根回しとは? 重要な理由、上手な人の特徴、コツわかりやすく

根回しとは、物事や計画を進める前に関係者や上の立場の人から了解を得ることです。今回は根回しの概要と上手に根回しを進めるコツについて解説します。

1.根回しとは?

根回しとは、プロジェクトを進める前にあらかじめ上司や取引先といった関係者へ了解を得ることです。世間一般に根回しには「裏から手を回す」といったイメージにより否定的に捉えられますが、抜け駆けして合意を取るような行為ではありません。根回しは本来、悪い行為ではないのです。

根回しの意味

ビジネスシーンでの根回しの意味は、非公式に関係者へ事前の了解を得ておくことです。もともとは植木職人が行う作業から転じた言葉で、樹木の太い根を処理することで細い根っこの発生を促す作業が由来とされています。

そこから転じて、重要な交渉の前に意思決定者や現場のメンバーといった関係者に情報を伝え、了解を得ておく行為を意味するようになりました。根回しは、主に提案を通し組織を円滑に動かすための準備として行われます。

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2.根回しの言い換え方

こちらでは、根回しの言い換え方を紹介します。根回しは悪い行為でないものの、人によっては言葉の響きから悪い印象を与えてしまうかもしれません。そんなときは以下の言い換えを推奨します。

段取りをつける

段取りをつけるとは、物事を円滑に進めるために事前に準備や計画を行うことです。根回しとほとんど同じ意味合いと捉えても遜色ありません。先を読んで考えることで仕事の効率・スピード・精度を高める点では、根回しも段取りのうちのひとつといえます。

コンセンサスをとる

コンセンサスをとるとは、主に複数の人から同意を得ることです。コンセンサス(consensus)は「意見の一致」「合意」などを意味する英語です。コンセンサスは、主に社内外で関係者に周知し、事前に意見の確認や統一を図るときに使われます。根回しもコンセンサスを得るためのプロセスに含まれる以上、言い換えにふさわしいといえます。

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下準備

下準備とは、事前の基本的な準備を指し、本番に備えて行なっておく準備のことです。ビジネスにおいては、許可や承認が必要なく自分のできる範囲内で行う準備とも捉えられます。根回しは下準備の1つともいえるため、言い換えとしてふさわしい言葉です。

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3.根回しとロビー活動の違い

根回しと似た言葉に「ロビー活動(ロビイング)」があります。ロビー活動と根回しは了承を得る行為の強弱や用途に違いがあり、言い換えとして使うにはふさわしくありません。

そもそもロビー活動とは、企業・利益団体・個人などが、政策・法律・規制などの変化をもとめて自国政府や国際機関へ働きかける活動のことを指します。日本では「請願」「陳情」という制度がロビー活動にあたり、直接政府へ働きかけができるとされています。

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4.根回しが重要な理由

こちらでは、ビジネスシーンにおける根回しの重要性を解説します。上手く根回しするとビジネスを円滑に進められるため、大きなプロジェクトを進行するうえでは、関係者への根回しが欠かせません。

関係者への気遣いや配慮

根回しには、大きな変化に対して関係者が受ける衝撃や驚きを和らげる効果があります。事前に根回しをして内容を説明しておくと、相手は混乱することもなく、冷静な判断を下せるのです。事前打ち合わせや報告の意味合いも兼ねており、相手に被害や負担が生じる内容ほど根回しが必要です。

迅速な意思決定

根回しは「関係者が多い・即答が難しい・反感を買う可能性がある」といった事柄について、意思決定を促進するためにも用いられます。事前に関係者同士で情報を周知しておけばビジネスをスムーズに進められますが、根回しがないと反感の念と動揺から、内容に関わらず反対される可能性もあります。

相互理解

根回しをすると相手の事情を理解したうえでこちらの意図や要望を伝え、双方の納得を得るという行為をとおし、相互理解が可能です。そのため、根回しには相手の立場に立って考えるスキルが求められます。相手を理解することで、サービスの価値が認められ売上につなげることができるのです。

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5.根回しが必要になるビジネスシーン

こちらでは、根回しが必要になる主なビジネスシーンについて解説します。以下のシーンにおいては、スムーズな進行やトラブルを防止するために根回しが必要です。

大きな変化が起きるとき

根回しは、大きな変化をもたらす提案や決定事項がある場合に必要です。例えば、業務システムの刷新や取引条件の改定といった情報は、事前に周知させておかないとトラブルを起こす可能性があります。特に相手に不利な状況を与える場合、事前の根回しはこちらの気遣いともいえます。

