勤務形態とは? 種類一覧と各特徴、雇用形態との違いを簡単に

近年、ワークライフバランスを支える多様な働き方が広がっています。多くの企業がテレワークやフレックスタイム制度など、さまざまな勤務スタイルを採用しています。

しかし、業種や職種によって適した勤務形態は異なるため、それぞれの特性を把握し、自社に合った勤務形態を選択することが重要です。この記事では、各勤務形態の種類や特徴、それぞれのメリット、デメリットについて詳しく紹介します。

1.勤務形態とは?

勤務形態とは、企業が従業員に対して設定する労働の時間帯や形式、勤務パターンを指す言葉です。これには、固定時間制、変形労働時間制、フレックスタイム制、裁量労働制、テレワークなどが含まれます。

求職者の間で柔軟な働き方を求める傾向が高まっているため、企業が柔軟な勤務形態を整備することは、優秀な人材を獲得するための手段として重要になっています。

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2.勤務形態と勤務体系、雇用形態との違い

勤務形態と似た言葉に勤務体系や雇用形態があります。ここでは、これらの違いを紹介します。

勤務形態と勤務体系の違い

勤務形態は「いつ」「どのように」働くかを決めるもので、具体的には次のような労働時間や勤務パターンを指します。

  • 固定時間制
  • 変形労働時間制
  • フレックスタイム制
  • テレワーク

似たような用語に「勤務体系」があるものの、これはほぼ同じ意味で理解していただいても構いません。ただし、勤務体系という言葉は、早朝シフトや夜勤シフトといったシフトの種類を指す場合にも使用されることがあります。

勤務形態と雇用形態との違い

勤務形態が働き方の時間や方法を示すのに対して、雇用形態は下記のような労働契約の種類を指します

  • 正社員
  • 契約社員
  • 派遣社員
  • パートタイム労働者
  • アルバイト等

雇用形態は労働者と企業との法的な関係や契約内容にもとづいており、給与、福利厚生、雇用の安定性など、働くうえでの権利や義務に直接影響を与えます。

たとえば、正社員は一般的に雇用の安定性が高いものの、契約社員や派遣社員はプロジェクト単位や契約期間にもとづいた雇用がなされます。

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3.勤務形態の種類一覧と特徴

代表的な勤務形態としては、などがあります。ここでは、それぞれの形態の特徴やメリット・デメリットを紹介します。

  1. 固定時間制
  2. 変形労働時間制
  3. フレックスタイム制
  4. 裁量労働制

①固定時間制

固定時間制は、従業員が決まった時間帯に出勤し、決まった時間帯に退社するという伝統的な勤務形態です。この制度は、とくに製造業やオフィスワークなど、時間にもとづくタスクが多い業界で広く採用されています。

固定時間制の最大の特徴は、労働時間が一定であり、従業員が毎日同じ時間に勤務することです。これにより、企業は労働力の管理とリソースの配分を容易に行えます。

ただし、労働時間は労働基準法によって規定されており、基本的には1日の労働は8時間、週の総労働時間は40時間以内に収める必要があります。

固定時間制のメリット

ここでは、固定時間制の企業側と従業員側のメリットをそれぞれ紹介します。

企業側のメリット

固定時間制は、企業側は労働時間の管理が容易で、出勤状況や労働効率の監視がしやすくなるため、労務管理が効率的に行えます。

従業員側のメリット

従業員側は、生活リズムが一定であるため、プライベートのスケジュールを立てやすいというメリットがあります。定時での作業終了が可能なため、従業員のワークライフバランスが向上し、職場の満足度を高めることが期待できます。

固定時間制のデメリット

一方で、固定時間制には下記のデメリットもあります。

企業側のデメリット

固定時間制の企業側のデメリットは、業務の需要に応じた柔軟な対応が難しい点が挙げられます。繁忙期や突発的な業務など、迅速な対応が求められる状況では不利になることがあります。

また、固定的な勤務時間は創造性や自発性を阻害する可能性があり、とくに新しいアイディアやイノベーションを求める職種には不向きかもしれません。

従業員側のデメリット

土日が休日である場合、従業員は行政機関や銀行への用事が難しくなる他、家族の急な病気など突発的な予定への対応も困難になるなどの欠点があります。働きたい時間や生活スタイルに合わせて勤務できないため、職場離れを招く原因にもなり得ます。

②変形労働時間制

変形労働時間制は、業務の忙しさや特性に合わせて労働時間を調整できる勤務形態です。この制度では、繁忙期には労働時間を増やし、閑散期には短縮することで、労働時間の配分を行います。

とくに、観光業や小売業、農業などの繁忙期と閑散期の差が激しい業界や、プロジェクトベースで作業量が変わる業務に適しています。

変形労働時間制には、①1か月変形制、②1年変形制、③1週間変形制の3つのタイプが存在し、それぞれで適用される事業場や対象労働者、労働時間の制限などが規定されています。

