振替休日とは? 振休と代休の違い、月またぎの場合などを解説

振替休日とは、労働日と休日の2つを入れ替えたもののこと。振替休日に類似した言葉に代休がありますが、2つは労働基準法上、全く性質の違うものとして取り扱われています。また振替休日と代休とでは、支払う給料の額にも違いがあるのです。

  • 振替休日の意味
  • 休日労働や振替休日の条件
  • 代休との違い

などについて見ていきましょう。

1.振替休日とは?

振替休日とは、就業規則で定められた休日をあらかじめ労働日に変更する代わりに、近接した他労働日を休日とするという制度のこと。

一般的に振替休日は、日曜日と他の祝祭日といった休日、両方が重なった場合に、月曜日以降を休日として、休日の日数が減らないようにする制度のことをいうでしょう。

国民の祝日に関する法律第3条第2項では、『「国民の祝日」が日曜日に当たるときは、その日後においてその日に最も近い「国民の祝日」でない日を休日とする』と規定されています。

振替休日とは、就業規則で定めた休日をあらかじめ労働日に変更し、代わりに近接する他の労働日を休日とする制度のことです。

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2.休日の定義

休日は、企業と労働者との労働契約上で、労働義務がない日のことを指します。

休日付与義務とは?(労働基準法)

休日付与義務とは、企業や事業者が従業員に休日を与えなければならないという義務のこと。原則として休日付与義務は、1週間に1日、あるいは4週間に4日の休日となっており、これを一般的に法定休日と呼んでいます。

休日と休暇の違い

休日と休暇には、違いがあります。

  • 休日:労働者が労働義務を負わない日
  • 休暇:労働義務はあるが、労働者の申請によって労働義務が免除される日で、年次有給休暇、夏季休暇、育児・介護休暇などがある

また、休日に有給休暇を申請することは制度の主旨から考えて認められていません。

労働基準法のもと、使用者には1週間に1日、あるいは4週間に4日の「休日付与義務」が課せられています。

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3.休日労働とは?

休日労働として考えられるのは、

  1. 法定休日に労働者を就労させる
  2. 法定外休日に労働者を就労させる

の2つ。それぞれの注意点を見ていきましょう。

  1. 法定休日労働
  2. 法定外休日労働

①法定休日労働

法定休日とは、労働基準法第35条により規定されている休日で、使用者が労働者に対し「最低でも週1回、または4週間に4回以上与えなければならない休日」のこと。

法定休日は労働基準法が定める最低基準であるため、日数を減らすことは許されていません。この法定休日に労働者が労働する場合を、法定休日労働といいます。

割増賃金の計算方法

法定休日労働を行った場合、時間外労働などと同様に割増賃金が発生します。

企業や事業者などの使用者は、法定休日労働を行った労働者に対して、通常の賃金の35%以上となる割増賃金を支払わなければなりません。また労働者に休日労働を命ずる場合、該当日が法定休日であるか確認が必要です。

②法定外休日労働

法定外休日とは、企業や事業者と労働者の間で取り決めた法定休日以外の休日のこと。法定休日は最低限度の休日なので、法定休日以上の休日を個別企業で設定することは何ら問題ありません。

土日の週休2日制を採用する企業では、

  • 土日を法定休日にする
  • 土日のうち、1日を法定休日に、もう1日を法定外休日とする

といった運用も可能です。労働者に法定外休日に労働させた場合を法定外休日労働といいます。

割増賃金の計算方法

法定外休日に労働者が労働した場合、法定休日労働と同様に割増賃金が発生する可能性があります。

法定外休日労働の割増率は、法定外休日労働が、法定内残業と法定外残業、どちらに該当するかによって変わるのです。

  • 法定内残業:割増はなし
  • 法定外残業:25%

にて割増賃金が算出されます。

休日出勤した日によって割増賃金額が変わる

休日出勤した日が、法定休日か法定外休日かによって休日出勤手当として支払われる金額が変わるのです。

労働基準法では、法定休日に労働者が労働した場合に限り、35%以上の割増賃金の支払い義務を課しています。また、法定休日に休日労働を行う場合には、事前に使用者と労働者の間で36協定を締結しておかなくてはなりません。

具体例

土日休みの週休2日制を導入している企業において土曜日に出勤した場合、1週間の起算は日曜なので同週の最初の日曜に休んだ場合は、週1日の法定休日が確保されます。この場合、土曜日は法定外休日に該当するため、35%以上の割増賃金の対象にはなりません。

