戦略と戦術の違いとは? 経営とマーケティングの具体例で簡単に

ビジネスの成功において、一貫した戦略と具体的な戦術の実施は欠かせません。今回は、戦略と戦術の違いについて、経営とマーケティング視点の具体例を交えながら解説します。

1.戦略と戦術の違いとは?

戦略と戦術は、どちらも共通の目標を達成する手段であるものの、双方は異なる意味合いを持ちます。戦略は、中長期的で実現したい大局的な計画です。目標達成の大枠といえるでしょう。戦術は、その計画を実行する具体的な方法や手段です。1つの戦略に複数の戦術が内包されています。

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2.戦略とは?

戦略とは、最終的な目標を達成するためのアクションプランであり、成功の方向性や考え方など、全体像のあるべき姿を示すものです。戦略が存在することで長期目標とその達成方法の意思決定が円滑になり、担当者同士の認識の差異や迷いを未然に防げます。

戦略を策定するうえでは、全体像を把握しながら一貫した内容に練り上げることが重要とされます。また、戦略を立てるためには根拠にあたるデータが必要なため、調査や分析の実施が事前に必要です。

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3.戦術とは?

ビジネスにおける戦術とは、個別プロジェクトを成功に導くための具体的な手段や方法を意味する言葉です。

マーケティングで例えると、メルマガやリスティング広告など具体的な手段を指し、目標を達成するための実務を細分化したものが戦術です。開発から販売までプロジェクトを成功に導くための各工程において、具体的な手段や方法を網羅的に策定します。

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4.戦略と戦術の関係

戦略と戦術は、戦略の大きな方向性に従って具体的なアクションが実行される関係にあります。戦略があってこそ具体的な戦術が決定できるといってよいでしょう。

戦略にもとづく戦術の実施により、目標に向かって効率的かつ効果的にプロジェクトのフローが進められるのです。

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5.戦略と戦術の具体例

実際にビジネスの場では、どのように戦略と戦術が用いられるのか、こちらでは具体例を用いて解説します。経営視点とマーケティング視点で、戦略と戦術の内容は異なるものです。戦略と戦術を策定する参考材料としてお役立てください。

経営における具体例

こちらでは、経営における戦略と戦術について具体例を用いて解説します。経営上の戦略とは、企業目標を達成するための大まかなプロセスを決め、経営ビジョンや組織の役割、資源の配分などの具体的な決定を行うことです。

一方、戦術は戦略を意識しながら、より具体的な施策を考えることを指します。

以下は、経営における戦略と戦術の具体例です。

  • 戦略:差別化戦略・多角化戦略・ブルオーシャン戦略など
  • 戦術:製造コストを下げてサービスを安く提供する・ECショップを立ち上げるなど

戦術を決めるには戦略が策定されていなければならないため、市場における自社のポジションや社内リソースを棚卸、分析したうえで最適なプランを決定しましょう。

マーケティングにおける具体例

こちらでは、マーケティングにおける戦略と施術について具体例を用いて解説します。マーケティング上の戦略とは、組織を前進させるための行動計画で、重要な課題に対処するために立てるものです。

一方、戦術は戦略を具体的な手段に落とし込んだものであり、戦略の方向性を実践的に具現化するものを指します。

以下は、マーケティングにおける戦略と戦術に具体例です。

  • 戦略:リード(見込み客)を増やす・アクセスに対するCV(成果)率を上げるなど
  • 戦術:自社ホームページのSEO施策を実施する・折り込みチラシを依頼するなど

マーケティング分野における戦略や戦術は、ブランドの醸成や販売数の向上など、間接的・直接的両方で企業活動にかかわります。

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6.戦略の立て方

こちらでは、具体的な戦略の立て方について、必要な要素を解説します。どのような戦略を策定するにしても、主に以下4つの段階が必要です。

  1. 目標と方向性を策定
  2. 現状分析
  3. 目的達成までの段階を設定
  4. 戦略の決定

①目標と方向性を策定

まず第一に考えるのが目標と方向性です。目標や将来のビジョンを明確にした上で、それらを軸として策定を進めます。策定のための具体的な手法として挙げられるのが「SWOT分析」です。

SWOT分析とは市場における自社の強みや弱みを可視化するフレームワークで、自社の状況を整理するのに役立ちます。

また、周囲の環境が自社に与える影響を明確化する「PEST分析」で外部環境を把握すると、方向性や目標に明確な根拠が生まれます。

②現状分析

現状の整理および把握のために分析を行うことで、自社の置かれている状況を再認識できます。この際、分析は事実にもとづいて行うことが重要です。

具体的な手法として挙げられるのが「3C分析」です。3C分析とは「顧客・競合・自社」の3つの観点から関係性と環境の分析を行うフレームワークで、顧客ニーズや競合の戦略、自社の強みと弱みを明確化します。

