトならそうした人的ミスも減り、法令遵守を徹底した有給管理が行えます。
従業員の有給休暇取得を促進できる
有給管理システムなら、有給の取得申請もスマホやPCから行えます。従来のように上司に直接申請書を渡す手間が省け、申請手順の簡略化によって有給休暇の取得促進の効果にも期待できるでしょう。
システムによっては、LINEなどの日常的に利用するアプリから取得申請や残日数の確認ができる場合もあります。
コスト削減につながる
紙での管理だと用紙代や印刷代がかかったり、管理簿の保管場所が必要だったりとあらゆるコストがかかります。有給管理ソフトならペーパーレス化にもつながり、煩雑な管理から脱却できるため管理コストの削減にも有効です。
また、アナログやエクセルでの管理だと従業員数が多いほど管理の手間がかかるため、担当者の業務負担も大きいでしょう。有給管理ソフトなら計算の自動化などにより担当者の業務負担も軽減されるため、管理コストも削減可能です。
4.有給管理ソフトのデメリット
一方で、有給管理ソフトの導入には以下のようなデメリットもあります。
導入コストがかかる
有給管理ソフトの導入には、初期費用や月額・年額利用料が発生します。一般的には多機能であるほど、従業員数が多いほど利用料も高くなる傾向にあります。
高額な費用を払って機能を使いきれなかった、必要な機能が搭載されていなかったなど、コストが無駄になってしまう可能性もあるでしょう。コストがかかる以上、自社に適した有給管理ソフトを導入することが大切です。
導入初期は担当者の負担が増える
システムの導入初期は、操作に慣れていないこともあり担当者の運用負担が増大してしまう恐れがあります。有給管理システムは従業員も申請などで利用するため、従業員への周知やフォローも必要です。
担当者を中心にマニュアル作成を行うなどして、社内浸透に一体的に取り組むことがポイントです。
5.有給管理ソフトの種類と特徴
有給管理システムは、有給管理機能に特化したソフトと勤怠管理システムと一体型になったソフトの主に2種類があります。有給管理ソフトの種類と特徴を詳しくみていきましょう。
有給管理特化型
有給管理機能の特化したタイプであり、機能や操作もシンプルで使いやすく、比較的安価に導入できる点が特徴です。低コストながらも基本的な機能が搭載されているため、運用上で困ることはほぼないでしょう。
すでに勤怠管理システムを導入しており、有給管理ソフトを追加で導入したいという場合におすすめです。
勤怠管理システム一体型
勤怠管理システムに有給管理機能が組み込まれているタイプです。勤務時間の集計やタイムカード機能などとあわせて、有給管理が行えます。有給管理は勤怠管理の一種となるため、一つのソフトで勤怠管理が完結します。
既存の勤怠管理システムのリプレースや新規導入を検討しており、かつ有給管理機能も導入したいという場合に最適です。
労務管理システム一体型
有給管理や勤怠管理にとどまらず、労務管理全般の機能が搭載されている中で有給管理機能が付帯しているタイプです。
給与計算や税金・保険関連の手続きなど、バックオフィス全体の業務効率化に役立ち、なかには人事管理機能まで搭載されているシステムもあります。有給管理ソフトの導入とあわせて、バックオフィス全体の効率化を図りたい場合におすすめです。
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6.有給管理ソフトの選び方・比較ポイント
有給管理ソフトにはさまざまな種類があり、その中から自社に適したものを導入することがポイントです。数あるソフトのなかから自社に適したものを見つけるためにも、以下ポイントをふまえて有給管理ソフトを比較検討してみましょう。
- 機能性
- 使いやすさ
- 導入・ランニングコスト
- 他システムとの連携性
- サポート体制
- 自社の就業規則に応じた管理方法
①機能性
自社に必要な機能が搭載されているかは、重要なポイントです。まずは有給管理機能のみのソフトでいいのか、勤怠管理や労務管理の機能も必要かといった観点で候補を選定してみましょう。
勤怠管理システムや労務管理システムなど、有給管理機能が統合されているタイプのシステムを利用する場合は、有給管理以外でも必要な機能があるかも確認してみてください。
②使いやすさ
有給管理の担当者や従業員にとって使いやすいシステムであることも大切です。そのためにも、導入時は有給管理の担当者や従業員の意見も取り入れましょう。多機能なシステムほど覚えることも多く、運用に慣れるまでに時間がかかってしまいます。
社内全体で有給管理が可視化できるか、従業員の有給申請の手順が簡略化され手軽に行えるかなど、多角的な視点から使いやすさをチェックすることがポイントです。
③導入・ランニングコスト
機能が多いほど、コストも高額になる傾向にあります。コストオーバーしないためにも、あらかじめ予算を決めておき、その範囲内で必要な機能を備えているソフトを導入すると良いでしょう。
多機能で高額なソフトを導入しても機能が多すぎて使いこなせない、そこまでの機能は不要だったなど、コストパフォーマンスが悪化する恐れもあります。費用や機能、費用に対する効果をしっかりと検証して最適なソフトを選ぶことがポイントです。
④他システムとの連携性
有給管理機能のみを備えたソフトを導入する場合、すでに利用中の勤怠管理システムや労務管理システムと連携できるかもチェックしましょう。有給管理は勤怠や労務管理にも関連する内容であり、連携できるとデータ管理もスムーズになります。
業務効率化のためには、ほかシステムとの連携性についてもソフトごとに確認しておくと安心です。
⑤サポート体制
導入初期は運用・管理上でわからないことも多く、初めてシステムを導入する際は導入時のサポートがあると安心です。
また、有給管理システムは従業員も申請手続きなどで利用するため、最初のうちは操作の仕方など担当者への問い合わせも多くなってしまうでしょう。担当者が疑問をスムーズに解決し、問い合わせの工数をできる限り削減するためにもサポート体制が充実しているかも重要なポイントです。
⑥自社の就業規則に応じた管理方法
有給の取得単位は企業によってさまざまであり、1日単位のほか、半日単位や時間単位での取得を許可している企業もあります。
時間単位での取得ができるにもかかわらず、システム上で時間単位の取得が管理できないと、その分は別で管理しなければならなくなってしまいます。
そのため、就業規則に応じた管理ができるかも重要なチェックポイントです。有給のほか、企業で独自に設定している特別休暇の取得・残日数なども管理できるとなお便利です。
7.有給管理ソフト導入時の注意点
有給管理ソフトを導入する際は、以下のポイントに注意しましょう。
自社に合ったシステムを導入する
導入する有給管理ソフトが自社のニーズにマッチしているかが重要です。マッチした有給管理ソフトを導入するためにも、まずは導入目的と必要な機能を明確にすることがポイントです。
「安いから」「とりあえず機能が多いから」などといった理由で適当に選んでしまっては、導入後にソフトが使いにくくかえって業務効率が悪化してしまう、使わない機能が多くコストパフォーマンスが悪くなってしまうなど、新たな課題が発生する恐れもあります。
選び方・比較ポイントもふまえ、自社に適した有給管理ソフトを導入しましょう。
初期設定を正しく行う
初期設定を間違えてしまうと、その後の自動計算にも誤りが生じてしまいます。たとえば、有給付与の基準日を間違った日付で登録してしまうことで算定期間にズレが生じ、そのズレのせいで1年以内に年5日の取得を満たせなくなってしまう可能性もあります。
初期設定はしっかりと担当者が行い、設定にミスがないかを確認したうえで実際に運用を開始しましょう。