ただし、一般的には月曜から金曜まで通常勤務し、さらに土曜日も出勤する場合は、法定労働時間である「1週40時間」を超えることになります。週に40時間を超える分の労働時間は時間外労働になるので、時間外手当として25%以上の割増賃金を支払うのです。

労働者が法定休日労働をした際、使用者は、当該労働者に対して35%以上の割増賃金の支払い義務が発生します。

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4.振替休日の条件

振替休日とは、使用者と労働者の間の労働契約上で特定している休日を他の日に変更すること。これは労働契約内容の変更に該当するため、休日振替を行う際は当該労働者の個別的同意を得ることが必要です。

個別的同意がなくとも、

  • 労働協約
  • 就業規則

などで「業務上の必要により就業規則で定める休日を他の日に振り替えることができる」という規定があれば休日振替は有効となります。

また、休日振替を行った後の勤務が労働基準法35条の定める1週1日の休日(就業規則に起算日を定め、4週4休変形週休制を採っている場合は、それに従った休日)の条件を満たしている必要があるのです。

休日振替は該当する労働者の個別的同意を得る、もしくは就業規則などで休日振替を規定していることが必要となります。

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5.振替休日は割増賃金の支払い義務がない

振替休日は、業務上の都合で単に労働日と休日を入れ替えただけのもの。よって、休日は労働日となり、労働日は休日に変わります。

「休日であった日に労働をさせた」のではなく「労働日に労働をさせた」ことになるため、休日に労働させたことにはなりません。つまり、休日労働の割増賃金の問題は発生しないことになるのです。

週をまたいで振り替えると割増賃金が発生する

ただし、週をまたいで労働日と休日の振り替えを行った場合、割増賃金が発生します。

労働基準法では、1日8時間または週40時間を超えて労働者に労働させた場合、時間外手当として25%の割増賃金の支払いを義務付けていますが、この条件は、振替休日の場合にも適応されるのです。

たとえば、1日8時間、週40時間を労働時間とする企業が、

  • 第1週の休日
  • 第2週の勤務日

を振り替えた場合、第1週の労働時間は週48時間となります。そのため40時間を超過した時間の勤務に対し、時間外手当として25%の割増賃金を支払う必要があるのです。

振替休日は休日労働の割増賃金はありません。しかし振り替えが週をまたぎ週40時間を超過した部分に割増賃金支払い義務が生じるのです。

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6.振替休日と代休(代替休日)の違い

労働者が所定休日に出勤し、その休日の代わりとして別の日が休日として付与されることを「休日の振替」といい、「休日の振替」によって休日になった日を、

  • 振替休日
  • 代休

と呼びます。振替休日と代休とでは意味が異なる点に注意してください。

違いが生じる理由

振替休日と代休の共通点は、「休日を振り替えることで新たに休日とされた日」という点。

しかし、

  • 振替休日は休日を事前に振り替えることで休日とされた
  • 代休は休日を事後に振り替えることで休日とされた

と大きく異なるのです。休日の振り替えには、

  1. 労働者が休日出勤前に、あらかじめ所定休日ではない日を休日として指定しておく事前の振り替え
  2. 労働者が実際に休日出勤後に、所定休日ではない日を新たに休日として付与される事後の振り替え

の2種類があります。

①効果における違い

振替休日と代休の違いは、

  • 事前振替:あらかじめ所定休日でない日を振替休日に指定することで当初の休日を労働日に変更
  • 事後振替:事後に休日を付与するだけで、当初の休日が労働日とはならず当初の休日は休日のまま
2つの違い
事前振替
  • 当初の所定休日は労働日に振り替えられ、その日の労働は休日労働にはならない
  • 振り替えた日が法定休日の場合も、休日労働の割増賃金は発生しない
事後振替
  • 当初の所定休日は休日のままで労働は休日労働となり、その日が法定休日の場合は休日労働に対する割増賃金が発生
  • 代休を付与した場合も、法的には休日割増賃金等は発生する

②条件における違い

事前振替と事後振替の条件は、

  • 事前振替:所定休日を労働日に変更するため、労使間の個別合意がある、または就業規則や労働協約によって休日振替ができる旨の規定がある
  • 事後振替:労働契約の変更に当たるため労働契約上の根拠は必要となる

ただし、事後振替は、

  • 休日割増賃金の支払いがある
  • 休日労働をさせても、必ずしも別の休日を与えなければならないわけではない
  • 休日割増賃金などを支払い、かつ代休も付与することは、労働者側にすると有利になる

