契約社員とは? 正社員との違い、更新、雇い止め

契約社員とは、期間に定めがある雇用契約で働く労働者のことです。正社員との違いやメリット、雇用時の注意点や契約更新、雇止めなどについて解説します。

1.契約社員とは?

契約社員とは、期間に定めがある雇用契約で働く労働者のことで、これを「有期雇用契約」といいます。一般的な契約期間は最長で3年と定められています。

ただし、

  • 高度な専門知識を持つスペシャリスト
  • 満60歳以上の労働者

の場合、最長5年とされるのです。もし契約期間が終了した時点で契約更新がなければ、契約社員はその企業で引き続き働けません。別の会社に移る必要に迫られるのです。

有期雇用契約とは? 契約時や更新しない場合の注意点を簡単に
有期雇用契約は、企業と労働者が特定の期間に限定して結ぶ雇用形態です。企業が有期雇用契約を選ぶ際には、契約の終了時期、労働条件、労働者の権利などをしっかり理解することが大切です。 特に、労働契約法はしば...

労働契約法改正における有期雇用契約の変更点

2013年4月1日より有期雇用契約に関するルールが、3点変更されました。

  1. 通算契約期間が5年を超えた場合、無期労働契約へ転換できる
  2. 「雇止め法理」の法定化
  3. 無期雇用契約者の労働条件と異なる場合、その理由が不合理なものであってはならない

限定正社員との違い

限定正社員とは勤務地といった地域や職務、勤務時間のいずれかもしくは2つ以上の条件を限定して働く正社員のこと。働き方に関して限定される条件以外は基本、正社員と同じ待遇です。雇用期間に定めはありません。

一方、契約社員は労働契約の期間に定めがある非正規雇用の社員です。

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2.契約社員と正社員の違い

契約社員と正社員には多くの違いがあります。下記についてそれぞれ見ていきましょう。

  1. 雇用期間
  2. 業務内容
  3. 昇給・昇進
  4. 福利厚生
  5. 勤務地

①雇用期間

正社員は定年までフルタイムで働くことを前提とした無期雇用です。一方、契約社員は契約期間が決まっている有期雇用となり、労働契約期間は通常1年となっています。契約期間が満了した時点で契約を継続したり、終了したりするのです。

②業務内容

正社員の業務内容は、人事や経営方針によって決定される場合が多いため、自分のやりたい業務ができないケースもあります。

一方、契約社員は契約ごとに業務内容が決められるため、自分のやりたい仕事ができる可能性も高いです。契約社員として専門業務に従事し続ければ、実力がついてたり実績ができたりして、キャリア形成につながるでしょう。

③昇給・昇進

正社員は、定期的な査定があります。勤続年数が長くなったり仕事で功績を上げたりすると、昇進や昇給の機会が与えられるのです。

契約社員の場合、契約期間と職務内容が限定されているため、昇進や昇給の機会はほとんどありません。ただし契約更新時に諸条件の見直しについて交渉するのは可能です。

また同じ職務の場合は原則、契約社員と正社員で基本給の差をつけません。なお賞与は会社により異なります。

④福利厚生

社会保険といった法定内の福利厚生は、雇用形態に関係なく同じです。一方、法定外の福利厚生は、多くの企業が正社員と契約社員で多少の違いが見られます。

正社員と同じ内容の仕事をする契約社員も多く、違いをつけると職場の人間関係が壊れる可能性もあるでしょう。企業は契約社員の待遇改善に取り組む必要があります。

⑤勤務地

正社員は、勤務地の異動や転勤の可能性が高いです。全国や海外にも拠点がある企業の場合、よりその可能性が高まります。契約社員は原則、雇用契約時に指定された勤務地は変わりません。ただし雇用契約の内容によっては、転勤が生じる場合もあります。

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3.契約社員のメリット

契約社員制度は、雇用する側と契約社員、双方の目的があえば、両者にメリットがあるのです。正社員の制度にはない長所について見ていきましょう。

雇用側

契約社員を雇用すると、下記のようなメリットが生まれます。

  1. 人員調整しやすい
  2. 人件費が抑えられる
  3. 優秀な人材を確保できる

①人員調整しやすい

契約社員は、雇用期間の満了によって契約が終了するため、雇用の調整がしやすくなります。企業によっては繁忙期と閑散期がはっきりとわかれているため、繁忙期だけ人員を増やしたい場合もあるでしょう。

