付加価値とは?【意味を簡単に】つける、計算、労働生産性

あらゆるモノやサービスに溢れた現代で他者と差をつけるために重要なキーワードとなるのが「付加価値」。ビジネスの場でよく耳にするこの「付加価値」には、価値を加えるという意味だけでなく経営状況をあらわす指数としての役割もあります。

本記事では、ビジネスでの意味や具体的な計算方法などについて解説していきます。

1.付加価値とは?

付加価値とは、製品やサービスに対し、企業や個人の活動によって独自に付け加えられた価値を指す言葉です。モノやサービスに溢れた現代で、競合と差別化し業績を伸ばすためには、付加価値を付けることが重要となります。また「労働によって付加された価値」を表す指標として「付加価値」という言葉が使われることがあります。

ビジネス上の意味

ビジネスの場で「付加価値」という言葉を使う場合、財務分析で生産性を測るときに用いられる指標の「付加価値」を指すことがあります。経営や会計、投資などに関わったことがある人ですと、こちらも馴染み深いでしょう。

この意味における「付加価値」は「労働によって付け足された価値」を数値化したもので、いくつかの数値をもとに、具体的な数値として算出できます。

算出方法は、

  1. 控除法:売り上げから原材料費や外部注文費用などを差し引いて計算
  2. 加算法:人件費や減価償却費などを足して計算

の2つがあります。

例文、使い方、類語、カタカナで言うなら?

一方、より一般的な言葉としての「付加価値」には、もっと広い意味があります。例文を使って説明すると、「しかし、この価値の増大分は単なる付加価値であって剰余価値ではない。」(岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』より)

のように漠然と「何らかの物事に付け加えられた価値」や「プラスアルファ―」などの意味で使われることもあります。

英語での言い方、発音、読み方

付加価値を英語で言うと、「added value」あるいは「value added」。発音記号は「ǽdidvǽlju」。カタカナで表現するなら「アディド・バリュー」が近い音です。

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2.付加価値を分析する方法

前述の通り、ビジネスで使われることの多い「付加価値」は、その数値を具体的に算出できます。計算した数値をもとに、仕事の生産性や収益などを把握できるのです。

前述したとおり、計算方法には、

  1. 控除法:中小企業庁方式とも呼ばれる 全体の売り上げから経費を差し引いて算出
  2. 加算法:日銀方式とも呼ばれる 生産の工程で出る成果額を積み上げて算出

と2つあります。以下で、2つの計算方法について、詳しく説明しましょう。

売上高(生産高)とは?

付加価値を算出するには、企業全体の売上高を把握します。売上高は、付加価値と必要経費や仕入れ費用などの外部購入費を合わせた額で、必要経費などもすべて含んだ、商品やサービスを引き渡した対価として得られる金額のこととなります。

「控除法」では、この生産高から外部購入費を差し引いて付加価値を割り出します。

付加価値額の計算方法

付加価値の具体的な計算方法を見ていきましょう。付加価値の計算方法には「控除法」と「加算法」の2つがありますが、より一般的に使われるのは日銀方式といわれる「加算法」でしょう。

日銀方式(加算法)

加算法の計算式は、以下の通りです。

付加価値=①人件費 +②金融費用 +③( 減価償却費)+④賃借料 + ⑤租税公課+⑥経常利益

加算法は、減価償却費を含める場合と含めない場合があります。減価償却費は、外部から買ったものの使用により発生するものなので付加価値には含まれない、という考え方があるからです。

指標としてどちらを使うかは企業によりますが、

  • 減価償却費を含んだ場合の数値を「粗付加価値」
  • 含まない場合の数値を「純付加価値」

と使い分けています。

①人件費

ここでいう「人件費」には細かい項目が設けられています。

  • 生産する際の労務費
  • 販売費
  • 生産管理の際の役員給与
  • 従業員の給与
  • 福利厚生費
  • 退職金
  • 職給付引当金
  • 賞与引当金繰入額

