モデル賃金を作成することで、将来の人件費を予測することができ、人材採用や経営計画に役立てることができます。今回は、気になるモデル賃金の作り方や、モデル賃金と残業代の関係を紹介します。人事担当者の方は、参考にしてください。
「モデル賃金」とは?
モデル賃金とは、新卒である企業に就職した人物の、賃金の上昇する様子をあらわしたもので、標準的に昇給や昇進をしたケースを想定して算出します。学歴や年齢だけではなく、職種や勤続年数をベースにして算出され、これを「標準者」として、ベンチマークに活用されることもあります。これは「理想モデル賃金」と呼びます。
またモデル賃金には、もうひとつの算出方法があり、実在の人物を「モデル」として活用するケースもあります。実際にモデルに近い人物がいれば現実の給与の額を使用しますが、該当する人物がいない場合には、条件に近い人物の給与から類推して算出します。これを「実在モデル賃金」と呼びます。
モデル賃金の規定と作り方
モデル賃金では、「年齢別モデル賃金」として、20歳・25歳・35歳のように年齢を区切って標準的な給与を示します。
理想モデル賃金を作る際には、「課長職、40歳、扶養家族3人」などと具体的に条件を設定します。賃金表や規定から算出を行い、1人の人物が新卒~定年までどのように給与が上がっていくのかを示します。昇給は定期的に行うことを前提としていますが、一般的に役職については「部長」クラスで定年を迎えることを想定して算出するケースが多くあります。理想モデル賃金は、賃金制度の妥当性を示すためによく用いられます。
一方、実在者モデル賃金の場合には、前述した条件を満たす人材やそれに近い人材の実際の給与を抽出します。近しい条件の人物がいない場合には、類推して算出をします。実在のデータに基づいた実態を示すものなので、統計水準との比較を行う際に用いられます。
このようにして割り出されたモデル賃金を見ることで、たとえ若い企業であっても50歳、60歳の給与を推計することができます。これによって人事担当者は、将来の人件費の目通しを立てられ、経営や採用計画に活用できるのです。
モデル賃金の残業代
モデル賃金は、「所内賃金」を基に算出されるため、残業代は含まれていません。また、所内賃金には、時間外手当や休日手当そして通勤手当なども含まれないので注意が必要です。
所内賃金
所定外賃金に該当することがない賃金で、毎月一定に支払いがある賃金のことです。基本給のみではなく、交換手当などの職務に関連している手当や、通勤手当などの生活関連手当もそれにあたります。
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所定外賃金
「所定外賃金」として扱われることがあるものとして、残業をした際に発生する残業代や、22時~翌朝5時の間に働くことを指す深夜労働の割増賃金、そして時間外手当等があります。