また正社員が産休や育児休暇で長期間仕事を休む場合、その期間だけ人員を補充したいという状況もありえます。そうしたニーズに契約社員は合致するのです。

②人件費が抑えられる

「契約社員は利用できる福利厚生やボーナスが少ない」「もともと制度がない」場合も多いです。そのため正社員よりも人件費が抑えられます。ただし同一労働同一賃金の観点から見ると、正社員と同様の業務を任せる場合、待遇に差はつけられません。

③優秀な人材を確保できる

労働者がどれだけ仕事ができるかは、実際に働いてみなければわからないもの。もし契約期間内に欲しいと思えるような人材がいたら、正社員として契約できます。また無期雇用契約を結んで、長く働いてもらうのも可能です。

労働者側

労働者側が契約社員で働くメリットは下記のとおりです。

  1. 入社しやすい
  2. ワークライフバランスを保てる
  3. 専門性の高い仕事ができる

①入社しやすい

正社員としてなかなか入社できない企業や事業所でも、契約社員であれば採用条件が緩和され、入社できる場合があります。まずは契約社員として入社し、努力して実力を認めてもらって正社員登用を目指す、という道も考えられます。

②ワークライフバランスを保てる

契約社員は勤務時間帯に柔軟性があり、自分の都合に合わせて働きやすくなっています。残業も比較的少なく設定されているため、仕事とプライベートのバランスも取りやすいでしょう。

「家事・育児との両立」「趣味の時間を十分に持つ」といった働き方が可能になります。

③専門性の高い仕事ができる

専門職や高いスキルの契約社員だと高待遇になる場合があります。たとえば下記のような仕事です。

  1. Webデザイナー
  2. プログラマー
  3. 看護師
  4. 美容師

専門的なスキルで正社員に近い業務を行い、よい待遇で働ける可能性が高まるのです。

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4.契約社員を雇う際の注意点

契約社員を雇用する際、何に注意すればよいのでしょう。ポイントについて説明します。

  1. 1日8時間以内、週40時間以内の所定労働時間を守る
  2. 保険の加入や育休制度
  3. 契約期間中に解雇をする場合はやむを得ない事由が必要となる

①1日8時間以内、週40時間以内の所定労働時間を守る

契約社員の所定労働時間は、1日8時間以内・週40時間以内と労働基準法32条に規定されています。

飲食店や小売業で1日の営業時間が8時間を超過する場合、残業扱いやシフト制にて別人員を置き、対応するのです。なお小規模の事業所は、1日8時間以内かつ週44時間以内まで設定できます。

②保険の加入や育休制度

「週の所定労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用見込みがある」場合、契約社員も雇用保険に加入します。社会保険は契約期間が2カ月以上なら強制適用です。

また同じ会社で1年以上継続して働いている労働者の場合、子どもが1歳6カ月になった日まで契約の満了が明らかでなければ、育児休業が取得できます。

さらに開始予定日から93日が経過した日から6カ月を経過する日までに、契約満了が明らかでない場合は、介護休業も取得可能です。

③契約期間中に解雇をする場合はやむを得ない事由が必要

民法628条では、有期雇用契約でも「やむを得ない事由」がある場合、中途解約をなし得ると定めています。

さらに労働契約法17条1項は「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と規定しています。

やむを得ない事由の判例

「やむを得ない事由」には、期間満了を待たず直ちに雇用契約を終了しなければならないような、特別の重大な事由である点が求められます。たとえば下記のような内容です。

  • 契約社員が就労不能となった
  • 契約社員に重大な非違行為があった
  • 雇用の継続を困難とするような経営難

裁判例では「やむを得ない事由」の存在を、安易には認めない傾向があります。

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5.契約社員の契約更新

契約期間が満了し、引き続き働き続けてもらう場合、企業と契約社員との間で契約が更新されます。そしてその際に、さまざまなパターンがあるのです。それぞれについて見ていきましょう。

  1. 期間のみを更新する
  2. 労働条件を更新する
  3. 正社員への登用

①期間のみを更新する

有期雇用契約は、契約期間が満了になった時点で契約が解消されます。したがって契約期間のみを延長する場合でも、新たに雇用契約書を書面で締結する手続きが必要です。

契約更新の面談は遅くとも、期間満了の30日前までに行いますが、労働者が契約更新を希望しない場合、延長となりません。また「契約を1回以上更新した」「1年を超えて継続雇用している」場合、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならないのです。