などが該当します。

②金融費用

金融費用とは、企業は資金を調達するためにかかった費用のことです。

  • 支払い利息
  • 社債利息
  • 割引料
  • 社債発行差金償却・社債発行費償却

の合計額がそれにあたります。

③(減価償却費)

企業会計でいう減価償却費とは、高価な消耗品を使用した際に、減った分の価値を償却して発生する費用のことですが付加価値計算における減価償却費には、製造原価や販売費・一般管理費が該当特別勘定に計上されたものは該当しません

④賃借料

貸借料は、企業の運営に必要な機材や車、土地や建物などの不動産を借りる際に支払う費用のことを指し製造原価や販売費・一般管理費が該当します。

⑤租税公課

租税公課とは、企業経営のための必要経費とされる税金や公的な出費のことです。

  • 国税(印紙税、登録免許税、関税等)
  • 地方税(事業税、固定資産税等)
  • 公的手数料等の賦課金(製造原価、販売費・一般管理費、営業外費用など)

が該当します。

⑥経常利益

経常利益は、売り上げから必要経費を差し引いた営業利益に、その他の活動によって得た利益を合わせた額のことを指します。有価証券売却益等を売却した金額は含みません

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付加価値率とは?

上記のような計算式で算出した付加価値の数値を使って、付加価値率を割り出すことができます。

付加価値率とは、売上高のなかで付加価値がどのくらいの割合を占めるかを示す数値で、算出することで企業内で生み出している付加価値の高さを確認できるのです。

付加価値率を上げることは会社の収益アップにもつながるため、企業にとっても重要な数値でしょう。

付加価値率の求め方

付加価値率を計算するためには、下記の計算式を使います。

付加価値率(%) = 付加価値 ÷ 売上高 × 100

付加価値率を求めるには、付加価値の数値を出すことが必要です。まずは加算法をしっかりと理解しておきましょう。

付加価値労働生産性とは?

企業の従業員が生み出した、一人あたりの付加価値の数値を「付加価値生産性」または「付加価値労働生産性」といいます。

経営目的のひとつである利益向上に、付加価値を高めることは欠かせません。付加価値を高めるには、付加価値労働生産性の向上が重要です。

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付加価値生産性の求め方

付加価値生産性を求めるには、まずは付加価値額を従業員数もしくは総資本で割ります

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ここで出た数値は一人あたり、もしくは資本1単位あたりの付加価値と考えることができるので、その数値の大きさや傾向を見て現状を分析できます。付加価値生産性の数値は大きければ生産性が高く、小さければ低いと考えられるでしょう。

また、少し式が複雑になりますが売上高を使って計算することも可能です。

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分配率の分析方法

付加価値が人件費や金融費用、賃借料などの項目ごとに、どのような割合になっているのかを示す数値が「分配率」項目ごとの費用を付加価値額で割って算出します。

業種によって特色がある分配率は、同業他社と比較して付加価値の配分に偏りがないかを確認するために使うのです。各項目の分配率が示す意味合いと計算方法について見ていきましょう。

労働分配率の求め方

分配率のうち従業員に対して付加価値がどのくらい還元されたのかを割り出した数値を「労働分配率」といいます。人件費を付加価値額で割り100を掛けることで算出します。

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数値が低ければ、付加価値中の人件費の割合も低いということ。割合が低ければ生産効率は高いといえますが、低すぎると従業員の給与が低すぎるとも考えられます。そのため単純に低ければよいということではありません。

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金融費用分配率の求め方

金融機関などからの借入金に対して、付加価値が還元されたと考えられる割合を「金融費用分配率」といいます。これは支払利息を付加価値額で割り、100を掛けることで計算できます。

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賃借料の分析

分析率のうち賃借料を付加価値額で割った数値を見ることで賃借料の分析が可能です。この賃借料は、生産のために必要な建物や機材にかかる賃借料が対象となっています。

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賃借料の分析で出た数値は、付加価値額のうち賃借している建物や機材などへ分配している割合なので低ければ低いほど経費を抑えられているといえるでしょう。

公共分配率の求め方

前述のとおり、租税公課とは印紙税や登録免許税、固定資産税等、公的手数料などを指します。このように定められた公的な費用が、付加価値額のなかで占める割合のことを「公共分配率」といいます。

