社員は職場で多くの時間を過ごします。職場の環境は、そこで働く人に大きな影響を与えるといっても過言ではありません。職場環境については法律による定めがあります。
定めの詳細とともに、職場環境を改善した事例や改善に必要なアンケートについて、みていきましょう。
「職場環境」とは?
職場環境とは、働く人が仕事を行う場所の環境のことです。「環境」には、物理的な明るさや騒音などから働く人同士の人間関係など精神的なものまで、すべてが含まれます。
社員は、職場で仕事のために長い時間を過ごします。職場の環境が良くない場合、心身の健康を害してしまう可能性があります。すると、作業効率が下がり、業績低下につながる恐れもあるでしょう。
逆に、よい職場環境があれば、社員は仕事がしやすくなり、快適に過ごすことができます。すると、生産性も上がりますから、業績向上にもつながるのです。
労働安全衛生法で定められている職場環境の配慮義務
労働者を守るため、労働安全衛生法という法律に基づいて、事業者は「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。」と定めているのです。
また、告知されているのはこれだけではありません。実際にきちんと配慮されるよう、指針も出されているのです。
それが平成4年に発行された「快適職場指針」です。内容は下記の4点です。
- きれいな空気の確保、適切な温度管理など、作業時の環境を整えること。
- 労働者にかかる心身の負荷を考え、力が必要な仕事などは、作業方法を見直すこと。
- 労働者が休憩できる施設を作ること。
- 職場で快適に過ごせるよう、トイレや洗面所などを作り、清潔にしておくこと。
またこれ以外に、「計画を立て継続的に進める」「実際に働く人の意見を取り入れる」「働く人の個体差を尊重する」なども挙げられています。
職場環境の改善事例
職場環境の改善事例をみてみましょう。
味の素株式会社には、健康増進センターと呼ばれる施設があります。そこの医療スタッフたちが、年1回、すべての社員と20~30分かけて面談を行い、社員の状態を把握するのです。また、医療スタッフたちは、社員と会社そのものの中間に位置しています。そのため、中立の立場から社員への支援が可能です。こうした取り組みにより、メンタルヘルスケアが適切に行われています。
株式会社サイバーエージェントは、過去、急成長を遂げたため、適切名採用や人材配置が間に合わず、社員が定着しないという状況になっていました。それらを改善するべく改革を行いました。内容は、社員への裁量権委譲、連帯感を高める工夫、上司と部下が月1回面談を行うといったものです。こうした取り組みの結果、「社員にとって働きがいのある職場」に変わりました。
職場環境の改善に重要な改善アンケート
職場環境の改善において重要なものがアンケートです。事業者からの目線だけでは、「どうしたら良くなるか」分からないこともあるでしょう。そこで、実際に働く社員から「現場で感じること」「普段思うこと」を聞きだし、改善につなげるのです。
質問項目は、職場の状態、施設や設備への要望、仕事そのものの満足度、福利厚生、管理職への評価など多岐に渡ります。また、個人が特定される可能性があると、本音が言えなくなり、本当の回答を得ることが難しくなるでしょう。匿名性を保って回答できるようにするなど、配慮することが必要です。
平成26年発行の厚生労働省職業安定局による「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査」では、労働時間は適切か、仕事のきつさはどうかなどを幅広い業種の人に尋ねています。こうした「自社の業種にとどまらないような広い視野でのデータ」を取り入れることも、職場の改善につながるので、活用しましょう。