接遇研修とは顧客の満足度を高めるために欠かせない研修です。企業において研修は多くありますが、接遇研修は基本的なビジネスマナーとあわせて思いやりが求められます。今回は接遇研修の内容やメリットなどを紹介します。
目次
1.接遇研修
接遇研修とは、相手の心情を読み取ったうえで満足度の高い対応を行うためのビジネス研修です。接遇とは「思いやりを持ってもてなすこと」を意味しており、接遇研修では言葉づかいやビジネスマナーだけでなく、顧客のニーズに適切に対応する能力までを学びます。
接遇と接客の違い
接客は必要最低限のマナーを備えて顧客へ「応対」すること、接遇は良い体験をしてほしいという気持ちで顧客のニーズや期待に応える「対応」をすることと違いがあります。
例えば、飲食店の場合、席までの誘導や食事の提供、会計など基本的なサービスは接客に該当します。一方で、親が要求する前に子ども用の椅子やカトラリーを用意する、お年寄りが食べやすい調理方法を提案するなどが接遇です。
2.接遇研修が必要な理由
企業活動において接遇スキルは商品やサービスの購買に大きく影響するため、スキルの向上は重要な課題です。ここでは接遇研修が求められる理由を紹介します。
従業員の接遇スキルを均一に向上させる
職員の接遇スキルを均一に向上させるために、接遇研修は役立ちます。新入社員に対して、ビジネスマナーやOAスキルの研修を行う企業は多くみられるものの、接遇に関しても従業員のスキルには個人差があるため、一定の研修が必要です。
接遇研修を通じて従業員全体の意識が向上すると、会社の成長を後押しできます。
顧客満足度の向上
接遇研修での学びを業務に反映すると、顧客満足度の向上につながります。質の高い接遇は顧客の満足度を高め、継続利用につながりやすいためです。リピーターの口コミなどから新規顧客を獲得できる可能性もあるのです。
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トラブルやクレームの抑止
接遇研修を通じたスキルの獲得はトラブルやクレームの抑止に効果的です。どのような企業においても、一度の不適切な対応で顧客が離れる可能性は潜んでいます。
しかし、接遇スキルが高い従業員は顧客に不快感や違和感を与えず、クレームを招くことも少ないため、未然にトラブルを防げます。
競合他社との差別化
接遇研修は競合他社との差別化にも効果的です。同じような商品やサービスを提供している場合、顧客は接遇の良い企業を選ぶ可能性が高くなります。接遇スキルが高ければ高いほど競合他社との差別化を目指せます。
3.接遇研修のメリット
ここでは接遇研修が企業にもたらすメリットを紹介します。接遇研修は顧客獲得や競争力向上以外にもさまざまなメリットがあります。
企業のイメージアップ
接遇の心を持つ従業員の行動は顧客に感動を与え、企業イメージを向上させます。企業イメージが高まると顧客だけでなく採用面でもポジティブな印象を与え、優秀な人材確保につながります。
企業のイメージを高めるには、特定の従業員だけでなく全員が同レベルの接遇スキルを獲得することが大切です。
顧客対応が改善される
接遇研修で心くばりを理解すると、お客様対応も改善されます。ビジネスにおける第一印象は今後を左右する大切な判断材料です。
直接顧客とやりとりする担当者が接遇研修で好印象の与え方を学び、お客様への対応を改善することで、顧客満足度の向上や他社との差別化を図れます。
社内のコミュニケーションが円滑化
接遇研修の実施は従業員同士の会話においても相手を思いやる気持ちが生まれ、コミュニケーションを円滑にするメリットがあります。職場環境の改善や生産性・効率の向上、アイデアの創出やミスの抑制、離職率の低下といった広い範囲での効果が期待できるのです。
従業員のモチベーションが向上
接遇研修を受けて業務に励んだ結果、顧客からの感謝や高評価を得られるようになると仕事へのモチベーションが上がります。各従業員が自社に対する誇りや信頼を得ることで、エンゲージメントが向上します。結果的に従業員の離職率低下も期待できるのです。
4.接遇マナーの5原則
接遇マナーの5原則とは思いやりや気遣いを示し、相手の満足度を高める5つの要素を指します。ここでは接遇マナーの5原則について解説します。
原則1:挨拶
挨拶は、第一印象を大きく左右する要素です。挨拶をしない、返さないといった態度はクレームや低評価につながります。ビジネスの場では、相手からの信頼を得るためにも自分から積極的に挨拶する姿勢が大切です。