これは租税公課を付加価値額で割り、100を掛けることで算出可能です。

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無形固定資産に対する成果配分の割合の求め方

減価償却費を付加価値額で割り100を掛けることで、無形固形資産に対しての成果配分の割合を算出できます。

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減価償却費は、

  • 生産や営業活動に必要な機材や不動産、車両などの高額な消耗品
  • のれん代などの無形固定資産

が対象となります。これまで解説した項目の配分は社外へ出ていく出費でしたが、この無形固定資産の成果配分は社内に留まる費用なので、他の項目と少し性質が違います

資本分配率の求め方

付加価値のなかで利益として残る金額の割合と、先ほどの無形固定資産に対する成果配分の割合を合わせたものを「資本分配率」といいます。付加価値のなかの利益率は、経常利益を付加価値額で割り100を掛けて算出できます。

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付加価値のなかの利益率なので、数値が大きいということは収益も大きいということです。

分配率まとめ

各項目の分配率について、まとめると下図のようになります。

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  • 人件費からは労働分配率
  • 支払利息と賃借料からは他人の資本に対する分配率
  • 租税公課からは公共分配率
  • 減価償却費と経常利益からは資本分配率

を割り出していきます。これらの割合をバランスよく配分することで、企業は安定した経営を目指すことができるのです。

労働分配率が高い企業は「人件費過多」の可能性

分配率はそれぞれの項目ごとに、数値が高いほうが好ましい場合、低いほうが好ましい場合と分かれています。しかし極端に高すぎても低すぎても偏りが生じてしまうことも覚えておきましょう。

労働分配率に関しては、先に説明した通り、数値が高いと人件費がかかりすぎている可能性があります。

従業員の給与が他と比較して高いということなので、仕事に関しての満足度が高く離職率が下がるメリットも考えられます。しかし割合が高すぎると利益を十分に確保できずに経営が悪化してしまうリスクもあるので、バランスよく配分することが大切です。

労働分配率が低い企業は「労働環境が劣悪」である可能性

反対に労働分配率が他と比べて低い場合、人件費に対して効率よく生産できていると考えられるでしょう。

しかし割合が低すぎる場合、

  • 従業員の給与が労働の割に低い
  • 労働環境が悪く、従業員の不満やストレスが溜まっている可能性

などが考えられます。従業員が良い環境で長く働くためにも、数値を下げすぎないよう心掛けることが必要でしょう。

同業他社と比較してみよう

労働分配率をバランス良くするにはどうしたらいいのでしょうか。分配率は業種によって傾向が変わります。

たとえば、

  • 機械生産が進む製造業など 労働分配率が低い傾向
  • サービス業など 高い傾向

にあります。同業他社の数値を把握し、平均値に近づけることで、バランスのよい分配率に近づけることができるのです。

産業別・労働分配率(経済産業省)

業種別の労働分配率については、経済産業省のサイトに詳細がまとめられています。細かく業種分けされているので、ぜひ参考にしてみましょう。

参考 付表のダウンロード 付表7参照経済産業省ウェブサイト

具体例

項目ごとの分配率に関して、具体例を見てみましょう。下記の表は、X社とY社の分配率一覧を比較したものです。それぞれに出ている特徴や傾向について解説していきます。

まず分配率の面で2社を比較すると、

  • X社 Y社よりも労働分配率が低く、金融分配率が高い
  • Y社 資本分配率(減価償却費+経常利益)が6.9%でX社は7.5%、資本生産性が高いY社は、資本分配率が低い

社はY社より資本の生産性は低いですが労働者の生産性は高い数値Y社はその反対になっています。付加価値を見るとX社は6.5%、Y社は10.5%とX社の低さが目立ちます。

これらを踏まえると、現状と解決策は次のようになります。
<table”>

会社現状解決策X社

  • 労働者の生産性が高いわりに給与が低い
  • 金融機関へ支払う割合が高い
  • 借入金を減らし、資産を売却するなどの対策が必要
  • 今後はより付加価値の高い商品を扱う

