アルムナイとは? 注目される理由、メリット・デメリット、事例

アルムナイとは自社を離職あるいは退職した人の集まりのこと。今回はアルムナイについて詳しく説明します。

1.アルムナイとは?

アルムナイ(alumni)とは、自社の離職者やOB・OGのことです。もともとは「卒業生、同窓生」という意味を持ちます。転職が一般的なアメリカでは、自社の元社員つまりアルムナイを積極的に採用しているのです。

日本の場合、定年以外での退職は一般的とはいえませんでした。しかし終身雇用が当たり前ではなくなった現在、アルムナイ制度に注目が集まり、大手企業でも新たな採用手法として取り入れられているのです。

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2.アルムナイが注目を集めている理由

アルムナイが注目を集めるのは、なぜでしょうか。

  1. 労働力不足
  2. 優秀な人材の確保難

①労働力不足

労働力不足で悩む企業はアルムナイを貴重な人材リソースとみなして再度雇用し、労働力不足の解消をはかっているのです。

現在の日本は、少子高齢化で社員が減少しています。そのうえ働き方の多様化が進み、終身雇用制度の終わりを迎えつつあるため、ひとつの企業に定着しない人も少なくありません。

②優秀な人材の確保難

自社から転職して新たな技術や経験などを得たアルムナイが再雇用できれば、能力が高い優秀な人材を確保できるでしょう。

優秀な人材はのどから手が出るほど欲しいもの。しかし採用難により優秀な人材の獲得は難しくなっています。アルムナイなら、業務についていちから教育する必要はありません。即戦力として活躍してくれるでしょう。

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3.アルムナイと出戻り制度の違い

アルムナイ制度と出戻り制度に違いはありません。両方とも一度退職した社員を再度雇用する制度です。2018年に実施された出戻り制度についてのアンケートによると、一度退職した社員を再雇用した経験のある企業は72%にのぼりました。

再雇用に至ったきっかけの半数は、本人からの直接応募です。実際に再雇用した理由として多く見られたのは「即戦力になるから」「ひととなりが分かっていて安心だから」などでした。

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4.アルムナイのメリット

アルムナイ制度は企業側にどのようなメリットをもたらすのでしょう。

  1. 人材採用・育成コストの削減
  2. 優秀な人材の確保
  3. アンバサダーとしての存在感
  4. 外部からの情報源

①人材採用・育成コストの削減

アルムナイを再雇用すると、求人・転職サイトの掲載料などを払わなくて済むため、採用コストを抑えられます。再雇用のきっかけとして社員の紹介やこちらから直接採用をもちかける場合が多いからです。

また育成コストも削減できます。アルムナイは一度その企業で働いているため、業務内容や労働環境を把握しているもの。そのため即戦力になり育成コストも最低限で済むのです。

②優秀な人材の確保

ほか企業で経験を積み、さらに知識や技術を身に付けた優秀な人材を再雇用できます。企業はアルムナイのスキルを把握しており、アルムナイ自身も業務内容を把握しているため、通常の入社者よりも高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

また通常の採用と違い、採用後に「思っていたのと違う」「入社するんじゃなかった」といったミスマッチが起こりにくいのもメリットです。

③アンバサダーとしての存在感

再雇用以外にも、アンバサダー的な役割を期待できます。たとえば再雇用されていないアルムナイがSNSで自社の商品を宣伝する、あるいは顧客のツイートに返信した場合、顧客は客観的な情報とみて信頼感を持つでしょう。

また独立起業したアルムナイと新しい取引を行う、あるいは新たな顧客を紹介してもらえる可能性などもあります。ただしこれらはアルムナイと良好な関係を継続できている点が前提となるのです。

④外部からの情報源

アルムナイが持つほかの企業や業界の情報は、自社にとって有力な情報になる場合もあります。こうした情報がアイデアとなって、自社の戦略や改善が実現する可能性も高いからです。

情報を効率的に入手するためにも、アルムナイを対象にアンケートを実施しましょう。また新製品を発売した際、アルムナイと関係を築いていれば客観的な視点からアドバイスをもらえます。

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5.アルムナイのデメリット

アルムナイ制度があると、社員が「やめても復帰できる」と考えてしまい、モチベーションが低下してしまいます。これを防ぐためにもアルムナイ制度のルールをしっかりと決めておきましょう。

またアルムナイの待遇によっては既存社員から反感を買ってしまいます。これも既存社員のモチベーション低下につながりかねないため、注意が必要です。

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6.アルムナイを運用する際に押さえておきたいポイント

アルムナイを運用する際、事前に準備すべきポイントがいくつかあります。

  1. アルムナイ制度の社内周知
  2. 条件の明確化
  3. 多様な価値観を受け入れる風土作り

①アルムナイ制度の社内周知

先述のとおりアルムナイ制度はまだ、日本であまり周知されていません。そのためまずは社内全体にアルムナイ制度を認知させる必要があるのです。社内の掲示板やコミュニケーションツール、面談などをとおして、すべての社員に説明しましょう。

アルムナイ制度の概要や基本情報、導入する理由や目的などを説明して、十分に社員の理解を得ます。

②条件の明確化

アルムナイが企業に復職するための条件を明確にしておきましょう。ただ単純に「企業を辞めた社員ならかんたんに復帰できる制度」と認識されてしまっては、社員のモチベーションが下がってしまうかもしれません。