③目的達成までの段階を設定

ゴール設定と現状把握後は、フェーズごとの行動計画を設定し、具体的な方向性を決めます。行動計画は四半期ごとに分割し、各期間で具体的な行動や目標を設定するとよいでしょう。

一定間隔の振り返りによって戦略の改善点や長所・短所の洗い出しが可能になり、効果的な戦略を継続的に実行できます。

④戦略の決定

実現可能かつ具体的な方法を決定したうえで、最終的な戦略案を策定します。これまでの分析結果・自社のポジション・社内リソースを考慮し、取るべき戦略の候補をいくつかピックアップしましょう。

複数の戦略を検討すると、最適な戦略を選択する際の実現性や効果を比較検討できます。

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7.戦略立案で役立つフレームワーク

戦略立案は多くの場合、前述した「SWOT分析・PEST分析・3C分析」のように、既存のフレームワークを使用して策定するのが効果的です。以下では、代表的なフレームワークについて詳細を解説します。

  1. 3C分析
  2. 5フォース分析
  3. SWOT分析
  4. PEST分析
  5. PPM分析
  6. 4C分析
  7. STP分析
  8. VRIO分析
  9. バリューチェーン分析
  10. 4P分析
  11. TOWS分析

①3C分析

「市場(顧客)・競合・自社」の3要素を分析するフレームワークです。それぞれの関係性や周囲の環境を分析することで顧客のニーズを特定し、自社の実行可能な範囲で行動を選択できます。

3C分析を通せば、事業戦略をミクロ・マクロの視点で考える材料として活用可能です。

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②5フォース分析

競争環境や収益構造を把握するためのフレームワークです。主に事業の収益性を評価する際に利用されます。

市場(顧客)・競合・自社の関係性から「新規参入者、競合他社、供給業者、顧客、代替品」の5つの要素を明らかにし、予想される脅威や自社が参入した場合の収益性を分析します。

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③SWOT分析

外部環境と内部環境を分析し、経営戦略や事業戦略を立てるフレームワークです。「SWOT」の文字は、以下の言葉の頭文字を取ったものです。

  • Strengths(強み)
  • Weaknesses(弱み)
  • Opportunities(機会)
  • Threats(脅威)

自社の強みと弱み、環境に潜むチャンス(機会)や脅威を明確化することで、取るべき方向性を定められます。経営に関わる部門は内外の要因を分析したうえで、的確な提案を行わなければなりません。

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④PEST分析

外部環境を4つの要因から分析や予測を行うフレームワークです。「PEST」の文字には、以下の意味が込められています。

  • Politics(政治)
  • Economy(経済)
  • Society(社会)
  • Technology(技術)

上記の要素からわかるように、PEST分析ではマクロ視点で自社が市場にどのような影響を受けるかを評価する分析手法です。外部環境や世の中の流れを把握することで、新規市場参入の可否や、戦略立案に役立てられます。

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⑤PPM分析

企業の製品や事業ポートフォリオを評価するための戦略フレームワークです。

「Product Portfolio Management(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」の略で、市場成長率と相対的市場シェアの2つを軸に、事業を「花形・金のなる木・問題児・負け犬」4つの象限に分類して分析を行います。

自社の商品やサービスがどの位置にあるかによって、投資すべきか・収益を伸ばせるかが明確化でき、事業戦略の計画に役立ちます。

⑥4C分析

マーケティング戦略を顧客視点で分析するフレームワークです。3C分析とは分析対象がまったく異なり、以下の4つの要素によって成り立ちます。

  • Customer Value(顧客にとっての価値)
  • Cost(顧客の費用)
  • Convenience(利便性)
  • Communication(コミュニケーション)

類似した言葉である「4P分析」と違い、4C分析は企業ではなく顧客視点でアプローチする手法です。上記の4つは顧客が商品を購入するうえで多大な影響を与えるといわれ、それぞれに対してアプローチすることで、戦略の策定および市場シェアの獲得に寄与します。

⑦STP分析

マーケティング戦略の立案に役立つフレームワークです。以下の順に市場を分析し、競合との差別化ポイントを明確化します。

  • Segmentation(セグメンテーション)
  • Targeting(ターゲティング)
  • Positioning(ポジショニング)

