厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」によると、新規学卒者の3年以内離職率は、平成25年時点で63.7%となっています。このうち、1年目の離職率は42.0%にものぼります。こうした離職の原因を知る方法のひとつに、サーチ理論があります。
「サーチ理論」とは?
サーチ理論を知るために、まず、探索理論について知っておきましょう。これは、鉱脈探しなどに利用される手法で、目標を達成するために、どこにどのような労力を割けば最も効率が良いか判断しようという理論です。
サーチ理論は、これを経済学に応用した考え方で、取引相手が見つからなかった場合、売り手と買い手がそれぞれどのような行動に出るかということを研究、分析したものです。
このサーチ理論を就職分野に結びつけたのが、マサチューセッツ工科大のダイヤモンド教授をはじめとする3名です。この研究は、2010年にノーベル経済学賞を受賞しました。
雇用におけるサーチ理論は、求職者が職を見つける際の傾向と、企業が人材を採用する際の傾向を分析することで、採用のミスマッチが起こる原因や失業率が上がる原因など、就職市場の現状を分析するというものです。
就職難とサーチ理論
就職氷河期と呼ばれた時代であっても、仕事を選ばなければ就職先は少なくありませんでした。しかし実際には、土木作業員や飲食店勤務を希望する大学生はそれほど多くありませんでしたから、一部の大企業に人気が集中し、結果、就職できない大学生や失業者が増加してしまうということが起こりました。
このような事態をサーチ理論によって数値的に分析し、人気のある企業の雇用を拡大することができれば、就職難を回避することができます。しかし、そうすることで人気のない業種はどんどん規模が縮小してしまい、発展が望めなくなります。そこで、このような業種に対しては、求職者への魅力を増大させることが求められることとなります。
サーチ理論で就職市場全体の構造を把握することで、雇用だけでなく、成長戦略についても分析することができるのです。
日本独自の雇用形態とその変化
諸外国に比べ、日本の失業率はそれほど低くないといわれています。現在では古い制度とされることも多くなってきましたが、もともと日本は終身雇用が一般的で、一度企業に就職すれば、その後も定年まで同じ企業に勤め続けるという従業員がほとんどでした。
就職は新卒時が断然有利で、転職を経てキャリアアップしていくことは、これまでの日本ではかなり困難なことでした。さらに、失業者に対する給付も十分ではなく、安易な退職が即座に生活のひっ迫に繋がる可能性が高かったのです。
しかし昨今では、転職して新たな企業に活躍の場を見い出す若者も増えてきています。後ろ向きな退職ではなく、新たなステージに向かうために退職をするケースもあり、日本の雇用状況は刻々と変化しているといえるでしょう。
マッチングの重要性
多くの求職者は、期間の制限なくいつまでも希望の職を求めて求職活動を続けていくというわけにはいきません。多くの場合、生活のための資金を得る必要があるからです。しかし、時間や条件に妥協して就職を決めてしまうと、結局は早期離職に繋がってしまい、年齢が上がり、転職歴が増えることによって、さらに条件を下げて次の就職先を探すという悪循環に陥りかねません。
こうした事態を防ぐために、厚生労働省では、トライアル雇用奨励金制度を設けています。若者雇用促進法に基づく認定企業が、トライアル雇用対象者をトライアル雇用する場合に、最大で月額5万円、最大3か月までの補助金を受け取ることができるというものです。
トライアル雇用とは? 制度内容、期間、助成金、条件などを紹介
厚生労働省とハローワークが主体となり、2003年4月よりトライアル雇用助成金制度がスタートしました。現在、多くの企業が人材確保に力を入れ、求人数が増加する一方で、希望通りの就業が果たせない労働者や就業...
また、若者雇用促進法に基づく認定企業は、「三年以内既卒者等採用定着奨励金」などの制度を利用することもできるため、若者の雇用促進を目指す企業は利用すると良いでしょう。