「だれでもすぐ復職できるわけではない」とするためにも、復職の際に必要なスキルや経験といった基準を明確にして、社員に伝えましょう。

③多様な価値観を受け入れる風土作り

雇用形態に柔軟性を持たせ、場合によっては業務委託で受け入れる対応も必要になります。企業における風土とは、その企業の規則や制度、価値観などのこと。アルムナイを受け入れる社内制度や社内規則などを整備する必要があります。

またほかの企業でさまざまな経験をしているアルムナイは、価値観が従来と変わっている可能性も高いです。アルムナイを受け入れる社員側の意識を変えるのも大切でしょう。

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7.アルムナイの導入企業事例

大企業は退職者の数も膨大です。そのためいくつかの大企業ではいち早くアルムナイ制度を導入しています。ここでは大企業の導入事例をご紹介しましょう。

  1. アクセンチュア
  2. 武田薬品工業
  3. スープストックトーキョー
  4. 荏原製作所
  5. サイボウズ
  6. デロイトトーマツグループ
  7. TIS
  8. ヤフー
  9. P&G

①アクセンチュア

総合コンサルティングサービスを提供するアクセンチュアは「アクセンチュア・アルムナイ・ネットワーク」を構築。アルムナイ専用のサイトを立ち上げ、以下のサービスを提供しています。

  • 再就職のための支援
  • 年間100回以上にわたるイベントの開催
  • サービスのディスカウント
  • ビジネスのアイデア共有
  • 最新の採用情報の案内

現在30万人以上のアルムナイが登録。アルムナイは多くのメンバーと相互コミュニケーションを取れるようになっているのです。

②武田薬品工業

製薬メーカーの武田薬品工業は、やむをえない事情やキャリアアップのために退職した社員に向けて「OB・OG再雇用制度」を導入。再雇用制度を希望する場合、専用Webサイトから希望の勤務期間や勤務地、同社での勤務経験といった情報を入力すると応募できます。

また社内では多様な価値観を受け入れる風土が定着しているため、アルムナイ制度で戻ってきた社員でも働きやすい環境になっているのです。

③スープストックトーキョー

スープ専門店チェーン店を運営するスープストックトーキョーでは、「バーチャル社員証」という制度を導入。これは退職後もスープストックトーキョーと関係を持ち続けるための制度です。バーチャル社員証で得られる特典には以下のものがあります。

  • 退職後も社員価格で食事が可能
  • メルマガや社内報で情報を得られる
  • 試食会や社内イベントに参加できる

バーチャル社員証に登録するかどうかは退職者本人が決められます。よりアルムナイに寄り添った制度といえるでしょう。

④荏原製作所

環境装置や設備を製造する荏原製作所は、アルムナイに特化したクラウド型システム「Official-Alumni.com」を導入。システムでは、名簿機能でアルムナイの近況が確認でき、トークルームなどをとおしてアルムナイとコミュニケーションを取っていけます。

社会の変化にともなって実力や能力を重視する方針へ転換した同社は、アルムナイ制度導入で優秀な人材の確保を目指しているのです。

⑤サイボウズ

エンジニアの採用は競争が激しいため、人手不足に悩むIT企業も多いです。ソフトウエア開発を担うサイボウズでも優秀なエンジニアの確保は重要な課題でした。そこで積極的にアルムナイ制度を導入したのです。

そのひとつが「CybozuMeetup」。サイボウズを退職したエンジニアを集めたイベントを毎月開催し、元職場であるサイボウズについてエンジニア同士が語る機会を提供しているのです。

⑥デロイトトーマツグループ

法務や税務などに関するサービスを提供するデロイトトーマツグループでは、「デロイトトーマツアルムナイ」というネットワークを立ち上げ、会員専用のWebサイトを用意しました。

現在5,000人以上のアルムナイが所属しており、オンライン上でアルムナイのプロフィールが確認できます。

今後はアルムナイ同士でのメッセージのやり取りも可能にする予定です。外部の有名な人を招待して行う講演会や、アルムナイとデロイトトーマツグループの社員で情報交換を行うといったイベントも開催しています。

⑦TIS

システムインテグレーターであるTISは、事業をさらに展開すべく多様な人材を求めていました。そこで「働いていた当時の上司や同僚」が窓口になって入社をサポートする紹介制度を用意。アルムナイがコミュニケーションしやすい人材を活用したのです。

実際に制度を利用して戻ったアルムナイは復帰後に活躍。役員にまで昇格した事例も紹介されているほどです。ほかにもTISでは育児と仕事を両立しながら働ける制度があるため、産休や育児休暇後でも気軽に復職できます。

⑧Yahoo!

通信事業を展開するYahoo!は、設立20周年を機に2017年に「モトヤフ」というアルムナイのネットワークを構築。モトヤフでは退職者同士の交流を重点的に進めており、外部目線による社内体制の改善点といった情報交換を積極的に行っています。

また非公開のモトヤフFacebookグループも作成。そこでモトヤフ同士がコミュニケーションを取れるようにしています。ほかにもヤフー本社17階にある「LODGE」というオープンスペースで、現役社員とモトヤフが交流するのも可能です。

⑨P&G

消費財メーカーであるP&Gでもアルムナイ専用のネットワークを用意。専用のWebサイトでは以下のような情報を提供しています。

  • アルムナイを対象にしたイベントの案内
  • メンバーのプロフィール機能
  • アルムナイの取り組みを称えたストーリー紹介
  • キャリア情報

またアルムナイと現役社員との交流について積極的に取り組んでおり、現役社員がアルムナイに向けて直接メッセージを送れるようにしているのです。