特に注意すべき労働時間の限度は、下記のように決められています。

1か月変形制 1年変形制 1週間変形制
1日の労働時間 なし 10時間 10時間
1週の労働時間 なし 52時間

3か月超の時は、週48時間を超える週は連続3週以内、3か月ごとに3回以内とする

40時間
対象期間中の週平均労働時間 40時間(特例事業場は44時間) 40時間
休日 4週に4日 1週に1日 4週に4日

参照:日本労働組合総連合会「3種類の変形労働時間制一覧

変形労働時間制のメリット

続いて、変形労働時間制の企業側と従業員側のメリットを紹介します。

企業側のメリット

変形労働時間制の最大のメリットは、労働需要の変動に応じて労働時間を柔軟に調整できる点にあります。必要な時には多くの労働時間を確保し、必要ない時は少なくすることができるため、労働コストの無駄を減らしながら生産性を最大化できます。

また、残業時間の削減が期待され、それに伴い残業代も節約される可能性があります。

従業員側のメリット

閑散期に労働時間を減らせるので、従業員は退社後の時間を自由に使えるようになります。これにより家族との時間や趣味の時間が増え、結果としてストレスの軽減にもつながるでしょう。

変形労働時間制のデメリット

一方で、変形労働時間制には下記のデメリットがあります。

企業側のデメリット

労働時間の計画や管理が複雑になるため、人事部門の業務負担が増大します。さらに、不規則な勤務時間は従業員間のコミュニケーションの障害となり得るため、チームワークや職場の士気に悪影響を及ぼすこともあります。

従業員側のデメリット

労働時間が不規則になることで、従業員の生活リズムが乱れやすくなるというデメリットがあります。とくに家庭を持つ従業員や学生など、定期的な生活スケジュールを必要とする人にとっては大きな負担となる場合があります。

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フレックスタイム制

フレックスタイム制は変形労働時間制のひとつで、労使協定により設定された総労働時間の範囲内で、従業員が自分の働く時間をある程度自由に決められる勤務形態です。

この制度では、一定の「コアタイム」(全従業員が必ず出勤しなければならない時間帯)を設ける場合もあります。その他の時間帯は「フレキシブルタイム」として、従業員が出勤と退勤の時間を自由に設定できます。

フレックスタイム制のメリット

フレックスタイム制は企業側、従業員側で下記のメリットがあります。

企業側のメリット

従業員が仕事とプライベートのバランスを取りやすくなることで、従業員の満足度が高まり、離職率の低下につながります。また、従業員が働きやすい時間に働けることで、結果として全体の生産性が向上します。

従業員側のメリット

従業員が自身の生活リズムに合わせてフレキシブルタイム内で労働時間を調整できます。通勤ラッシュを避けて出勤時間を選べるため、通勤にかかわるストレスが大幅に軽減されます。特に大都市圏に住む従業員にとって大きな利点です。

さらに、従業員が最も集中できる時間帯に仕事を行えるため、効率的にタスクをこなすことが可能です。

フレックスタイム制のデメリット

フレックスタイム制を導入することで、下記のデメリットが生じます。

企業側のデメリット

変形労働時間制と同様に、従業員ごとに異なる勤務時間を管理する必要があるため、人事部門の業務が複雑になります。また、勤怠管理システムなどの適切なツールを導入する必要があり、それに伴うコストも考慮する必要があります。

従業員がバラバラの時間に勤務するため、チームで協力して行うべき作業やミーティングのスケジュール調整が困難になり、プロジェクトの進行に影響をおよぼす可能性もあり、適切な研修やサポート体制の構築が求められます。

従業員側のデメリット

フレックスタイム制は自己管理能力が高い従業員には適しています。そうでない場合は生産性が低下することがあります。

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裁量労働制(みなし労働時間制)

裁量労働制、またはみなし労働時間制とは、特定の職種や業務に従事する従業員に対して、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ労使間で合意された「みなし労働時間」に基づいて労働時間を算定する制度です。

たとえ実際の労働時間がこれより短かったり長かったりしても、給与はこのみなし時間にもとづいて支払われます。

裁量労働制は、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務に限定されています。たとえば、研究開発、システム開発、コンサルティングなどです。

また、外出が多く労働時間の計測が難しい営業職やサービス業の職種では「事業場外労働のみなし労働時間制」が適応される場合があります。

この制度では、労働者が事業場の外で自由に業務を行い、その業務に要する時間に対してあらかじめ設定された時間が労働時間としてみなされます。

裁量労働制のメリット

裁量労働制(みなし労働時間制)の企業側、従業員側のメリットを紹介します。

企業側のメリット

特に創造性を要する業務において、優れた成果をもたらす可能性があります。高度な専門性を持つ職種では、この制度を導入することで優秀な人材の確保や定着に有利となります。