関係者の数が多いとき

意思決定に多くの関係者が関わる場合、根回しが重要です。参加者の多い会議などでは、事前に情報を伝えて関係者に説明しておくことで、意思決定をスムーズに進行できます。事前に決議の内容を資料で周知させておく行為も根回しの1つです。

スムーズな承認を得たいとき

根回しを行うことで、予算増額の必要性やメリットを周知しておくと、スムーズな承認が期待できます。一般的に、予算の増額は社内で稟議を行ったうえで多くの人の承認が必要なため、根回しをすることで正当な判断を促すことが可能です。

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6.根回しが上手な人の特徴

こちらでは、根回しが上手な人の特徴を紹介します。根回しも1つのスキルです。上手く根回しを完結させるには以下の要素が必要とされます。

相手を尊重

相手の気持ちを動かすには、思いやりと相手の立場を想像する力が重要です。多くの交渉相手は自分より上の立場にいるため、彼らの視点で考えて、要望をくみ取る・状況を理解する能力が求められます。

例えば、高額な機材を購入するために稟議書を上層部へ提出する際、「業務に必要なため」といった具体性のない理由だけでは「もっと安い機材でいいのではないか」と突っぱねられる可能性があります。

しかし「以前社内会議にて◯◯と上層部の方がおっしゃっていたので、希望を叶えられる機材が必要と考えたため申請します」といった説得力のある稟議書なら、通る可能性があります。

予測やリサーチが得意

根回しをするには、相手の状況をよく調べ、誰にどのタイミングで伝えるのが効果的かを分析するスキルが必要です。共通・伝達すべき情報が精査できていると、相手から「先方はよく分かっている」と認められ、商談や決議を有利に進められます。

さらに具体性を持たせるには、取引相手の業態における市場動向・専門知識もある程度学習しておくのが有効です。

人脈が広範

根回しが上手な人は、多くの味方を得ており、人脈が広い傾向があります。広い人脈を持っていると、根回しの際に関係者を見つけるための情報提供や紹介を受けやすいのです。この人脈は利害関係だけでなく、日頃の人間関係や信頼に基づくことでも協力を得られます。人脈の構築は一朝一夕で出来ることではないため、ビジネスにおいては大きな武器です。

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順番を間違えない

根回しが上手な人は、物事の手順や優先順位を間違えません。ビジネスシーンではマナーが重んじられるため、根回しをする際に話の順番や相手の順番を正しく見極めることが非常に重要です。

例えば、直属の上司に話すべき内容を、先に社長に話したとすると、上司と話し合うようにと戻されてしまいます。またこの場合、直属の上司が「自分の立場を無視された」と感じ、逆に承認を得づらくなる可能性も生じます。

主体的に行動

根回しができる人は常に行動し、段取りを整えて実行しているものです。物事は待っているだけだと理想の方向に進まないため、能動的に行動を起こすことが大切とされます。行動を恐れず常に先を考え、その場に合った行動をする能力は、現状を改善する効果が期待できます。

受け身だと相手のアクションを待ってもらうほかないため、スピードが足りません。とくに近年はDX推進や効率化を重視されビジネススピードが加速する傾向にあるため、能動的な動きはマストといえます。

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7.根回しのやり方・コツ

こちらでは、ビジネスシーンでうまく根回しを進めるコツを紹介します。根回しはやり方やコツを事前に知っておくことで、会議や商談といった場のスムーズな進行が可能です。

相手の思考を分析

相手の情報が少ないときは、事前に関係者の立場や主張を分析し、相手に合わせた根回しを行うとビジネスをスムーズに進められます。意思決定は関係者が多いほど目標や価値観の違いが表れるため、現状で把握できる情報をフルに活用しなければなりません。

情報の分析は感覚ではなくフレームワークを用いるのが効果的です。市場のポジションを把握する3C分析や、強み弱みを見える化するSWOT分析など、手法が確立されているフレームワークを用いましょう。

懸念事項を把握

根回しを進めるには、相手の懸念を事前に把握し「やらなければならない」と思わせる情報や質問を提示する必要があります。具体的なデータや数字がある資料を用意しておくと、説得力を持たせられます。承認者が断る理由をなるべくなくし、承認する理由をふやすのがポイントです。