という観点から、厳格な就業規則などの定めは必要ないともいえます。

振替休日と代休には、事前振替と事後振替という大きな違いがあります、効果や条件に差があることを認識しましょう。

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7.振替休日(割増賃金なし)および代休の割増賃金まとめ

振替休日と代休の割増賃金をまとめると、

  • 法定休日、法定外休日に出勤し、同一週に振替休日を取得して週の勤務時間40時間を超えなかった場合、割増賃金は発生しない
  • 法定休日、法定外休日に出勤して同一週外に振替休日を取得して週の勤務時間40時間を超えた場合、法定休日の出勤日には通常支払う賃金の35%、法定外休日の出勤日には25%を割増賃金として支払う

ただし、同一週外への事前振替であった場合には、休日労働にはならず、原則、賃金の割増はしなくてよい

ということになります。

①法定休日に出勤し、同一週内に振替休日を取得
(週の勤務時間40H以内)
割増賃金なし
②法定外休日に出勤し、同一週内に振替休日を取得
(週の勤務時間40H以内)
割増賃金なし
③法定休日に出勤し、同一週外に振替休日を取得
(週の勤務時間40H以上)
通常支払う賃金×0.35
(深夜は×0.6)
④法定外休日に出勤し、同一週外に振替休日を取得
(週の勤務時間40H以上)
通常支払う賃金×0.25
(深夜は×0.5)
⑤法定休日に出勤し、代休取得 通常支払う賃金×0.35
(深夜は×0.6)
⑥法定外休日に出勤し、代休取得 通常支払う賃金×0.25
(深夜は×0.25)
⑦法定休日に出勤し、振替休日、代休ともに取得なし 通常支払う賃金×1.35
(深夜は×1.6)
⑧法定外休日に出勤し、振替休日、代休ともに取得なし 通常支払う賃金×1.25
(深夜は×1.5)

法定休日や法定外休日の振り替え、および代休の場合の割増賃金の算出方法をしっかりと確認するようにしてください。

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8.振替休日の期限

振替休日の取得期限は、

  • 労働基準法の4週間に4日の休暇が確保されている場合、期限の制限はない
  • 企業が独自に制定した就業規則にある振替休日のルールに従う限り問題はない

就業規則に、

  • 労働日前後1週間以内
  • 労働日前後1カ月以内

などのルールがあれば、そのルールに従う必要があるのです。

仕事が忙しくて振替休日が取得できなかった、就業規則の期限内に振替休日を取得できないといった場合は、振替休日ではなく代休扱いになり、休日労働の割増賃金の支払いが生じます。

ルール通りに振替休日を取得しているか、企業はしっかりチェックする必要があるでしょう。

労働基準法上、振替休日の取得期限はありません。就業規則にルールがある場合は、それに従う必要があります。

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9.振替休日の条件と注意点

振替休日の制度を導入する際、条件や注意点があります。

  1. 制度を導入する際、就業規則などを定める必要がある
  2. 事後は振替休日に変更できない
  3. 振り替えるべき日を休日労働した日と同一週内に指定する

①制度導入には就業規則などを定める必要がある

振替休日の制度を設ける際、就業規則などに、

  • 「業務の必要性を鑑みて、休日を振り替えることがある」
  • 「会社は業務の都合上、休日を他の日に振り替えることがある」

といった文言を盛り込み、振替休日を定める必要があります。

②事後には振替休日に変更できない

振替休日の制度は、事前に振替日を指定する制度です。もし、事後に振替日を指定した場合、振替休日に該当しません。

その場合は代休扱いになるので、割増賃金の計算方法などが変わります。社員が振替休日を取得する際は、事前に振替日を確認してください。

③振り替えるべき日を休日労働した日と同一週内に指定する

振替休日は、振り替えるべき日を休日労働した日と同一週内で指定する必要があるのです。

振替休日を他の週で指定した場合、休日労働した週の労働時間は労働基準法で定められている週40時間の法定労働時間を超過し、休日労働の割増賃金35%は支払う必要はないものの、時間外労働の割増賃金25%を支払う必要が生じるでしょう。

制度導入の際は、就業規則などへの規定、事後の振り替え禁止、振り替える日を休日労働日と同一週内に指定することが必要です。

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10.振替休日の法的な位置付け

休日の振替は、労働基準法その他労働関連の法律で明確な定めはありません。あくまで実際的な運用に過ぎないのです。では、休日の振り替えそのものが労働基準法に違反するのかといえば、それは一般的な解釈ではありません。

労働基準法では、

  • 休日を付与する必要性があること
  • 休日を特定することまでは求めないこと

となっており、

  • 使用者に休日特定義務は課されていない
  • 休日の振り替えも労働基準法等には違反しない

と解釈するのが一般的なのです。

労働基準法違反になるケースとは?

