降格は必ずしも懲戒処分ではありません。降格人事が実施される背景にはさまざまな理由があります。また、降格と一口にいってもいろいろなタイプがあります。降格人事を円滑に行う際の注意点などについて詳しく解説します。
降格とは?
一般的に降格とは、役職や職位を引き下げることです。たとえば、部長が課長になれば、これは降格です。しかし、その他にもいくつかのタイプがあるのできちんと区別しましょう。
職能資格制度における降格
職能資格制度の中における資格の引き下げも降格の一種です。職能資格制度というのは日本の伝統的な制度で、技能や経験などに応じて資格を与え、その資格に応じて賃金を定めています。
参考:「職能資格制度」とは?
職務等級制度における降格
職務等級制度とは職務の難易度、責任の度合い、会社への貢献度などに比例して職務ごとに賃金を決定する制度です。その際に、基本的には「職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)」という各職務の詳細について記載した資料を用意します。
この資料と給与テーブルを組み合わせて、「◯◯ができるようななったら■■円給与アップ」のように明確化しているのが職務等級制度の特徴です。
通常、職務等級制度はスキルにひもづくものなので、「できなくなった」ことを意味する降格は起こりにくいです。
降格に理由が必要になるケース
人事異動として降格を実施する時には、特に根拠を明らかにしなくても違法というわけではありません。いわゆる人事権の行使ですが、もちろん社会通念上著しく妥当性を欠いていたり、権利の濫用に当たると認められる場合には違法となるので要注意です。
また、経営者と労働者の間に職種限定に関する合意があるケースでも、それを守らない降格はできません。たとえば、営業職や技術職といった職種、役職や職位に関する限定的な契約がないかどうか必ず確認するようにしましょう。降格したい人がいたとしても、まず、採用の経緯、雇用契約書、就業規則などを確認し、そもそも降格が可能なのかどうか確認してください。もし、人事権の範囲を越える降格を希望するならば、きちんとした理由を提示して労働者の同意を必ず得なければいけません。
懲戒処分にはどのような種類があるのでしょうか?
6つあります。
処分の軽いものから順に見ていくと、
戒告やけん責
減給
出勤停止
降格や降職
諭旨解雇
懲戒解雇
です。しかしこれは一般的な紹介処分の種類ともいえます。会社によって就労規定に沿った...
降格すると減給するのか?
降格は賃金の減額が伴うことも少なくありませんが、必ずしも減給があるとは限りません。賃金は労働者にとって最も重要な権利でもあります。原則的に経営者は労働者の同意を得ずに一方的に減額することはできません。したがって、賃金減額を伴う降格は、その有効性を厳密に証明できるものでなくてはならないのです。
逆に言えば、賃金減額を伴わない降格ならば比較的自由に実施することも可能になります。役職手当、職務手当などは降格によって不支給となることが一般的ですが、もし就業規則上、職務との関係を明確にできないとなったら、たとえ降格しても以前通りにそれらの手当を要求できるということになります。人事としては、単純にコストカットのために降格をしようとすれば痛い目にあうことは免れないので注意しましょう。
降格のための具体的な手順
もし、降格したい人がいるならばしかるべき手順を踏む必要があります。特に人事異動としての降格の場合、降格に先立って指導、注意を実施して改善の余地を与えることも大事です。能力不足を理由とする降格を実施するには客観的な能力評価が必要ですが、改善の機会があったかどうかというのも外せないポイントとなります。
能力不足と判定されて降格されるというのは、労働者の自尊心を少なからず傷つけるものです。最悪の場合には辞職を考える人もいるでしょう。そのようなことが起きれば「辞職に追いやるために降格した」という噂にもなり、社員全体の士気にもかかわりかねません。降格先にはくれぐれも配慮して、そのような事態は極力避けるようにしましょう。