バンドワゴン効果とは、多くの支持を集めているものに対して影響を受けることで、同調する人が増える現象のことです。ビジネスへの活用方法、メリット、デメリットなどを解説します。
目次
1.バンドワゴン効果とは?
バンドワゴン効果とは、誰かが行っていることや支持していることに対して影響を受け、その選択肢に同調する人が増える現象のこと。とくにマーケティングにおいてユーザーの購買意向を向上する手法として活用されています。
2.バンドワゴン効果の具体例
バンドワゴン効果は、「人気がある」「多くの人が利用している」「誰も使っていない」などの心理によって生じます。ここでは日常的な具体例を解説しましょう。
選挙活動での効果
選挙において、一般的に有権者は候補者の政策や人格を重要視して投票する候補者を決めます。しかしメディアやSNSで騒がれている候補者を見ると「ほかの候補者より優れているから人気があるのではないか」という心理が働き、投票するケースがあるのです。
実際にメディアなどへの露出が多い候補者は、バンドワゴン効果で得られる票が集まりやすい傾向にあります。
キャッチコピーや広告での効果
「多くの人々が利用している」という事実は広告の信憑性を向上させ、バンドワゴン効果を生み出します。
たとえば予備校の生徒募集の広告の場合、合格実績が高いとうたっている広告のほうが、合格率について触れていない広告よりも集客効果が高まる傾向にあるのです。
「失敗したくない」という気持ちから購買を見送っている顧客に対して、「多くの人から選ばれている」と伝える広告を配信して安心感を高めると、購買につながる場合もあります。
限定販売での効果
購入に制限を設ける手法も、バンドワゴン効果によって商品やサービスの購買を促します。
期間限定販売やタイムセール、在庫の残数表示などで商品が限定されていることを強調し、「今買わないと手に入らないかもしれない」をいう感情を引き出して購買意向を高めるのです。
ただし広告やキャッチコピーの内容が虚偽にならないように注意しましょう。「景品表示法(不当景品類および不当表示防止法)」に違反する恐れもあります。
レビューや口コミでの効果
レビューや口コミで「おいしい」「いつも行列ができている」などのコメントが多い人気店に対して、人は強い興味関心を抱きます。これもバンドワゴン効果によるものです。
インターネットやSNSで情報集をするのが一般的になった昨今Webマーケティングでは口コミやレビューをうまく活用すると、同調を促して購買をあと押しする効果が期待できます。
通販番組での効果
商品やサービスに対して多くの顧客が集まっていることを強調すると、バンドワゴン効果による購買意欲を高められます。
たとえば通販番組で「電話がつながらない場合はもう一度おかけ直しください」と伝えた結果、注文数が増えたという事例がありました。またアポイントメントの日程を限定すると希少性が高まり、バンドワゴン効果が増大する可能性があります。
3.バンドワゴン効果とアンダードッグ効果、スノッブ効果との違い
アンダードッグ効果とスノッブ効果は、いずれもバンドワゴン効果と反する効果が生じます。バンドワゴン効果との違いについて解説しましょう。
アンダードッグ効果との違い
アンダードッグ効果とは、競争や対立が生じたときに、弱者や劣勢な立場への同情や支持が高まる心理現象です。アンダードッグとは「負け犬」を意味します。
スポーツや選挙などで「負けているチームを応援したくなる」「票が少ない候補者に同情して投票したくなる」などの気持ちはアンダードッグ効果によるものです。
バンドワゴン効果は人気が高い事柄に同調する心理、アンダードッグ効果は不人気の事柄に同調する心理という違いがあります。
スノッブ効果との違い
スノッブ効果とは、「人とは違うものが欲しい」という気持ちから、希少性や特別感がある事柄を求める心理現象です。「人気があるから買おう」「他の人もやっているから自分もやろう」といった心理になるバンドワゴン効果とは、真逆の効果といえます。
ただし人はどちらの気持ちも持つことがあるため、マーケティング戦略においては消費者の行動を促す手法としてどちらも取り入れられているのです。
またスノッブ効果は商品に希少性や限定性という価値をもたらし、バンドワゴン効果は同調の心理現象を活用して流行を生み出す可能性もあります。
4.バンドワゴン効果のビジネスへの活用方法
バンドワゴン効果は日常生活のさまざまな場面で生じており、ビジネスでも活用できます。ここでは6つの活用例を説明します。
広告・キャッチコピーでの活用方法
バンドワゴン効果を広告戦略におけるキャッチコピーに活用すると、消費者の購買意欲を高めることが可能です。たとえば「第1位を獲得しました」「100万人以上の満足顧客」などの文言が挙げられます。
これらの文言には多くの人々が製品やサービスを利用または評価しているという根拠が含まれており「人気だから買ってみる、試してみる」という気持ちにくわえて、「試してみる価値がある」という感情を促す効果が期待できるのです。
インフルエンサーマーケティングでの活用方法
バンドワゴン効果は、インフルエンサーマーケティングとの相性がよく、多くの企業が活用しています。