②労働条件を更新する

契約更新に際して労働条件を変更する場合、労働者が条件変更に同意したうえで更新されていれば、とくに問題はありません。

たとえば「週5日・1日8時間」から「週4日・1日6時間」に変更すると、賃金総額が減るでしょう。しかし労働者が同意していれば有効なのです。

ここでは条件変更の必要性や手続きの相当性が問われます。きちんと一定の期間をかけて本人に説明したかが重要になるのです。

③正社員への登用

契約社員が正社員登用制度を利用して正社員になることを希望する場合、必要な手続きや試験に注意しなくてはなりません。

必要な手続き

契約社員から正社員になると労働契約の内容が変わるため、新しい労働条件で労働契約書を再度作成します。また契約社員のときに雇用保険・社会保険に未加入だった場合、あらためて加入手続きが必要です。

なお正社員に変わっても勤続年数は通算されるため、その時点で持っている有給休暇の日数は引き続き有効となります。

正社員登用制度があれば試験を実施

一般的に契約社員から正社員になる際、下記のような何らかの基準があります。

  • 一定の勤続期間を経る
  • 面接や昇給試験を受けて合格する
  • 働きぶりや売り上げなどを基準とする

営業実績などを基準としているところでは、条件を満たすまで正社員になれません。企業によって基準は異なり、一定期間を過ぎると全員が正社員になれる企業もあります。

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6.契約社員の雇止め

期間満了後、契約を更新せず雇止めにできます。一方、労働契約法の改正により、無期労働契約への切り替えも可能になりました。

解雇と雇い止めの違い

解雇と雇い止めの違いは下記のとおりです。

  • 解雇:期間の途中で契約を解消して、会社が労働者を一方的に辞めさせる行為
  • 雇止め:有期雇用期間が満了しその後の契約を更新しないこと。契約終了による退職の扱いとなる

一定の条件に当てはまる場合、契約終了日の30日前までに契約終了の予告をすることになっています。

無期転換ルール

無期転換ルールとは、「契約社員の5年ルール」といわれるもので、2013年4月1日に改正労働契約法として施行された法律にもとづきます。

有期契約労働者の雇用が通算5年を超えて所定の条件を満たした場合、「契約更改は期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されなければならない」となりました。規模にかかわらず、すべての企業が対象です。

導入方法

無期転換ルールの導入方法は、以下の4ステップです。

  1. 有期契約労働者の就労実態を調べる
  2. 社内の仕事を整理し、無期転換後に任せる仕事を考える
  3. 適用する労働条件を検討し、就業規則を作成する
  4. 運用と改善を行う

まず自社の有期雇用労働者の人数、仕事内容や勤務時間など現状を把握します。次に無期転換後に従事してもらう仕事や環境を考えるのです。そして労働条件といった制度を設計し、就業規則を整備します。以上がそろったら、実際に運用していくのです。

対象者

無期転換ルールに該当する有期契約労働者は、以下のとおりです。

  • 1年や6カ月単位の有期労働契約を締結、または更新している人
  • 一般に契約社員や準社員、パートタイマーやアルバイト、メイト社員などと呼ばれている人

条件

有期雇用契約の人が以下の3条件を満たしたとき、無期転換申込権が発生します。

  1. 有期労働契約の通算期間が5年を超えている
  2. 1回以上の契約更新が行われている
  3. 「同一の使用者」との間で契約更新をしている

同じ会社の複数事業場で有期労働契約を順番に締結してきた場合、同一使用者となるため、複数の契約を通算できます。

無期転換ルールに対する雇用側の対策

無期転換ルールに備えた企業の対応策は以下のとおりです。

  • 雇止めする:有期契約が5年を超えないように契約終了する
  • 無期契約社員化(処遇条件変更なし):給与など条件を変えず、無期契約にする
  • 無期契約社員化(処遇条件改善):給与など条件を引き上げ、無期契約にする
  • 限定正社員化:勤務地、職務、時間などを限定した正社員に転換する
  • 正社員化:完全に正社員に転換する

このうち多くの企業では、無期契約社員化(処遇条件変更なしおよび処遇条件改善)を選択していると考えられています。

雇止めをするときの注意点

もしやむを得ず雇止めをしなくてはならない際は、以下3点に注意しましょう。

  1. まずは契約書を確認する
  2. 雇止めには事前予告が必要となる
  3. 雇止めの際には理由を明示する

契約書に「更新せず雇止めができる」旨が記載されていない場合、雇止めはできません。また下記のいずれかに該当する契約社員には、30日前までに雇止めの予告をしなくてはならないのです。

  • 契約が合計3回以上更新されている
  • 契約期間が通算で1年を超えている
  • 1年を超える期間の契約を締結している

さらに雇止め予告時には「理由を書面で発行・明示する」「口頭で丁寧に説明する」などが必要です。