日本の「有給休暇引当金」は会計基準として計上できませんが、IFRSやアメリカの会計基準で計上される負債性引当金のことを指します。人事担当者が知っておきたい有給休暇引当金のポイントと、適用になった場合のリスクや注意点を紹介します。
「有給休暇引当金」とは?
有給休暇引当金とは、「未払有給休暇」とも呼ばれ、決算時に算出される負債性引当金のことです。
その年に従業員に対して給付された有給休暇のうち、未消化の有給休暇の残高日数に対して各日給を乗じて算出を行います。つまり、消化されていない有給日数のことを、「企業が負うべき債務」と考えて債務計上を行うのが有給休暇引当金です。
有給休暇引当金は、IFRSや米国基準等の会計基準で義務づけられており、日本の会計処理では計上されないものです。
有給休暇引当金の計算・計上
有給休暇引当金の算出方法は、「未消化分の有給の数×いままでの平均取得率×各日給」で求めることができます。
企業の意義を正確に査定するためには、可能な限り考えうる危険な箇所を数字として表現することが不可欠です。IRFSでは有給休暇引当金を「企業の債務」と考え、未消化の有給休暇だけではなく福利厚生サービス全般に対して負債として計算・計上しています。
損益計算書上では、有給休暇引当金は前年度と今年度の差額のみが処理されることになります。
現在の日本では、消化できていない有給消化を買い取るシステムが定着していません。計上できていなかった有給休暇引当金ですが、今後は計上が追求される可能性があります。
有給休暇引当金とIFRS
有給休暇引当金に対する認識は、日本の会計基準とIFRSで異なると理解されています。
「International Financial Reporting Standards」の頭文字をとったものがIFRSと呼ばれ、「国際財務報告基準」と訳されます。
IFRSはグローバルな会計基準ですが、日本では2010年に任意適用が認められ、まだ日が浅いといえます。IFRSは日本の会計基準とは収益の考えが違い、日本では「P/L(損益計算書)優先」に対して「B/S(賃借対照表)優先」のIFRSといった見方があります。
IFRSでは、有給休暇引当金を企業の債務と考えますが、日本の会計基準では取得されていない有給休暇に対する規定がありませんでした。
この認識の差が、日本の会計基準とIFRSの論点となることが多く、IFRSを適用すると有給取得率の低い日本の企業では、有給休暇引当金の計上が多額になり利益を圧迫してしまうという問題点があります。
前述のように、今後は有給休暇引当金を計上するように日本でも追求される見込みがあります。そうなった場合、有給休暇引当金の計上により、負債総額が膨らんでしまって自己資本比率の低下を招いてしまうケースも出てくるでしょう。
人事担当者の注意点としては、日ごろから有給消化の促進に努めるだけではなく、有給を取得しやすい職場環境の構築にも力を入れましょう。