インフルエンサーとは、SNSプラットフォームであるInstagramやTwitterなどで、フォロワーの数や「いいね」の数が多い人物のこと。
インフルエンサーが紹介する商品に対して、「あの人が紹介しているならよい商品なのだろう」という気持ちが働き、多くの共感や賛同が集まる傾向にあります。その結果「多くの人がよいと言っているなら買ってみようかな」といった気持ちを促せるのです。
選挙活動への活用方法
選挙においては、バンドワゴン効果は勝ち抜く戦略として重要視されています。
たとえば選挙戦において候補者が「絶大な支持を受けている」といった情報を発信すると、支持率が高まるとされています。またバンドワゴン効果によって、新たな支持者獲得が期待できるのです。
アメリカの1848年の大統領選挙での利用など、選挙におけるバンドワゴン効果の活用事例は多数あります。
書店においての活用方法
書店の入り口や目に留まるコーナーでの本の平積は、「みんなが注目している作品なら自分も読んでみよう」という心理状態のバンドワゴン効果を生かしたマーケティングの一例です。
本の横に「いま注目の本」や「人気作家の最新本」などのPOPを置いて店舗を訪れる人々の関心を引きつけ、購買意欲を高める可能性があります。
株やFXなどの投資における活用方法
株や仮想通貨などの投資においても、バンドワゴン効果が影響をおよぼします。株価は需要が高まると上昇し、逆に売る人が増えると下落する仕組みです。
人気のある銘柄に追加投資する投資家が増えると、「今この株が買い時なのかもしれない」「投資する人が多い株は買っておこう」といったバンドワゴン効果が働き、更なる価格上昇を誘発する可能性もあります。
バズマーケティングでの活用方法
SNSの活用が一般的になってきた現代では、興味を引くような情報を広めて、意図的にバンドワゴン効果を生み出すマーケティング戦略が活用されています。このような戦略は「バズマーケティング」と呼ばれ、基本的には口コミや情報の拡散を活用するのです。
バンドワゴン効果をさらに高めるには、拡散したくなるような情報を提供することが重要でしょう。
5.バンドワゴン効果のデメリット
バンドワゴン効果を企業マーケティングに活用するには、一時的な人気ではなく継続的な販売努力が必要です。ここではバンドワゴン効果を活用する注意点について解説します。
顧客からの信頼が低下
消費者は商品のイメージと実際の使用感が一致していることを期待して、商品を購入しています。しかしインターネットで商品を買う際は実際に手にとって確認できないため、広告やキャッチコピー、口コミやレビューの内容を参考にする人も少なくありません。
そのため過度な誇張表現を用いてしまうと、実際に商品を試した際に「想像と異なる」「品質と商品イメージが一致しない」などの印象を持たれ、企業の信頼を損ねる恐れもあります。
景品表示法違反となる恐れ
インフルエンサーによる口コミやレビューを活用してバンドワゴン効果を引き起こす「バズマーケティング」手法は、高い成果を生み出すとされています。
しかし宣伝や広告であることを隠して商品を宣伝したり、高評価な口コミをしたりした場合、ステルマーケティングと見なされる恐れもあるのです。
ステルマーケティングは景品表示法に抵触する可能性があるので、口コミやレビューに使用する表現には注意したほうがよいでしょう。
違反した場合の措置命令
景品表示法に違反した場合、まずは消費者に対する誤解を解くための情報提供や再発防止策の取り組みなどの措置命令が下されます。
この措置命令に従わない場合、罰金や業務停止命令、情報の公表や刑事告発なの法的措置がとられる可能性もあるのです。違反の程度によって罰則は異なるものの、企業のマイナスイメージは免れません。
6.バンドワゴン効果によるメリット
バンドワゴン効果を活用するメリットは、集団心理によって意図的に消費者の購買意欲をコントロールできる点。集団心理からどのようなメリットが得られるのか、解説します。
他社との差別化
バンドワゴン効果を活用して、他社との差別化を図れます。商品の陳列方法を工夫して売上を向上させると、その商品に対して「売れている商品」というバンドワゴン効果を引き起こし、自社商品への購買意欲を高めることが可能です。
また残り少ない商品は「人気商品なのかもしれない」「今買わないと無くなるかもしれない」という心理を生みやすいため、顧客の購買行動を促進する効果が期待できます。
高い信頼性を獲得
「100万人が愛用」「多くの人に使われています」など、多くの人に使われているという事実は商品の信頼性が高まります。人は「自分に必要かどうか」という合理的な意思決定よりも、集団心理による同調行動が優先されるからです。
行動経済学ではこのようなこのような集団心理を「ハーディング現象」と呼び、実際にさまざまな場面でハーディング現象が応用されています。
気や知名度の向上
商品やサービスを購買したファンが評判を広めると、バンドワゴン効果で新たな顧客が購買するようになります。この新規顧客がまた評判を広めていくという好循環が生まれ、人気や知名度の向上が期待できるのです。
現代ではSNSやインターネットでかんたんに訴求や拡散が行えるため、多くの企業がバンドワゴン効果を狙うWebマーケティング戦略を取り入れています。