休日の振り替えは労働基準法違反ではないと解釈されています。しかし、未消化の振替休日や代休が累積した場合、労働基準法違反に該当するのです。

通常、割増賃金は通常の賃金と合わせて支払います。しかし、振替休日や代休といった特殊なケースでは、代わりに与える休日の賃金と相殺して残った割増部分の25%、35%のみを支払うことが一般的です。

しかし未取得休日の賃金を休日出勤賃金の分と相殺して割増部分のみ支払いを行うことは、いわゆる「全額払いの原則」といった賃金の支払いのルールに反します

このことから、

  • 未消化の振替休日
  • 代休

の累積は、労働基準法違反となるのです。

振替休日の法的な位置付けの理解、労働基準法違反になる場合、さまざまな点から振替休日への理解が必要です。

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11.振替休日に関するトラブル事例

振替休日に関するトラブルについて、事例をもとに見ていきます。

  • 休日出勤が振替休日になり休日出勤手当が支払われない
  • 振替出勤中に実働時間が8時間を超えた
  • 忙しくて振替日が決められない

例①休日出勤が振替休日になり休日出勤手当が支払われない

振替休日に関するトラブルで多く見られるのは、土日の週休2日制で休日出勤が振替休日になったにもかかわらず、休日出勤手当が支払われないケース。

休日出勤した休日を、別な日に振り替えることは合法です。しかし、

  • 就業規則に振替休日規定がない
  • 就業規則に規定はあるが、休日出勤する前に振り替える休日の日程を決定していなかった

という場合、土日出勤が休日勤務となります。そのため、代休付与とはまた別に休日出勤手当の支給が必要です。

例②振替出勤中に実働時間が8時間を超えた

法定休日や法定外休日の振替勤務中に実働時間が8時間を超えた場合の時間外労働に対する加算についても、トラブルが多く見られます。

休日労働の割増賃金は、

  • 法定休日の労働は、労働時間にかかわらず35%の割増賃金を支払い、実働8時間を超過してもさらなる加算は不要
  • 法廷外休日の労働は、1日の労働時間にかかわらず週労働時間が40時間を超過した場合に、25%の割増賃金を支払う
  • 休日振替をした場合、1日の労働時間が8時間を超過、もしくは週労働時間が40時間を超過した場合、25%の割増賃金を支払う

ことを覚えておきましょう。

例③忙しくて振り替え日が決められない

忙しくてなかなか事前に振替日が決められないケースも多いです。

この場合可能となるのは、

  • 一定期間内であれば、振替休日を後日に指定できる
  • 一定期間を過ぎた場合は、休日手当の支給で対応する
  • 就業規則に別途規定がある場合は代休での対応も可能となるが、代休の場合でも35%の割増賃金の差額を支払う

など。

  • 振替休日取得可能な一定期間を設定する
  • 期間を超過した場合でも代休で対応する

ということで、対応できるのです。

【判例】大有社事件(平成2年3月・大阪地裁)

平成2年3月、大阪地裁が出した大有社事件の判決を例にしてみましょう。この事件では、下記の経緯や理由で当該社員が休日手当請求の裁判を起こしたのです。

  • 労使協定上、3カ月以内に振替休日を取得する制度がある中、某社員が7日間休日出勤し、うち2日分を振替休日で消化、残りの5日分は3カ月以内には未消化
  • 会社側は、5日分の休日手当を支給しなかった

判例のポイントは、

  • 日付指定はないが、社員は3カ月以内に振替休日を取る義務がある
  • 社員が3カ月以内に消化できない場合、会社は休日手当を支払う必要がある

というものでした。

振替休日に関するトラブルは多く発生しています。事例を参考にして、トラブルの未然防止に努めましょう。

12.休日振替を利用できる環境を整える

社員が休日振替を円滑に利用できる環境を整えることは重要です。

それには、

  • 就業規則で振替休日に関する制度の存在を明らかにしておく
  • 就業規則で適用条件を明確に定めておく
  • 社員が振替休日を利用するよう人事が配慮、管理していく

などが必要でしょう。

振替休日では、休日労働に関する割増賃金の発生はありませんが、1日8時間、あるいは1週間40時間を超過して労働させた場合、

  • 36協定による社員との同意
  • 割増賃金を上乗せした残業代の支払い

などが必要になることも留意しておいてください。

振替休日の取得を円滑にするには、事前に振替休日の規定を作成するなど企業の工夫が必要です。