Y社

  • 労働者の生産性が低いわりに給与が高い
  • 資本分配率が低い
  • 従業員の数を適正な人数まで減らす
  • 従業員ひとりずつの生産性を上げる
参考 付加価値分析日本CFO協会

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3.【サービス・商品別】付加価値を高める・向上させる方法・事例

付加価値を高めることは、経営上非常に重要ですが、どうすれば向上できるのでしょう。業種や扱う商品などによって、その方法はさまざまです。いくつかの代表的な業界で効果的な内容を例として見てみましょう。

飲食店の場合

飲食店は、いくつもの店舗から選んでもらうために、「その店でなくてはならない」という付加価値が必要となります。

たとえば、

  • 食材の新鮮さや珍しさ
  • 他にはない特別な素材
  • 質の高さ
  • 素人にはできない熟練の技術が必要な料理
  • 変わった提供方法
  • 非日常を味わえる空間づくりなどの演出
  • 伝統や地域性を活かしたストーリーづくり
  • 特別な気分を味わってもらえるような接客方法

などで他の店との差を生み出します。話題の飲食店には、これらの要素が上手く取り入れられているのです。

ホテル(宿泊・接客サービス)の場合

バブル崩壊後に業績が伸び悩んだホテル業界では、付加価値を高めることで業績が伸びたというケースもあります。

たとえば、野沢温泉旅館では、宿泊客に「またここに泊まりたい」と思ってもらえるような接客ができるよう、EQI(行動特性検査)を導入しています。

感情をコントロールすることで能力を最大限に引き出すとされる「EQ」(情動指数)を測り、接客力の向上につなげているのです。

飲食店にもいえることですがホテルなど宿泊事業を営む企業の場合、接客サービスは非常に重要な要素となるため、付加価値の分配においても人件費に重点が置かれるのです。

マンション(賃貸経営)の場合

賃貸物件の場合、通常は築年数が経つほどに賃貸料を下げていくのが一般的ですが付加価値をつけ、あえて賃貸料を上げて貸し出すという戦略を取る企業が出てきています。

不動産事業を展開する生和コーポレーションでは、有名家具店IKEAの家具や雑貨で内装を統一した「リデザイン」物件や、無印良品とのコラボ物件などを開発し、人気を集めています。

また、

  • おしゃれなデザインの女性向け物件
  • ペット対応の物件
  • 無料インターネット回線つき物件

などターゲットを絞り、かつ付加価値をつけた物件に人気が集中するそうです。

農産物(農業)の場合

京都市の農業生産法人こと京都(株)では、自社で生産した九条ねぎをカットし、ラーメン店に販売するという手法で成功を収めています。

こちらの企業の特色は、ただカットするだけでなく徹底した品質管理を行っているという点です。

カット野菜は傷みやすいため、

  • 加工時には低温で管理
  • オゾン水での殺菌洗浄
  • クール便での直送

によってより新鮮なねぎを顧客の手元まで届けることを意識しています。

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4.付加価値税とは?

EU諸国やアジアの国々の中には、日本の消費税に似た「付加価値税」というものを定めている国があります。日本では馴染みのない言葉ですが、海外旅行の際に耳にするかもしれません。この付加価値税とは、どのようなものなのでしょう。

VAT(Value Added Tax)

付加価値税は、EUやアジアの一部の国で掛かる税金で、通常VAT(Value Added Tax)と表記され、商品やサービスを購入した際に課せられるものです。

標準的な税率は15%以上ですが、国によって差があります。商品の種類によっては軽減税率が適用されることがあり、一般的に食品への税率は低い傾向にあるようです。

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まとめ

付加価値という言葉は一般的に、「他にはない価値」という意味合いで使われますが、ビジネスの場では企業の経営に直接的に関わる具体的な数値として活用されます。

付加価値は、一般的な意味で使われる場合も含めて、企業を成長へ導くために必要なものです。性質や活用方法をよく理解し、労働環境や企業体質の改善に活かしてみてはいかがでしょう。