教育再生実行会議での、「社会に出ても学び続ける社会の実現」、「全員参加型社会の構築」、「教育による地方創生」という3つの申し出を受けて、文部科学省が認定をはじめたのが職業実践力育成プログラムです。その目的やメリットと給付金、助成金について取り上げます。
「職業実践力育成プログラム」とは? その認定の背景と目的
アメリカなどでは、就職後も大学に戻ってスキルを磨き、キャリアアップしていく姿がみられます。日本では一旦就職してしまうと、大学に戻る機会はなかなかありませんでした。今回、認定がはじまった職業実践力育成プログラムは、アメリカのキャリアの築き方に似ています。
大学を出て就職した後、キャリアに必要な知識や能力をブラッシュアップしたいと願う社会人に対し、教育プログラムを提供する大学・大学院・短期大学・高等専門学校などが認定を受けます。社会人や企業のニーズに対応して、2015年7月に文部科学省が創設し、初回認定に138の応募があり、そのうち123のプログラムが認定を受け、今後も新たなプログラムが追加されていく予定です。
職業実践力育成プログラムのメリットについて
職業実践力育成プログラムは、受講する社会人や、従業員に受講させようとする企業にとって、どのようなメリットがあるのでしょうか。
- 1 大学の体系的なカリキュラムを受講することで、自分が就く職種、これから目指そうとする職種に対しての高度な知識や能力を得ることができる。
- 2 企業の意見を取り入れたカリキュラムが作られるので、学んだことはすぐ実務に応用でき、社会人にとっては転職やキャリアアップにつながる力を得ることができる。企業にとっては即戦力の人材が得られる。
- 3 一旦企業に入った社会人が大学等に戻ることで、同じように志の高い、そして多様な経験をした社会人学生と知り合うことができ、視野を広げ人脈を広げることができる。
- 4 週末や夜間など、社会人が通いやすい開講スケジュールであるため、働きながら学び続けることができる。
- 5 指定のプログラムを受講し、一定の条件をクリアした場合、受講する社会人には給付金が、企業負担で従業員を受講させる場合は企業に助成金が支給される。
職業実践力育成プログラムによる給付金や助成金について
職業実践力育成プログラムのうち、「専門実践教育訓練」として厚生労働大臣が指定したプログラムを受講する社会人は、一定条件のもとで専門実践教育訓練給付金を受けられます。また、企業が従業員に受講させるか、従業員の受講費を支援するなど、企業負担がある場合は、やはり一定の条件の下で企業がキャリア形成促進助成金、キャリアアップ助成金を受けることができます。
企業が受けられる助成金は以下の2つです。
●キャリア形成促進助成金(中長期キャリア形成コース)
・雇用保険の被保険者で主に正社員が対象です。
・経費助成の1/2(大企業は1/3)のほか、賃金助成として1人あたり800円/時間(大企業は1人あたり400円/時間)が助成されます。
●キャリアアップ助成金(人材育成コース中長期キャリア)
・対象者は有期契約労働者等(契約社員・パート・派遣社員等)です。
・経費助成は訓練時間に応じて15~50万円(大企業は10~30万円)となっており、ほかに賃金助成として1人あたり800円/時間(大企業は1人あたり500円/時間)が助成されます。