原則2:身だしなみ
相手に不快感を与えないよう身だしなみを整えることも重要です。接遇における身だしなみは、TPOに合わせた服装や髪型を指しています。身だしなみは他人への配慮であり、清潔感が重視されます。
原則3:表情
コミュニケーションでは表情から伝わる情報もあるため、相手に良い印象を与える心がけが欠かせません。にこやかな表情は相手に安心感を与えます。
一方、悲しみや心配といった内容の場合は相手と同じ表情をするのも一つの手です。相手への共感や理解といった気持ちの表現は双方の距離を縮めやすくなります。
原則4:言葉づかい
失礼にならない言葉づかいや誤解を招かない言い回しなどを選ぶことも重要です。
ビジネスシーンにおける言葉使いは敬語を基本とし、カジュアルな言葉や若者言葉は好ましくありません。さらに、丁寧語や謙譲語など敬語の種類を理解して使い分けると「きちんとしている」という印象を相手に与えられます。
言葉づかいは一言一句を大切にし、誤解されるような言い回しは控えます。
原則5:態度
態度には言葉遣いや表情だけでなく立ち居振る舞いも含まれます。受け答えがしっかりしていても、歩き方や立ち方、座り方などが見苦しいと相手に悪い印象を与えかねません。
公私問わず外ではつねに他人の目があることを意識し、配慮や敬意を持った振る舞いが求められます。
5.接遇研修で学ぶ内容の具体例
接遇研修の細かな内容は業界や研修を提供する企業によって異なります。ここでは基本的な内容を紹介します。
知識と心得
接遇の基礎知識やマインドセットを学ぶ座学から始まるのが一般的です。座学の内容はさまざまですが、以下が代表的です。
- 接遇マナーの必要性
- 接客の心構えや「接遇マナーの5原則」
- 接遇用語の使い方
- 電話応対のマナーや来客応対
- 自身の役割と顧客心理の理解
いずれもビジネスマナーを含んでいるため、新入社員から取り組めます。
実践対応
座学の後は実践です。ロールプレイングやグループワーク、ケーススタディなどを用いた実践的なトレーニングを行い、顧客満足度の向上につなげます。
具体的には、2人1組のグループをつくり、挨拶や電話応対などの模擬練習です。数人のグループをつくり実際にあったクレームへの最適な対応をシミュレーションします。実施後は必ずフィードバックを行い、接遇力の向上・定着を目指します。
6.接遇研修導入のポイント
やみくもに接遇研修を実施しても十分な効果が出ない可能性もあります。ここでは接遇研修を効果的に取り入れるポイントを紹介します。
自社の状況を把握
接遇研修の導入は、自社の状況を適切に把握することでより効果的な実施が可能です。現状の接遇における従業員のレベルや抱える課題、研修にかけられるリソースや顧客のニーズなどを分析したうえで研修を取り入れます。
目的とゴールの共有
接遇研修を実施する際は目的やゴールを従業員に共有し「何のために研修を受けるのか」を理解してもらう必要があります。参加者が目的を理解せず疑問を抱くと、モチベーションの低下につながりかねません。
「何を目指すか」「業務でどのように生かせるか」を明確にして研修を行います。
経営陣による実践
接遇研修は一般従業員だけでなく経営陣にも必要です。経営層が意識を変えて自ら接遇を実践することが企業全体の改善につながります。顧客だけでなく、従業員に対しても思いやりや気遣いを示すと、社内に接遇意識が浸透しやすいメリットがあります。
7.接遇研修の選び方
接遇研修を社外のマナー講師や研修会社に依頼する方法もあります。ここでは研修の選び方を解説します。
実績や評価
研修を外部に依頼する際は、過去1年間の研修実績や他社の利用実績を確認することが重要です。実績のある会社や他社の利用実績がある場合は信頼性が高いといえます。検討する研修会社の開催実績が少ない場合、ノウハウが蓄積されていない可能性があるかもしれません。
内容や形式
研修の内容や形式が自社の業態に合っているかも重要です。業態に合わない研修は時間とコストを消費します。検討する研修が従業員の階層や接遇レベル、シチュエーションなどに合うか、また自社で導入しやすい受講形式かの確認は必須事項です。
サポートの充実性
研修会社における営業担当者のサポート体制も重要なポイントです。事前に確認しておいたほうが良い項目は下記の通りです。
- 目的や課題をヒアリング
- 研修カリキュラムを提案してくれるか
- 段取りや調整の柔軟性
いずれも研修会社への問い合わせ時に入念な確認が大切です。