致し方ない事情があって労働者を解雇したい、そう思っても急に解雇することはできません。なぜなら、突然解雇されては労働者の生活に支障が出るからです。また、すぐに勤め先を探せない場合もあります。解雇制限は労働者を守るためのもの。解雇制限とは、どのような内容なのでしょう?
「解雇制限」とは?
解雇制限とは、「特定の条件に該当する労働者の解雇を制限する期間」のことです。適用及び除外される条件とその期間は、労働基準法第19条に定められています。労働基準法とは、「働く人が健康で文化的な生活を営めるように」という理念の元、国家が労働条件について基準を決めたものです。
解雇そのものについては労働契約法第16条で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。
解雇は、雇用する側が労働者との労働契約を一方的に取りやめることですが、かんたんに解雇が可能になれば、労働者の生活に支障が出るでしょう。また、労働者の状況によっては次の勤め先を探すことが難しいのも事実。労働者を守るため、解雇制限など雇用に関する定めが作られているのです。
解雇制限が適用される条件
仕事上でのケガや病気での治療、また産前産後休業の場合、解雇制限が適用され、期間はすべて定められています。仕事上でのケガや病気治療での休業は、入院や通院で休業する期間と再出社日から30日間、産前産後休業は、産前休業6週間(多胎妊娠の場合14週間)と出産後の産業休業8週間及びその後30日間です。
もし、解雇予告の期間中に解雇制限が適用された場合、どうなるでしょう?この場合、解雇制限期間が優先されます。そのため、解雇予告期間が満期になっても、解雇はできません。しかし、解雇制限期間が終了した場合、その限りではありません。
それから、治療中や出産予定日前6週間以内(多胎妊娠の場合14週間)でも休業を取らずに働いている場合、解雇制限期間には含まれません。
解雇制限が除外される条件
解雇制限は、一定の条件を満たすと除外されます。条件は2つあり、1つは打切補償を支払う場合です。打切補償とは、雇用する側が休業や療養補償の義務を取りやめるかわりに、平均となる賃金の1200日分を支払うことで労働の契約を解除するもの。この場合の条件は、仕事上のケガで治療をしている労働者が3年経っても治らないということも含まれます。
もう1つは、天災含めた多くのやむを得ない理由でもって、事業を続けることが難しいとなった場合です。
しかし、1と2どちらであっても、労働基準法第20条に基づき、所轄の労働基準監督署から認定を受けなくてはなりません。それは、労働者を守るためだからです。この場合、解雇予告除外認定申請書を提出します。
解雇制限の期間は決まっている
解雇制限の期間は定められており、2パターンに分かれます。
1つは、働く人が仕事の上でのケガや病気で、治療のため休業する場合。この場合は、入院や通院で休業する期間と再出社日から30日間は解雇制限期間です。また、産前産後休業も該当します。産前休業6週間(多胎妊娠の場合14週間)、そして出産後の産業休業8週間とその後30日間は解雇制限期間です。
働いている人に責任を問うべき事柄があっても、制限期間中の解雇は原則できません。