セグメンテーションでは消費と生産の2つの視点で市場を要素ごとに分け、自社が狙うべきセグメントを決めたうえで、どのようなポジションを獲得すべきかを考えます。

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⑧VRIO分析

企業の経営資源を分析するフレームワークです。自社のリソースを以下の4つに分類し、競争優位性を図れるポイントを分析します。

  • Value (経済的価値)
  • Rarity / Rareness (希少性)
  • Imitability (模倣困難性、模倣可能性)
  • Organization (組織)

確立した競争優位性は、技術革新や市場の変化によって、模倣可能性が変わる可能性があります。現時点の優位性が一時的にすぎないかもしれないため、定期的な分析が必要です。

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⑨バリューチェーン分析

企業活動の中から課題を見つけるためのマーケティングのフレームワークです。原材料調達から製品・サービス提供までの工程を価値の連鎖(バリューチェーン)として捉え、連鎖の中に隠れている強み・弱みを分析します。

分析結果は差別化や経営資源の再配分を決定する材料として使われるため、VRIO分析と併用して競争優位性を明確化するのが基本の流れです。

⑩4P分析

企業視点における以下の4要素を分析し、商品の販売戦略を具体化するためのフレームワークです。

  • Product(自社の製品・サービス)
  • Price(価格)
  • Place(販売場所・提供方法)
  • Promotion(販促活動)

上記の要素は商品やサービス提供の成功に大きな影響を与えるとされ、それぞれに対して分析することで具体的なマーケティング戦略に落とし込めます。

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⑪TOWS分析

内外的な要素を掛け合わせて経営戦略を立案するフレームワークです。以下の4つの要素を掛け合わせたパターンを作り、戦略に具体性を持たせます。

  • Threat(脅威)
  • Opportunity(機会)
  • Weakness(弱み)
  • Strength(強み)

TOWS分析はSWOT分析の発展形で、SWOT分析の結果をもとに具体的な戦略を立案するステップとして使われる応用型の手法です。

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8.戦術の立て方

効果的な戦略を持っていても、具体的な手段が不確定であれば目標達成は困難です。こちらでは、具体性のある戦術の立て方と、考慮すべきポイントについて解説します。

  1. 戦略に沿って選択
  2. 戦術の期限を設定

①戦略に沿って選択

戦略に沿った戦術を、アクションレベルで複数挙げます。例えば、マーケティングにおけるアクションならば、「SNSで情報を発信する」「広告チラシを配る」など、効果がありそうなアクションを列挙するところから始めます。

複数人でブレーンストーミングを実施するのも効果的です。アクションや解決策を選択する際は、ターゲットから外れないよう注意しなければなりません。

②戦術の期限を設定

成果を測定し、次の行動に移る目安を得るために、戦術には期限を設定します。目標を達成できない場合は、戦術の変更や新しい行動計画を立てなければなりません。一定間隔で戦術の内容を評価・見直しすることで、戦術がより的確にブラッシュアップされます。

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9.ビジネスにおける戦略と戦術の企業事例

大企業の事例は戦略と戦術の理解に役立つため、多くの事例を参考にすることが重要です。こちらでは、ビジネスにおける戦略と戦術で成功した企業事例を3社紹介します。

株式会社しまむら

衣服類の販売を生業としている「株式会社しまむら」では、衣類品の市場において「コスト集中戦略」を採用し、経営コストの削減に注力する方針を取りました。具体的な実施戦術として、以下が例に挙げられます。

  • 仕入れルートの確保
  • 物流センターでの業務効率化
  • パート社員の比率増加

上記を始めとした徹底的なコスト削減と最適化の戦略により、一時期の国内売上高が業界2位にまで躍進しました。

任天堂株式会社

主にゲームソフトやハードウェアを取り扱う「任天堂株式会社」では、他社との差を生み出し競争に勝つための「差別化戦略」を採用しています。

自社開発のゲームソフトやハードウェアなど「任天堂IP(知的財産)」と消費者の接点を増やすための戦術を多数展開しており、差別化戦略にもとづいた独自路線を貫いています。

過去に発売された「Wii」の開発では、グラフィック性能を抑えつつ直感的な操作性を追求し、大成功を収めました。

株式会社ユニクロ

ファーストリテイリンググループの代表ブランドである「株式会社ユニクロ」では「コストリーダーシップ戦略」を採用し、競合他社との差別化を図っています。この戦略は、他社よりも低価格でサービスを提供することで競争優位性を確立するものです。

海外製造拠点の設置やSPA(製造から販売までの工程を自社で一貫して行うビジネスモデル)など、包括的なサプライチェーン戦術を実施することで成り立っています。

商品の企画から販売のすべてを内製化し、商流全体のコストを抑えることに成功しました。その結果、競合他社よりも安価で良質な商品を提供し、業界で唯一無二のポジションを獲得したのです。