従業員側のメリット

裁量労働制は、従業員は、定められた業務を達成するために、どのように時間を使うかを自己の裁量で決定できるため、フレキシブルな働き方が可能となり、個々の生産性が向上します。

また、従業員が自身のライフスタイルや体調に合わせて仕事のスケジュールを調整できるため、仕事と私生活の調和が取りやすくなります。

裁量労働制のデメリット

裁量労働制(みなし労働時間制)には企業側、従業員側で下記のデメリットがあります。

企業側のデメリット

労働時間が不確定であるため、業務が多い場合に長時間労働に陥りやすくなり、労働者の健康を害するリスクがあります。長時間労働による健康問題が発生しないよう、企業は労働者の健康管理に特に注意を払う必要があります。

また、一人ひとり働く時間が異なると、労働時間の監視が困難になり、従業員の業務時間の管理が煩雑になります。その結果、法的な問題が生じる可能性もあります。

従業員側のデメリット

業務によっては、同じ「みなし労働時間」でも実際の労働負荷に大きな差が出ることがあり、従業員間での不公平感やモチベーションの低下を招くことがあります。

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テレワーク

テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用して時間や場所にとらわれずに仕事を行う働き方です。下記のようなさまざまなロケーションで業務を行えます。

  • 自宅での在宅勤務
  • 移動中や外出先でのモバイルワーク
  • サテライトオフィスやコワーキングスペースでの勤務

テレワークのメリット

テレワークには下記のメリットがあります。

企業側のメリット

テレワークは、労働者にとって働き方の柔軟性を高めるだけでなく、企業にとっても地域的な制限から解放され、多様な人材の活用が可能になります。

地理的な制限が解消されることで、従来のフルタイム勤務が難しい人々にも就労の機会が広がります。例えば、育児や介護のためにパートタイム勤務を選択せざるを得ない人や、地方や外国に住んでいるためにオフィスへの通勤が不可能な人などです。

また、従業員がライフステージの変遷に応じて柔軟に勤務形態を調整でき、結果として離職のリスクも減少します。

従業員側のメリット

テレワークによりオフィスへの定期的な出勤がなくなると、従業員は通勤にかかる時間とコストを削減でき、その時間を仕事やプライベートに有効活用できます。

また、従業員が自分の最も生産的な時間に仕事ができるため、効率が良くなり、全体の生産性が向上します。

テレワークのデメリット

一方で、テレワークには下記のデメリットがあります。

企業側のデメリット

テレワークにおける勤怠管理は、専用の管理システムへの入力や上司にメールで報告するなど、自己申告になることが一般的です。この方法では、従業員と管理者双方にとって正確な勤務時間の管理が難しい場合があります。

さらに、テレワーク中、従業員が自宅、コワーキングスペース、カフェなどオフィス外で作業を行うことにより、オフィスでの勤務に比べてセキュリティの危険が増加します。

デバイスの紛失や、セキュリティが不十分な公共Wi-Fiを使用することによるデータ漏えいなどのリスクが生じます。

テレワークを始める際には、VPNを活用してオフィスのコンピュータに安全にアクセスするための体制を整えること、作業場所に関するルールを設定するなど、セキュリティポリシーをきちんと策定することが求められます。

従業員側のデメリット

テレワークでは、チームメンバーとの直接的なコミュニケーションが少なくなるため、誤解が生じたり、情報の共有が遅れたりすることがあります。

また、家での勤務が常態化すると、仕事とプライベートの境界が曖昧になりがちで、仕事の時間が長引くことがあります。

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4. 柔軟な勤務体系を整備するメリット

柔軟な勤務体系の導入は、企業が従業員の多様なニーズに応えることができ、職場全体の生産性と満足度を向上させられます。ここでは、その主要なメリットを紹介します。

働き方改革が推進される

柔軟な勤務体系を取り入れることで、企業は働き方改革を積極的に進めることができます。従業員が自分の生活スタイルに合わせて働ける環境は、労働の質を高め、仕事へのモチベーションを向上させます。

また、働き方改革への積極的な取り組みをアピールすることで、人材の獲得にもつながるという利点があります。

業務効率が向上する

従業員が個々の生活リズムや最も生産的な時間に合わせて働くことができるため、業務効率は大幅に向上します。自分のペースで作業できることで、クリエイティビティと効率が促進され、結果的に高いパフォーマンスを発揮することが可能になります。

多様な人材の採用が可能になる

柔軟な勤務体系は、家庭と仕事を両立したい人や、遠隔地に住む人を含む、幅広い人材の採用を可能にします。とくに女性や高齢者、障害を持つ人、海外に住んでいる人など、従来の職場環境では働きにくいと感じていた人々にとって、より働きやすい環境を提供できます。

これにより、企業は多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材を確保し、組織のイノベーションと競争力を強化できます。

ただし、このような体系を効果的に実施するためには、従業員のニーズと業務要件のバランスを取ることが重要です。また、適切なコミュニケーションや管理ツールも欠かせません。