相談からスタート

ビジネスシーンや相手によっては、根回しをよく思わない可能性もあります。そんなときは、まず「相談」として提案し、様子を見ながら進めるのも有効です。とくに相手にとって衝撃的な内容の場合、混乱や拒絶を招く可能性が高いため、強引に進めるのは避けなければなりません。

できるならば根回しする相手や取引先と関係がある協力者がいると安心です。事前に相手の傾向を把握できるため、確信をもって根回しに臨めます。

多くの協力者を確保

根回しは上層部だけでなく、現場や横の関係者にも配慮することが重要です。ビジネスは協力者や賛同者が多いほど成功率があがるため、交渉をスムーズに進めるためには相手に好感を持ってもらうことが欠かせません。

周囲を無視した根回しは「抜け駆け」と同義です。横のつながりとの報連相を徹底して、ビジネスに臨む必要があります。

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8.根回しで役立つスキル

こちらでは、根回しで行う説得や説明に役立つスキルを解説します。根回しもスキルの1つですが、ほかのスキルと掛け合わせることで相乗効果を発揮するケースも少なくありません。より強固なビジネススキルを習得するには、以下の能力も必要です。

コミュニケーション能力

相手とスムーズに意思疎通できるコミュニケーション能力は、根回しでも大いに役立ちます。根回しは自分の実現したい事柄を相手に伝えなければならないため、データの言語化や表現力が必要です。コミュニケーション能力は言語化能力とも言い換えられます。また、相手を理解するためには、相手に興味・関心を持って関わろうとする姿勢も大事です。

調整力

調整力とは、相手の利害を理解したうえで納得できる落としどころを考え、目的に向かって協力させる能力です。理解力や意図をくみ取るスキルともいえます。事前に相手の情報を収集・分析し、相手へ配慮した提案をとおして共通の目的と行動へ向かわせることで、効果的に根回しができます。

問題解決能力

課題を解消し成果へ導く問題解決能力は、根回しに役立つ能力です。根回しを行い最終的な承認を得るまでの段階では、さまざまな問題を都度解決していく必要があります。問題解決能力があれば情報の選別や要点の抽出ができるため、根回しにおいて高い能力を発揮可能です。

関係各所の見解を取りまとめたり、ネックとなるポイントの原因や打開策を提案したりなど、ビジネスシーンにおいて問題解決能力が活かされる場面は数多く存在します。

リーダーシップ

根回しはよりよい状態を目指して自ら動くだけでなく、組織を巻き込んで前に進めるリーダーシップがあると有利です。リーダーシップを取れる人物は、普段から他社との信頼関係を構築しているため、根回しに不可欠な賛同者を得やすいメリットがあります。

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9.根回しを行う際の注意点

こちらでは、スムーズに根回しを進めるための注意点を解説します。根回しはビジネスに必要な能力ですが、やり方を間違えるとかえって逆効果です。実施する際は以下のポイントにご注意ください。

根回しにはネガティブなイメージもある

根回しをする際、ネガティブなイメージを持つ人のほうが多数である点を理解しておかなくてはなりません。根回しという言葉には「周囲をうまく操る」といった印象を持たれやすいため、公に「根回ししておく」と話すのではなく「段取りをつけておく」と言い換えたほうが無難です。

また、私利私欲に走った動機であったり、誰かを陥れようとする根回しはもってのほかといえます。会社や社会にとっての利益を尊重した行いであれば、根回しはビジネスをスムーズに進める有用なスキルです。ビジネスパートナーとしての信頼を損なうような行為は絶対に避けなければなりません。

私利私欲に走らない

根回しでビジネスをスムーズに進めるには「人を陥れたい」「自分だけ出世したい」といった私利私欲に走らず、自社のためになる根回しを実行するマインドが必要です。悪意のある根回しは自分の評判を下げかねないため、どんな状況であっても避けなければなりません。

相手の立場や感情を考慮

根回しを行う際は、相手の立場や気持ちに配慮することが重要です。相手の立場を損なわないように、正しい順番で相談を持ちかけ、感情に配慮した形式や話し方で行う必要があります。ビジネスではマナーや風習を重んじるシーンも珍しくないため、根回しのやり方にも注意を払わなければなりません。

実行を想定してリソースを確認

根回しを行う際は、実行段階のリソースを確保できるかどうかも確認しておくことも大切です。どれだけ人脈があって相手に配慮したとしても、肝心の内容が現実的からかけ離れていると了承を得るのは困難です。

根回しの段階ですべての要素を揃える必要はないものの、予算や人などのリソース面は現実的な範囲であることを確認しておく必要があります。