おなじみのIQ(知能指数)に続いてEQ(感情指数)が話題になりましたが、経営やビジネスの成功にはそれだけでは足りないようです。AQ(逆境指数)という言葉をご存じでしょうか? 今、注目を集めている逆境に対応する力、AQについて取り上げます。
「AQ(Adversity Quotient)」とは? 逆境指数が注目されるわけ
AQは英語のAdversity Quotientの略で、逆境指数とも呼ばれています。個人や組織が逆境にある時に、その対応力について数値化したものであり、アメリカのハーバードビジネススクールの組織コミュニケーションや組織発展についての研究者、ポール・G・ストルツ(Paul G. Stoltz)博士によって提唱されています。
知能の程度を表すIQ(知能指数)と、心知能指数といわれるEQ(感情指数)とともに、逆境に陥った時のストレス耐性や心の強さを表す指標として注目されています。企業経営には、IQやEQと同様にAQが重要であるといわれています。
AQ(逆境指数)から見る企業が求める人材とは
ポール・G・ストルツ博士は自著「仕事の逆境指数―ビジネス現場での『逆境』をのりこえるための行動理論」(バジリコ社刊/ポール・G・ストルツ著/菊地 隆訳)によると、現代に生きる人たちは、家庭やビジネスの現場で、ストレスや過重労働、人間関係の希薄さなど、大小さまざまな逆境に立ち向かっており、その数は1日に23回もあるといっています。
それらの障害に直面した時、AQの違いによって、人は大きく分けて3つの行動のどれかを選ぶとしています。
その3つとは、「脱落組」「キャンパー」「登山家」であり、企業に所属する人たちの8割ほどは最初はキャンパーで、その場に留まり、現状になんとか甘んじやり過ごそうとするのですが、障害が重なって太刀打ちできないとなると慌てて逃げ出す脱落組になってしまいます。
そして、組織に真に求められる人材とは、逆境にあっても尚、頂上を目指す登山家であるとストルツはいっています。
AQ(逆境指数)を決める4つの要素と5つのレベル
AQのレベルは、COREという4つの要素の組み合わせによって、人それぞれ違ってきます。その4つの要素とは、コントロール(C=Control)、責任(O=Ownership)、影響の範囲(R=Reach)、持続時間(E=Endurance)です。
また、AQのレベルは以下の5段階に分類されます。
- レベル1 逃避(Escape)……逆境に立ち向かえず逃げようとする
- レベル2 サバイブ(Survive)……なんとか生き残ろうとする
- レベル3 対処(Cope)……とりあえず対処をする
- レベル4 管理(Manage)…… 逆境をなんとか管理し解決しようとする
- レベル5 滋養(Harness)……ピンチをチャンスにし、逆境を栄養源としてさらなる飛躍を目指す
企業や組織の経営を成功に導く経営者やリーダーには、レベル4以上のAQが求められています。そしてよりAQが高いリーダーの方が成功するともいわれています。
AQは持って生まれたものではなく、トレーニングや試練に出会った経験によっても鍛えられていきます。
逆境に耐えぬく力を養うことは、組織の一員としても個人としても役に立つものです。AQについて、人事研修などで取り入れてみるのもよいでしょう。